No.641770

魔法少女リリカルなのは~原作介入する気は無かったのに~ 第百三話 戦闘開始!

神様の手違いで死んでしまい、リリカルなのはの世界に転生した主人公。原作介入をする気は無く、平穏な毎日を過ごしていたがある日、家の前で倒れているマテリアル&ユーリを発見する。彼女達を助けた主人公は家族として四人を迎え入れ一緒に過ごすようになった。それから一年以上が過ぎ小学五年生になった主人公。マテリアル&ユーリも学校に通い始め「これからも家族全員で平和に過ごせますように」と願っていた矢先に原作キャラ達と関わり始め、主人公も望まないのに原作に関わっていく…。

2013-12-01 11:53:32 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:25073   閲覧ユーザー数:21805

 美由希さんが護衛役に加わってくれる事になった翠屋での一件からの翌日。

 昨日同様に交代で取る昼休みの時間を利用して俺は護衛戦力の確保に躍起している。

 今日立ち寄ったのは月村邸。

 

 「……という訳でイレインを貸して頂きたいのですが…」

 

 「…だそうよイレイン。貴女はどうしたい?」

 

 「断る。何でアタシがそんな面倒な事やらなきゃならないのさ」

 

 俺はイレインもスカウトしに来たのだが、交渉は難航……てか断られた。

 

 「…どうしても無理か?」

 

 「ああ、何度頭を下げられようともアタシは護衛なんてやらないからね」

 

 「何なら前払いで支払っても良いんだが…」

 

 「お金ならここでメイドやりながら稼いでるから必要無いね」

 

 ……ならば仕方ない。

 こうなる事を予想して、対イレイン用の交渉物を俺は用意しておいた。

 早速宝物庫からソレ(・・)を取り出す。

 

 「イレインさんイレインさん。もし護衛に協力してくれるならコイツを前払いで支払いますぜ」

 

 「急に『さん』付けで呼んだってアタシは……っ!!?」

 

 俺がそっと差し出した物を見てイレインは目を見開く。

 

 「なっ……こ、こここれは!!?」

 

 「どうだ?イレインなら喉から手が出る程欲しい物だと思うけど?」

 

 「な、何でアンタがコレを!!あの伝説の『ミシュニャン』を持ってるのさ!!?」

 

 ふっふっふ。これぞ、世界中の飼い猫、野良猫を問わずに選りすぐりの猫を紹介された究極の猫紹介本『ミシュニャン』。

 猫評論家が勝手に写真を撮って評価を行っている。

 評価ランクには星の数が1~3つあり、3つ星の猫こそが至高のにゃんこと評される程だ。

 ……まあ、タイトルが似た様な料理のガイドブック本もあった様な気がするが気のせい気のせい。

 しかし猫姿のリニスさんとリーゼ姉妹に3つ星付いて紹介されていたページを見た時は吹いた。

 しかも全く気付かれた様子も無く撮っている。

 あのにゃんこな使い魔さん達に気付かれないとは……写真を撮ったのは只者じゃねぇ。

 

 「ほら、未開封…しかも初版本でっせ」

 

 本を持っている手を動かすとイレインの視線も追いかけて来る。もうこの本に釘づけだな。

 今では重版も売り切れており、入手が困難な一品だ。それが初版…しかも未開封である。オークションにかけたらマニアが高額を出してでも買い取ろうとするだろう。

 

 「護衛してくれるならイレインにあげるんだけどなぁ」

 

 「ゴクリ…」

 

 イレインの生唾を飲み込む音が聞こえた。

 

 「イレインの腕を見込んでのお願いだし…手伝ってほしいなぁ」

 

 「う……ううううううぅぅぅぅっっっっ!!!!」

 

 悩んでる!メッチャ悩んでるよ!!

 しばらくはイレインの苦悩する姿を見る事になったが遂に…

 

 「だあああぁぁぁぁぁっっっ!!!分かった!!分かったよ!!引き受ければいいんだろ引き受ければ!!」

 

 釣れたーーーーーー!!!!

 イレインが折れたのだ。

 

 「よっしゃあ持ってけお客さん!!」

 

 「お客さんはこの家に来ている勇紀君の方でしょうに…」

 

 ノリで言っただけです忍さん。

 俺はイレインに本を手渡す。

 受け取った本を胸元でギュッと抱き締めながらイレインはコチラを見る。

 

 「か、勘違いするなよ!!お、お前が『本当に困ってそうだから手伝ってやる』って決断したんだからな!!決してこの本に釣られた訳じゃないんだからな!!////」

 

 「ええ、ええ。分かってますとも」

 

 どう考えても本に釣られてるが敢えて言わないでおく。

 言っても否定するだけだろうし。

 

 「どうやら纏まったみたいね。じゃあ次は私との交渉に移りましょうか♪」

 

 んんん?

 忍さんと交渉とな?

 

 「そそ、イレインを貸すのに無料(タダ)って訳にはいかないでしょ?」

 

 「…雇い主の許可もいるって事ですね」

 

 俺の返事に忍さんは笑みを浮かべる。

 まあ、許可の有無を貰わずに盛り上がってたのは俺だからちゃんと許可貰わんといかんね。

 

 「で、忍さんには何を差し出せばいいので?」

 

 今度のコンサートのスペシャルチケットでも用意すればいいのかな?

 

 「コンサートのスペシャルチケットならもう持ってるわよ♪」

 

 そう言って財布の中からチケットを取り出し、見せてくれる忍さん。

 しかしよく買えましたね?

 チケットが買える場所は全国でも数店だけ…しかもどこの店でも店頭販売が始まって10分経たずに完売になったのに。

 

 「このスペシャルチケットを買うために2週間店の前で並んで待ったのよ」

 

 「凄いなソレ!!?」

 

 コミケの徹夜組でも2週間前からなんて猛者はいないだろう。

 相変わらずのファンっぷりですね。

 

 「ちなみにすずかの分も入手済みよ」

 

 ん?すずかは別に学校休んでなかったよな?先週は昼ご飯一緒に食ったし。

 

 「ファリンを代わりに並ばせたのよ」

 

 「あはは…あの時は大変でした」

 

 苦笑いを浮かべるファリンさん。

 

 「しかしチケットがあるならもう俺に出せそうな物は無いんですけど?」

 

 「勇紀君にお願いしたいのはね。スクールの人達が歌の練習をしてる所を見られる様に校長のティオレさんに交渉して貰いたいのよ」

 

 「へ?そんな事で良いんですか?」

 

 「勿論♪それにスクールの皆さんの新曲とかがあるならいち早く聴けるだろうし、サインも貰えるだろうし」

 

 ああ…新曲やサインが本命ッスか。

 

 「で、どうかしら?悪い取引じゃないと思うのだけど?」

 

 「まあ、それぐらいなら……ちょっと電話してきますから待っててもらっていいですか?」

 

 「ええ、頑張ってね♪」

 

 頑張るも何もそこまで苦労することじゃないですし。

 俺は一旦部屋を退出し、携帯を使ってティオレさんに連絡を取る。

 

 「もしもし、ティオレさんですか?俺です」

 

 『勇紀?何か用かしら?』

 

 「ええ、昨日同様護衛の件です」

 

 俺は忍さんの要望を伝え、代わりにイレインを雇えるかどうかを尋ねた。

 

 『そういう事でいいのなら私は構わないわよ。第三者の目があった方が緊張感を持てて、フィアッセ達の練習にも良いかもしれないし』

 

 「そうですか。じゃあ護衛の件はOKって事で伝えますね」

 

 アッサリ許可が出た。

 室内に戻ると凄く結果を気にしている忍さんの視線が俺に向いている。

 俺は無言で『グッ』と親指を立ててサムズアップすると結果がどうなったのか理解してくれた。

 瞬く間に瞳がキラキラと輝き出す。

 

 「ああ……楽しみだわ。あのスクールの皆さんに会えるなんて」

 

 うっとりとした表情でつぶやく忍さん。

 

 「あー…忍さん。もし来るならイレインとは別に忍さん自身を守って貰える様、護衛をつけて下さいね」

 

 忍さんが練習の見学に来た時に『襲撃!!』みたいな事があったら大変だし。

 まあ、俺が結界張って敵を閉じ込めるから大丈夫だとは思うけど。

 

 「《ユウ君…そういう事思うのは止めた方が……フラグになっちゃうよ?》」

 

 …不吉な事言わないでくれよダイダロス………。

 

 

 

 それからゆっくりと時間は過ぎていき、遂にコンサートを前日に控えた。

 今の所、襲撃されたり誘拐されたりといった被害は及んでいない。

 もしかして日本にいる間は来ないのかねぇ?

 だとしたら困る。イレギュラーな転生者の対処をしないといけない俺は海外にも護衛でついていかないといけなくなる。

 まあ最悪転移魔法で海外に駆け付けたら良いんだけどさ。

 そんな事を考えながら俺達一部の人間はティオレさんの宿泊してる部屋に戻って来ていた。

 

 「「~~♪~~♪」」

 

 忍さん…そしてすずかの月村姉妹は大層ご機嫌だ。

 さっきまでは明日行われるコンサートのコンサートホールでスクールの生徒達や卒業生のリハーサルを客席から眺めていたからだ。

 すずかも当然の様に忍さんについてきていた。まあ、これについては予想出来ていたけどな。

 それと護衛役のキンジさん達もフィー姉達の歌に聴き入っていた。

 

 「むぅ…この生徒さん、表情には出さなかったものの、結構緊張してましたね」

 

 「そうね。客がいない状態であれだと本番乗り切れるかやや不安ね」

 

 俺とティオレさんは今回のコンサートで歌う歌姫や生徒達の写真を見ながら、リハーサルを振り返り、個別毎の問題点をメモ帳にまとめていた。

 

 「…ていうか何で勇紀君もティオレさんと一緒に生徒さんの出来をチェックしてるの?」

 

 タエさんが至極当然な疑問をぶつけてきた。

 

 「え?いや、この人が歌ってた曲俺が作詞作曲したやつですし」

 

 「「「「「「「へ?」」」」」」」

 

 俺の発した言葉に忍さん、すずか、タエさん、設子さん、キンジさん、アリアさん、エリスさんは目を丸くする。

 

 「…済まん勇紀。もう一度言ってくれないか?」

 

 「俺が作詞作曲した歌を歌ってたんですよこの人」

 

 「「「「「「「……………………」」」」」」」

 

 キンジさんの問いに即答すると一同はポカーンとした表情を浮かべている。

 まあ、気持ちは理解出来るんだけどね。

 

 「……君ってホント、規格外だと思うわよ」

 

 「タエさんってば失礼な。人間誰だって歌の一曲ぐらい、頭を捻れば作れますよ」

 

 「いや…だからってクリステラ・ソングスクールで採用されるかどうかは別問題だから」

 

 一同は『うんうん』と頷き、ティオレさんはニコニコしている。

 しばらくはスクールの皆の評価を行っていたが、そろそろ皆見回りの時間なので部屋を退出する事にした。

 フィー姉の護衛にはエリスさん、美由希さんが付き、ティオレさんやゆうひ姉さん、他の生徒さん達の周囲にはSPの皆さんが。

 

 「じゃあ忍、すずかちゃん。俺達も帰ろうか」

 

 部屋を出てすぐに恭也さんが口を開く。

 恭也さんは忍さんとすずかの付き添いで来ていた。

 2人を守るためなのだろう。自分の得物を持ってきている恭也さん。

 

 「アタシも2人を玄関まで見送るよ。それぐらい良いだろ?」

 

 イレインの言葉に俺は頷く。

 こうして俺、キンジさんとアリアさんのペア、タエさんと設子さんのペア、忍さん、すずか、恭也さん、イレインと4つのグループに分かれた。

 俺だけ1人…。

 本来ならイレインとペアなんだけどね。すずか達を見送りに行ったから仕方ないわな。

 『今日も無事に終わるのかなぁ』と思っていた矢先…

 

 「っ!!?ユウ君!!」

 

 「分かってる。…おいでなすったか」

 

 予めホテル内とホテルの周囲、街の一部に俺はサーチャーをばら撒いていた。

 そしてサーチャー越しに見える映像にははっきりと映っていたのだ。今回、このホテルに来る襲撃犯達の姿が。

 

 「どうするのユウ君?」

 

 「コイツ等全員がホテルに入ったら結界を展開して外界から隔離する。結界の維持はダイダロスに頼む事になるけど良いか?」

 

 「任せて」

 

 頼もしく答える相棒。

 けど予想外な連中もいたもんだ。

 父さんにボコボコにやられ、対人恐怖症になっていた筈の馬鹿に、その馬鹿を護衛する一団。それにチンピラっぽい集団と…

 

 「彼女(・・)まで来てたとは…な」

 

 いや、ブラドが関わるのならある意味当然か。

 

 「何にせよ、忙しくなりそうだ」

 

 同時にダイダロスが俺の魔力を使って結界を展開する。

 軽く溜め息を吐いてから俺は向かう。

 サーチャーに映っていた人物の1人……銀髪イケメンオッドアイの転生者の元に。

 こうして俺達は各々敵とぶつかる事になるのだった………。

 

 

 

 ~~キンジ視点~~

 

 「ちょっと!いきなり人の気配が消えたわよ!?」

 

 「落ち着けアリア。おそらく勇紀が何らかの能力を使ったんだ」

 

 俺達は事前に勇紀から『もし敵が現れたらスクールの人達を巻き込まない様に手を打ちますから』と聞かされていたので、人の気配が消えたという事は何らかの方法で皆を避難させた…つまりは敵が現れたという事だろう。

 

 「あのガキンチョの能力(チカラ)だっていうの!?これが!?」

 

 驚愕の表情を浮かべているアリアだが、俺も驚かざるを得ないぞ。

 一体どうやって一瞬で人の気配を消したんだ?

 周りの風景の色が消えた事と何か関係があるのだろうか?

 

 「(こんな能力、白雪が使う超能力でもHGS患者が使う能力でもない)」

 

 全く未知の異能力。

 

 「(流石は長谷川泰造の息子ってトコか?)」

 

 正直、アイツを敵に回したくはないな。未知の能力を持つ勇紀にHSS(ヒステリア・サヴァン・シンドローム)……ヒステリアモードの俺でも勝てるのだろうか?

 

 「(…アリアと白雪の暴走を抑える役として武偵校に来てくれねーかなー?)」

 

 どうでも良い事を考えながら神経を張り巡らせる。

 いつ敵が現れても対処出来る様、ベレッタM92Fを持ちながら。

 アリアの奴もガバメントを既に準備し、俺に背を向けながら警戒している。

 そして不意に俺の視界に人影が映った瞬間、銃口を人影に向ける。

 

 「わわっ!!キーくん私!!私だよ!!」

 

 「………理子?」

 

 「そうだよー。りこりんだよー♪」

 

 その人影は長い金髪をツーサイドアップに結った、ゆるい天然パーマが特徴の童顔のクラスメイト、『峰理子』だった。

 理子は小走りで俺の側まで駆け寄ってくる。

 

 「何でお前がここにいるんだよ?」

 

 「んにゃ?私もお手伝いに来たんだけど?」

 

 は?俺、そんな事聞いてないぞ。

 アリアの方に振り返るが、コチラを向いていたアリアも首を横に振る。

 ティオレさんが伝えそびれたのか?

 とりあえず銃口を下ろす俺。

 

 「うーん…聞いてないのも無理はないかも。だって私は」

 

 笑顔を浮かべている理子から感じる雰囲気。とても護衛に来たとは思えない。

 まさかコイツは!!!

 

 「歌姫の誘拐に協力してるから(・・・・・・・・・・・・・)

 

 理子がスカートの左右から名銃、ワルサーP99を抜き出す。

 

 「キンジ、退きなさい!!」

 

 俺の背後ではアリアも理子と同様に左右の手に漆黒色と白銀色のガバメントを持ち、銃口を理子に向けていた。

 どうやら理子が銃を抜いたのと同時にアリアも銃を抜き、理子に狙いを定めていた様だ。

 ……もっとも、アリアと理子の直線上には俺がいるんだけどさ。

 

 「あーあ、良いのかなぁオルメス?先に銃を抜くのもアレだけど、発砲しちゃったら理子死んじゃうよぉ~?武偵は殺人禁止、殺しはご法度だよぉ~?」

 

 意地の悪い笑みを浮かべながら理子は余裕そうに言う。

 

 「心配いらないわ理子。アンタが銃を抜いて0.001秒後にあたしは銃を抜いたから完全に後抜きよ。これで正当防衛は通用する」

 

 ……どうやってその差を計測したんだお前は?

 

 「あと、今のアンタの立場は間違い無く犯罪者よ。さっき『歌姫の誘拐に協力してる』てハッキリ言ったからね」

 

 「ふんふん。で、オルメスは武偵じゃなく犯罪者の私をどうする気かな?」

 

 「風穴開けられたいか、素直に自首するかの選択位はさせてあげるわ」

 

 「お優しい事で」

 

 アリアと理子が口論を続けている間に俺は2人の直線上から抜け出す。

 

 「理子、お前はどうして誘拐に協力なんてしてるんだ?」

 

 俺が理子に質問を投げかけると、理子は顔をコチラに向けて答えてくれる。

 

 「キーくん。私はね、以前ある男から『繁殖用牝犬(ブルード・ビッチ)』って呼ばれてたんだよ」

 

 …アリアから視線を逸らして律儀に答える余裕を見せる辺り、コイツと俺達の実力差を実感させられるな。

 

 「繁殖用牝犬(ブルード・ビッチ)?」

 

 アリアも怪訝そうな表情を浮かべて、その単語を口にする。

 

 「腐った肉に濁った水…ロクな食事を与えられないで檻の中に閉じ込められる。で、人気の犬種を増やしたい悪質ブリーダーが檻の中の犬を虐待するっていう話、ニュースとかで聞いた事無い?アレの人間版だよ。想像出来る?」

 

 「???一体何の話よ?」

 

 だが、アリアの言葉が合図になったのか理子の表情が悪魔の様なモノに変わる。

 理子から溢れ出す怒気と雰囲気に俺は背筋が寒くなり、息を呑む。

 今の理子の雰囲気は以前、ハイジャックした時のモノと同様だ。

 

 「ふざけんなっ!!ふざけんなよ!!あたしはただに遺伝子かよ!!数字の『4』かよ!!違う!!違う違う違う!!!あたしは理子!!『峰・理子(・・)・リュパン四世』だ!!!ただ『五世』を産まされるだけの道具なんかじゃない!!!」

 

 理子は……アリアにではなく、ここにいない誰かに向かって叫んでいる。

 その言葉は会話を成立させず、断片的で意味も繋がっていない。己の感情をそのままぶつける様に放っている様に見える。

 

 「……けど、アイツ(・・・)にはあたしの言葉なんて届かない。あたしを道具にしか見てないアイツには……」

 

 「アイツ?」

 

 理子の言う『アイツ』ってもしかして…。

 

 「…先日、アイツの下僕にあたしの居場所がバレた。おそらくアイツにも伝わってる筈。あたしはもう、アイツから逃げる事も出来なくなったんだ」

 

 『ギリリ』と奥歯を噛み締めながら理子は言葉を発する。

 

 「だからあたしがアイツから解放され、自由になるにはイ・ウーにいた時のアイツとの約束を果たすしかない。『曾お爺様(初代リュパン)を超えたと証明できたならお前を自由にしてやる』と言っていたあの約束を…」

 

 理子の銃を握る手に力が籠もる。

 

 「あたしは今日ここで曾お爺様を超える!フィアッセ・クリステラの誘拐も成功させる!そしてあたしの実力を証明して自由を得るんだ!!だからオルメス、遠山キンジ。お前達はここであたしに斃されろ!!!あたしの踏み台(・・・)になれ!!」

 

 理子が高々に言い放つ。

 俺達に狙いを定めていたワルサーP99の引き金が引かれる。

 

 ガアンッ!×2

 

 理子が放った銃弾は正確に俺とアリアの左胸…心臓の位置を捉えていた………。

 

 

 

 ~~キンジ視点終了~~

 

 ~~すずか視点~~

 

 「…何だか周りの風景が妙な事になってるんだけど?」

 

 「忍、これはおそらく勇紀君が結界の魔法を使ったのだろう。以前、ユーノ君にも見せて貰った事があるから間違い無い」

 

 ホテルの廊下を歩いていたら突然周囲の壁や天井から色が消えた。

 お姉ちゃんがやや驚いているとすかさず恭也さんが口を開く。

 そうだ。私も知っている。

 なのはちゃん、フェイトちゃん、アリシアちゃんが魔導師だという事、そしてはやてちゃんも深く関わっていたという事を知った『闇の書事件』の時に、アリサちゃんと一緒に体験したあの時の空間と同じだ。

 

 「……アイツがそんな魔法を使ったって事は……」

 

 「おそらく敵が現れたんだろう」

 

 イレインの呟きに答えた恭也さん。

 

 「どうするの恭也?」

 

 「確かユーノ君に以前聞いた話によれば『結界魔法の中にいられるのは魔法の使用者が認めた存在か、魔法を使える魔導師もしくは魔法を行使するのに必須であるリンカーコアを持つ者だけ』だった筈だ」

 

 「???じゃあ私とすずかが結界の中にいる理由(ワケ)は?」

 

 お姉ちゃんの疑問ももっともだと思う。

 イレインはクリステラ・ソングスクールの皆さんの護衛、恭也さんは護衛じゃないけれど、実力は申し分ないってお姉ちゃんや美由希さんが絶賛する程だ。勇紀君が結界の中に残すのも分かる。けど、お姉ちゃんや私は残された理由が分からない。

 夜の一族って言っても身体能力が高いだけで戦闘経験なんて全く無い素人だ。むしろ、足手纏いにしかならない。

 

 「それは勇紀君に聞くしかないだろうな」

 

 「とは言え、今すぐに聞きに行くのは無理そうだけどね」

 

 イレインが目を鋭く細めて見る先には

 

 「え?」

 

 イレインと全く同じ姿をした集団(・・・・・・・・・・・・・・・)がいた。

 

 「……自動人形、イレインの姉妹機ね」

 

 お姉ちゃんが言う。

 そう言えば私が初めて勇紀君に会った誘拐事件の時もイレインの姉妹機達がいたっけ。

 勇紀君が回収したあの姉妹機達は月村家の倉庫に仕舞ってるけど。

 

 「まだ残ってたんだね。……いや、新しく作られた新型だねアレ」

 

 お姉ちゃんの言葉に続くイレイン。

 

 「数が多い。…ちょっと厄介だな」

 

 恭也さんも既に刀を鞘から抜いて構えている。

 全部で50体ぐらいはいるみたい。

 

 「ほう…こんな所でお前達と出会うとはな」

 

 そこへ姉妹機の群れの奥から声が聞こえ、1人の男性が姿を見せる。

 

 「っ!!!遊!!?」

 

 「久しぶりと言うべきか忍?」

 

 「何でアンタが?さくらに聞いた話だと勇紀君のお父さんにやられて対人恐怖症の引き籠もりになった筈じゃあ…」

 

 お姉ちゃんは一瞬驚きつつも、すぐに敵意を孕んだ表情に変え、質問する。

 氷村遊さん…。

 私やお姉ちゃん、さくらさんと同じ夜の一族でさくらさんの異母兄にあたる。人間を『家畜』『下等種』と蔑み、見下す人で到底好きになれそうな人じゃない。

 

 「ははは!そうだ。あの忌々しい下等種によって一度は精神的に追い詰められ、引き籠もるなどという醜態を晒す羽目になってしまった。だが、僕はあの人に…ブラドさんに出会い、力を得たんだ!遺伝子操作による新たな力をな!!」

 

 その言葉にお姉ちゃんは眉を顰め、恭也さんとイレインは警戒を強める。

 

 「今回、僕が日本に来たのはあの長谷川泰造の息子が今回の一件に絡んでると聞いたからだ。あの下等種の家族を僕が直々に殺し、長谷川泰造に絶望を与えてから惨たらしく殺すと決めたからな。歌姫の誘拐はついでみたいなものだな」

 

 つまりこの人が来たのは勇紀君のお父さんへの復讐のため。

 

 「後は一族の出来損ないであるお前達やさくらも始末しようと思ってな。ここにいるとは手間が省けた。目的の1つは今達成出来そうだ。さくらもいれば万々歳だったんだが、アイツは後回しでも良いだろう」

 

 「…アタシの前で随分な事を言ってくれるじゃないか。忍やすずかに手を出そうってんなら返り討ちにしてやるよ」

 

 「……………………」

 

 ブレードを装着したイレインが遊さんを睨みながら言う。

 恭也さんも無言で殺気を飛ばしている。

 

 「ふん。中古品の自動人形(ガラクタ)にどこの馬の骨とも分からない家畜が僕に牙を剥くか。少しは身の程を理解しろ…と言いたいが無理だろうな。中古品と家畜では」

 

 遊さんは鼻を鳴らし、私達に見下す視線を向けながら言う。

 

 「まあ、僕をその気にさせたければ姉妹機達(コイツら)を倒してからにするんだな。言っておくが姉妹機達(コイツら)はお前の様な中古品とは違い、失われた技術(ロストテクノロジー)こそ使われていないが、あらゆる性能面でお前を上回っている。楽に勝てる等とは思わない事だな」

 

 「はっ、こちとら腕のいい技術者()のメンテを定期的に受けてんだ。性能が向上しただけの姉妹機(いもうと)達に負ける訳無いだろうが」

 

 「ふん…所詮は中古品か。もういい、お前達、やれ!!」

 

 遊さんの号令と同時に数人の姉妹機達が襲い掛かってくる。

 

 「忍、すずかちゃん。2人は下がっていろ」

 

 「…気を付けてね恭也」

 

 「イレインも負けないで」

 

 「すずか。アンタはノンビリお茶でも飲んで待ってなよ」

 

 笑顔で私に答えたイレインは恭也さんと共に肩を並べ

 

 「『小太刀二刀御神不破(・・)流』師範代、高町恭也…推して参る!」

 

 「さて…勇紀(アイツ)に頼まれた仕事を始めますかね」

 

 姉妹機達に向かって突撃していった………。

 

 

 

 ~~すずか視点終了~~

 

 ~~美由希視点~~

 

 「これは…一体何が?」

 

 その言葉を発したのは今回私が請け負った護衛対象(フィアッセさん)の幼馴染み、エリスさんだった。

 

 「大丈夫ですエリスさん。これが勇紀君の能力(チカラ)ですから」

 

 「これが?」

 

 驚いているエリスさん。

 『魔法に関しては伏せておいてほしい』と勇紀君から言われてるから敢えて『能力(チカラ)』としか言わない様にしている。

 逆に護衛対象のフィアッセさんは随分落ち着いている。勇紀君の使う能力(チカラ)が魔法だって知ってるのかな?

 

 「それよりも警戒しましょう。勇紀君が能力(チカラ)を使ったっていう事はもうこのホテル内に敵が現れたって事ですから」

 

 私はいつでも刀を抜ける様に態勢を変え、エリスさんもすぐさま気を引き締めて銃の安全装置(セーフティ)を解除する。

 私が敵の気配を探ろうとした瞬間…

 

 ダダダッ!!

 

 凄まじい速度で駆けてくる人影が…。

 勇紀君や恭ちゃん、護衛の人達じゃない!

 

 ブウンッ!!

 

 一気に距離を詰めてきた人影は手に持つ大剣を躊躇なくフィアッセさんに向かって振り下ろす。

 

 「っ!!」

 

 ガキイイインンンンッッッ!!!

 

 私は襲撃してきた人影とフィアッセさんの間に割って入り、相手の攻撃を防ぐ。

 

 ダアンッ!ダアンッ!

 

 エリスさんが襲撃者に対して発砲するが相手は楽々と躱す。

 この人、かなり速い!!

 

 「エリスさん!フィアッセさんを連れてここから離れて下さい!!」

 

 「しかし、君1人では…」

 

 「私なら大丈夫です。これでも御神の剣士ですから。それよりフィアッセさんを安全な場所まで!!今優先すべきなのは彼女の身の安全の確保です!!!」

 

 「……分かった、ここは任せる。……死ぬなよ美由希」

 

 「勿論です!!」

 

 エリスさんはフィアッセさんの手を引いて走り出す。

 

 「ククク…邪魔者もいなくなった。これで誰も気にせず剣を振るえるだろう?御神の剣士」

 

 襲撃犯はコチラを向き、嬉しそうに笑いながら剣を構える。

 

 「わざと見逃したみたいだけど良かったの?ソッチの目的は彼女の身柄でしょう?」

 

 「それは他の奴等に任せる。俺は御神と戦うためだけに雇ってもらったんだからな」

 

 他の奴等……つまりまだ仲間がいるって事ね。

 

 「じゃあ、さっき彼女に剣を向けたのは?」

 

 よく考えたら私が割り込まなかったらフィアッセさんが命を落とす羽目になっていたのに。

 

 「ああすればお前は割り込んでくると確信していたからだ。先程俺の一撃を受け止めた際にお前の実力が大体読めた。嬉しいぞ!お前の実力は俺が剣を振るうのに値する」

 

 好戦的な姿勢を隠そうともしない襲撃者。

 

 「そう…だけどフィアッセさんを守ってるのは私やエリスさんだけじゃないし、他の皆も相応の実力者。絶対に彼女を守り切るわ」

 

 「誘拐が成功しようが失敗しようがどうでもいい。俺はお前と剣を交え合うだけだ」

 

 …どうやら本当に目の前の襲撃者はフィアッセさんの事なんてどうでも良さそうな感じだ。

 

 「さあ…存分に()ろう御神の剣士。もっと俺を満足させてくれ」

 

 「……『小太刀二刀御神正統(・・)』継承者候補、高町美由希、いざ!!」

 

 目の前の人は強敵だ。けどコチラも負ける訳にはいかない!

 

 「「はあああぁぁぁぁぁっっっっ!!!!」」

 

 ガキイイインンンンッッッ!!!

 

 私と襲撃犯はお互いに距離を詰め合い、再び剣をぶつけ、せめぎ合うのだった………。

 

 

 

 ~~美由希視点終了~~

 

 ~~妙子(修史)視点~~

 

 「妙子お姉様。これってどういう状況なのでしょうか?」

 

 「私が聞きたいんだけど…」

 

 ホテルの廊下を走りながら私は設子に言葉を返す。

 

 「長谷川勇紀君…でしたよね?彼の能力(チカラ)の一端なのでしょうか?」

 

 「それは間違い無いわ。どんな能力(チカラ)なのかは分からないけどね」

 

 突如、周囲の風景の色が消えたのと同時に人の気配が嘘の様に無くなった。

 このホテルにいる人達は皆神隠しに遭ったかの様だ。

 

 「スクールの人達が人質に取られたりする心配をする必要が無いのは良い事なんだけど…」

 

 こんな能力(チカラ)が使えるのなら私達護衛役って必要だったのかしら?

 

 「本当、凄い能力(チカラ)ですね。これなら『無限罪のブラド』が相手でも何とかなるのでは?」

 

 「そうね。正直、特殊な能力を持たない私達ではブラドを相手取るなんて無理難題と言っても良いぐらいだし」

 

 勇紀君は私と設子もブラドと対峙させる算段をつけてるんだけど、あまり自信無いのよねぇ。

 むしろ異能力を使える彼ならばブラドに対抗出来るかもしれないと思うのだけれど。

 それに武偵であるキンジ君の知り合いが行ったという占いに出た僅かなキーワードだけで敵の一味の中にブラドがいると看破した頭脳。

 

 「(長谷川泰造の息子っていうだけでも注目されると言うのに…)」

 

 異能力を持ち、戦闘も出来、頭脳明晰な中学生。

 あらゆる意味でとんでもない子よね。

 

 「とりあえず私達は急いでフィアッセさんの元へ向かいましょう」

 

 「???良いのですか?」

 

 「彼女が今も無事か確認するだけよ。もし護衛についてるエリスさんや高町さんが苦戦する様なら、私達も手を貸すし、大丈夫そうならそのままブラドと対峙すればいいでしょ」

 

 そう…今回の任務の最優先事項は『フィアッセ・クリステラの誘拐阻止』だ。

 例えブラドを倒せたとしても彼女が連れ去られれば意味が無い。

 私達は階段を駆け上がり、フィアッセさん達が宿泊している部屋のある階を目指す。何故かエレベーターが使えないのよね。

 すると上の階からフィアッセさんを連れて下りてくるエリスさんの姿が目に入った。

 

 「っ!!?君達は!!」

 

 「ご無事ですかフィアッセさん!エリスさん!」

 

 「ああ、コチラにもフィアッセを狙う刺客が現れたが今は美由希が相対している」

 

 美由希さんは現在1人で敵と戦っているらしい。

 

 「それより君達は何故ここに?もし敵が来たのなら真っ先にブラドの方へ向かう手筈になっていた筈だが?」

 

 「その前にフィアッセさんの安否を確認しておこうと思いまして。しかし高町さんが離れたとなれば……1人で護衛はキツくないですか?」

 

 SPの皆さんもホテル内から忽然と姿を消しているもの。今、フィアッセさんを守れるのはエリスさん1人だけって事になる。

 

 「……正直言うとかなり厳しいかもしれない。ブラドは当然として、フィアッセを狙ってきた刺客も相当な手練れだ」

 

 「敵も今回の誘拐には相当力を入れてるって事ですね」

 

 「それ程ティオレさんの遺産に価値があるのでしょうか?」

 

 設子の疑問ももっともだ。

 ティオレさん本人は『その様な遺産は全く記憶に無い』との事だけど。

 

 「遺産の事もだがフィアッセの身は全力で守らねばならない。この命に懸けてでも」

 

 「私達も警備会社『アイギス』の看板を背負っている以上、決して彼女を非道な輩に触れさせはしません!」

 

 グッと拳を握りながらエリスさんの言葉に続く。

 その後、無駄に話をして時間を掛けるのもいけないので階段を下りて敵のいない階層を目指す。

 そして、とある階に敵の姿が無いのを確認して廊下を歩く。

 フィアッセさんの左右を私と設子、彼女の前をエリスさんが陣取っている。

 

 「っ!!」

 

 不意に設子が立ち止まると、フィアッセさんの腕を強引に引き、振り返ったエリスさんと私も足を止める。

 

 「設子?」

 

 「お姉様、エリスさん。すぐそこの個室に気配を感じます」(ヒソヒソ)

 

 「っ!!?まさか、誰かが残っていたのか!!?」

 

 エリスさんが少し大きめな声で聞き返す。

 

 「いえ…その個室の扉に張り付く様にして待機してます」(ヒソヒソ)

 

 「…って事は敵の可能性が高いわね」(ヒソヒソ)

 

 「はい」(ヒソヒソ)

 

 しばらく私達が足を止めて様子を窺う。

 

 バアンッ!!

 

 すると相手側が痺れを切らしたのか勢いよく扉を開ける。

 

 「えひゃひゃひゃひゃ!」

 

 部屋から飛び出してきたチンピラ風の刺客は右手にナイフを持ち、やや虚ろな目とどこかおぼつかない足取りでフィアッセさんに迫ってくる。

 

 「動くな(フリーーズ)!!!!」

 

 銃を構え、制止を求めるエリスさんだが、刺客は足を止めようとしない。

 

 ダアンッ!!ダアンッ!!ダアンッ!!

 

 エリスさんが左肩、左膝、左足首に発砲し、全弾が狙った場所に命中する。

 

 「えひゃ…えひゃひゃひゃひゃ」

 

 だが刺客は銃弾を受けた事や、痛みを気にした様子も無く近付いてくる速度は衰える事が無い。

 

 「っ!!」

 

 そこへすかさず設子が刺客に向かい、相手の懐に飛び込む。

 

 ズンッ!!

 

 「えがっ!!?」

 

 設子の拳をまともに受けた刺客。

 銃弾で怯みすらしなかった刺客はいとも簡単に崩れ落ち、意識を失う。

 …相変わらず『攻撃』の面においては私より格上よね。

 

 「…この男、麻薬を使ってるみたいですね」

 

 倒れた刺客を見ながら設子が冷静に分析する。

 

 「麻薬?」

 

 「ええ、ですから痛みでは止まらないんです。こう言った輩には肺や横隔膜に強い衝撃を与えて気絶させる方が効率が良いんです」

 

 『もっとも、一番手っ取り早い方法は殺す事ですけど』とか妖艶な笑みを浮かべて平然と言ってのけるのは止めてほしいわね。

 設子が以前所属していた組織がマフィアで彼女自身、暗殺者として生きていたのだから仕方ないと言えば仕方ないのかもしれないけど。

 今は警備会社『アイギス』のエージェントなんだから。

 

 「…しかし、こう言った輩が敵にいると面倒ね」

 

 「…それに」

 

 設子が一息入れて

 

 「アレ等を片付けないと(・・・・・・・・・・)逃げ切れないかもしれませんね」

 

 私達が走って来た方向からは今倒した刺客と同じ様な連中がゆっくりと迫ってくる。

 …どうやら全員が麻薬中毒者(ジャンキー)みたい。

 

 「……これは骨が折れそうね」

 

 「だが、やるしかないだろう?」

 

 私の呟きを聞いたエリスさんに聞き返されて私は頷き返す。

 

 「フィアッセさんはもう少し下がっていて下さい」

 

 私の言葉に頷き後方へ下がるフィアッセさん。

 こうして私、設子、エリスさんの3人は目の前の連中を倒すため、近付いてくる敵に対峙する事となった………。

 

 

 

 ~~妙子(修史)視点終了~~

 

 「ユウ君、皆それぞれが戦闘し始めたみたい」

 

 「そっか」

 

 俺は静かに立ち、転生者を待ち構える。最後にサーチャーで転生者の経路を見た感じ、多分ここを通ると思うからだ。

 ダイダロスにはサーチャーの映像を監視して貰っている。

 武偵ペアには峰理子。

 恭也さん、イレインペアには氷村と自動人形の軍団。

 美由希さんにはグリフ。

 タエさん、設子さんはエリスさんと合流してフィー姉の護衛。

 

 「《ブラドは……見つけたよユウ君》」

 

 「《映像回してくれるか?》」

 

 ダイダロスが監視してる映像を見る。

 場所はキンジさん達と同じ階層……下僕の狼を引き連れ、様子見に徹している。

 今の所は小夜鳴の姿だ。ここは原作同様に理子を虐げて元の姿に戻るつもりなんだろうな。

 出来ればタエさん、設子さん辺りに援軍に行って貰いたいが、向こうも戦闘が始まってる様で加勢に行くのは時間がかかりそうだ。

 

 「んん?何だテメーは?」

 

 そこへやっと姿を現した転生者。

 

 「OVAでは見なかった顔だな。モブか?」

 

 「……お前は何者だ?ここで何をしている?」

 

 「あ゛?誰に向かって気安く話し掛けてんだモブが。オリ主だぞ俺様は」

 

 質問に答えろよ。

 コッチはとりあえず知らないフリして言葉にしてみたが、やっぱ自称オリ主との会話のキャッチボールは成り立たない様です。

 

 「…少なくとも護衛メンバーじゃないな。とすれば侵入者…か。なら、排除させて貰う」

 

 俺は静かに構えつつ、自分の周囲にアルテミスを展開する。

 

 「ん?何だそりゃ?……もしかしてテメーHGS患者か?」

 

 「…さあ、どうだろうな」

 

 「まあいい…所詮はモブだ。リスティと違って大した能力じゃねーだろ」

 

 余裕ぶってる転生者はただ腕を組み、仁王立ちしているだけ。

 武器や能力を展開する様な素振りは見せない。

 

 「(そういや神様も『コイツの転生する際の願い事だけは分からなかった』って言ってたっけ)」

 

 それに関しては戦いながら見極めるしかないな。

 

 「…にしてもさっきからモブの分際でムカつく目を向けやがって。テメーはここで死ね!!」

 

 仁王立ちしていた奴が叫び、いきなり動き出そうとしたので俺は先制攻撃と様子見の意味でアルテミスを即座に放つ。

 こうして俺と転生者の戦いが幕を開けたのだった………。

 

 ~~あとがき~~

 

 美由希がフィアッセを『さん』付けで呼ぶのは仕様です。この作品内では高町家とクリステラ家の交流は無いですから。

 で、恭也は『御神不破流』、美由希は『御神正統』を学び、2人に教えている士郎は不破、正統の両流派を扱えるという設定です。

 


 
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