俺はナイフを片手で弄びながら静香と使えるパソコンか電話、または何らかの連絡手段となり得る物がまだ無事で使えるかどうか探していた。今の所、かなり状況は絶望的だ。固定電話や子機、そこら辺に放り出されてる携帯などは只のガラクタとなってしまった。
「う〜ん、見つからないわね・・・・」
「まあ、俺も流石に軍隊にいた訳じゃないから、EMPに関しての知識も素人に毛が生えた程度の物だ。的確にどこを探せば良いか分かってれば無駄に時間を浪費する必要は無いんだがな。」
「まあまあ、こっちは駄目でも、小室君達が何か探してくれるかもしれないし。諦めるにはまだ早いと思うな。大丈夫だよ、たとえ使える電子機器が無くても、私達は生き残れる、って自分に言い聞かせなきゃこの先やってけないもん。いつもいつも私を助けてくれて、私よりもしっかりしてる人がそんな弱音吐いちゃダーメ。」
俺の頬に軽くキスすると、俺の手を引いて別の部屋を物色しに行く。全てをチェックし終えたが、結局使える物は何も見つからなかった。
「駄目だったね・・・」
「おい、俺を励ました奴がしょんぼりしてんじゃねーぞコラ。孝達の所に行こう。」
額を指で軽く小突いて俺も彼女がした様に軽くキスしてやると、下に降りた。
「あ、いた・・・!!滝沢さん!大変です!」
「どうした?」
「あ、あの、お婆さんが・・・倒れたらしくて・・・輸血をしないと死んじゃうかもしれません。」
それを聞いた静香は普段とは考えもつかない様なスピードでコータの後を追った。やっぱあいつは、一人の医者として出来る事はしたいんだろうな。昔からそうだった、優しい奴だ。俺も一応付いて行った。
孝達もコータの呼び掛けに答えてどうやら寝具コーナーで寝かされているご老婦の旦那によると彼女は脊髄の病気で定期的に輸血をしていたらしい。それを聞いた静香は閃いたのか、ポンと手を叩いた。
「これ、多分R.Aだわ!」
「儂はそれが何なのか知らんのだが・・・・?素人が分かる様に説明してくれんかね?」
「只の略語です。体が正常な血液を精製する事が出来なくなる、良くある失調なんですよ。正式名称はリューマチ性関節炎。」
「そう、それだ!」
「輸血されたのはプラズマか血小板のどちらですか?それと、彼女の血液型は?」
老人は眉を寄せて記憶をたどり始める。
「種類までは儂も良くは知らんが、妻の血液型はO型です。」
「輸血に使われた血液パックの色を覚えていますか?例えば、黄色か赤だったかとか。」
「・・・・・黄色だ!間違い無い、黄色の輸血パックだ!」
「う〜〜ん、R.A.で黄色いパックなら、PC輸血よね。」
「難しい所だな、電力が完全にダウンしてから一日経つが、診療所は近い。使える輸血パックがあるかどうかも分からないのにワザワザ命を捨てる様な行動に出るのはお勧め出来ない。それに、何人かが出たら最後、ここに残ってる他の奴らが入れない様にしたらどうする?」
「その時は、ここに残ってるチームの皆が説得すれば良いだけの話です。いざとなれば、無理にでも開ける様に言えます。」
ここに来るまでずっと走って来たのか、コータとあさみは肩で息をしていた。
「あのー、輸血だけなら俺が出来ますよ?俺、O型ですから。」
「そんな風に全血輸血をするのは危険よ。それに、彼女の血液型がO型なら、誰の血を使うかは問題じゃないの。」
「プラズマの場合はそう言う分けにはいかない。小室が言ってるのは、赤血球を輸血しなきゃならない時だ。」
「良く知ってますね、コータさん!」
「あははは・・・・」
流石はミリオタ、医療の知識も多少なりとはある訳か。あさみに誉められていい気になってるコータはほっといてと。
「けど先生、何で私達が行かなきゃならないの?」
「確かに、そうだ。静香先生、次はどうするんですか?定期的な輸血なんですよね?何度もそこまで冒険するにはリスクが大き過ぎます。」
孝の言葉を聞いて、静香は絶句した。だが、孝の言葉は尤もだ。確かに、一度の輸血で全てが解決する訳ではない。週一ペースでやっている輸血は、只の一時的な延命措置だ。使い物になる輸血パックを見つける確率も格段に下がる。
「本官が行きます!」
ここで名乗り出たのは意外や意外、中岡あさみ巡査だった。
「だ、駄目ですよ!危険過ぎます!」
「そうだぜ、交通課には荷が重過ぎる。お前死ぬぞ?」
「市民の為に危険を顧みないのは、警察官の仕事です!滝沢先輩だって、毎度毎度死に向かってまっしぐらに突入してました!これ位出来なきゃ、警察官なんて勤まりません!」
「参ったな・・・・分かった。好きにしろ。」
「じゃあ、僕も行く。中岡さん一人じゃ危険過ぎる。」
「俺も行くよ。二人じゃ幾らなんでも分が悪過ぎる。」
コータに続き孝も進み出て、輸血パック確保に名乗り出た。
「どいつもこいつも馬鹿ばっかだな。孝、お前は残ってろ。リーダーが万一死んだら残った奴はどうなるよ?」
「でも・・・」
「良いから、俺に任せろ。」
「じゃ、じゃあ、俺も連れてってくれ。自分の身は自分で守る。」
スキンヘッドのフリーターも進み出た。
「・・・・・途中で逃げるなよ?逃げたら俺がお前をぶっ殺すって事を忘れるな。」
「馬鹿言え、俺だって男だ。二言はねーよ。」
俺のあの時のブチキレ状態を見ていたからさっきの言葉は冗談に聞こえなかったのだろう、若干だが声が震え、顔も引き攣っていた。最終的には、俺、コータ、あさみ、そしてフリーター(名前を聞いたら田丸ヒロと名乗った)が輸血パック+その他の医療器具確保のミッションに出向く事になった。
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とある民間軍事会社に勤めていた傭兵は、僅か二十六でその生涯に幕を閉じたが、次に目を開けた時には、赤ん坊として生まれ変わっていた!
チートな特撮の武器も『神の介入』と言う事で出します。