No.640645

恋姫婆娑羅

KGさん

すっかり寒くなってきましたね・・・私の住む所では雪が積もってます。
まだ車のタイヤ交換してないのに・・・・

まぁ、そんな事は良いんですがw 今回も拠点話です。
皆さん、お部屋を暖かくしてご閲覧ください!

2013-11-28 14:59:05 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:3054   閲覧ユーザー数:2819

「恋する乙女と西海の鬼」

 

 

 

 

 

 

心地の良い日差しが降り注ぐ城下街を悠々と歩く元親。

先の戦の傷もすっかり癒えて、やっとまともに外出することが出来る様になっていた。

 

「ん? おっ! アニキじゃないですか! 怪我は大丈夫ですか?」

 

「おう! この通り、なんともねぇぜ!」

 

「あ、あにきだぁ~! ねぇ、また遊んでよ~!」

 

「ハハッ! 相変わらず元気だな、お嬢ちゃんよぅ! 悪いが、遊ぶのはまた今度な」

 

「アニキー! 快復祝いにこれっ! 持って行って下さいよ!」

 

「おいおい、こんな上等な酒を貰っちまって良いのかよ?」

 

「良いんですよ! 日頃の感謝も入ってるんですから!」

 

「そうかぁ・・・じゃあ、ありがたく頂戴するぜ!」

 

一度、元親が街を歩けば至る所から老若男女を問わず声を掛けられる。

街の警備隊の責任者であると言う事もあるが、何より彼自身の性格による所が大きいだろう。

始めは、この風貌のおかげで随分と警戒されたものであった。

それをここまで慕われる様になったのは一重に彼の努力の結果である。

 

「しかし、アニキが戦で負傷したって聞いた時は、まさかと思ったよ!」

 

「全くだな! 鬼みてぇに強ぇアニキがやられるなんざぁな。とても信じられなかったよ」

 

「まぁ・・・なんだ・・・。ちょっとばかし無茶をしすぎたな、あん時は」

 

「おいおい、勘弁してくれよアニキ~! あんたがいなくなっちまったら泣く奴らが大勢いるんだぜ?」

 

「分かってらぁ! これからは少しばかり気を付けるさ」

 

ワイワイと人が人を呼び、元親はアッと言う間に彼を慕う市民に囲まれる。

皆、口々に元親の快復を祝い、喜んでくれる。

今更ながら、これだけの人間が自分の事を案じてくれていたのかと思うと、自然に目頭が熱くなってきた。

 

「お、おぉ~! これが本当の鬼の目にも涙って奴か!」

 

「うわ~、あにきが泣いてる~!」

 

「ば、ばっきゃろう! 西海の鬼が泣くもんかよ!」

 

強がる元親であったが顔は天を仰ぐように上を向いている。

何とも説得力の無いこの行動に皆が大笑いする。

その後、元親は一しきり笑った市民たちに仕事に戻るよう促すと、皆、名残り惜しそうに散って行った。

 

「ふぅ・・・全く、好かれたモンだな、俺も」

 

市民達に渡された快復祝いを抱えて、小さく呟く元親。

彼らの眼差しを受けるのは、嬉しい反面、あちらに残して来てしまった野郎共を思い出して少し不安になる。

 

「・・・チ・・・ちゃ・・ん」

 

らしくも無く感慨に耽る元親に後ろから聞こえてくる声は届いていない。

 

「チ・・カ・・ちゃ・ん」

 

さらに近づく声にハッと我に返ると街の喧騒が耳に届いてくる。

 

「チ~カ~ちゃ~んっ!!」

 

「うおっ!?」

 

急に背中から何かが飛びついて来た。

一瞬の衝撃の後に何か温かくて柔らかい感触が背中を覆う。

 

「ハハッ! どや? 驚いたやろ?」

 

「なんだ・・・霞か、急にどうした、何か用か?」

 

「なんや、チカちゃん。用が無かったら声掛けたらあかんの?」

 

「別にそう言う訳じゃ・・・って、おいおいッ! あんまりくっ付くなよ!?」

 

「別にええや~ん! はぁ~、チカちゃんの背中はおっきいなぁ~!」

 

背中に抱き着きスリスリと頬ずりしてくる霞に驚く元親であったが、市民に貰った快復祝いが両手を塞いでいたため振り払う事も出来ない。

 

「ああッ! アニキー! 俺らを仕事に返したと思ったら張遼様とよろしく・・・」

 

「馬鹿っ! そんなんじゃねぇよ!!」

 

先程、散っていった市民がまた集まり出して来た。

やっと外出が出来たと言うのに、これ以上、茶化されて堪るかと霞をそのまま背中に乗せて駆け出す。

 

「ちょっ! チカちゃんどないしたんや!?」

 

「悪いが少し我慢しててくれよ!」

 

驚く霞に断りを入れて猛スピードで街から脱出する元親だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ・・・はぁ・・・ここまで来れば大丈夫だろ・・・」

 

「チカちゃん・・・大丈夫?」

 

「問題ねぇが・・・少し休ませてくれ」

 

病み上がりの身体に鞭打ち、辿り着いたのは元親が良く釣りに来る川の辺であった。

 

「しかし、チカちゃんってば、こんな綺麗な場所を知っとるなんてなぁー!」

 

「まぁな、ここは良く釣れんだよ。穴場ってやつだ・・・」

 

「へ~ そうなんや~」

 

興味深げに辺りを散策する霞、そんな彼女に息の整って来た元親が聞く。

 

「で、本当に何か用があったのか?」

 

「ん、実は今日、チカちゃんの怪我が完治して動けるようになるって聞いたからな、一緒に街に出ようかと思ててん。でもな、ウチがチカちゃんの部屋に行った時には、もうおらんかってな・・・」

 

「あ~ なるほどな。それで探してたら、あそこで見つけたと・・・」

 

「そうや! つい嬉しくて抱きついてもうたけどなぁ!」

 

「たくっ、女が軽々しく男に抱き着くもんじゃねぇよ・・・」

 

「・・・・・・・」

 

苦々しい顔で呟く元親であったが、急に黙り込んでしまった霞に気が付く。

何やら真剣な表情でこちらを見つめて、何か言いたそうだ。

 

「なんだよ、急に真面目な顔しやがって?」

 

「・・・あんなぁ、ウチ、チカちゃんに聞きたかった事があんねんけど・・・」

 

「聞きてぇ事・・・? なんだよ、答えられる事なら、なんでも答えてやらぁ!」

 

霞の真面目な顔に少し緊張していた元親であったが、胸を張って答える。

その様子に安心したのか、霞が話し出す。

 

「・・・なんで、あん時、ウチの事を庇ったん?」

 

「そりゃ、お前・・・。華琳になるべく無傷で捕獲しろって頼まれたからな」

 

何を聞かれるかと思えばそんな事かと元親は何気無く答える。

 

「それだけなん? 華琳の願いを叶えるためだけの行動やったの?」

 

元親の答えに少し落胆したかのような態度を見せる。

 

「・・・お前との一騎打ちを邪魔されたくなかったって理由もある。それよりも・・・なんだ・・・まぁ、お前みてぇな別嬪が目の前で殺やれそうになってんだ・・・。体が勝手に動いちまったんだよ・・・!」

 

恥ずかしそうに頬を掻きながらそっぽを向いてしまう元親。

だが、同様に霞も元親の言葉に顔を紅くしている。

 

「ち、チカちゃん・・・。そない素直に言うたらあかんてぇ・・・ウチ、恥ずかしくて死にそうや・・・」

 

「う、うるせぇっ! そもそも、お前が聞かなきゃこんな事には・・・」

 

「せやかて、気になってたんやもん! しゃーないやんか!」

 

その後もしばらくギャーギャーと騒ぐ二人であったが不毛と悟ったのか、それとも単に疲れたのか騒ぐのをやめた。

辺りに響くのは川のせせらぎと風に揺られる木々のざわめきのみ。

そんな中で、もじもじしながら霞が言葉を発する。

 

「なぁ、チカちゃん? ウチが別嬪って本当?」

 

「ん? ああ、お前みたいな女はそうそうお目に掛かれねぇな」

 

「そ、そっかぁ! じゃあ、チカちゃんは、そのぉ・・・誰かを好きになった事とか恋仲になった事とかあるの・・・?」

 

「ハッハッ! 当たり前ぇだろ、こう見えて結構モテたんだぜ?」

 

「・・・そう言うのって、どんな気持ちなん?」

 

「そう言うの・・・つまり、男と女の関係って事か?」

 

顔を先程よりも紅潮させながら霞は頷き、言葉を続ける。

 

「や、あのな・・・。ウチ、そう言う事に、あんま免疫無いねん・・・あんまっちゅーか、全然、全く」

 

「全然だぁ~? 恋の経験一つすら無ねぇってか?」

 

驚く元親に無言で頷く、それから霞は自らの出自などを語り出す。

 

「ウチは元々、武官の家の生まれやんか? せやから子供の時からずぅっと、武芸一筋でやってきてん。何の疑問も持たんと、それを極める事だけを考えとった。そんで、気ぃ付いた時には、軍に士官してて・・・あれよあれよよっちゅー間に、一軍を任せられるようになって・・・ほんで今やから・・・」

 

「あ~・・・なるほどなぁ・・・」

 

「それはそれで勿論、ありがたいって思てるけど・・・一遍もそう言う甘~い体験をした事無いんは、ちょっと切ないわ・・・」

 

「まぁ、軍人って言っても、年頃の女には変わらねぇしな・・・恋の一つもしてぇよなぁ」

 

「当ったり前やんか! 花も恥じらう乙女やで、ぱぁっと一花咲かせたいっちゅーねん!」

 

これまでの鬱憤を晴らすかの如くに語る霞に、少々、圧倒されつつも話を聞いていく元親。

 

「しかし、本当に一度も無ぇのか? お前程の女なら男の方から寄ってくんだろ?」

 

「ん~ まぁ、そもそも出会いが無いなぁ」

 

「おいおい・・・。軍にいりゃ男なんてより取り見取りだろ?」

 

「いや、確かに言い寄って来る輩はおったけど・・・。ウチは、ウチより弱い男は嫌いやねん! せやから、そんな輩は皆、叩きのめしてしもうたわ」

 

「そいつぁお前らしいが・・・ それだと大体の男が無理なんじゃねぇか?」

 

元親としては霞の言う事は尤もだと思っている。女に守られる男なんて酒の肴にもならない。

だが、霞の眼鏡に叶う男を探すとなると相当に骨が折れる事は確かだ。

 

「そうやったんやけど・・・・。最近、飛びっきりの良い男を見つけたんよっ!」

 

「マジかよ! 霞のお眼鏡に叶うって言うなら相当なモンなんだろ?」

 

「そりゃ勿論や! ウチが生きて来た中であんなかっこええ男は見た事無かったわ~! これをきっと一目惚れっちゅうんやな!」

 

嬉々とその男の話をする霞は、まさに恋する乙女であった。

こんな別嬪に惚れられるなんて羨ましい奴もいたもんだと元親は思う。

それと同時にどんな奴なのかと言うのが気になる。

 

「なぁ、それは俺も知ってる奴なのか?」

 

「そうやね~ チカちゃんが一番良く知ってると思うで!」

 

「俺が一番良く知ってるだぁ~?」

 

キラキラとした目で言う霞の言葉に悩みだす元親。

自分が良く知っていて、尚且つ、霞より強い男といえば、独眼竜とその右目くらいしか思い浮かば無い。

 

「・・・独眼竜か、右目の兄さんのどっちだ?」

 

「・・・何を言うてんの、チカちゃん? どっちでも無いわぁっ!」

 

「ち、違ったのか!?」

 

「ちゃう! ちゃう! 全然ちゃうわっ! チカちゃん、ホンマ鈍感やなぁっ!」

 

元親の答えに憤慨する霞、さっきまでの恋する乙女の表情は般若の形相に変わっている。

しかし、元親としては、もはや答えが分からない。

あの二人を除いて霞の条件に合う人物はもういない。

うんうんと悩みだす元親に大きなため息を吐く霞。

 

「はぁ・・・。分からんなら、教えたるわ・・・。本当ならもっと雰囲気のある中で言いたかったんやけど」

 

「おっ! 教えてくれんのか! ありがてぇ!」

 

諦めたように呟いてから、霞は呼吸を整えて真っ直ぐに元親を見据える。

 

「・・・ウチが惚れてんのはな、チ・・・」

 

その時であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ~! チカ兄ちゃん、こんな所にいたんだぁ~!」

 

「・・・!??」

 

「おおっ! 季衣じゃねぇか!」

 

霞の言葉を遮って現れたのは季衣であった。

言葉を遮られた霞は唖然としたように口を開けたまま固まっている。

 

「探してたんだよ、チカ兄ちゃん! ボクと流琉と凪ちゃん達と快復祝いをするって言ってたでしょ?」

 

「おっと! そうだったな・・・。うっかりしてたぜ・・・」

 

そういえば、そのお祝い会場である店に行こうとして街に行っていた事をすっかり忘れていた。

 

「もうっ! 皆が待ってるんだから早く行こうよ! あっ、霞も来なよ! これからチカ兄ちゃんのお祝いするんだ!」

 

「そうだな。人数は多い方が盛り上がるしな!」

 

「へっ? あ、うん・・・ そうやな、ウチも行くわ・・・」

 

呆然自失状態の霞は季衣の言葉で少し我に返るが、未だ状況が分かっていないのか目が少し虚ろだ。

 

「それじゃあ、今から行くよ! ついて来て!」

 

「うっし! パァッと騒ぐか! ・・・そういや霞よ、さっきの答えは・・・」

 

「じゃあチカ兄ちゃん! 行こう!」

 

「お、おいっ!? あんま、引っ張んなよ!」

 

季衣に引っ張られて連れていかれてしまう元親、霞はそんな背中をただ見る事しか出来ない。

完全に姿が見えなくなってからやっと正常に戻った霞はわなわなと震える。

 

「な、な、なんでやねぇーーーん!!!」

 

霞の悲痛な叫びが森に響いた。

彼女に春が来るのはまだまだ先のようだ・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

はい、アニキ編です。アニキは色んなキャラと絡ませやすいんですよね・・・。だからどのキャラと絡ませようかと毎回迷ってしまうというジレンマが・・・

 

さて、次は本編に戻るかそれとも他陣営の拠点でも書くか・・・何かご意見がありましたらご気軽にコメントをして頂けると助かります!

 

それでは、また次回のお話で!

 

 

 


 
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