洛陽城内にて、ある噂が流れていた。
「袁紹に謀反の疑いあり・・・・・・だと?なぜそんな話が出てきたのだ?」
「ん~~、ウチも詳しい事は知らんけど、高官たちの間で噂になっとるらしいで?」
「むう・・・・・・」
廊下で話していた華雄と霞。
「あんたたち、こんな所でなに油売ってんのよ」
そんな二人の前に、あからさまに不機嫌な詠がやってきた。
「詠、ちょうどいい。聞きたいことがある、袁紹に謀反の疑いがあると・・・・・・」
「・・・・・・はあ」
詠は大きなためいきをついた。
「ど、どうした?」
「あのね、僕はその事でず~~っと悩んでるの。分かる?」
「どういうこっちゃ?」
「・・・・・・はあ」
霞の言葉に詠は再び大きくため息をついた。
「どこからの情報かは知らないけど、その噂を信じている官僚たちが結構いるのよ。密偵も送り込んでるみたいだし・・・・・・」
「詠はどう思う?」
「・・・・・・真偽はともかく、袁術の勢力を吸収したと言う話も聞いているし、勢力が大きくなりすぎてるのは問題だと思うわ・・・・・・」
「・・・・・・そやな」
「ただ、あくまで噂だし、私は信憑性も低いと見てるんだけど、厄介なのは、信じる官僚たちが日を追うごとに増えていること。そしてその中から、真実ならば各諸侯にこの事を伝えて、連合を組んででも袁紹を倒すべきだと言う過激派が現れてるって事なのよね・・・・・・」
「な!?」
「もし、その噂の信憑性を高めるような証拠が出てきたら・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
無言になる三人
その中で、華雄は願っていた
どうか、最悪の未来にだけは、なってくれるなと・・・・・・
そのころ、一刀たちのところに桃香たちが到着していた。
「一羽ちゃん。か、可愛い~~~・・・・・・」
「だろ?だろ?」
「た、確かに・・・・・・」
一刀に抱かれている一羽を見つめる桃香と、同じく一羽を見てにやけそうな顔を必死でこらえている愛紗。
「遠いところから良く来てくださいましたわね?白蓮さん」
「あ、ああ・・・・・・その、お祝いが遅くなってすまなかった」
「気にしてませんわ」
「そ、そうか・・・・・・」
麗羽と話す白蓮はどことなく落ち着かない様子だった。
何故か、一刀のほうをチラチラと見ている。
「一刀、シャオも早く一刀の子供が欲しいな~~・・・・・」
「わ、分かってる。だから時々夜は・・・・・・」
ポンと、一刀の肩に手が置かれた。
「夜は・・・・・・何?一刀さん?」
笑顔で訊ねる桃香。
だが、その笑顔にはいつもの天真爛漫さは感じられず、異様な寒さを感じた。
「え、ええと・・・・・・」
「あのね、一羽ちゃんの夜のお世話を麗羽がやってる時は時々・・・・・・」
「ふ~~ん・・・・・・」
小蓮の言葉を聞いた桃香の手に力がこもる。
「あ、あの、桃香さん?爪が食い込んでるんですけど・・・・・・」
「食い込ませてるんですよ?」
「・・・・・・おかしいな?普通そういう事はもっと嬉しい行動で言う台詞のはずなのに・・・・・・イタタ・・・・・・」
一刀の周りはとてもにぎやかだった。
「一刀さんが気になるようですわね?白蓮さん?」
「え?あ、ああ・・・・・・麗羽の男って聞いて、どんなやつかと気になってて・・・・・・」
麗羽と喋りながらも、視線はついっと一刀の方に向いていた。
「それだけですの?それにしては、視線が釘付けのようですけど?」
「・・・・・・自分でも良く分からないんだよ。特に意識してないはずなのに、いつのまにかあいつを見てるっていうか・・・・・・何でだろ?」
頭に?マークを浮かべる白蓮。
「・・・・・・そうですか」
そんな白蓮を、麗羽は口に手を当て、何か考え込むようなそぶりを見せていた・・・・・・
その夜
白蓮は寝台に寝転びながら、考えていた。
(何で、あいつがあんなに気になるんだろ?)
あいつとは無論、一刀の事である。
(初めて会った気がしないんだよな。おかしいのかな?私は・・・・・・)
ゴロリと寝返りを打つ白蓮。
(っていうか、あいつは麗羽の男だよな?なのに何で、孫家のお姫様がくっついてるんだ?それに、桃香もやけにご執心というか・・・・・・いや、それよりあの状況を黙って見てる麗羽は?あれ本当に麗羽なのか?・・・ああ、もう何が何やら・・・・・・)
頭の中を疑問がぐるんぐるんと渦を巻いていた。
まさに思考回路はショート寸前・・・・・・のところで、
コンコン・・・・・・
「ノックしてもしもお~~し。起きてるか~~い?」
扉の外から一刀の声が聞こえてきた。
「はえ!?」
白蓮はがばっと起き上がった。
「お、起きてるけど・・・・・・」
「そりゃ良かった。ちょっと話したい事があるんだけど、入っていいか?」
「ど、どうぞ・・・・・・」
白蓮の返事と共に、扉を開けて部屋に入る一刀。
その手には酒の瓶が握られている。
「こんな夜分にしっけいしっけい」
「い、いや・・・別に・・・・・・」
「で、ちょっとそこ座らしてもらっていい?」
「え!?いや、それは・・・・・・」
「どっこいしょっと・・・・・・」
いいと言う前に白蓮の横に座る一刀。
「あ、あわわ・・・・・・」
どこぞの軍師の台詞とともに動揺する白蓮。
(な、何でこんなに動揺してるんだ?私は?落ち着け、クールになれ白蓮!)
深呼吸しながら平静を保とうと努力する白蓮だった。
「そ、それで、何の用で来られた?ほ、北郷・・・殿?」
「一刀でいいよ。堅苦しいのは苦手だ」
「そ、そうか・・・・・・」
「来た理由だったな。昼に話せなかったから、こいつを飲みながら話そうと思ったんだ、公孫さん」
一刀は酒瓶を見せ付けるように持ち上げて見せる。
「・・・・・・確かに公孫瓉だけど、流石にその呼び方はちょっと・・・・・・」
「だってよ、公孫瓉さんとか、語呂が悪いし・・・・・・」
「・・・・・・じゃあ、真名でいいよ。麗羽に聞いてるだろ?」
「いや、真名はそんなに気軽に呼んでいいものじゃないだろ?」
「それはそうだけど・・・・・・だったらどうしろというんだ!?」
不毛な言い合いは、しばらく続いた・・・・・・
白蓮の呼び方はなかなか決まらず、一刀が
「とりあえず、酒でも飲みながら話そうや」
と言って白蓮に一杯勧めたのが始まり。
「う、うん・・・・・・」
一刀から杯を受け取り、注いで貰うと白蓮はクイっと飲み干した。
「・・・・・・ぷは~~~、美味いな~~この酒。銘柄は何だ?」
「知らね。倉庫から適当に持ってきたやつだから。どれ、俺も一口・・・・・・」
そう言って、一刀も杯に酒を注ぎ、クイっと酒を煽った。
「・・・・・・ぷは~~。本当だ、こりゃ美味えわ!」
「おい、もう一杯くれよ」
「おう!俺も飲むぜ~~!」
わいわい盛り上がっていた一刀たちだったが、二人は知らなかった。
その酒がアルコール度数40度というかなり強い酒だったという事を・・・・・・
で、その後二人はどうなったかと言うと、
「うい~~・・・・・・飲んでるか~~一刀~~」
「お~~・・・・・・飲んでるぜ~~・・・・・・」
見事に酔っ払っていた。
二人とも互いに身体を預け、ぐでんぐでんの状態である。
「あれえ?そういえば何か忘れてるような~~、何だっけ?」
「どうでもいいさ~~、ああ眠い。もうこのまま寝たい」
「こらこら、ちゃんと部屋に戻れって~~、ふああああ・・・・・・駄目ら、わらしも眠い」
「「・・・・・・きゅう」」
バターンと、二人はそのまま寝台に倒れこんだ。
「「ZZZ・・・・・・」」
大の字で眠る一刀。
そして白蓮は一刀に腕枕してもらう体勢で、すっかり寝入ってしまったのだった・・・・・・
白蓮は夢を見ていた。
それは、白蓮の魂に刻まれた記憶。
ありふれた、だけど少しだけ特別な一日・・・・・・
「ふあああ・・・・・・さあて、せっかくの休日、どう過ごそうかなあ・・・・・・」
白蓮はあくびをしながらのそのそと寝所から抜け出た。
「・・・っていっても、きっと何かしらトラブルか、もしくは急な仕事でも入るんだろうなあ・・・・・・」
着替えながら、はぁ・・・・・・とため息をつく白蓮。
まわりがトラブルメーカーだらけの白蓮にとって休日とは、正直あってもなくても似たようなものであった。
「たまには丸一日、心穏やかに過ごしたいもんだなあ・・・・・・」
かなわないであろう願いを口にして、着替えを終えた白蓮は部屋を出るのだった・・・・・・
「・・・・・・で?何で私はこんな所にいるんだろう・・・・・・」
森の中、川辺で釣り糸を垂れながら呟く白蓮。
「は?そりゃたまたま城内で会った俺が引っ張ってきたからに決まってんじゃねえか」
白蓮の隣で同じく釣り糸を垂れながら一刀は平然と言った。
「今日は暇なんだろ?だったら付き合ってくれてもいいじゃねえか」
「それはいいけど・・・・・・一刀。お前は仕事あるんじゃないのか?」
「・・・・・・さて、今日の昼ご飯を確保しないとな!」
「・・・・・・知らないぞ」
やれやれと言った感じの白蓮だったが、実は少し嬉しかった。
静かな森の中で、一刀とふたりきり。
一刀との付き合いは長いほうだが、このような機会は数えるほどしかなかったのだから。
ピクッ!
「おい白蓮、引いてる引いてる!」
「・・・・え?おお!?」
慌てて竿を引く白蓮。
しかし、タイミングが悪く、エサだけ取られてしまった。
「しまった・・・・・・」
「釣りだからのんびり待つのはいいけど、昼飯ぶんくらいは釣ってくれよ?」
「りょ、了解・・・・・・」
釣り餌を針につけ、仕切りなおしとばかりに釣りを再開する白蓮だった・・・・・・
釣りを終え、魚を焼いて食べた一刀達は、そのままの足で城へ帰った。
白蓮は休日だったためおとがめは無かったが、一刀はこってりと絞られる事となった。
その夜・・・・・・
「いやあ、長い説教だった」
「そりゃ当然だろ・・・・・・」
一刀は白蓮の部屋にやってきて、一杯やっていた。
「ゴクッ・・・・・・プハーーーー!このために生きてるな~~~~」
「親父くさいぞお前・・・・・・」
「ほっとけ。・・・・・・ああ、もう酔ったのかなあ?頭がボーっとしてきた。白蓮。俺ここで寝ていいか?」
「はえ!?わ、私は構わんが・・・・・・」
「そかそか、じゃあ寝よう・・・・・・とりゃ!」
酒の杯を白蓮の机に置くと、一刀は白蓮を押し倒す形で寝台に倒れこんだ。
「お、おい!?」
いきなりの事に動揺する白蓮。
「ふはははは、今宵俺は獣と化す~~~~!」
すっかり酔っ払った一刀は服を脱ぎ始める。
「ちょ!ちょっと待て一刀!そんな・・・・・・あ!そこは・・・・・・」
・・・・・・
「ZZZ・・・・・・」
「何だよもう・・・・・・」
口を尖らせ、不機嫌な顔の白蓮。
あの後、白蓮の服を脱がせにかかった一刀だったが、その途中で酔いつぶれて寝てしまったのである。
「期待させといて・・・・・・バカ」
一刀の頬をつねる白蓮。
「う、う~~ん・・・・・・」
苦悶の表情を浮かべる一刀。
「・・・・・・まったく、何でこんなどうしようもない奴に惚れちゃったんだろうなあ・・・・・・」
そんな一刀の顔を見て、苦笑いする白蓮。
「・・・・・・次は、最後までしてくれよ?」
・・・・・・コクリ
眠りながら何故か頷く一刀。
「約束だからな」
チュッ
白蓮は一刀にキスをし、そのまま一刀に寄り添う形で、眠るのだった・・・・・・
(一刀)
(私はお前が)
(大好きだ)
パキィン!!
「・・・・・・ん」
深夜、夢から覚めた白蓮は身を起こした。
その隣では、いまだに一刀が寝ている。
「・・・・・・」
記憶を取り戻した白蓮ではあったが、先程の夢のせいか身体がウズウズしていた。
「おい・・・・・・起きてくれよ一刀。このままじゃあ生殺しだよ・・・・・・」
ゆさゆさと一刀を揺らす白蓮。
「ん・・・・・・んん?」
うっすらと目を開ける一刀。
「起きたか?」
期待した白蓮だったが、
「・・・・・・ぐう」
再び眠る一刀。
「おい!それはないだろ!?起きてくれよ~~~~!!」
白蓮は一刀を必死に起こそうとしたが
一向に起きる気配は無く
白蓮は悶々としたまま
眠れぬ夜を過ごす事になったのであった・・・・・・
どうも、アキナスです。
洛陽の方ではキナ臭い感じになってますね。
どうやらすんなりとはいかないようです。
そして、白蓮さんがついに記憶を取り戻しました。
遅れてきたぶん活躍して欲しいところですね。
では、生殺し状態の白蓮さんを哀れみながら次回に・・・・・・
「計都羅喉剣!暗剣殺っ!」
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ついにあの人が・・・・・・