No.638004

真・恋姫無双黒天編“創始” 第4章 「決意」  後編

sulfaさん

どうもです
いける時にいく。
少し書きためていたものを投稿します。
お楽しみいただければ幸いかと・・・

2013-11-18 21:49:08 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1146   閲覧ユーザー数:1070

真・恋姫無双 黒天編創始  第4章「決意」 後編

 

「かずっちって今何してんの?昨日から全然連絡取られへんねんけど?」

 

「えっ・・・」

 

及川は携帯電話をいじりながら、咲蘭に問いかけた。

 

「ほら、これやねんけどな。オレの携帯壊れてもうたんかしらんけど、かずっちに電話かけようとしたら『おかけになった電話は…』って言われてまうねん」

 

及川は一刀の携帯番号をコールした後、それを咲蘭の耳に当てた。

 

携帯からは確かに及川が言うように、女性の声でそうアナウンスされている。

 

しかし、そんな言葉は咲蘭の耳には入ってこなかった。

 

鈍器で頭を殴られたような強い衝撃が頭の中を駆け巡った。

 

彼の言った言葉を信じられない。

 

何を言ったのか分からない。

 

「え…かずっちって…だれですか?」

 

咲蘭は何も考えずにこう口走っていた。

 

自分が意図して発しようとした言葉ではない。

 

こう言わないといけない気がしたのだ。

 

「はっ?何言うてんの?」

 

及川は心底不思議そうに首を大げさにかしげた。

 

「私・・・かずっちなんて人・・・しらない・・・くっぁ・・・」

 

急に咲蘭に先ほどと同じような鈍痛が襲いかかる。

 

咲蘭は頭を抱えてその頭痛に耐える。

 

「私・・・一刀なんて人・・・しら・・・ない・・・」

 

「ちょ・・・大丈夫?って!!咲蘭ちゃん!?」

 

そう言いながら突然しゃがみこんだ咲蘭を心配して、及川はすぐに駆け寄った。

 

「しらないしらないしらないしらない・・・知らないと言わないと・・・だめなの・・・だめ・・・ダメ・・・」

 

まるで壊れた音楽CDのように咲蘭は同じ言葉を何度も何度も繰り返す。

 

「ほんなにどうしたんなっ!!咲蘭ちゃんっ!!」

 

及川は咲蘭の伏せた顔を無理やり覗き込んで見る。

 

咲蘭の顔は真っ青を超えて深緑にまでなるほど血の気が引き、冷や汗をかき、目の焦点は全く定まっていない。

 

「ちょっ!!これマズイんとちゃうのっ!!おいっ!誰かおらんかっ!!おいっ!!!」

 

及川はポケットに入っていたハンカチを咲蘭の頭の下に引いてから、咲蘭を道の端に寝かせた後、大声で近くの人を呼ぶために叫ぶ。

 

辺りがざわざわとし始め、数人の大人が咲蘭の近くに駆け寄ってきた。

 

「し・・・ら・・・な・・・い・・・お・・・にい・・・」

 

そこで咲蘭の意識は途絶えた。

 

 

 

 

 

 

咲蘭は横たわっていた。

 

まぶたが重い。

 

しかし、少しだけなら眼を開けられる。

 

咲蘭はゆっくりと開けられるところまで目を開ける。

 

辺り一面真っ白なところ

 

そこに自分がいるようだ。

 

もう少しだけ大きく開けてみる。

 

誰かがいる。

 

白い服の・・・だれかが・・・いる。

 

そこで瞼の重みに負けてゆっくりと目を閉じた。

 

(あなたにお兄ちゃんなんていないの)

 

ふいに優しい声が耳から入ってきたかと思うと頭の中で響き渡る。

 

(あなたは一人っ子だったでしょ?)

 

先ほどの人が発しているのだろうか

 

懐かしさを感じるその声は咲蘭の頭に、そして心に優しくしみこんでいく。

 

(あの男が言ったことは全てでたらめ・・・あんな男・・・あなたは知らない・・・)

 

この声の言うことはすべて正しい

 

こんな声の人がウソを言うはずなんてない。

 

そう思えるほど優しくて、温かい声・・・

 

(さぁ・・・続けて言いなさい)

 

咲蘭はその優しい言葉に続いてゆっくりと口を動かそうとする。

 

その方が気持ちがいいし、楽だったから

 

(私にお兄ちゃんなんていない・・・)

 

「わたし・・・に・・・おにい・・・」

 

優しい声に続けて咲蘭がそう口にしようとした瞬間

 

ガガッ

 

「く・・・あ・・・ぁ・・・」

 

耳の奥の方で不快なノイズが走った。

 

そのノイズが優しい声を打ち消していく。

 

しかしそのノイズが走ったのは一瞬だったようで、ノイズはすぐに消えた。

 

(どうしたのですか?さぁ・・・続けて言いなさい・・・)

 

また心地の良い声が心にしみる。

 

それにつられる形で咲蘭の口が再び動き出す。

 

「わたしに・・・」

 

ガガッ―――

 

ガガガガガッ――――

 

また不快なノイズ音が響く。

 

先ほどよりも大きく、長く

 

「い・・・や・・・いた・・・い・・・」

 

脳に響くその音が三半規管を刺激しているのか急に頭がグルグルと回る間隔に襲われ、気持ち悪くなってきた。

 

ガガッ―――ガガガッ―――

 

『カズッチトレンラクガトレナインダケド・・・サラチャンシッテル?』

 

『カズッチニイモウトガイルナンテシランカッタワ・・・』

 

その不快で不快でたまらない声が何かを言っている

 

しかしその意味が全く理解できない。

 

理解しようとしたくない。

 

だって、苦しいから

 

さっきの優しくて温かな声が小さく小さくなり、不快な音がだんだんと大きくなっていく。

 

(おに・・・なんて・・・いな・・・い)

 

『カズッチガオニイチャンッテヨバレルノユルサレヘンワ・・・』

 

(あなた・・・ひとり・・・)

 

『エエナァ・・・キョウダイナンテウラヤマシイワ』

 

不快な音がだんだんと大きくなり、優しい声をかき消していく。

 

何が起きているのかが分からない。

 

咲蘭は耳をふさごうとしたが腕が動かない。

 

まだ辛うじて動かせることができたまぶたをゆっくりと開ける。

 

先ほどは確かに白かったはずの風景がいつの間にかどす黒く変色している。

 

先ほどの白い服の人はいない。

 

咲蘭に周りの様子をみようと思いまぶたを懸命に開けようとする。

 

すると、黒い風景の中から一筋の光がこぼれていた。

 

その一筋の光に自分が吸い込まれている。

 

その光に近づいている。

 

そんな気がした。

 

不快な声はまだ続いている。

 

しかさい、その光に近づくにつれてその不快な声が鮮明に、そして聴きとりやすい男性の声へと変化していく。

 

『サラチャンノオニイちゃンのなマえは・・・』

 

あれほど不快だったその声がだんだんと効くことができるものになっていく。

 

そしてふいに気がついた。

 

「わたしが・・・求めてた答え・・・だ・・・」

 

『さらちゃんの・・・お兄ちゃんの名前は・・・ほんごう・・・一刀・・・さぁ・・・続けて言ってみ』

 

「お兄ちゃんの・・・名前は・・・北郷一刀・・・」

 

『そうや・・・咲蘭ちゃんには・・・お兄ちゃんが・・・たしかにおるんや。さぁ・・・続けて言ってみ』

 

「私には・・・お兄ちゃんが・・・いる・・・」

 

『もっと強く願わんとあかん・・・浄化作用が効かんくらいに強く』

 

「私には・・・お兄ちゃんがいるっ!名前は北郷一刀っ!!」

 

 

 

『もうひと押しやっ!さぁ、その手を伸ばして!!』

 

 

 

「私には大好きなお兄ちゃんがいるのっ!!」

 

叫びながらその一筋の光を目掛けて手を伸ばす。

 

そしてその光に手が触れた瞬間

 

 

 

一筋の光が一気に大きくなり、一層輝きを強めた。

 

その光は少し冷たく、肌寒かった。

 

しかし、咲蘭はその時直感する。

 

「これが私の求めていた。答えだっ!」

 

そう叫んだあと、咲蘭は再び意識を失った。

 

END

 


 
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