No.642008

恋姫婆娑羅

KGさん

このパートが終われば曹魏の面子も全員揃いますね。
ここまで長かったなぁ・・・

2013-12-02 01:13:23 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:2928   閲覧ユーザー数:2662

「再乱の兆し」

 

 

 

 

 

 

反董卓連合からしばらくが過ぎた。

大方の予想通り、董卓が消えた後漢王朝には諸侯の小競り合いを抑える力は無かった。

曹魏の面々も盗賊や野盗の討伐に駆り出される毎日が続いていた。

 

「アニキー。こっちは終わったで」

 

「おう、それじゃ次はあっちを頼む」

 

現在、城の庭で元親と真桜が何やら巨大なカラクリを作っていた。

 

「ねぇ、アニキー! そろそろこれが何なのか教えて欲しいのー!」

 

「だから言ってるだろ? 秘密兵器だよ、秘密兵器!」

 

「むぅ~、そんなの答えになってないのー!」

 

「つっても今はそれくらいしか教えられねぇんだよな・・・」

 

作業をする手を止める事無く、沙和の言葉に受け答えする元親。

核心を教えてくれない元親に見切りをつけた沙和は今度は真桜に問いかける。

 

「じゃあ、真桜ちゃーん! これは何なのー?」

 

「ふっふっふー、ウチとアニキの最高傑作や!」

 

「それも答えになってないのー!」

 

「沙和・・・。そろそろ諦めろ・・・機密事項ならそうそう話す事も出来ないのだろ」

 

「そうやでー、ウチもホンマ辛いんやで?」

 

「まぁ、完成してからのお楽しみだ。それまでは辛抱しな」

 

「ぶーぶー! これじゃ夜も眠れなくなっちゃうの」

 

結局、秘密兵器であると言う事以外、教えてくれない二人であった。

ごねる沙和を凪が諌めていると、兵器の様子を見に来た桂花が現れた。

 

「様子はどうかしら? 少しは進んだ?」

 

「おっ、桂の字か、見ての通り順調に進んでるぜ!」

 

「その名前で呼ぶな! 半裸眼帯男!」

 

「おっと・・・悪かったな! 桂の字!」

 

「言ってる傍から・・・ムキーーッ!!」

 

二人の小競り合いが始まったところで、沙和が真桜に改めて訊ねる。

 

「何? この秘密兵器って、桂花ちゃんの注文なの?」

 

「そうやでー」

 

「なるほど・・・だから詳しく教えなかったのか」

 

「そうやねん! ホンマは教えたくてしゃーないんやけど、桂花の許可無しには教えられんのや。いや~ホンマ残念やわ~」

 

「・・・あんまり残念そうじゃないのー・・」

 

残念と言いつつも、ぜんぜんそうは見えない真桜を沙和と凪は白い目で見つめる。

 

「まぁ、そんな事より、見て! この造形美! はぁ~かっこええわぁ・・・。 特にこの足回りはウチの最高傑作やで・・・」

 

「ん~? 私にはよく分からないのー。凪ちゃんには分かる?」

 

「・・・真桜の感覚を理解出来るわけがないだろう」

 

「な、なんやと・・・! これの良さが分からへんのか? こう、腹の底にグッとくるやろ?」

 

「「ぜんぜんだ(なのー)」」

 

「う、嘘やろ・・・」

 

二人の言葉に愕然とする真桜。

この現実を認める訳にはいかないと今度は桂花に問いかける。

 

「桂花なら分かるやろ! このカラクリの良さが!」

 

「はぁ? 分かるわけないでしょ・・・。むしろそんな無骨な物体は見たくもないわ!」

 

「あ、アニキーッ!! 皆が・・・皆がこれの良さを理解してくれへ~ん!」

 

桂花にまで否定されてしまい、涙目で元親に縋る真桜。

そんな彼女に元親も同調する。

 

「全く! これの良さが分からねェなんてな・・・夢と金と浪漫を詰め込んだんだぜ? お前らも何か感じるモンがあるだろうが!」

 

「アニキー、ごめんなのー」

 

「・・・すいません、隊長」

 

「あんたの感性なんて分かりたくもないわ!」

 

「クッソーッ! これだから田舎者は困るぜ!」

 

「やっぱり、ウチの事を分かってくれんのはアニキだけやー!」

 

「真桜ッ! こうなりゃ、こいつを完成させてこいつら見返してやろうじゃねぇか!」

 

「そうやな! カラクリの力、思い知らせたるわ!」

 

正直な話、カラクリなんて物は、女の子には理解しがたいだろう。

この場合、むしろ真桜が特殊な例と言わざるを得ない。

しかし、そんな事は微塵も思いつかない元親は真桜と共に決意を新たにカラクリ製作に励むのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

元親と真桜が新たな決意を固めた頃、玉座の間にて軍議が執り行われていた。

先程まで、あのカラクリ馬鹿二人の相手をしていた桂花もこちらに参加している。

 

「呂布が見つかった?」

 

「あの戦いの後、南方の小さな城に落ち延び、そこに拠点を構えることにしたようです」

 

卓上に広げられた地図に置かれた碁石が示しているのは、ここからはるかに離れた南西の小さな城であった。周りには大きな勢力は無く、ほとんど、無法地帯と言っても良い場所だ。

 

「なるほどね、秋蘭。 呂布が逃亡した時、何名か武将が同行していたそうね」

 

「はい、陳宮と華雄も呂布と行動を共にしていると情報が届いています。恐らく、今も一緒に動いているのでしょう」

 

「どうしますか・・・? 呂布が本気になれば、こちらはかなりの損害を被る事になりますが・・・」

 

桂花の言葉に誰とも無く息を飲む音が聞こえる。

政宗が聞いた話では、呂布は本多忠勝に敗れはしたが、あの戦国最強相手に一歩も引かぬ立ち回りを見せたと言う。

それだけ聞いても呂布の人外の武の一端を知る事が出来た。

 

「・・・今は放っておきましょう」

 

「何ですと!」

 

「華琳様、それはいくらなんでも危険すぎます」

 

思考から覚めた華琳が放った言葉に春蘭、桂花は苦言を呈する。

呂布の力を考えれば無視すると言う選択肢はあまりに無謀で危険なものだ。

しかし、華琳は二人の言葉を無視して、霞に訊ねる。

 

「・・・霞。呂布は王の器に足る人物かしら?」

 

「・・・・・正直、よう分からん、けど、恋は武将って言うより、むしろ動物に近いような気もするな・・・」

 

「Ah・・・なるほど。周りが変な知恵を付けなけりゃ、こっちから手を出さない限り、襲ってはこないって事だな」

 

「せや、軍師の陳宮は中々の切れ者やけど、まだまだおこちゃまや。おまけに華雄は・・・」

 

軽く横目で春蘭を見た霞の動きで政宗は全てを理解した。

つまり華雄は脳筋の猪と言う事だ。

心配するほどの脅威にはなりえないだろう。

 

「そう言う事、あの辺りは治安も悪いし、南蛮の動きにも気を配る必要があるわ。しばらくは動けないでしょう。ただ、監視だけは十分にしておくように」

 

「華琳様がそうおっしゃるなら・・・」

 

「それに今はもっと警戒するべき相手がいるわ。秋蘭、情報は集まってる?」

 

呂布の件は渋々ではあったが皆、納得したようである。

しかし、問題はまだあった。

華琳は秋蘭に報告を促す。

 

「はっ、先日の袁紹と公孫賛の争いですが・・・予想通り袁紹が勝ちました。公孫賛は徐州の劉備の所に落ち延びたようです」

 

「そう、それでその後の袁紹の動きは?」

 

「青州や并州にも勢力を伸ばし、河北四州はほぼ袁紹の勢力下に入っています。北はこれ以上進めませんから、後は南に下るだけかと」

 

「ふむ・・・となると次に狙われるのは劉備の所。と言いたいとこだが、あのFool Princessの事だ。こっちに来るぜ・・・」

 

袁紹の性格は、あの連合で嫌という程に見た。確実に実より名を取るタイプの人間である。

そんな政宗の言葉に華琳は意外そうに答える。

 

「あら、あの連合でしか関わりの無いあなたでも麗羽の性格が分かっているのね」

 

「That's right あんだけ分かり易い奴も珍しいがな・・・。とりあえず国境の各城の警備を万全にしておく事だな」

 

「もちろん、分かっているわよ。それから、河南の袁術の動きはどうなっているの?」

 

「特に大きな動きはありません。国境付近で偵察兵が散見されますが・・・その程度ですね」

 

「あれも相当の俗物だけど、動かないというのも気味が悪いわね・・・警戒を怠らないようにしなさい」

 

「はっ、すでに指示は出しております」

 

華琳の言葉を聞く前に、すでに行動していた桂花。

いつもながら彼女の手腕、特に華琳からの命令は驚くほど素早く正確に行う。

 

「相変わらず、手際が良いな軍師さんよ」

 

「ふんっ、これが華琳様から与えられた私の仕事だもの。名誉に思いこそすれ、大変などと思った事もないわ」

 

「そうね、だれか手の空いている者に手伝わせたい所だけど・・・。秋蘭と小十郎には色々と任せているから無理として・・・」

 

そう言って周りを見渡す華琳、彼女の目に映るのは、春蘭、霞、流琉、政宗。

正直、これらの面子は桂花の補佐には向いていない。

桂花も分かっているのだろう、補佐はいらないと華琳に進言している。

 

「そう・・・。では桂花には悪いけどもう少し、情報を集めてちょうだい。他の皆は、いつでも出撃出来る様に準備をしておいて」

 

こうして、この日の軍議は解散となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここは、南皮は袁紹の居城では、いつも以上にご機嫌な高笑いが響いていた。

公孫賛を倒し、河北四州を手に入れた袁紹は今、乗りに乗っていた。

 

「おめでとうございます! 麗羽様!」

 

「これで、覇業の第一歩が踏み出せましたね!」

 

袁紹の忠臣たる、文醜と顔良も己の主を褒め称える。

 

「当然ですわ! あの董卓とか言うのがいなくなった今、この大陸を統一するのはこの私、大! 将! 軍! 袁本初ですわっ!」

 

「それで、次は劉備さんですか? 公孫賛さんもそちらに逃げたようですけど・・・」

 

「・・・・・・・はぁ?」

 

「・・・・・・・え?」

 

「ふぇ?」

 

顔良の言葉に場の空気が止まる。

文醜と袁紹は何を言っているんだという様子だ。

 

「何を言っていますの、この子は?」

 

「え、でも・・・じゃあ北に行くんですか?」

 

「おいおいおい! 何をノリの悪い事言ってるんだよ斗詩ぃ」

 

「次に泣かしてあげるのは、華琳さんに決まっているでしょう?」

 

袁紹の言葉に顔良はしばしの間、固まってしまう。

この主は今、何を言ったのか、理解が追いつくのが遅れてしまう。

 

「ええええっ!? そんなの無茶ですよ!」

 

「無理なんかじゃありませんわ! 田舎者の炊き出し娘なんかより、まず、あの生意気クルクル頭をピーピー泣かせてやらないと、私の気が済みませんの!」

 

「そ、そんなぁ・・・だって、曹操さんあの辺りの最大勢力ですよ! 正面対決でも勝てるかどうか・・・」

 

「でかい所からどーんと倒していくのが燃えるんじゃんか! 周りの雑魚をチマチマ潰して行くとか面倒だろ?」

 

「あーら、猪々子さんはよく分かっているじゃありませんの! 流石、私の片腕ですわ!」

 

トチ狂った事を言い出す、主と同僚に困惑する顔良。

 

「で、でも、ならなんで、北方の四州を先に・・・? あの辺りなんて大きな勢力は公孫賛さんくらい・・・。地盤固めですか?」

 

「あれは語呂が良かったからですわ」

 

「ああ! 河北四州の覇者ですね!」

 

「ふぇ~それだけですかー・・・」

 

いつもの事だが、この主と同僚はもう少し頭を鍛えるべきであると思う。

まぁ、今更ではあるが。

 

「そんな訳で、これから、河北四州の覇者である私自ら、国境まで威力偵察に出てさしあげますわ! 私の後光にひれ伏すなら良し、反抗するならそのまま叩き潰してやりますわ!」

 

「おー! なんかよく分かんないけど、景気が良いですね、流石、麗羽様!」

 

「・・・・はぁ」

 

「さぁ、二人とも、さっさと準備しなさい! 私の覇道への道程は、今より始まるのですわ!」

 

「了解です! ほらっ、斗詩。準備するぜ!」

 

「あ・・・うん・・・」

 

不安過ぎるこの行軍に顔良の顔が晴れる事は無かったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

非情招集が掛けられたのは、あの軍議から数日と経ってはいない日の事であった。

 

「おいおい、袁紹のバカはもう動いたのか?」

 

「全く、馬鹿は決断が速すぎるのが厄介ね。敵の情報は?」

 

「旗印は袁、文、顔。敵の主力は全て揃っているようです。その数、およそ三万ですが、敵の動きは極めて遅く、奇襲などは考えていない様です。むしろ、こちらに自らの勢力を誇示したいだけではないかと・・・」

 

「HAッ! 馬鹿のやりそうな事だな」

 

報告を聞いた者たちは皆、呆れる。

しかし、いくらバカが率いているからと言っても三万という数は油断出来るものでは無い。

しっかりと気を引き締める。

 

「それで、報告のあった城には兵はどれくらいるんだ? 三千か、五千か?」

 

「ああ、城にはおよそ七百といったところだ」

 

「七百ぅ!?」

 

「一番手薄な所を突かれたわね・・・」

 

「そんなもの、手も足も出んではないか! 籠城した所で一日と持たんぞ!」

 

袁紹たちを最初に迎え撃つ城には現在、七百人程度の兵士しかいないらしい。

春蘭の言う通り、これでは歯が立たない所か相手にもならないであろう。

 

「桂花、今すぐ、動かせる兵士はどれくらいる?」

 

「いくらなんでも、敵の動きが速すぎます。半日以内に二千、もう半日あれば、季衣や凪たちが帰ってくる予定ですからなんとか二万は・・・」

 

「華琳様、その件なのですが・・・兵の増援は不要だと・・・」

 

「馬鹿な! みすみす死ぬ気か、その指揮官は!」

 

「ふむ・・・おい、秋蘭。その指揮官はなんて名前だ?」

 

「確か・・・、程昱と郭嘉の二名だったな」

 

その名前を聞いて政宗は納得する。

ここに来て、またビッグネームが現れたなと。

 

「Ah~ なるほどな・・・」

 

「なによ・・・急に。もしかして、その二人と知り合いだったのかしら?」

 

「いや、知り合いなんかじゃねぇよ・・・。そんな事より、増援の話は奴さんの話通りに送らなくても大丈夫だろ・・・」

 

「なっ! 眼帯伊達男ッ! あんた何を言ってるの!」

 

「政宗。何の根拠で言っているの?」

 

「Ah? 根拠なんざねぇよ・・・。まぁ竜の勘って奴だ・・・」

 

なんの根拠も無いのに、こう自信満々な顔をされるとこれ以上異議を唱える事も無駄に思えてくる。

それに政宗の言葉には自然と信じてしまう、そんな説得力があった。

 

「分かったわ、増援の兵士は送らない、皆も勝手に兵を動かしたら厳罰に処すから覚えておきなさいね?」

 

「・・・承知しました」

 

未だ、納得してない者もいるものの、軍議は解散となった。

果たして、七百の兵は無事なのか、二人の指揮官は如何なる手を使うのか。

それを知るものは今は誰もいない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

件の城の城壁に二人の少女が眼下に広がる大軍に目を向けていた。

 

「三万の大軍勢・・・・いなし切れなければ間違いなく、こちらの最後・・・」

 

「曹操様から返事が来たわよ。増援は送らない代わりに、後で城に来いと・・・」

 

「はーい、わかりましたー」

 

「それにしても可能性こそ高いとは言え、こんな運任せの作戦に賭けることになるなんて」

 

「普通、それを勝ち目があるって言うんですよー」

 

「・・・理屈で説明出来ない勝ち目に賭けることを運任せと言うのよ」

 

「・・・ぐぅ・・・」

 

「寝るなっ!」

 

かくして、彼女らの作戦とは如何なるものなのか、そして彼女たちは生き残る事が出来るのか。

今はまだ、知る事はできない。

 

 

 

 

 

 

はい、と言う事で結局、本筋を進めてしまいました。

他の陣営のお話を期待されていた方には申し訳ありませんでした。

他陣営のお話はもう少し待ってくださいね

 

それでは、また次のお話もよろしくおねがいします!

 

 

 

 


 
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