No.637815

真・恋姫†無双 外史 ~天の御遣い伝説(side呂布軍)~ 第二十七回 第二章:益州騒乱⑨・新たな成都の始まり

stsさん

どうもみなさん、お久しぶりです!または初めまして!

今回は新たな成都の始まり、成都はどう生まれ変わるのでしょうか、、、

これで本当に第二章も終わりです。

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2013-11-18 00:00:07 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:6299   閲覧ユーザー数:5268

 

法正「・・・クソッ・・・あのくそガキ・・・国を放り出して、逃げ出しやがって・・・」

 

 

 

劉璋を守るために東州兵の攻撃を受け、瀕死の重傷を負っていた法正であったが、

 

厳顔たちが趙韙の反乱を鎮めるために成都に帰還した後、漢中で華佗の手当てを受け、一命を取り留めていた。

 

しかし、そのような状況の中、法正の頭の中では、劉璋の語った言葉の真意をずっと思案していた。

 

 

 

法正「親方より相応しい奴、だと・・・?クソッ、誰でも当てはまるじゃねぇか・・・」

 

 

 

劉璋の意味深な言葉にイライラが止まらない法正であったが、不幸中の幸いか、

 

血を流しすぎたこともあり、頭に上っていた血も徐々に落ち着き、冷静さを取り戻していった。

 

 

 

法正「待てよ・・・他に何か情報は・・・お館は他に何て言ってやがった・・・思い出せ・・・」

 

 

 

法正は目を閉じて劉璋との会話を思い出し始めた。

 

 

 

 

 

<趙韙、世話になったの!最後の最後で、お主は妾の意に沿ったの!これからは、お主のやりたいようにするがよい!>

 

 

 

―――趙韙?いや、これはないか・・・

 

 

 

<お主はもう妾のお守をする必要はないのじゃ>

 

 

 

―――俺?いや、これも違う・・・

 

 

 

<お主はここから脱出し、漢中に遠征中の厳顔らに救援を求めてくるが良い>

 

 

 

―――厳顔殿?いや、これも何か違うような・・・

 

 

 

―――魏延、張任殿、まさか黄忠殿?だが、誰もかれもピンと来ねぇな・・・

 

 

 

<ここで親方を殺して、どうなるってんだ!当然跡取りのいないお館の後継は空席。国の乱れは余計ひどくなるだけだぜ!>

 

 

 

―――これは俺の言葉・・・そう、世襲ができねぇから禅譲・・・・・・・・・・・・・・・・禅譲?禅譲って何だ?禅譲っていやぁ、

 

孟子の易姓革命の思想に基づいた、君主の位を世襲せずに有徳者に譲ること・・・。

 

 

 

―――落ち着け・・・もう少しで何かつながりそうだ・・・もう一度初めから考えるか・・・。

 

 

 

<孝直、やはりお主の目は節穴かの?妾よりもふさわしいのがおったではないかの。位ならそやつに禅譲してやるの>

 

 

 

―――そう、この意味深な言葉が―――

 

 

 

 

 

しかしその刹那、法正に電流走る。

 

 

 

法正「・・・ん?『やはり(●●●)お主の目は節穴かの?』だと?俺は以前お館に節穴と言われていたってことか?思い出せ・・・

 

いつだ、いつ俺は、お館に節穴と言われた・・・?」

 

 

 

 

 

 

【益州、成都】

 

 

 

時は現在に戻る。

 

結局、今回の趙韙の反乱は、元々趙韙側は東州兵2000程しかおらず(そもそもこの兵力で成都を奪取できたこと自体驚きなのだが)、

 

その圧倒的兵力差からも、降伏は当然の判断なのだが、加えて趙韙が完全に戦意喪失の状態になり、

 

東州兵も動けなくなってしまったため、あっさりと降伏したのであった。

 

そして、すぐさま魏延を中心とした劉璋捜索隊が組織され、劉璋の捜索が開始されたのだが、現状影も形もない。

 

また、成都城内では、趙韙から反乱の経緯などについて、厳顔が尋問していた。

 

(本来怪我人である厳顔の出る幕ではないのだが、劉璋軍の文官の中心である法正は重傷、

 

趙韙は言うに及ばす、魏延は劉璋を捜索中ということで、厳顔が怪我を押しての尋問役に名乗り出たのであった)

 

 

 

厳顔「・・・しかし、お主ともあろう者がこのような軽率なことを・・・確かにお主に対するお館様の扱いは目に余るものがあったが、

 

だからといって・・・」

 

 

趙韙「・・・・・・・・・」

 

 

 

成都城の地下にある薄暗い牢獄では、鉄格子を挟んで、手枷足枷で自由を奪われている趙韙と、椅子に座った厳顔が相対していた。

 

要するに、今回の趙韙の反乱の実情を一言でまとめれば、

 

ダメ上司の無茶ブリについカッとなってしまってやった、だが後悔だらけだ、ということなのであるが、どうも趙韙の様子が変であった。

 

後悔しているという雰囲気とはまた少し違った様子なのである。

 

 

 

厳顔「・・・遠慮するな。言いたいことがあるのなら、すべて吐いてしまうがよい」

 

趙韙「・・・では、申し上げます。厳顔殿、もしかしたら、自分はとんでもないことに気づいてしまったかもしれないのであります」

 

厳顔「とんでもないこと、だと?」

 

 

 

そうであります、と答えて続けた趙韙の口から、とんでもない仮説が飛び出した。

 

 

 

趙韙「もしかしたら、お館様は、今回自分が反乱を起こすことを予期していたのではと思うのであります」

 

厳顔「何!?」

 

 

趙韙「お館様は去り際に、自分に『最後の最後で、お主は妾の意に沿ったの』と言ったのであります。それに、覚えているでありますか?

 

お館様が極端に領主の座にお就きになる事を拒んでいらっしゃったことを・・・」

 

 

厳顔「うむ、もちろん覚えておる。劉焉様がお亡くなりになってすぐのことだ、母君の死を簡単に受け入れられるはずもあるまい」

 

 

 

厳顔の脳裏には、かつての劉璋の姿が浮かんでいた。

 

 

 

 

 

 

<なぜじゃ!なぜ母様が死なねばならぬのじゃ!>

 

<落ち着きなされ若君! 病ばかりはどうしようもありませぬ!>

 

<認めぬ・・・妾は断じて認めぬ・・・!>

 

 

 

 

 

<嫌じゃ!妾は領主になどなりとうない!それに、まだ母様が死んで間もないというのに・・・!>

 

 

<我儘を申されますな!間を作っては国が乱れます!母君のお作りになったこの成都を受け継ぎ守っていくのが、若君、いえ、お館様の

 

役目なのです!>

 

 

<無理じゃ!妾はまだ9つじゃぞ!?一国を治めるなど到底無理じゃ!それに妾のような無知な幼子が領主になれば、必ずや反乱分子を

 

生み、争いが起こるに違いないのじゃぞ!?>

 

 

<わしや紫苑、法正や趙韙、焔耶や張任もおります!みなでお館様をお支えします!それに誰が玉座に就こうと反乱分子は生まれるもの

 

です!それなら、どこの馬の骨とも知れぬものに玉座に就かせるより、劉家の血を引くお館様が就かれるのが最善なのです!!>

 

 

<理不尽じゃ・・・このような不自由、妾は認めぬ・・・!>

 

 

 

 

 

 

厳顔「お館様が玉座にお就きになり、最初は予想通り反乱分子が山のように出たが、お館様は己の感情の一切を殺し、目を見張るほどの

 

王としての役目を果たされ、益州は落ち着きを取り戻した。しかし、以後のお館様は知っての通り、あらゆることに無関心になられて

 

しまわれた。無論、もともとお館様は世襲君主制をひどく嫌っていらっしゃった。そのような不自由は間違っている、妾に領主としての

 

能力はない、賢者に位を譲る禅譲こそが相応しい、とな。さらにまだ9つの時の話。当然やりたいこともたくさんあっただろうし、拒む

 

のは当然。だが、それがいったい何―――」

 

 

 

しかし、その刹那、厳顔に電流走る。厳顔もまた、趙韙と同様とんでもない仮説にたどり着いたのである。

 

 

 

厳顔「ま、待て!まさか、お館様は自身が退位するために、ここ1,2年もの間、お主をひどく扱い、反乱を促したというのか!?」

 

趙韙「黄忠殿を追い出したのも、厳顔殿を巴郡に飛ばしたのも、全ては成都の守りを弱くし、自分に攻めやすくするためなのであります」

 

 

 

さらにあふれ出てくる仮説に、厳顔自身驚愕からわなわなと振るえている。

 

 

 

厳顔(紫苑よ、お主はお館様の真意に気づいておるのか・・・?)

 

 

 

もし、これらの仮説が事実であれば、10歳前後の少年の、長期に渡る策に成都中がまんまとはまったことになる。

 

 

 

厳顔「幼少より賢い子だとは思っておったがここまでとは・・・そうか、なぜ急に漢中の要請に応じたのかと思えば、呂布殿らの力試し

 

という名目を得て、より成都の守りを手薄にし、お主に反乱の機会を与えたということか。確かに、この機ほどお館様を追い落とすのに

 

絶好の日和はなかろう・・・」

 

 

趙韙(いや、追い落とすではなく、恐らくは・・・)

 

 

 

趙韙は自身が劉璋殺害を命じたその瞬間の、その瞳に意志を宿した劉璋の顔を思い浮かべていた。

 

 

 

厳顔「しかし、困ったものだ。お館様は未だ見つからず、もし見つかったとしても、ここまで大きな策を仕掛けてでも玉座にお就きに

 

なるのを嫌ってなさったのだ。もう二度とお就きになる事はないだろう。だが、それなら後継をどうしたものか―――」

 

 

 

といいかけたその瞬間、突然地下牢への扉が開け放たれたかと思うと、誰かが凄い勢いで階段を駆け下りてくる音が聞こえてきた。

 

いったい何事かと厳顔が振り返ってみると、漢中で治療を受けているはずの、包帯でぐるぐる巻きの法正であった。

 

その後ろには華佗もついて来ていた。

 

 

 

厳顔「法正!?なぜここにおる!?」

 

華佗「すまない、本当は絶対安静なんだが、どうしても伝えたいことがあるらしくてな」

 

法正「厳顔殿、分かったんだよ、お館が言ったことの意味が」

 

 

 

法正は息を整えてから、厳顔に向かって語った。

 

 

 

厳顔「そのことならわしらも気づいた。あの若さで、凄まじい考えをなさ―――」

 

法正「お館の後継についてだぜ」

 

厳顔・趙韙「「―――ッ!!??」」

 

 

 

それは、最後に残されていた問題の答えであった。

 

 

 

 

 

 

【益州、成都、とある宿】

 

 

 

趙韙の反乱は鎮圧されたものの、仕官するはずだった劉璋は行方不明であり、呂布たちは今後の身の振り方を厳顔らと話し合うために、

 

趙韙の尋問の終了を、城内は反乱の影響でごたごたしていたため、城下の宿を借りて待っているところであった。

 

 

 

張遼「なんや、ややこしいことになってきたな」

 

呂布「・・・(コクッ)」

 

高順「劉璋様は未だに影も形も見つからないそうです。死体も見つかってないそうなので、亡くなったということはないと思うのですが」

 

 

陳宮「街の人々が噂してたのです。暗愚劉璋は、国を捨てて南蛮の地で南蛮人になっただの、蒙古高原で狩猟民族を束ね始めただの、

 

はたまた、天竺でお経を授かりに行っただの、 糸綢之路(シルクロード)を渡って羅馬(ローマ)に渡っただの、とにかく見つかる気配がないのです」

 

 

 

そのような奇妙奇天烈摩訶不思議な噂に北郷が微妙な表情で閉口している中、とある訪問者がやって来た。

 

やや短めの黒髪の前髪部分に白のメッシュが入っており、白のブラウスに襟の立った黒の上着を羽織り、

 

黒のホットパンツをはき、全体的にボーイッシュな印象を受ける女性、魏延である。

 

劉璋が見つかったという報告かとも思ったが、どうやらそうではないらしい。

 

 

 

魏延「みんな、ちょっと城まで来てくれ。大事な話がある。特に御遣い、お前にな」

 

北郷「オレ?」

 

 

 

 

 

 

【益州、成都城】

 

 

 

魏延に連れられて呂布たちが成都城の玉座の間に入ると、厳顔、なぜか漢中にいるはずの法正・華佗、そして張任が待っていた。

 

 

 

厳顔「ふむ、みな揃っておるな」

 

陳宮「厳顔殿、反乱の首謀者はどうなったのですか?」

 

 

厳顔「ふむ、反乱の首謀者、趙韙は、尋問の末、国外へ無期限の追放とした。これまでお館様に受けてきた非道の数々を考えると、死罪

 

にするのは忍びなかったのでな」

 

 

 

また、趙韙に加担した東州兵総勢2000名については、現在処分保留とのことであった。

 

しかし、そう告げた厳顔であったが、実は少し事情が違ったのであった。

 

 

 

 

 

 

<国外へ無期限の追放、でありますか・・・てっきり死罪かと・・・>

 

 

<ふむ、無論お主のしたことは死罪を宣告されても何も言えぬほどのことだ。だが、お主には、生きてどうしてもしてもらわねばならぬ

 

ことがある>

 

 

<自分がしなければならないこと?>

 

 

<お館様を必ず見つけ出し、生涯をかけてお仕えせよ。体を張ってお守りせよ。喜びも怒りも悲しみも楽しみも、すべてをお館様と共に

 

せよ。それが、お主に課せられる罰だ>

 

 

<―――ッ!?>

 

<お主、お館様に言われたのであろう?『お主のやりたいようにするがよい』と。もちろん、拒否権はないぞ?>

 

<・・・・・・・・・・・・ぐすっ・・・ひっぐ・・・・・・>

 

 

<ゆっくりと時間をかけて、お館様が抱えておられる心の傷を癒してさしあげるのだ。いつの日か、再びお館様が成都へお戻りになる気

 

になられるまでな>

 

 

<・・・ぐす、あ、ありがとう・・ぇっぐ、ございます・・・であります・・・>

 

 

 

 

 

 

厳顔は目を閉じてそのような趙韙とのやり取りを思い出した後、表情を改めて呂布たちに話を切り出し始めた。

 

 

 

厳顔「それでは、時間もないので、さっそく本題に入らせてもらおう。実は、皆もすでに知っておるだろうが、お館様が未だに見つかる

 

気配がない。しかし、このまま領主不在の事態が長引けば、ただでさえ疲弊している成都が立ち直れなくなってしまう。そこで、すぐに

 

でもお館様の後継を決めることとなった」

 

 

 

そこまで言い終えた後、一呼吸おいた厳顔は、急に跪き始めた。頭を下げた相手は、白く輝く衣に身を包んだ、一人の青年。

 

 

 

厳顔「御使い殿、あなたに是非とも成都の次期領主となっていただきたいのです」

 

 

 

そのような厳顔のあまりにも予想外の行動と、とんでもない発言に、呂布側では確実に時が止まってしまっていた。

 

気づけば周りにいた魏延、法正、張任も同様に北郷に対して跪いていた。

 

 

 

北郷「は!?ちょ、ちょっと待ってください!!お、オレが成都の次期領主!?何を馬鹿な―――!!」

 

厳顔「途方もなく無礼なことは重々承知しております。ですが、これはお館様のご意志でもあるのです」

 

北郷「それってどういう・・・」

 

 

 

すると、厳顔は、劉璋の即位の経緯から、今回の反乱の実情に至るまでを、要点を押さえつつ簡潔に説明し始めた。

 

そのとてつもなく大きな話に、呂布側はただ黙って聞いているしかなかった。

 

 

 

厳顔「つまり、お館様は御使い殿を一目見た瞬間に、位を御遣い殿に禅譲するおつもりだったというのです。長い間渋っていた漢中への

 

出陣を決断し、より趙韙に反乱を起こさせやすくしたのも、ご自身の後継を見つけられたからなのでしょう」

 

 

 

つまり、法正が思い出した劉璋の言葉とは、劉璋が北郷を漢中遠征の総大将に任命したのを諌めた時に言われた、

 

『お主の目は節穴かの?奴は乱世を鎮める救世主なのじゃろう?じゃったら、一国の内乱程度、余裕で鎮められるじゃろう。

 

本当に評判通りの男なのならば、奴にそのまま成都を立て直しのために働いてもらえばよいのじゃしの』なのであった。

 

法正自身、その時は特に気にも留めなかった言葉だったため、思い出すのに時間がかかったが、

 

今改めて考えてみると、なんともストレートに宣言していたことか。

 

 

 

北郷「でも、でもでも!!それでもおかしいですよ!!一目見ただけでって、そんなのありえないですよ!!だってそうでしょう!?

 

それって全部仮定の話ですよね!?じゃないと、そもそもオレは成都に何の縁もない人物ですし、この前初めて来たばかりなんですよ!?

 

人の上に立つ器なんてありませんし・・・そうだ、オレなんかより厳顔さんとかの方がよっぽど相応しいじゃないですか!!」

 

 

 

北郷は突きつけられた事態について行けず、まとまりきっていない自身の思考を次々に吐露していった。

 

 

 

厳顔「御使い殿、わしなんかよりあなたの方が人の上に立つべき器を持っておるではありませぬか。このことは陽平関での戦いでも証明

 

されております。兵たちもみな、あなたが領主の座に就くことを望んでおります。そしてなにより・・・」

 

 

 

そう告げると、厳顔は北郷を高欄へと導いた。

 

厳顔に導かれるままに高欄へと向かい、外を見た北郷の目に飛び込んできたのは、たくさんの成都の民衆であった。

 

 

 

民1「みつかいのお兄ちゃーん!ちょーい様をとめてくれてありがとう!」

 

民2「御遣いさまー!どうか私たちをお救い下さーい!」

 

民3「御遣い様が街をお治めになるとなると、ワシらも安心して暮らせるのう!」

 

民4「御遣い様!バンザーイ!」

 

 

 

口々に語られる言葉はそれぞれ違えど、その内容は全て、天の御遣い、北郷一刀に対する感謝と期待と希望に満ち満ちていた。

 

もちろん、北郷は反乱鎮圧に関して一切関わっていないのだが、詳しい実情を知らない民衆にとっては、噂が真実となってしまっており、

 

この反乱は劉璋軍総大将に抜擢された天の御遣い・北郷一刀の手によって鎮圧されたという話になってしまっていた。

 

そして、暗愚劉璋が不在となった今、その後継に、乱世の救世主として名高い天の御遣いがなってもらうことを望んでいるのであった。

 

 

 

厳顔「民衆にとって天の御遣いとは、乱世を終わらせる救世主。希望の光そのものなのです。たとえお館様の真実を語り聞かせたとて、

 

御使い殿に対する希望には敵いませぬでしょう。事実、民衆はお館様のせいで長い間辛い思いをしてきたのですから。まぁ、それでも

 

嫌と申されるのなら、強制はできませぬが・・・」

 

 

 

しかし、このような光景を見せられてしまっては、非常にNoと言いにくい状況になってしまっていた。

 

もちろん、厳顔はそれを狙っていたのであろうが。

 

 

 

北郷「でも、オレ、領主とか政治とか、何もできませんよ?とても一国の領主なんて大役務まりませんよ・・・」

 

厳顔「それはわしらが全身全霊をかけてお支え致します。何も心配する必要はありませぬ」

 

 

 

厳顔の言葉に応じるように、魏延、法正、張任が同時に頷いた。

 

 

 

北郷「で、でも、オレは一応恋、呂布の居候だし、呂布を差し置いて領主だなんて―――!」

 

呂布「・・・恋は全然構わない」

 

 

 

それでも、北郷が必死で断り口上を述べているその時、呂布が北郷の言葉を遮った。

 

 

 

北郷「恋・・・」

 

呂布「・・・恋は領主をするのとかは、苦手・・・でも、一刀は月と同じ、平和を望んでいる・・・一刀は領主にぴったり」

 

 

 

呂布は、非常にわかりにくいがやや苦い表情をしていた、そのように北郷は感じた。

 

もしかしたら、過去の嫌な思い出でもよぎったのかもしれない。

 

 

 

北郷「でも、恋がよくてもねねやなな、霞は・・・」

 

陳宮「今更気にすることはないですぞ。一刀殿の実力は、すでに皆認めているのです」

 

張遼「そーいうこっちゃ。そもそも、仲間(●●)の出世に反対するヤツがどこの世界におんねん!」

 

高順「私たちがそのような心配をされるなど心外です」

 

北郷「みんな・・・」

 

 

 

三人も、そろって北郷が領主になる事を促した。

 

ここまでくれば、本格的に引くに引けなくなってしまっていた。

 

それでも決断を渋っていた北郷を見かねてか、今まで恭しく跪いていた魏延が急に立ち上がったかと思うと、

 

北郷の背中を思いっきりバシッと叩いて喝を入れた。

 

 

 

魏延「ええいシャキッとしろ!それでも天の御遣いか!?乱世を終わらせる救世主なのだろう!?お前が成都の領主となり、天の力で、

 

そして我ら成都の力を合わせて、この乱世を終わらせようではないか!」

 

 

 

阿呆!御遣い殿に何をするのだ!という厳顔のお叱りの言葉と共に拳骨を食らった魏延のうめき声が、絶妙にこの場の雰囲気を緩ませた。

 

その影響か、はたまた魏延の喝が決め手となったのか、うーんと唸っていた北郷は、意を決して述べた。

 

その表情からはもう先ほどまでの驚愕と焦りの色は見られない。

 

 

 

北郷「・・・・・・わかりました。本当は劉璋さんをいい領主に導こうと思っていましたけど、こうなってしまったら仕方がありません。

 

力は及びませんけど、成都の領主、やらせてもらいます」

 

 

 

ホッという安堵の溜息が北郷以外の全員から漏れ出た。

 

 

 

厳顔「では、決まりですな。これからよろしく頼みますぞ、御遣い殿、いえ、お館様。今後はわしのことは桔梗、と真名でお呼び下され」

 

 

 

北郷が成都の領主となったことは、同時に劉璋配下の者が北郷配下に変わったことを意味しており、

 

新たな主となった北郷に対して、厳顔は自身の真名を預けると共に、北郷のことを、成都独特の君主の呼称である “お館様” と呼んだ。

 

 

 

北郷(そうか、厳顔は主のことをお館様って呼んでいたっけ。なんか武田信玄みたいでかっこいいな。まぁオレは謙信派だけど・・・)

 

 

 

などという無駄なことが北郷の頭の片隅によぎっている中、厳顔に促される形で魏延もまた北郷に真名を預けた。

 

 

 

魏延「ワタシの真名は焔耶だ。よろしく頼む。お館」

 

北郷「ああ、よろしく。桔梗、焔耶」

 

 

 

その後、法正や張任とも挨拶をかわし、厳顔や魏延は呂布たちともそれぞれ真名を交換し合った。

 

ここにきて、漢中での華佗の革命から始まり、成都での趙韙の反乱及び劉璋の後継者問題という一連の益州での騒乱が治まり、

 

ようやく益州にひと時の平穏が訪れたことになった。

 

そして、それは同時に、天の御遣い・北郷一刀が治める新制益州成都が誕生した瞬間でもあった。

 

天の御遣いの伝説に新たな1ページが刻まれた。

 

 

 

【第二十七回 第二章:益州騒乱編・新たな成都の始まり 終】

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

第二十七回終了しましたがいかがだったでしょうか?

 

前回今回と少しバタバタしてしまいましたが、一番の原因は、最初に構想していた話と大幅に変わってしまったからです。

 

特にその元凶となったのが、劉璋君をどうするかということ。

 

生かすか殺すか、良い奴にするか悪い奴にするか、

 

結局、急遽虎牢関編を入れてまで修正し続けた末に出した答えが、

 

生かすけど成都から一時退場、そして悪い奴に見えるけどホントは良い奴という間を取る形となりました。

 

 

そして新たに呂布軍メンバー(今後は北郷軍メンバーが正しいかもしれません)に加わった焔耶と桔梗さん

 

このお二方の加入は、益州を拠点にしようと考えていた頃からメンバー入りが確定していました。

 

今後の一刀君との絡みに期待です!

 

ですが、一刀君が君主になってしまった為、タイトルのside呂布軍に違和感が、、、

 

母体が呂布軍、という拡大解釈するしかありませんね、、、ぐぬぬ、、、

 

 

 

それでは、長々となってしまいましたが、これでようやく第二章も終了です!いかがだったでしょうか?

 

個人的には、劉璋君の引き際がちょっと後味悪いかなとか、一刀君の領主就任の件が強引すぎるかなとも感じております。

 

奇しくも劉璋君の時と同様、ほぼ強制的に領主の座に就かされてしまった一刀君。

 

両者の違いは、それを受け入れるだけの器があったかどうかということ。

 

そして、劉璋君は、成都を守るためとはいえ、自身を追い落とさせるために暗愚を演じ、

 

結果成都を苦しめる結果になるなど、まだまだ詰めが甘い部分があり、

 

それらの意味で、まだまだ幼かったということだとstsは理解しております。

 

果して心の傷の癒えた劉璋君の再登場はあるのか、、、いいえ、必ず戻って来てくれるはずですよね。

 

 

それではまた次回お会いしましょう!

 

 

 

次回は実験的にエピローグ的なもの+オリキャラ紹介をお届けします!え?第二章は終了のはず?・・・・・・・・・・・・汗

 


 
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