「申し上げます!たった今、門の前に天の遣いを名乗る男が来た、と報告がありました!
いかがなさいますか?」
「なんやて?」
張遼はその報告に耳を疑った。
華雄が敗走し行方がわからなくなったせいで、ただでさえ兵が足りなくなったしわ寄せがきているというのに。
なんだってこんな時にそんな奴が来るというのだろうか。
確かにこちらの耳にも連合軍に天の遣いがいる、という情報は届いていたし、それが故に連合軍の士気が高い、という事実も認識していた。
天の遣いの名は連合軍にその正当性を少なからず与えていた。
それなのに、なぜ?
なぜそいつがいまこの時に、ここに来る?
こちらは将を一人失い、多少混乱しているとはいえ、なお守城については遜色ない蓄えはある。
相手はまだ攻めあぐねている。
だとしたら、そんなところに来る理由は一つしかない。
罠だ。
何かの策があるに違いない。
内通者でもいるのだろうか?
とりあえず…疑ってかかったほうが良い。
張遼は、そう判断した。
「そいつどんな様子やった?」
「それが、単騎で来て、できるならば董卓様と話をしたい、といっているようです。
詳しいことは将軍格の人間にじゃないと話せない、ともいっているようでして・・・」
一体何が狙いや?
「わかった、ウチと恋で確かめるわ。人払いして連れてきて。
総員一時待機!不測の事態には備えておくんやで!」
…
……
………
こちら、北郷。
ただいま董卓軍におりま~す。
ずいぶん時間が掛かったけど、やっと通してもらえた。
さすがにアポありのほうが良かったか?
っていっても知り合いなんて都にいるわけでもないし・・・
飛び込み営業ってこんな気分だったな・・・
そんなしょうもないことを考えていると、いつかみた顔がそこにあった。
サラシに羽織、袴というなんとも豪快な服装をした張遼と
天下の飛将軍呂布その人たちである。
「ん…んん~~?なんや、見たことある顔やな思たら、あんた曹操んとこにおったおっちゃんやん。」
「ん…
あぁ!そういえば!黄巾党のときはきちんと挨拶も出来ませんで…
あんた達が張遼に呂布だったんだな。
都の使いがきたって言ってたけど…そういうことか。
あのときは大変だったんだぞ?華琳はお冠だしみんなで自棄酒のみ始めるし・・・
結局素面なやつが損をするんだ。管理職って大変だよね。」
「そんな与太話はどうでもええねん。時間もないし率直に聞く。
あんた、何しにきたん?」
「何しに来たと思う?」
こういう交渉ごとのときは相手にペースを握らせちゃダメなんだぜ?
「…へらへらすんのも嫌いやないけど、時と場合を考えなあかんでおっちゃん。」
首筋に薙刀をつきつけられていた。
・・・大失敗なんだぜ?
「わかったって!降参!降参だよ!
・・・なんだってこっちの人たちはみんなすぐに刃物を突きつけるんだ。」
「あんたがふざけるからや!
で、ほんまに何しにきたん?月に会いたいいうてるって聞いたんやけど?」
張遼はなんとか薙刀?っぽいはものを下ろしてくれた。
月?・・・・
あぁ、月ってのはおそらく董卓の真名だろうな。
「なんだ、ちゃんと伝わってるじゃないか。言ったままだよ。
董卓と交渉したい。」
「いまさら連合軍の味方の天の遣い様が月になんの用があんねん。
暗殺するっちゅーても・・・おっさん、武の心得があるようには見えんし・・・」
おぉおぉ、疑われていらっしゃる。
「そりゃまぁ懐疑的な目で見られてもしかたないかな。だって見たまんま怪しいし。それは自覚してるよ。
ただちょっと気になったこともあってさ。」
「なんや?気になることって。」
お、食いついた。
「まずは董卓と交渉をしたい。その理由は、あんた達のほうが良くわかってるんじゃないか?
董卓の今の立場って暗殺されそうなくらい危ういんだろ?」
「・・・!」
「その顔、図星か?だったら手を貸せたらな、と思ってさ。」
「あんた一人でどうにか出来るんなら最初からうちらで何とかしとるわ!」
「それもそうなんだけどね。ただ、ほら、一応俺も天の遣いだし、名前の効果はあるからね。
俺が董卓を殺せばこの戦い、一応のカタは付けられると思うんだけど、どうだろう?」
「月を殺す!?やっぱおっちゃんここで殺っとかなあかんなぁ?ん?」
「まぁ正確には殺すフリをするだけだ。」
「どういうことや?」
「言ったまんまだけど?董卓と停戦交渉してくるって言って出てきてるから、交渉決裂したから刺し違えた、何てことがあってもおかしくはない、だろ?
それはまぁ表向きで、俺がここに来てることは盟主の袁紹は知らないんだけどな。
本当のところは、董卓を快く思ってないやつらの前でその本人が死んだならこの戦いはそれで終わるってだけなんだ。
反董卓連合軍だぜ?そう名乗っている限り俺たちは董卓の死亡を知って戦い続けられないわけだ。
義があってこその討伐軍だ。そのお題目がなくなって暴れ続けたら逆賊とかわらない。
それくらいわからんやつらでもないからな。
そしてもうひとつ、幸いと言っていいかどうかわからないが、こっちの連中のほとんどは董卓の顔を知らないんだ。
木偶の一つでも用意して、埋めて掘り返してとりだせば真偽の程なんてわかりゃしないよ。
汚名ごと、死んだことにすりゃその後はどうとでもなるだろう。
社会的には死ぬことになるけど、汚名も注げないまま死ぬよかマシだろ。
んで、全部収まったら全員でどこへなりといけばいい。
あとの乱世を生きられるかどうかは・・・まぁあんた達が守ってやればいいだろう。」
「・・・恋、このおっちゃんどう思う?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・その人、嘘ついてない」
「それ、ほんまか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・(コクッ)」
「どうかな?一口乗ってみるかい?」
「そのまえに一個だけええか?あんた、なんでそこまでするん?」
「ん~、なんでだろうな。
はやくこの戦いを終わらせたいってのはあるけど、やっぱりあれかな。
董卓の悪い噂を聞かなかった、からかな?」
思えば連合軍に参加する前の話で、俺自身がそういっていた。
元いた世界じゃ董卓のイメージってのは天下万民!我を尊ぶべし!みたいな、
酒池肉林じゃがはは~!!みたいな、
暴虐の大王とでもいったらいいのだろうか。
いいたいことはわかるだろう?
でも街で聞いた噂じゃやり方はやや急進的ではあるがそれも民の為だったという話だし、
そもそも宦官だ外戚だが権力を握るのに躍起になっている様なこの時代じゃそれも仕方なかろうという評価だった。
「そもそもなぁ・・・・俺にとっちゃこっちの罰は重すぎるんだよな。俺の国の言葉で罪を憎んで人を憎まずってのもあるけどさ。
死ぬのはいけない。生きて償え。そう思ったから来たのかもしれないな。ただそれも後付の理由なきもするし・・・
つまりアレだ。よくわからん!」
「「・・・・・・・・・・」」
・・・あ、これが世に言う空いた口が塞がらないという表情なんだな・・・
「あっはっはっはっは!おっちゃん、最高や!ようわからんのに命賭けて見も知らん奴を助けにきたんか!」
「そういうと俺が頭の可哀想な人みたいに聞こえるだろ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・あってる」
「なんだって!?」
「そんなん決まってるやん!ウチでもそこまで気合はいっとらんで?
なんや、疑ってかかったウチらがアホみたいやん。」
「いや、べつにアホとかではないと思うけど・・・」
「せやな。流石におっちゃんほどの突き抜けたアホやないわ。
ええで、乗ったる。そのかわり月と賈駆っちだけは絶対に助けたって。」
「お、本当か?そしたら張遼と呂布にはちょっと時間を稼いでもらいたい。
その間に董卓はこっちで保護するから。お願いできる?」
「おぉ、ええで。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・(コクッ)」
「出来るんなら降伏して欲しいんだけど、武人の意地もあるだろうし。
二人の後顧の憂いはこっちでなんとかするから、全力で戦ってくれると助かる。
一応董卓以下重鎮達は俺が連れて逃げることになるだろうから、出来るだけ合流したいけど・・・それは欲張りすぎか?」
「せやな、正直、足止めだけでも手一杯やろうな。おっちゃんも、こんな夜更けに来たいうことは、連中にばれたらやばいんやろ?
全力で足止めせないかんし、うちらの命もあるかわからん。」
「そうか・・・なら出来たらってことで。
ほんとのところは、うちの上司のところに来てくれると嬉しいけどな。知ってるだろ?最高に粋な上司だよ。」
「んっふっふ~…口説くんやったらもうちょっと情熱的なほうがええんちゃう?
でも、ま、了解や!ほんなら行くで恋!おっちゃんもしっかり頼むで!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・いってくる」
「おう、できるだけがんばってみるさ。」
はぁ・・・なんとか信じてもらえたようだ・・・
さて、では第二段階、気張っていこう。
「こちらでございます。」
「うおぉぉ・・・話では聞いてたけどすげぇところだな・・・」
張遼、呂布のお墨付きを貰った俺は政治の中心地に通された。
朝廷ってこんなとこで行われてるんだ・・・
改めて自分の今おかれている状況を思い知る。
あ~、俺、三国志の時代にいるんだな~・・・
「あんた、一体何しに来たの?」
・・・あれ?伝わってない?
あ~・・・失敗した。そりゃそうだ。暗殺(するフリをするでござる)計画なんか下っ端に話せる訳無いじゃないか。
っていうか、玉座に座っている子の隣に立ってる眼鏡の子がすごい剣幕で俺のことをにらみつけている。
こっちの世界に来て最初に会った女の子とか沙和とかこの子とか眼鏡だけど・・・
この時代って眼鏡はもうあったんだっけ?
んま、細かいことはどうでもいいか。
「いちおう張遼と呂布に事情を話したんだけど・・・聞いてないかな?」
「全然聞いておりませんぞ!大体お前ごときが恋殿の名を呼び捨てにするなど100万年早いのです!」
なんか別のちっこいのにもすげぇ怒られてるんですけど・・・
しかしなぁ事情を聞いてないとなると・・・命の危険を感じる。特にあの眼鏡の子から殺気を感じるし。
でもあの二人に時間稼ぎを頼んでいる以上早めにカタを付けないといけないわけだが、
説明するにしても・・・はぁ・・・やるしかないか・・・
骨の二、三本は覚悟しないといたほうがいいかも知れない。
「じゃあ改めて、天の遣いといわれる者です。董卓さんと話し合いにきたんだけど・・・
そっちの子が董卓さんかな?」
「・・・はい、そうです。私が董卓です。」
うおぉぉぉ、女の子になってんのカナ~とは思ってたけど、まさかこんな小動物系だとは!!
なんという・・・こう・・・うおぉぉ余りの動揺で言葉にならねぇ・・・
もっとナイスバディなお姉さん系のを想像してたからなぁ・・・
ちょっとガッカ・・・いや、むしろあり?・・・
おぉぉぉぉ・・・俺はどう反応したらいいのか・・・
「ぉぉぉぉ・・・・・・・・・ハッ!
うおっほん、すみません、取り乱しました。
ではまぁ、時間もないことだし、用件だけ伝えると、降伏して欲しい。」
「はぁ!?ちょっとあんたなに言ってんのよ!?
いまボク達が降伏なんてしたら月が殺されちゃうじゃない!」
「そういわれてもなぁ・・・俺も大見得きってでてきちゃってるからなぁ・・・結果をださないと首が飛ぶわけで・・・」
「そんなことボク達には関係ないじゃない。月が死ぬくらいならあんたが死んだほうがましってもんだわ。」
「ちょっと詠ちゃんいいすぎだよぅ・・・」
「ゆえぇぇぇ・・・なんであんな見も知らないオヤジをかばうのよ~・・・」
嫌われてそうだな~と思ったけど、まさかここまでとは。
ただ董卓はとてもいい子だということはわかった。
「確かに俺の事情は関係ないよな。
ただ俺が五体満足でここにこれたのは張遼も呂布も俺の提案に乗ったからだってことを踏まえて聞いて欲しい。
董卓軍のために、降伏するか、ここで俺に殺されるか。まぁ殺すっていっ」
「ちんきゅーーーーーーきーーーーーーーーーっく!!!」
「ふっぐっはぁ!」
一瞬何が起こったかさっぱりだった。
肺の空気が逃げていく
息が
息が吸えない
吐いた息が吸えない
鳩尾
鳩尾にとび蹴りだと?
「月殿を殺す!そんなこと冗談でもこのねねが許しませんぞ!」
「・・・ぉ・・・m・・・sいご・・・」
だめだ
言葉にならない
鳩尾が熱い
横隔膜が固まったみたいな・・・
「よくやったわ音々音!そこのあんた、何かいったらどうなの!」
「・・h・・・なし・・・」
ようやく
息が吸える
けど言葉にならない
「さい・・ごま・・・で・・きいてもらえない・・・かな・・・?」
やっと喋れるようになってきた
こんなのいつ振りだろうか・・・
サッカーとかで鳩尾にボールが当たるとなるけど
さすが相手は人間・・・
「ふん!あんたの言葉なんてこれ以上聞きたくないわ!ねぇ月?」
「ダメだよ詠ちゃん・・・この人まだ何か言いかけてたよ・・・」
「だまされちゃダメよ!こいつ月のこと殺しに来たっていったわ!」
「でもなにか言いかけてたし、最後まで聞くだけでも・・・」
「甘いですぞ月殿!こんな奴に情けをかけることなんてないのです!」
「張遼ですらここまでしなかったぞ・・・
いてぇ・・・アバラ折れてないよな?っはぁ~、空気マジ旨い・・・
董卓、あんた、いい部下を持ったな。」
「え・・・?あ、はい!」
それはとてもいい笑顔だった。
噂では聞いてたけど、やっぱり悪い奴じゃなかったんだな。
「お願いだから最後まで聞いてくれって。俺はあんたらを助けるために来たんだから。
ただ、手放しであんたらを助けるわけには行かない立場だからね。
だから、最善の方法をとる、この場合戦が終わってかつ董卓も生きてるってのが一番なわけだ。
その方法が董卓に死んでもらうことなんだけど・・・」
「!!」
「ちんきゅーーーーー・・・」
「やめろっての!最後まで聞け!!ぐっはぁ」
何度もちんきゅうと眼鏡ッ子の妨害を受けながらもなんとか説明しきった。
イテェ・・・心とアバラ周辺が悲鳴を上げている・・・
骨が折れてないのが奇跡な位のライダーキックだぜ、ちんきゅう。
「あんた、本当に信じていいの?」
眼鏡の子が俺に聞く。
「そんなこと俺に聞かれてもなぁ・・・
ただ張遼たちに言われたよ。あんたとびっきりのアホだってさ。」
「詠ちゃん、私はこの人信じられると思う。」
「月がいいなら反対する理由はなさそうだけど・・・罠かもしれないのよ?」
「この人、きっと嘘をついてない気がするの。」
「ねねは恋殿が信じるというならば信じてやらないこともないのです!」
「・・・わかったわ。あんたのその策、乗って上げようじゃないの。」
「マジか!よかった。これで俺の首もつながるよ・・・
さて、じゃあ準備出来次第引き上げるぞ。」
ここからが勝負だ。
気合入れろよ俺。
「うちの陣に着くまでが勝負だ。」
ここで説明せねばなるまい!俺が華琳に提案した作戦とは以下の通りである!
1.他の軍に気がつかれないように董卓軍内部に進入
2.董卓を説得して降伏もしくはそれに順ずる行動を取らせる
3.優秀な将がいたならば董卓と一緒に連れてくる
早い話が黄巾軍の時と同じ作戦だ。
しかし第1段階が厄介すぎるわけで華琳に猛反対されたわけさ。
今回はどうにかなったけどね。
董卓を説得した直後、全軍に向かって「董卓暗殺により全軍降伏」という旨の通達を出させた。
殺したって事にして逃げる作戦だが、実際董卓が生きているところを見られてはいけない。
たしかにほとんどの人間は董卓の顔を知らないが、もし知っている奴がいた時にせっかくの策は意味がなくなってしまう。
そして、俺がこの場にいたこともばれてはいけない。
よって・・・
「・・・・・・・・・・・・・・・あっぶねぇ・・・
いまの絶対袁紹だったよ・・・ばれたら抜け駆けで華琳にまで迷惑かけちゃうからな・・・」
ちょっとしたメタルギアソリッドだ。
「うおっと!」
「きゃっ!」
「いたっ!ちょっと急に止まらないでよ!
「うるさい、ちょっと静かに!・・・あれ?また袁紹?
あいつなんでうろうろしてるんだ?」
「どうせボクたちをさがしてるんでしょ。」
「それなら偽者の死体でも見つけて喜んでおいてもらいましょう。」
「あんた、そんなものまで用意してきてたの?」
「いや、先の戦いで犠牲になった人の中から端正な顔立ちの人を選んできれいに化粧してきた。
つっても、張遼んとこの部下に用意してもらったんだけどな。
似るようにしてもらったからあれならきっと騙されるでしょう。」
「・・・見かけによらずいろいろと考えてるのね。」
「そりゃ博打に勝つためには出来る限りのことをしないとね。
ほれ、袁紹がいなくなった。いくぞ。」
「ねねをおいていかないで下され~!!」
こんな感じで、いい手間かけて華琳のいる本陣に戻ってきた。
「北郷一刀、ただいま戻りました~・・・あれ?みんなどこにいんの?」
首尾を報告しなければならないので華琳を探してさ迷い歩いているのだが・・・どこにもいないぞ?
どうしたことだろうか。心なしか陣内はあわただしい感じがするんだけど・・・
「あ、ちょっと、君、華琳見なかった?」
「え?あ!北郷隊長!曹操様なら先ほどから夏侯惇将軍の所にいらっしゃいます。
なんでも将軍が一騎打ち中に大きな怪我をなされたとかで・・・」
「は?あの春蘭が?」
「えぇ、それで先ほどまで取り乱されておりまして・・・
ですがもう落ち着いたようですし、案内致しましょうか?」
「あ、お願いしていいかな?」
「あら一刀、戻っていたの?」
「今さっきね。それより春蘭が怪我したって聞いたけど大丈夫なのか?」
「えぇ、だいぶ落ち着いたところよ。いま向こうで休んでいるわ。
あなたこそ、無事に戻ってきたところを見ると、あなたも上手くやったようね。」
「あちこちアザだらけではあるけどな。なんとかやってきたよ。
こっちの連中が・・・まぁ直接聞いてくれ。」
「あなたねぇ・・・自分の責任くらいちゃんと果たしなさい。
作戦の結果も報告せずに戻るつもり?」
「それもそうだけどさ。どこにどんな耳があるかわからんじゃないか。
まあ結果からいえば成功だよ。ここにこの子たちがいるのが何よりの証拠さね。
今回は運が良かったよ。」
「そう、じゃあ出立前の作戦通りことが運んだのね?」
「まぁ、な。話し合いで解決できた、とは言わないけども、戦だけでの解決、とも言いがたいな。」
「…そういえば、そんな話もしたわね。今回ばかりは私も少し考えを改めましょう。
それで、私が言う出立前はそんなにまえではないわ。もう一度聞きます。
作戦通りことは運んだのね?」」
「結果としてはそうなるね。ただ張遼あたりなら合流できるかな~って思ったんだが・・・無理だったな。」
「そこまで考えていたの?」
「あぁ、一応ね。張遼と夏侯惇の二枚看板って素敵じゃん?
ただ呂布もそうだけどいろいろやってる間に二人ともどこいっちゃったかわかんなくってねぇ・・・残念じゃよ。」
「あら、張遼なら春蘭が捕らえてきたわよ?」
「…マジか!」
「落ち着きなさい。あなたのことも話していたから・・・まさかあなた」
「手は出してないよ!説得しただけだって!で、呂布は?」
「さすがにそこまでは欲張れないわ。では作戦通り董卓とその参謀は連れてこられたってわけね?」
「あぁ、それならこの子達がそうだよ。こっちの子が董卓で、そっちは・・・名前聞いてなかったけど、李儒?」
「違うわよ!賈駆!賈文和よ!」
「だ、そうだ。でそっちの帽子の子が陳宮だって。」
「えぇ、わかったわ。それで、あなたが董卓ね?
本当は私はあなたの首を刎ねるつもりでいたのだけれど・・・」
「ちょっとあんた!!本当に月の命は大丈夫なんでしょうね!?」
「大丈夫じゃなきゃ連れてこないよ。」
「詠ちゃん・・・大きい声だしちゃダメだよぉ・・・」
「あなたが董卓の参謀ね?言ったでしょ?今はもうあなたたちの命をとろうなんて考えていないわ。いまわね。
その点については、そこの大馬鹿者に感謝することね。そいつの面白い見世物がなければ首を刎ねていたのだから。
ただ、そうね。もしあなたたちがこれを聞いてもまだ命を差し出す気があるというのならば、その分働いて返しなさい。」
「…はい、わかりました。」
「わかったわよ。大体、もうここまで来たら従うしかないじゃない。」
「しかし私が仕えるのは恋殿ただ一人・・・
恋殿ならば必ず生きているとは思うのですが…ぐむむ一体どうしらよいのですか!?」
と、そんな話をしているときだった。
「・・・申し上げます!」
「何?緊急の用事以外は通すなといってあるはずよ!」
「それが緊急事態でして・・・本陣営にいるはずの天の遣いに会わせろとあの呂布が来ています!
それを聞いた夏侯惇将軍が武器を持って飛び出していって・・・張遼将軍が止めに追いかけているのですが・・・」
「なんですって!?」
「・・・陳宮の問題もこれで解決か?」
「暢気なこといってないで早く恋殿の所へ向かいますぞー!」
そういうなり陳宮は飛び出していった。
ほんと元気のいい娘だ。
「董卓と賈駆はここで待機していなさい。
一刀、行くわよ。」
「へいへい、了解です。」
「それにしてもあなた、呂布にまでなにか吹き込んだの?」
「出来るならまた会おうっていっただけだよ。他にはなにも言ってないさ。」
「…あなた、本当に女たらしね。」
「え!?これだけで!?」
「・・・冗談よ。
・・・それに、見直したわ。」
「ん?今何か言ったか?」
「いえ、何も言ってないわ。さぁ、ではあなたが諭した呂布の顔とやらを見に行きましょう。」
その時チラッと見えた華琳の横顔は、
とても嬉しそうに見えた。
そんなわけで、この反董卓連合はこれで一区切りとなった。
その後俺は軍に引き入れた張遼、董卓、賈駆、呂布、陳宮たちを匿いながら洛陽の復興につとめることになる。
しかし乱世への扉は、まだ開かれてもいないことを
このとき俺は、知る由もなかった。
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