No.642746

真・恋姫†無双~家族のために~#35終幕は訪れ、されど足音は消えず

九条さん

本編終幕!

2013-12-05 00:00:13 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:2309   閲覧ユーザー数:2041

 自分達の身の危険を感じた関羽達六人は、炎に包まれた玉座の間をあとにし城の外へと脱出した。

 各自が己の陣営に戻り体勢を整えている中、孫堅は劉弁に許可を取り洛陽の復興に尽力した。

 仮設天幕の設営、少ないながらも炊き出しを作り、自らも消火作業に従事した。

 その行動は少ないながらも洛陽に残っていた民達に好印象を与えることになったが、それはまた別の機会に話そう。

 

 洛陽で起きていたボヤ騒ぎと城の消化作業が全て完了したのは翌日になってからだった。

 ボヤ騒ぎによる被害は、迅速な消火活動により大したことはなかったが、城のほうは火の回りが早かったのか全焼。

 望みが薄いことは分かっていたが、それでも連合軍は手分けをして董卓の姿を探した。

 奇跡的といえるのか、はたまた燃えにくい素材を使っていたからなのか、玉座の間のあったらしき場所から見つかったものは首の無い死体と、そのすぐ傍にもう一つの死体が発見された。

 性別などは分からないほどに燃え尽きていたが、直前のやり取りを見ていた関羽らの証言により、首の無い死体を董卓、そばにいた者を董卓の軍師賈詡または董卓を殺した者であるとした。

 この事に異を唱える者もいたが、劉弁が認めてしまったので頷くほかなかった。

 

 

 共通の敵を失ったことで首の皮一枚で繋がっていた連合は瓦解。

 各々が身支度を済ませると自領へと帰還していった。

 最後まで残ったのは孫堅軍。彼女達は自分達の痛手になるのも構わず最後まで洛陽の復興に従事していた。

 そこへ感謝の気持ちだと、劉弁がやってきていた。

 

「洛陽を、余の街の復興への尽力、改めて礼を言う」

 

「ありがたきお言葉」

 

 孫堅は恭しく頭を垂れる。

 今ここにいるのは孫堅と劉弁の二人だけだ。

 感謝を述べに来たとはいえ、相手はこの国の王様である。一将でしかない者達は席を外させた。

 

「そのように畏まらんでよい。余は帝として来たのではないからな」

 

 それならばと、孫堅は姿勢を崩して地に座った。

 そのあっけらかんとした態度に劉弁は笑っていたが、不意にその目が鋭くなった。

 

「風の噂でな、一つ耳にしたことがあるのじゃが……」

 

「風の噂……でしょうか」

 

「孫堅の軍は今、各地へとバラバラに配置されているとな」

 

「ええ、おっしゃるとおりです」

 

 これは風の噂なんてものではない。

 確実に彼が教えたことだろう。己が手を貸し、今回の策を考えた男。

 

「すぐではないが、余から袁術に使者を出す。

 余を助けた者達が一箇所に集まるよう嗜めた書簡を持たせて……な」

 

 まさかと思った。

 洛陽の復興、汜水関への一番乗りだけでもかなりの名声を得ただろう。

 その上、全員を集合させることができるとは。袁術からの独立計画をかなり進めることができる。

 願っても見ないことだった。

 

「余は恩を返したい。ただ助けられるだけでは嫌じゃ。

 じゃから、余も出来るかぎり力になりたいと思ったのじゃ」

 

 そう呟く劉弁はどこか遠いところを見ていた。

 数瞬、哀愁のようなものが二人の間で漂ったが、質問をするなら今しかないと孫堅は思った。

 彼女の知らない彼らの先を。

 

「つかぬ事をお聞きしますが、よろしいですか?」

 

 孫堅の雰囲気の変化を感じ取ったのか、劉弁は彼女のほうへ向く。

 不安で瞳の揺れている彼女のほうへ。

 

「深……いえ、黒繞はどうなったか知りませんか?」

 

 呂布、張遼、華雄は脱出したところをこの目で見た。

 だが、彼の姿はあれ以降見ていないのだ。

 劉弁に襲いかかる振りをしていたところまでしか。

 

「残念じゃが、余もその後のことは知らぬ。

 じゃがな孫堅、あやつは死んでおらん。

 最後まで皆が生き残ることだけを考えていたあやつが、こんなところで死ぬとは思えんのじゃ」

 

「そう……でしたね。

 私もそう信じることにします」

 

 一筋の涙が流れたことに彼女は気付かない。

 劉弁は気付いていたが指摘など無粋なことはしなかった。

 ここにいるのは王ではなく、一人の人間。

 その姿はすぐに元に戻ってしまうだろうが、そのことを大事にしておきたかった。

 

 

--少し時は遡る

 

 逃げる劉弁の姿を見ながら俺は考え事をしていた。

 本当に俺が悪役に見えてきた……。

 ここに到ってようやく、俺は劉弁のこの役を伝えたときの笑顔の意味を知ることになった。

 それにしても迫真の演技というかなんというか、上手すぎやしないだろうか。

 なんだかこう……罪悪感がひしひしと伝わってくるのだが。

 

 そうこうしているうちに前方に複数の気配を感じた。

 俺は劉弁を追い立てる速度を緩め、彼が保護されるのを待つ。

 

「何者だ!」

 

 前に立ちはだかるのは八人。

 夏侯姉妹に関羽、張飛に趙雲、周泰とツリ目のこれまた褌の子。

 そして、蓮根がいた。

 

 一瞬だけ目が合ったと思う。それだけで十分だった。

 夏侯淵が劉弁を庇うように移動しているのを確認してから、わざとらしく舌打ちをして来た道を戻っていった。

 それからは全力で走った。

 警備隊と一緒に駆けた裏道を駆使し、直線を避け、それでいて最短距離で城まで。

 最初から振り切るつもりなんてなかったが、彼女達との距離は全く離れることはなかった。

 警備隊の皆、ほんとありがとう!

 

 城に入ってしまえばこっちのものだ。

 洛陽の……いや、代々の帝の為に作られたこの城は似たような造りがたくさんある。

 見た目だけでは簡単に道に迷ってしまうほどに広く複雑だ。

 ここでようやく彼女達を撒くことに成功した。

 その頃には城内で火が回り始めていた。どうやら影華と茜が上手くやったようだ。

 頃合を見て俺も玉座の間に火をつけた。

 

 玉座の間の入り口側には油がたくさん撒かれているが、奥の方はそれほどでもない。

 それどころか柱には水を掛けてあるものまである。

 それは完全には全焼させないためのものだが、ぶっつけ本番だから上手くいくかどうかは運頼みだった。

 

 そうして全ての準備が終えた頃、拘束し床に放っていた畢嵐の口を覆っていた布を外した。

 

「やめろ! 貴様、私を誰だとぎゃああああああああ」

 

 良い感じに大きな声で喚いてくれた。まだ腹を一刺ししただけだったんだが。

 あまりの痛みに声も出なくなったのか、呻くだけになった畢嵐の首を撥ねた。

 それと同時に手足を縛っていた縄を切り、撥ねた首を拾い上げる。

 

 玉座の間の入り口が大きな音を立てて崩れ落ちた。

 どうやらぶった切って入ってきたみたいだが、少し遅かったかもな。

 火柱をあげるほどに火の勢いは増し、こちらからでは誰が入ってきたのか視認できないほどだ。

 だからこそ、憶測は飛び交うだろうが誰も結末を知ることはできない。

 酸素が急速に失われていくのが分かったが、それでも大きな声を出すために息を吸い込んだ。

 

「逆賊董卓は討ち取った! 連合軍の者達よ、助力感謝する!」

 

 瞬間、燃え尽き自重を支えきれなくなった天井の柱の一本が、大きな音を立てて落下した。

 

 

「間一髪……でしたね」

 

 背後から聞こえてきた声に心底安心した。

 

「いいから早くこいつを連れて行きましょ。ここにいたら僕達も巻き込まれるわ」

 

 そうだ、早く起き上がらないと……。

 

「へぅ……皆さん、こちらです」

 

 小さな蝋燭の灯りを頼りに俺達は進んでいった。

 かつての帝が脱出する為にと作らせ、結局は一度も使われることのなかったその通路を。

 

 この通路を発見したのは偶然だった。

 帝から次代の帝へと一枚の資料と口伝によって伝えられる隠し通路。

 その資料は劉弁の私室にあった。このことを劉弁本人には伝えていない。資料の裏には劉弁が描いたと思われる落書きがあったから、彼の羞恥を考えてわざと伝えなかったというのもあるが。

 

 この通路はかなり長く作られていて、最後まで行けば隣の街の近くまで出るらしい。

 かくして俺達はその街の近くにある森を合流地点として、脱出を図ったのだ。

 

 恋、霞、華雄の三人には少数の手勢を引き連れて先行してもらった。音々は恋の後ろに引っ付いていった。

 もっと早くに出てもらうこともできたが、これも蓮根への合図の一つだった為、連合軍がこちらを認識できる距離まで待つ必要があった。

 彼女達なら無事に逃げ延びてくれるだろうが、一抹の不安は拭いきれない。

 それは俺だけではないのだろう。

 皆、僅かながら通路を進む速度が上がっていた。

 

 どれくらい歩いたのか。蝋燭を幾度も変えながら歩き続けた俺達は、遂に終端へとたどり着いた。

 久々に浴びる日の光に目を細めながらも周囲への警戒は忘れない。

 周囲の安全を確認してから詠、月、茜、影華の順に外にでる。

 しばらく森を散策し、小さな川の近くで小休止を取ったところで俺の意識は途絶えた。

 

 目が覚めたところは宿だった。

 ここはどこなのか、誰が運んだのか、気になることはたくさんあったが、俺が起きたことに気付きつつも頭を撫で続ける影華の手の気持ちよさに、俺はまた意識を手放した。

 

 次に起きたときは体が動かなかった。

 首を左右に回してみると左腕に恋が、右腕に影華がくっついていた。

 そして正面に戻すと、不機嫌そうな詠と目が合った。

 多少強引に二人から腕を抜き取る……が影華が全く離そうとしない。というかむしろ力を入れてる感じが……絶対起きてるだろ。

 影華の手を握ることで腕を離してもらい、なんとか上体だけは起こすことに成功した。

 さっきよりも詠の目が冷たくなっている気がするが、断じて俺のせいじゃないと訴えたい。

 

「……はぁーー」

 

 目の前の軍師様が深い溜め息をついていらっしゃいました。

 よくみれば彼女の後ろには真っ赤になった月と、羨ましそうに影華を見ている茜と、こっちをみてニヤついてる霞と、腕を組んでいる華雄がいた。良かった、全員無事だったんだな。

 音々? 音々は恋に抱きつかれて恍惚としてるぞ? 首が絞まっているような気がしないでもないが。

 華雄に目を向けると、やれやれといった表情で音々の救出に向かってくれた。あれ? なんかデジャヴが……あー、華雄も恋に抱きつかれた。ま、まあ大丈夫だろ。

 

「案外元気そうで安心したわ」

 

 どうやら詠が心配してくれたようだ。指摘するとややこしくなりそうだから言わないが。

 

「えっと、俺ってどれぐらい寝てた?」

 

「丸二日よ。あんたが倒れてすぐに恋と霞が来たわ。

 華雄はなんか道に迷ってたみたいでちょっと遅かったけど、でも夜には全員集合したわ。

 その後、とりあえず僕達は街で宿を取ってあんたを寝かせたわ」

 

「全員疲れてて、そのまま寝ちゃったんですけどね……」

 

「月っ!」

 

 月と詠のやり取りに笑った。やっと終わったんだ。それも最上の結果で。

 

「こほん!

 ……それで今日、僕達はなるべく街に出るのを控えてここで待機してたわ。

 霞には街で情報を集めてもらっていたけど、得られたのは洛陽で孫堅が復興作業をしてるらしいってことだけだったわ」

 

 孫堅も計画通り事を進めたらしい。これでもう思い残すことは無い。

 

「それでこの後はどうするつもり?」

 

 全員の目が俺を向いている。

 先ほどまで寝ていた恋も。抱きしめられぐったりしていた音々と華雄も。

 目の前の詠はもちろん、あまり目を合わせてくれない月も。

 いつの間にか酒を煽っていた霞と、その酒に付き合わされている茜も。

 そして俺の隣で起き上がった影華も。

 みんな俺の指示を待っているようだった。

 どうして俺がとか、俺でいいのかなんて聞こうとは思わなかった。

 ここまでみなが自分自身で選んでついて来たのだ。今さらそれを問おうなどとは思わない。

 

「ある程度休んだら公孫賛の領地へ向かおうと思う」

 

 途端に公孫賛って誰? という顔を一部を除いてされた。

 月と影華は覚えていたようだが。

 

「たしか河北の……」

 

 それで詠は思い出したようだ。

 

「河北って袁紹もいるけど、何かあるの?」

 

「袁紹は軍を整えたら、宣戦布告もせずに公孫賛を攻めるはずだ。

 そして袁紹の大群が攻めてきていることに公孫賛が気付けたとして、それを退けることはできない」

 

「連合軍がついこの間なくなったばかりでそんなに早く動くわけ? ありえないわ……」

 

「俺もそう信じたいけど、袁紹は……まあ、あれだからな」

 

「??」

 

 対峙したことがない月と詠には分からないだろう。

 だが、霞と華雄は俺の言葉に深く頷いていた。

 ようするにバカなのだ袁紹は。

 バカだからこそ単純な物量には脅威を抱く。

 

「深が行くというのなら、私はついていくだけです」

 

「私もですよ!」

 

 ありがとう影華、茜。お前達が信じてくれるから前を向いていられる。

 

「せっかく乗りかかった話や。うちもこのまま混ぜてくれるやろ~?」

 

「………………恋も行く」

 

「恋殿が行くところ、音々も行くのですぞー!」

 

「へぅぅ……私も、ついていっていいですか?」

 

「月を一人になんかしてらんないわ! わ、私もついて行くんだから!」

 

「董卓様を守ると決めたのだ。もちろん私もついていこう」

 

 みんなの気持ちがありがたい。こんな俺のわがままに付き合ってくれて本当にありがとう。

 

「三日後、出立しよう! これからもよろしく頼む!」

 

 直後に皆の力強い返事を聞いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「董卓がどこにも属さない外史とは……やはり面白い人材でしたね。

 このまま彼の行く末を見たいところですが、私にもやるべきことはありますから……」

 

 誰にともなく呟かれた言葉。

 真っ白な世界で純白の和服を着た女性は笑みを浮かべる。

 彼女にやるべきことなど一つもない。

 ただ、やりたいことをやっているだけなのだから。

 

「次はどんな外史を見ることができるのでしょうか。

 もしかしたら、今あなたの頭の中に浮かんだ物語が見られるかもしれませんね……」

 

 彼女は愉しそうに笑う。

 外史を肯定するでもなく、否定するでもなく、まして管理するでもなく。

 零から壱を作り出す彼女は笑う。

 それは次の標的を見つけたからなのかもしれない。

 彼女の裏の顔をまだ

 

 

 

 

 誰も知らない

 

 

 

 

 

 

 

【あとがき】

なんだか執筆が思うように進んだので完了させちゃいました!

 

ということで皆様こんばんわ

九条ですぞ

 

拠点パートは残っておりますが遂に終幕です

途中から書き方を変えたり、後半をカットしたり、駆け足になったりと

色々とありましたが、とりあえずお疲れ様でした

 

前話を書いた日にこの話も書き終え、投稿日時だけは予約でずらすかと

浅はかな考えでもって時間をずらしたわけですが

終わってしまえば感慨深いものです

 

今後、次回作に繋がる話や登場キャラの設定をアンケートで募集したりするかもしれません

とりあえずは

年内に拠点パートも全部終わらせられたらいいですね! という気持ちで待っていてください

 

他に何か言いたいことがあればなんでもコメントでぶっちゃけてください

特別に匿名コメントも許可したよ! ヤッタネタエチャン!

ひなりんどこ行ったの? とか タイトルの家族ってテーマ忘れてない? とか

皆さんのえげつないツッコミを待っています(汗

 

以降も拠点パートを宜しくお願いします。

以上! お疲れ様でした!

 

次回まであでぃおすだー!


 
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