俺はサンタクロースなんて想像上の赤服じーさんの存在を信じなくなって久しいが、タイム・スリップの存在を疑わなくなったのは、つい最近のことだ。
「沛国譙県出身、曹孟徳。ただの人間には興味ありません。この中に青青たる衿の娘がいたら、私のところに来なさい。以上」
さすがに驚いたね。
なんてったて、あの曹操が目の前にいたんだから。
しかも、金髪ツインドリルの美少女曹操が……。
俺が、こんなモノローグはどうだろうと提案したら、あっさり稟に却下されてしまった。
……まぁ、当然と言えば当然か。
そう、俺たちは今、魏国の歴史を書にまとめようとしているのだ。
歴史書作りといえば、まさに国家の一大事業。
ではなぜそんな重要な場に、俺が呼ばれているのか。
そう、それは俺が未来人だから、らしい。
……未来人の中の人なら別の国(ry。
まぁ、それはそれとして、俺が呼ばれることになった経緯を、軍師三人娘の会話と共に紹介してみよう。
「そういうことなら、お兄さんもお呼びしましょー」
「ちょっと風、何でそこであの変態が出てくるのよ。華琳さまの素晴らしい半生が穢されちゃうじゃない!」
「そうですね、一刀殿にも手伝ってもらうことにしましょう。歴史書とは後の時代の人々に向けて記すものですから、一刀殿でも少しは役に立ってくれるでしょうし」
「あの万年発情男は、いつも別のところを勃ててるじゃない」
「おお!」
「…………」
……要は桂花が、華琳の素晴らしさを海内だけでなく、広く後世にまで伝えようと、半ば強制的に稟・風の二人を呼びよせ、史書の作成を提案し、ついでに俺まで呼ばれた、と。
だがそれも、もう終わりのようだ。
華琳が俺たちのいる部屋へと入ってきた。
「あなた達、集まって一体何をしているの?」
この華琳の問いかけに桂花が答える。
「はい! 華琳さまの偉業を後世まで語り伝えようと……」
しかし、華琳の表情を見た桂花は尻すぼみに言葉を切ってしまった。
一瞬にして桂花の顔面から血の気が引いてゆく。
「……あら、桂花は、そんなものを記さなければ、私の行いが消えてしまうとでも言いたいのかしら?」
しかし、
「どうやら桂花にはおしおきが必要なようね」
との華琳の言葉を聞くと、一転して恍惚の表情を浮かべるではないか。
単純なものだな……。
俺はそんな二人の後姿を見送り、
「さて、俺たちも仕事に戻ろうか」
と、稟と風の方を振り返るとそこにはっ!?
……まぁ、いつものことか……。
「か、華琳さまが……わ、私におしおき……」
と、妄想を垂れ流しながら鼻血を噴いて倒れている稟の姿が確認できた。
こんな状態だし、華琳は稟にもおしおきをするとは言ってないんだけどね……。
藪蛇になってもあれなので、
「ほら、稟ちゃん。トントンしましょうねー、トントン」
倒れた稟の介抱は風にまかせ、俺は書簡が堆く積み上げられた机へと戻ることにした。【了】
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一話完結です。
設定としましては、魏ルートになっております。
いつもと芸風を変えてみました。
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