~貴方の笑顔のために~ 外伝 君と歩く道をもう一度
「・・・かえるの?」
そう、目の前の女の子は寂しそうにつげる。悔しい・・。そう思わずにはいられない。この世界にいたかった。もっと、君たちと旅をしたかった。もっと、君の・・、そう、華琳。君の傍にいたかった・・
「あぁ・・そうみたいだ」
満月の元、俺はそんな言葉を彼女につげる。もう時間がない、そんなことはわかっているんだ。
「そぅ、でも私は後悔していないわ。 私は私のほしいものを目指し歩んできたんだもの。誰に恥じるも、誰に詫びるもないわ」
そう、それでこそ華琳。俺の知ってる華琳だ。
「あぁ、それでいい。」
別れ・・。言葉にすれば短いものだ。でも、到底、この気持ちをそんな言葉で表すことはできない。
「あなたは後悔しているの?」
後悔・・。そうか、この気持ちは後悔なんかじゃない。ただ・・俺は・・。
「後悔してたら、歴史を変えるようなことは最初からしてないよ」
「えぇ・・」
「きみにあえてよかった」
そう、だからこそ俺は悲しいんだ。もう、君と、この世界にいることができないという真実が・・・。華琳、俺は・・・
「当然よ。私を誰だとおもってるの?」
「誇り高き魏の・・・いや・・・大陸の王」
「それでいいわ。」
「これからは、劉備や孫策がいる。彼女たちとちからをあわせて俺の知る歴史以上の素晴らしい国を創ってくれ」
「えぇ、あなたが、その場にいなくて死ぬほど悔しがるような最高の国にしてみせるわよ」
「ははっ・・・そう言われると帰りたくなくなるな」
華琳俺は、君といつまでもここにいたいんだ。
「帰らなければいいじゃない」
「でも・・・もう終わりみたいだ」
でも、俺が泣いていたら華琳はどうするんだ?華琳も、泣いて、くれるのかな・・・?
何を、俺は言っているんだろう?大切な人の涙を見たいなんて・・・、ほんとどうかしてるよ、俺・・。
「どうして?」
「大陸が平定されたことで、俺の役割が終わったから」
そう、だからけじめをつけよう。俺がいつまでもくよくよしていたら、最後に華琳の笑顔が見れないから・・・。
「終わりにしなければいいじゃない」
「曹操の夢みた願いがかなったんだ。それをみていたおれも終わらないと」
「だめよ。認めないわ」
「俺だって認めたくないよ」
「だったら・・・!」
「でも・・・やっぱり・・無理みたいだ」
「どうしても逝くの?」
「あぁ」
「恨んでやるから」
「はは・・・怖いな。でも嬉しいとも思える。」
「っ・・・逝かないでっ・・・」
そんな声を出さないでくれ。俺は、君の笑顔が、そう初めてあったときにみたあの堂々とした笑顔がみたいんだ。
「さようなら、誇り高き王。」
俺は、そう別れの言葉をつげる。きちんと彼女とお別れをするために。
「一刀・・・」
「さよなら、寂しがり屋の女の子」
「一刀っ・・・」
「愛していたよ、華琳――――――」
そうなんだ。俺は華琳、君のことが大好きだった。最初は意地を張っている王様としか思っていなかった。けれど、それは違った。彼女を街を歩いて、一緒にご飯を食べて。つらい戦いを乗り越えて・・・。寂しいときもあった、つらいときもあった、もちろん嬉しいときも、楽しいときも。そんな中で、俺の中の君はいつの間にか大きくなっていった・・。
そう、いつの間にか俺は華琳のことばかりを考えていたんだ・・・。
でも、もう君とは会えない。
だから、最期に君の、笑顔を・・・・。そう、君の笑顔を・・
「一刀っ・・・!」
華琳・・・、そういったがもう彼女に届くことはない・・。そうか、もう時間が来てしまったのか・・。
「か・・ずと!」
俺は、自分の意識をすべて周りにに預ける。だんだんと、華琳の声も小さくなる・・・。これが、消えるということなのか・・。
「・・・ば・・かぁ・・ばかぁ・・・」
でも、確かに聞こえた。彼女がそういって、泣いている声が。
「ずっと・・ずっと側にいるって・・いったじゃない・・」
「本当に、消えちゃ・・うなんて・・なん・・で・・一緒にいてくれないの?」
華琳・・・。俺はっ、俺は・・・
「うう・・・うわあぁぁぁああん・・・」
俺が、見たのは華琳の笑顔でもなんでもない。彼女が、そんな風に泣く姿だった。
心臓の音が確かに聞こえる・・・。これは、俺の鼓動・・。
消えたくないっ・・・
俺は引っ張られそうな意識を全力でさえぎる。
華琳、俺の役目は、まだ終わっていない!君の涙が最期ってなんだよ。こんなことで終わらせることはできない!俺は、俺はっ!
まだ、君の隣にいたいんだ。
周りの光が俺に集まってくる・・なんだこの不思議な感じは・・。一度消えた体がだんだんとその形をとりも出してきている。地面に生えている草をつかむ。確かにこれは、俺の手だ。
俺は、君と・・・。もう一度君とっ
気がつくと俺は、華琳と別れた、あの丘の上で倒れていた。あれから、どれくらい時間がたったのだろう・・・。もうそこに華琳の姿はなかった。でも、確かに上を見上げるとには、あの時と同じ満月が夜空に輝いていた。
「華琳・・・」
俺は、歩き始めた。ふらつく体を抑えながら。華琳たちがいる場所へと。もう一度、華琳とともに歩くために。
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華琳と一刀の物語を皆様にもう一度。