No.641470

真・恋姫†無双 異伝「空と命と夢の狭間に」第十四話


お待たせしました!

 今回は拠点第一弾をお送りします。

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2013-11-30 20:57:32 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:8706   閲覧ユーザー数:6075

 

「今日も部屋にいない…今度は誰と出かけたのでしょう?」

 

 李粛がこう呟いているのは一刀の部屋の前である。

 

 彼女は一刀が天水に帰ってきてから、毎日のように接触を試みようとして

 

 いるのだが、その度に既に誰かと何かしている所でなかなかうまくいって

 

 いないのが現状であった。

 

「仕方ない…出直しましょう」

 

 ・・・・・・・

 

「おや、どうしたんだ夢?何処かへ出かけたんじゃないのか?」

 

 自分の部屋に戻ってきた彼女にそう声をかけたのは空である。ちなみに空

 

 は今は偽名である『李通』と名乗っているのだが。

 

「いえ、その…」

 

「一刀なら命や璃々と何処かへ出かけたようだがな」

 

 空のその言葉に李粛は驚きを隠せない。

 

「えっ!?…そう、なのですか」

 

「夢、もしも一刀をモノにしたいのだったらもっと積極的にならなくてはい

 

 けないな。お前の思慮深い所は大きな武器ではあるが、こういう時は命の

 

 ようにいく事も必要だぞ」

 

 空にそう言われた瞬間、李粛の顔は一気に赤くなるが、すぐにしぼんだよ

 

 うになる。

 

「はぁっ…やっぱり私って臆病なのかな」

 

「おいおい、私は臆病などとは言ってないぞ?」

 

「いえ、自分が臆病なのは分かっているつもりです。頭では積極的に行かな

 

 きゃと思っても、すぐに『無理やり引っ張っても可哀そうだ』とか『もう

 

 少し時機を見定めてから』なんて考えてしまう…たまには姉様みたいに奔

 

 放に振舞ってみたいなぁ」

 

 李粛のその呟きを聞きながら空は『こりゃ困ったねぇ』みたいな顔をしな

 

 がら部屋を出ていったのだった。

 

 

 

 そして次の日。

 

「李粛さん、おられますか?」

 

「へっ!?…どうされました、北郷殿!?」

 

 いきなり李粛の部屋に現れた一刀の姿を見て李粛は慌てふためく。

 

「ちょっと相談したい事がありまして…命より李粛さんの方がいいかなぁと

 

 か思って来たのですけど、お忙しいですか?」

 

「いえ、大丈夫です!さあ、どうぞそちらにお座りを!」

 

 李粛は少しカチコチな感じで一刀を部屋に入れる。

 

「それで…私に相談とは何ですか?」

 

「実は璃々の事でして…」

 

「璃々ちゃんの?」

 

「新しい服を買ってやろうと思うのですけど、正直言って俺は今まで女の子

 

 の物を買った事が無いもので…どのような店に行ってどのような物を買え

 

 ばいいのかさっぱりなもので」

 

「それで私に…ですか?」

 

「何時も見ていて命よりも李粛さんの方がそういう身だしなみに気を使って

 

 いるように思いましたので」

 

 俺がそう言うと、李粛さんはちょっと嬉しそうな顔をする。

 

「そう…ですか?私の方が…ふふ。そこまで仰られるのでしたら一肌脱ぎま

 

 しょう!」

 

 李粛さんはそう言うなり俺の手を握って引っ張るように部屋を出たのであ

 

 った。

 

 

 

「私が見る限り、璃々ちゃんにはこのような服が似合うのではないかと」

 

 李粛さんに連れられてやって来たのは街で一番大きな服屋であった。

 

「へぇ…そういうのは今まで考えた事が無かったなぁ。李粛さんに相談して

 

 正解でした」

 

 俺がそう言うと李粛さんの顔は喜色満面となっていた。

 

「ふふ、そうですか?何せ母様も姉様も身だしなみにあまり気を配らない人

 

 なので自然と私がそういうのを選ぶ事が多かったものですので」

 

 そうなんだ…女性って何だかんだ言ってもそういう事が皆好きなのだとば

 

 かり思っていたけど。

 

「さて、璃々ちゃんのはこの辺で良いとして…次は北郷殿の分ですね」

 

「へっ!?…俺の、ですか?」

 

「そうです。北郷殿は何時も同じ服ばかり着ておられるように見えますので」

 

 …確かに俺が持っている服って元々着ていた制服を除けば、洛陽に行く際

 

 に董卓さんから貰った数着だけだしな。しかも一着を数日に渡って着てた

 

 りするし。

 

「それじゃ…お願いしても良いですか?」

 

「もちろんです!さぁ、どれにしようかな…やっぱり白いのがいいかなぁ?

 

 でも青いのも似合いそうだしな…こっちの模様入りのも捨て難いなぁ」

 

 李粛さんはそれはそれは嬉しそうに俺の服を選び始めたのであった。 

 

 ちなみに俺の服が最終的に決まったのはそれから二刻ほど後の事だった…

 

 何故女性の買い物ってこんなに長いのだろうか?良い服を選んでもらった

 

 から文句は言えないのだが。

 

 

 

「ふぅ…久々に良い買い物をしました」

 

 服を買った俺達は近くの茶店で休憩していた。

 

「久々に?洛陽にいる時も買い物とかしてたのですか?」

 

「本来なら私達のような身分者がほいほい出歩いて良いわけはないのですけ

 

 ど…姉様があんな人ですから監視の眼を潜っては時々。実際、市井の人達

 

 が私達の顔をはっきり覚えてる事は無いですしね」

 

 俺の質問に李粛さんはそういたずらっぽい笑顔を浮かべながら答える。

 

「へぇ…李粛さんも結構くだけた所があるんですね」

 

「ふふ、お忘れですか?私と姉様は双子ですよ、似てて当然じゃないですか」

 

 李粛さんはそう言って微笑む。そして咳払いを一つして、

 

「ところで…北郷殿に一つお願いがあるのですが」

 

「何でしょう?」

 

「私も真名で呼んでほしいのです。改めて言いますが『夢』です。それと…

 

 出来れば話す時も敬語とか無しにしてほしいのです」

 

「えっ…はぁ、そういう事なら…ええっと、夢。これでいいのかな?」

 

「はい!」

 

「じゃ、俺の事も一刀で」

 

「では…改めてよろしくお願いするわね、一刀。はぁ、良かった。母様と姉

 

 様が普通に真名で呼び合ってるのに、私だけさん付けと敬語で何だか嫌だ

 

 ったのだけど…これで一安心ね」

 

 そう言って、夢はそれはそれは嬉しそうな顔をしていた。俺と普通に会話

 

 をするのがそんなに嬉しいのだろうか?まあ、喜んでくれてるなら良いか。

 

 

 

「やれやれ、夢の奴もあの程度であんなに喜ぶなんて…まだまだ子供だな。

 

 まあ、これで私も少しは骨をおった甲斐があったというものだ」

 

 少し離れた所でそれを見ていたのは空であった。実は一刀に璃々の服を買

 

 いに行くのを夢に相談するように言ったのは彼女だったのである。命に比

 

 べてあまりにも積極性の無い夢の背中を押せるようにと考えた結果だった

 

 のあった。

 

「しかし…これで少しは夢も積極的になるだろうし、これからが楽しみだな。

 

 命と夢のどちらが先になるのか…でもあまりにも二人がもたもたしてたら

 

 私が横入りしてしまおうかな。ふふふ…初めて見た時から思ってはいたが、

 

 二人が夢中になるだけの事はあるしな。男に対してそんな事を考えるのは

 

 何年ぶりのことかな」

 

 空はそう言ってそっと舌なめずりしていたのであった。

 

 ・・・・・・・

 

「む…夢にしては珍しいとは思っていたが、母様の差し金じゃったか」

 

 空からさらに少し離れた所から命がそれを見ていた。

 

「これは妾もうかうかしてはおれんな…」

 

 命もまたそう呟きながらじっと一刀を見つめていたのであった。 

 

 

 

 

 

 

 

 そして次の日。

 

「「おはよう、一刀」」

 

 ・・・・・・・

 

「姉様…私が先に一刀の所に来たのです。後から来て同じような事をするの

 

 はやめてもらえませんか?」

 

「何を言うか、一刀の部屋には妾の方が先に来たのじゃ。夢こそ妾の真似な

 

 どしておらんで部屋に戻れ」

 

 命と夢は二人して俺の部屋にやってくるなり喧嘩を始める。

 

「ねえ、お兄ちゃん。命お姉ちゃん達は何で喧嘩してるの?」

 

 それを見ていた璃々は首をかしげながらそう聞いてくるが、俺にも答える

 

 事は出来なかったのであった(自覚無し)。

 

 

 

                                           続く。

 

 

 

 

 

 

 あとがき的なもの

 

 mokiti1976-2010です。

 

 今回は…ようやく夢が一刀と真名をかわしました。

 

 これでメインヒロイン三人が同じ土俵に立ちました。

 

 さて、これからどうなる事か?乞うご期待…なんて

 

 うまくいけば良いのですが。

 

 とりあえず次回も拠点…でも誰にするかはまだ未定

 

 です。

 

 

 それでは次回、第十五話にてお会いいたしましょう。

 

 

 

 追伸 本来なら皇族の日々の服は後宮の偉い人とかが

 

     考えるのでしょうが、空達は自分の身の周りの

 

     事については自分で極力するという方針を執っ

 

     ていたという設定ですので。

 

 

 


 
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