No.64070

『真・恋姫†無双』 第4章「反董卓の狼煙」

山河さん

PCゲーム『真・恋姫†無双』の二次創作となります。

設定としましては、もし一刀が董卓と共に行動することになったらというものを主題にしております。

よろしければ、お付き合いくださいませ。

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2009-03-19 03:55:08 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:10167   閲覧ユーザー数:7930

四海に激震が走った。

後漢朝十三代皇帝・劉弁の突然の廃位。

そしてその弟、陳留王・劉協の皇帝即位。

しかし、それ以上に驚愕をもたらしたことは、一連の後継騒動が大将軍・董卓の名によって行われたことだ。

これを、現王朝に対する事実上の反逆行為ととった諸侯は、各地で反董卓の動きを活発にしつつある……。

そしてそんな諸侯の動きは、俺たちのもとにも届いていた。

 

そのことで玉座の間へと向かう途中、俺は廊下で詠に会った。

「完全にやられたわね……」

詠は苦々しく、そう呟く。

当然ながら、月が自らの軍事力を以って、皇帝に禅譲を迫ったという事実はない。

十常侍が月の名前を使い、勝手に行ったことだ。

しかし問題は、董卓によって今回の騒動が起こったと世間が認識しているという事実……。

袁紹などは、ここぞとばかりに反董卓の檄文を飛ばし、曹操・孫策等諸侯もこれに呼応する動きを見せているという。

-逆臣董卓vs忠臣諸侯連合-

天下はこの偽装された勧善懲悪物語りに染め上げられ、月はその生贄として洛陽という祭壇に掲げられてしまった。

俺たちは、海内全てを敵にまわしたのである。

……さて、どうしたものか……。

俺は詠に、

「これからどうするんだ?」

と、尋ねた。

「どうもこうもないわ。諸侯は月を逆臣に仕立て上げ、誅殺しようと洛陽に兵を進める……。けど、そんなことはこのボクが絶対にさせない……っ!」

詠は眼鏡の奥に強い光を宿しながら、決意するようにそう答え、

「月はボクが守って見せるんだから」

と、月の待つ玉座の間へと向かった。

「所詮奴らは烏合の衆。我が武を以ってすれば、打ち破るなど容易い!」

軍議が始まってすぐ、華雄は詠に噛み付いた。

しかし詠は、

「……敵は外だけじゃない。内にもいるのよ」

と、十常侍を筆頭とした、月を生贄として祭り上げた連中を思い浮かべながらそう反論する。

確かに詠の言う通りだ。

諸侯連合だけが相手ならば、五分と五分の戦いが行えるかもしれない。

しかし、その戦っている隙を突いて十常侍が何をしてくるかわからないのが現状だ。

もちろん、十常侍だけならば軟禁するなりすれば事足りるだろう。だが、十常侍派の朝臣はかなりの数に上る。

それら全てを罷免することは不可能に等しいし、もし可能だとしても、それを行っている最中にも諸侯連合は準備を整えているのだ。

下手をしたら、こちらの準備が整っていないばかりか、内にも敵を残したまま戦いに突入してしまうことだって十分にありうる……。

だが、華雄は自らの武に絶対の自信と誇りを持つ武人である。

「ふんっ、そんな陰に隠れている輩に何ができるというのだ。董卓様の部下ならば、向かってくる敵は全て打ち砕くのみ!」

そう言い残して、玉座の間を後にしてしまった。

「ふぅ……」

隣の詠がため息をつく。

華雄も月の忠臣。月の不利益になるようなことは絶対にしないだろう。

詠もそう思ったのか気を取り直し、軍議を再開した。

が、すぐに、

「諸侯が動くのなら、必ず十常侍も動く……。……ごめんね、月……」

と言ったかと思うと、月の口元に白い布を押し当てる。

「なっ!? 詠、おまえ!?」

意識を失った月を慌てて支えながら、俺は詠を睨んだ。

しかし詠は何事もなかったかのように、

「大丈夫。ただの眠り薬よ」

とだけ言って、安らかな寝息をたて始めた月の髪を愛おしそうになでた。【続】


 
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