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真・恋姫無双 刀蜀・三国統一伝 第九節:THE MEIDOデビュー! 光武軍始動、二国会議開催

syukaさん

何でもござれの一刀が蜀√から桃香たちと共に大陸の平和に向けて頑張っていく笑いあり涙あり、恋もバトルもあるよSSです。

2013-11-12 23:52:27 投稿 / 全12ページ    総閲覧数:5074   閲覧ユーザー数:3763

まえがき 更新が遅くなり申し訳ございません。コメントありがとうございます。上京し色々と苦戦させられているsyukaでございます。さて、今回はついに!薔薇と百合のメイドデビューです!(拍手) それに続いて二国会議と光武軍も動き出します。四竜も加わり一新された蜀軍。皆の活躍にこれからも目が離せません!私の裁量次第ですが。それではごゆっくりしていってください。

 

 

 現在、俺の部屋では百合と薔薇が新調した・・・俺が作った服に着替えている。

 

「♪」

「//」

 

 パッと見ただけで分かる二人のテンション。百合はくるくる回りながらメイド服のヒラヒラ感を楽しみ、薔薇は恥ずかしさによりうずくまり縮こまっている。姉妹でこんなに反応が違うものだろうか。

 

「一刀さん一刀さん! 作っていただき、ありがとうございます♪」

「気に入ってくれたかな?」

「はい♪」

「お気に召したようで良かったよ。」

 

 ちなみに、二人が来ているメイド服は月や詠のものと同じデザインだが白と黄色を基調としたカラーリングになっている。

 

「薔薇は・・・」

「~~~//」

 

 まだ恥ずかしいのか。

 

「薔薇が普段から着てる服だって同じようなものじゃん。」

「こんなにヒラヒラしてないわ!」

「似合ってるから気にしなくていいんじゃない?」

「私もそう思うよ~♪」

「私はそう思いません!」

 

 そんなに否定的にならなくてもいいのになぁ。まぁ、こうなった経緯は百合の発言によるものなんだけど・・・薔薇もご愁傷様だな。

 

「ご主人様、ただ今よろしいですか?」

「どうぞ~。」

「失礼します。」

 

 月と詠が部屋に入ってきた。

 

「薔薇さん、よろしくお願いしますね♪」

「・・・なんで月はそんなに張り切ってるのよ?」

「ご主人様に頼まれましたから♪」

「あー・・・納得がいったわ。」

 

 今の説明で納得いったんだ。

 

「昨日からずっとこの調子なのよ・・・。」

 

 げんなりした表情をしてる詠。相当聞かされたみたいだな。

 

「詠さん、よろしくお願いします!」

「・・・弁様もこいつ信者だったのを忘れてたわ。」

「俺、教祖とかになった覚えはないぞ?」

「あんたの預かり知らぬところで勝手に増産されてるのよ。 ちなみに、あんたの隊全員信者だから。」

「そんなこと・・・」

「あるわよ。」

「あるわね。」

 

 ・・・今度瑠偉たちにこっそり聞いてみよう。

 

「詠も大変よね。 というか悪いわね、姉様の我侭に付き合ってもらって。」

「気持ちは分かるから別に何とも思ってないわ。 協様もぼくと似たことを思ってるだろうし。」

「そうよね・・・。」

「はぁ・・・。」

 

 

 異様にテンションが高い月と百合に、逆に低い詠と薔薇。結構似たもの同士なのかもな。昨日もこんな感じだったしなぁ。昨日は確か・・・

 

~~一日前~~

 

 百合がメイドになりたいということで俺は朝食後、月と詠の部屋へと向かった。ちなみに、薔薇と百合もついてきている。

 

「月と詠が聞いたらなんて言うかしら・・・。」

「詠はともかく、月は大丈夫じゃないかな?」

「どうかしら。 ご主人様のめいどは私だけでいいですーとか言うかもよ?」

「・・・。」

 

 月に私では力不足ですか?とか言われたらショックだぞ。しかしその場合、百合からの上目遣い攻撃が待っているわけで・・・

 

「承諾してくれることを祈ろう。」

 

 俺のメンタルがどんどん削られる事態は避けたいからな。とりあえず部屋の前に到着した。

 

「月~、詠~、今大丈夫?」

「ご主人様? どうぞ。」

 

 月に招き入れられ部屋に入る。なんだかんだで久し振りに来たな。

 

「月・・・。」

「薔薇様、それに劉協様も。 おはようございます。 本日はどのようなご用件ですか? 薔薇様はなにやら元気がないようですが。」

「月ちゃん! 詠ちゃん!」

「はい?」

「めいどさんのこと、教えて!」

「え、え~と・・・」

 

 突然のことに困惑する月。詠はジト目で俺を見てくる。なぜ俺を見る?

 

「私、一刀さんのめいどさんになりたいの! 薔薇ちゃんも一緒だよ!」

「あんた、ちょっと表に出なさい。」

 

 詠に部屋から追い出される俺。詠も表に出て扉を閉めた。

 

「あの二人・・・じゃないわね。 弁様に何か吹き込んだでしょ。 何を吹き込んだのよ?」

「吹き込んだ前提なのはなんで?」

「言い間違えたわ。 たらし込んだの方が正しいわね。」

「いやいや、答えになってないぞ。 そもそも、俺もなんで百合がメイドになりたいなんて言いだしたのか把握してないからな。」

「じゃあ何で僕たちの部屋に連れてきたのよ?」

「百合の上目遣いに負けました。」

「・・・はぁ。」

 

 呆れた表情で思いっきりため息を吐かれるとは・・・ショックだ。

 

「あんたねぇ、理由くらい聞きなさいよ。」

「あれだ、月の有無を言わせないお願いと同じって考えれば良い。 詠だったら理解してくれるはず。」

「ぼくだったらってどういうことよ。」

「そのまんまの意味だけど。」

「・・・理由くらい聞けるわよ。」

 

 その間は何だ間は。

 

「理由はともかく、薔薇と百合もメイドをやってみたい・・・主に百合がだけど。 二人に先輩メイドとして色々教えてあげて欲しいんだ。」

「それでぼくたちに相談に来た、と。」

「ご明察。」

「そんなの考えなくても無理に決まってるじゃない。 漢王朝の皇帝なのよ? あんたでも流石にそのくらい分かるでしょ。」

「けどやりたいって言ってるからさ。 やらせてあげたい気持ちもあるんだ。」

「分かったわ。 じゃあぼくが説得するから。 あんたは黙って見ときなさい。」

 

 

 そう言って部屋に戻る詠。説得・・・出来るのかな?そう思いながら俺も部屋に入った。

 

「一刀・・・。」

「ど、どうしたの?」

 

 部屋を追い出される前より元気がないみたいだけど・・・。

 

「手遅れよ。」

「何が?」

「月と姉様が意気投合して・・・いつの間にか私も含めて、めいどになるって決定されたわ。」

 

 ・・・時すでに遅しってことですね、はい。

 

「月ちゃん、詠ちゃん! これからよろしくね♪」

「はい♪」

「説得する暇もないなんて・・・。」

 

 唖然としている詠。流石の名軍師でも百合の行動は読めなかったみたい。

 

~~回想終了~~

 

 とまぁ、こんな感じだったかな。

 

「薔薇様! 私、一生懸命頑張りますね♪」

「詠ちゃん! 不束者ですが、よろしくお願いします!」

「・・・はぁ。」

 

 教える側、教わる側が二人ずついてどうしてこうもテンションの差が激しいんだろう・・・。

 

「ぼく、こればっかりは堪えそう。」

「奇遇ね、私もよ。」

「月ちゃん! 薔薇ちゃんのことお願いね♪」

「はい♪」

 

 そう言うと四人は俺の部屋をあとにした。とりあえず二手に分かれるみたいだから、それぞれ様子を見に行こうかな。

 

・・・

 

 まず向かったのは厨房。こっちには月と薔薇がいるはずだ。なんでも月が料理を教えるとか。いいなぁ、俺も一緒に料理したい。

 

「調子はどう?」

「あ、ご主人様。 薔薇様は飲み込みが早いですね。 私も頑張れます♪」

 

 月は薔薇のサポートに徹しているみたいだ。かく言う薔薇はと言うと包丁でキャベツのせん切りに挑戦していた。

 

「う~ん、中々難しいものね。 少し侮っていたわ。」

 

 ゆっくり、だが着実にキャベツを切っていく。見ている俺の方が落ち着いてられないぞこれは。けど、確かに筋はいい。切った一つ一つの大きさもほぼ均一だし、しっかり下まで切られているから繋がっている部分もない。

 

「ふぅ。」

 

 ようやく最後まで切り終わり一息つく薔薇。

 

「お疲れ。」

「ありがと。 ・・・って、一刀!? な、ななな、なんでここにいるのよ!!?」

「なんでって・・・そりゃ見に来るでしょ。 薔薇のこと心配だし、期待もしてるんだから。」

「心配なら姉様のとこに行ってきたらいいじゃない!」

「百合は・・・まぁ、薔薇とは別の意味で心配だけど、今は薔薇の番だよ。」

「う~・・・//(まさか一刀が見に来てるなんて・・・ 失敗しないようにしっかりしないと。 頑張れ私!)」

 

 

 なんだかやけに張り切ってるけど・・・いい兆候なのかな。

 

「では次ですね。 豚肉を焼きますので油を敷いてください。」

「分かったわ。」

 

 どうやら順調みたいだし、そろそろ百合たちの方に

 

「だーれだ?」

「!?」

 

 突然視界が闇に包まれた。というかだーれだって・・・

 

「いきなりこんなことされたら驚くって、母さん。」

「せいか~い♪」

 

 手を離されたことで振り返ってみると満面の笑みを浮かべる母さんがいた。それに父さん、海未さんたちに静空さんも一緒だ。

 

「どうしたのさ? 家ではこんなことしてなかったでしょ。」

「家でしたら鞘香がいじけちゃうじゃない? だから、今しかない! と思ったのよ。 ということで~♪」

「うわっ!」

 

 次は抱きしめられた。胸に顔が埋まり息が・・・

 

「菊璃は、一刀さんにはこのような一面を見せるのですね。」

「最愛の息子ですもの♪」

 

 喜んでるところ悪いが、そろそろ解放してもらえると・・・あ、死んだひぃ爺ちゃんが見えてきた。

 

「一刀が2、3歳くらいまではずっとあの調子だったよ。 最近はなりを潜めたと思っていたのだがな。」

 

 父さん、そんなことはどうでもいいから早く助けてください。

 

「菊璃様、そのあたりにしておかないと一刀様が酸欠になってしまいますよ。」

 

 酸欠じゃ済みません、三途の川をわたってしまいます。

 

「一刀分は補給出来たからもういいわ♪」

「・・・ぷはぁ! ぜい・・・ぜい・・・。」

 

 川に半分足つっこんでたよ。死んだひぃじいちゃん、ひぃばあちゃん、そっちに向かうのはどうにか先延ばしにできたよ・・・。

 

「幼い一刀のことか、それには興味があるな。」

「こら鈴!話を蒸し返さないでよ!」

「話を聞くくらいどうということではないだろう?」

「どうということあるの!!」

 

 流石に母親の胸で窒息して死んだとか間抜けすぎる。あの世に行っても話のネタには困らなくなりそうだけど、そんなのは御免被りたい。

 

「話をしたいのは山々なのだけど、ごめんなさいね。 今はそれよりも一刀に伝えないといけないことがあるから。」

「?」

 

 母さんがいつになく真剣な表情を見せる。

 

「一刀に、というよりも皆にも言わねばいけないことね。 料理の仕込みが終わってからでいいから、後で謁見の間に集まってもらえないかしら。」

「分かった。」

 

 俺が厨房を後にしようとしたその時

 

「きゃーーーーー!!」

 

 悲鳴と共に俺の部屋の窓ガラスが割れ、埃がもくもくと立ち込めた。あの悲鳴は詠のものだ。俺は急いで自室へと向かった。

 

 

・・・

 

「詠! 百合! だいじょう・・・ぶ?」

 

 部屋へ駆けこむと尻餅をつく詠にぽかーんとしている百合。それに、叩きを持って

 

「あちゃ~」

 

 と呟いているうーちゃんの姿があった。俺の部屋は大惨事。まとめていた書類が部屋一面に散らばり、窓ガラスもそこら中に散らばっている。・・・俺の部屋にカトリーナでも直撃したのか?

 

「・・・うーちゃん、これはどういうことかな?」

「お、かずとか! えーとだな。 ちからかげんをまちがってしまった。 はたきをふったらこうなっていたんだな。」

「力加減を間違ったって・・・。」

 

 あの小さい叩きを振っただけでこんな光景に早変わりするのだろうか・・・

 

「うーちゃんって、凄いんですね~。」

「百合、感心するところじゃないからね。」

「ご主人様! 大丈夫ですか!?」

 

 俺の部屋に愛紗が飛び込んできた。

 

「大丈夫だよ。 うーちゃんがちょっとだけ力加減を間違えちゃったみたい。」

「は、はぁ。 とにかく、皆が無事で何よりです。」

「ほえ~、ぐちゃぐちゃだ~。」

「派手にやりましたな。」

 

 それからぞろぞろと惨事に桃香、星、他の子たちも俺の部屋へとやってきた。まぁ、あれだけ派手にやったら何事かと思って来るよな。

 

「う~る~し~。」

 

 父さんたちも来たようで、現場を見た静空さんがゆっくりとこちらに向かってくる。不覚にも少しビビってしまった。

 

「おぉ、しずく。 ちっとばかしつよくやってしまった。」

「ちっとばかしではありません! 北郷様たちのご迷惑になるようなことは慎むようにあれほど・・・」

「まぁまぁ、そのくらいでいいだろ。 怪我人もいなかったみたいだしな。」

 

 次は燼さんが割って入ってきた。

 

「燼は漆に甘いのです! 言う時は強く叱っておかなければ付け上がります!」

「そう言うなって。 漆、反省しているな?」

「は~い♪」

「ほら、こう言ってるんだし。 許してやればいいじゃねぇか。」

「ですが・・・」

 

 何だか姉妹のやり取りを見ているようだ。うちの三姉妹を見ているようであれだが。

 

「零は会話に混ざらなくていいの?」

「傍から見てる方が、面白い。 いろんな表情、見れるから。」

「なるほどね。」

 

 いつの間にか俺の隣にいた零は傍観に徹するらしい。・・・ほんとにいつ来たんだろ?俺たちはうーちゃんたちの話し合い?終わったあと、皆で俺の部屋の掃除に時間を費やすのであった。

 

・・・

 

 ふぅ、やっと終わった。腰が痛い・・・。俺の腰よりうーちゃんの方がきつかったろうけど。10分ほど静空さんのお説教タイム。その間正座だったせいか少々やつれたみたい。とまぁ、そんなことは言ってられない。母さんたちが俺たちに伝えないといけないことがあるから、謁見の間に集まるよう言われたからな。俺たちは謁見の間へと足を運んだ。

 

「突然ごめんなさいね。」

 

 

 母さんが一言謝りを入れる。そこははっきり言うところが母さんらしいところだ。

 

「とりあえず結果・・・じゃないわね。 既に決めたことから話すと、私たちで左慈ならびに于吉の捜索、見つけ次第抹殺することにしました。」

「なっ・・・。」

 

 突然のことに言葉が出てこない。

 

「この件に関しましては私も菊璃に加担します。 鈴様、一刀様、桃香様、いきなりで申し訳ございません。」

「別に私は構わん。 お前がそちらにいた方が搜索も手早く済むだろうしな。」

「ありがとうございます。」

「ちょ・・・ちょっと待ってよ。」

「何かしら?」

「いきなりそんなこと・・・それなら俺たちだって」

「一刀。」

 

 俺の言葉は父さんによって遮られた。

 

「お前が今すべきことは何だ。」

「それは・・・」

「三国統一。 それがお前たちの最大の目標なのだろう。 優先すべきはそこではないのか?」

「・・・だけど! 父さんたちに万が一のことが起きたら俺は・・・後悔してもしきれない。」

「確かに私は今のお前の本気には太刀打ち出来ぬだろう。 全盛期ほど力が残っているとも思わない。 だがな、潜ってきた修羅場の数なら負けぬ。」

「けど・・・心配するなってほうが無理な話じゃないか。」

 

 婆ちゃんたちが出撃していった時と同じだ。見送ることしか出来ない自分。二度目だとしてもどうも慣れない。自分が戦場に向かうときは不安など微塵も感じないのにな。

 

「一刀、あんま心配すんな! なんせオレたちがついてんだからな。」

「そうですよ。 今まで私たちがくぐり抜けてきた死線に比べればどうということはありません。」

「かずくん! 私も頑張るから、心配しなくていいよ!」

「一刀たちはあたいたちが戻ってきた時の宴の準備でもしながら待っててくれや。」

「一刀様、心配するお気持ちは痛いほど分かります。 しかし、我ら雲台の将が悪党などに遅れを取るはずがありません。 それとも、私たちでは力不足でしょうか?」

「そうは言わないけど・・・。」

「なら大丈夫です。 私たちにお任せ下さい。 万が一でも菊璃様と霧刀様は我らが命に代えてでもお守りしますから。」

「・・・全員、無事に戻ってきてください。 そうでなければ俺は安心できません。」

「ふふっ、分かりました。 お約束します。」

 

 まだもやもやは晴れないけど、納得せざるを得ないみたい。

 

「燼、漆、零。 鈴様と一刀様方々のこと、頼みますよ。」

「了解。」

「はーい♪」

「頼まれた。」

 

 静空さんの方はそれだけでいいみたい。信頼しあっているからこそなのかな。俺たちは謁見の間でしばらくの間、他愛ない会話を続けた。名残惜しいのは俺だけじゃなかったようで、桃香や薔薇、百合たちもちょっぴり寂しげだった。そっか・・・そうだよな。寂しいのは俺だけじゃないんだ。俺も、もっとしっかりしないとな。

 

・・・

 

 二日後、先日に出発した母さんたちを見送った後、呉に向かう人選をし成都を後にした。呉に向かうのは俺に桃香、愛紗、鈴々、星、朱里、雛里、明里、胡花、桔梗、焔耶、蒼、恋の13人に加え貂蝉、卑弥呼との連絡係として管轤さん。それと鈴、燼さん、零ちゃん、うーちゃんだ。結構大掛かりになったな。

普段は桃香に王として残ってもらっていたけど、今回は大事な会議だから一緒に来てもらうことにした。薔薇と百合は名残惜しそうにしてたけど、昨日たくさん語り尽くしたから大丈夫だろう。途中で話疲れて眠っちゃってたからな。

 

「しゅっぱーつ♪」

「・・・で、何でうーちゃんは俺の肩に乗ってるのかな?」

「ん?」

 

 

 不思議そうに小首をかしげるうーちゃん。何でそんなことを聞くのかと言いたげな表情だな。いや、重くない・・・むしろ軽いから全然いいんだけどさ。

 

「こっちのほうがみはらしがいいからな!」

「・・・そ、そっか。」

 

 なら仕方ない・・・のか?そんなことを思いつつも、俺の両手は雛里と明里によって塞がれていた。

 

「二人とも、どうしたの?」

「先日、じゃんけんに勝ちましたから。」

「・・・なんの?」

「ご主人様と、手を繋げる選手権でしゅ。」

 

 いつの間に・・・というか雛里、今ちゃっかり噛んだな。久々に聞いた。可愛いなぁ。明里は明里でなんだか勝ち誇った表情を見せながらも頬はほんのり紅潮している。恥ずかしがり屋なのは変わりないみたい。

 

「う~、明里ちゃんも雛里ちゃんも羨ましい・・・。」

「なんだ朱里よ、そんなに手を繋ぎたいのか。」

「それはもう!」

「私の両手なら空いているぞ? ほら。」

「星さんと繋いでも意味ないですよ~!」

「ふむ、それもそうだな。」

「今更ですか!?」

 

 あっちはあっちで楽しそうにやってるな。するとひょっこり恋が後ろから声をかけてくる。

 

「ご主人様・・・」

「ん?」

「お腹、空いた。」

「・・・成都出る前に結構食べてきたよね?」

「(こくっ)」

「建業に着いたらご飯買ってあげるから、それまで我慢してくれないか?」

「・・・分かった。」

「えらいぞ。」

 

 いつもなら頭を撫でてあげるところだけど、両手が塞がれてるからなぁ。

 

「漆よ、そろそろ私と場所を変わらぬか?」

「ここはわれのとくとうせきだからな。 りんちゃんのたのみといえどもむりだ!」

 

 いつの間に俺の肩はうーちゃんの特等席に・・・いや、考えるだけ時間の無駄か。

 

「というより、鈴は肩車しなくてもいいじゃん。 目線は俺と同じくらいだし。」

「新しい世界が見えそうな気がしたんだ。」

「なんだそりゃ。」

 

 竜の考えることはよく分からん。零ちゃんは零ちゃんで蒼に肩車してもらってるし。

 

「肩車なんていつ以来だろうな。 翠と蒲公英がまだガキの頃だったからなぁ。 零ちゃんよぉ、見晴らしはどうだ?」

「悪く、ない。」

「そりゃ良かった。」

 

流石は翠と蒲公英の兄だ。慣れているというか、まったく違和感がない。燼さんは桃香と愛紗と共に何か話してる。

 

「ご主人様はね~、意外と寂しがり屋さんなんだよ~♪」

「ふむ、それは本当に意外だな。」

「それと、ご主人様の“お願い”はどうしても断れん。 捨て犬に見つめられているように感じて仕方ない。」

「あれは卑怯だよね~。」

「なるほどなるほど。」

 

 ちょっと!?何の暴露大会をしてるのかな!?

 

「一刀は寂しがり屋だったのか。 大丈夫だぞ、私がいつまでも共にいてやるからな。」

「そういう問題じゃないよ!?」

 

 そんな緊張感の欠片もない会話をしながらも、建業への道のりを進んでいく俺たちであった。

 

・・・

 

 

や、やっと着いた・・・。目的地、建業。ここに来るまで肩にずっと誰かが乗ってたからな。うーちゃんだったり明里だったり鈴々だったり・・・腰痛とか患わなかったのが幸いだろう。

 

「かずと、なんでたちどまっているのだ?」

 

 まだ乗ってるんだった。城門前まで着くと雪蓮や冥琳たちがお出迎えしてくれた。

 

「長旅ご苦労だったな。」

「お久しぶりです。」

「おや、見たことのない子ね。」

「我はうーちゃんだ! うーちゃんと呼んでいいぞ!」

「元気のいい子ね。 気に入ったわ。 私は孫策伯符よ、よろしく。」

「私は周瑜公瑾だ。 軍師をやっている。 ところで、一刀の肩に乗っていることに意味はあるのか?」

 

 やっぱり言うよね。

 

「われのとくとうせき・・・」

「それはもういいよ!」

 

 鈴がうーちゃんをひょいっと抱え地に降ろす。

 

「ぶー、りんちゃんのいけずー。」

「どうとでも言え。」

「賑やかな子ね。 この子は文官なの? 武官には見えないのだけど。」

「まぁ紹介は後にしよう。 まとめて言っておいたほうが早いからな。 奥に案内してくれるか?」

「それもそうね。 立ち話もなんだし。」

 

 ということで謁見の間に案内される俺たち。

 

「久しぶりね、一刀、桃香。」

「お久し振りです、水蓮さん。」

「お、おおお、おひしゃ。」

「桃香が朱里みたいになってる。」

「///」

「ははは! そんなに緊張せずとも良い。」

「見苦しいところをお見せして申し訳ありません//」

 

 まぁ、いい感じに緊張も解けたところであたりを見渡す。やはり呉将はそろい踏みだな。美々は俺に手を振ってる。とりあえず手を振り返す俺。

 

「まぁ報告は届いていたが、左目は無事完治したようだな。」

「はい、お騒がせしてしまったようで・・・申し訳ございません。」

 

 俺が頭を下げると、水蓮は頭を上げよと言ってくる。やけに優しげな声音だ。

 

「お前に謝られることは覚えにないぞ。 むしろ私が一刀に謝りたい。 そもそもお前が負傷したのは私が気を抜いていたせいだ。 本当に、すまなかった。」

 

 今度は水蓮さんが俺に頭を下げてきた。う~ん、こういうのは慣れてないんだよなぁ。

 

「水蓮さんこそ頭を上げてください。 あの負傷はあなたや雪蓮が傷つくのを見たくなかった俺の勝手な判断です。 それに、俺には鈴の加護がありましたから死ぬような可能性はなかったんですよ。 だから、これは俺の我侭なんです。 とりあえず、お二人が無事でよかった。」

「一刀・・・ありがとう。 呉王として、ひとりの孫堅文台として、礼を言わせてくれ。 それと何か謝礼でもあればよいのだが・・・」

「謝礼は呉の皆がいつまでも元気でいてください。 それが俺への謝礼、ということでどうですか?」

「お前というやつは・・・無欲なやつだ。」

 

 

 水蓮さんの表情は穏やかなものだった。なんだか母さんと似ているような。

 

「お前が私の息子だったら良かったのだがな・・・雪蓮も一刀を見習ったらどうだ?」

「じゃあ私が一刀の子供を生めば問題ないわね♪」

「!?」

「・・・へ?」

 

 なんか核爆弾級の爆弾発言を聞いた気がするんだが・・・俺だけでなくうちの将、呉の将たちも面食らっている。

 

「孫呉の血筋に一刀の血を入れるのって、魅力的なことじゃない?」

「なるほど、その考えはなかったな。」

「か、母様!?」

「というか一刀を孫呉に迎え入れちゃえば」

「だめーーー!!」

 

 呆然としていた桃香がこっちに駆け込んできた。そのままぐいっと体を引き寄せられた。こんなに力あったっけ?

 

「ご主人様は私たちのご主人様です! 雪蓮さんの頼みといえどもこればっかりは譲れません!!」

「冗談よ、冗談。 もう、桃香ったら一刀のこと大好きよね~♪」

「当然です!」

「あれま、惚気けられちゃったわ。 母さん、結構手ごわそうよ。」

「この件については時を改めるしかなさそうだな。」

 

 今の言葉を聞くあたり冗談に聞こえないんだが・・・。

 

「私が一刀の嫁だからな。」

「!?」

「鈴、これ以上この場を引っ掻き回さないでくれ・・・頼むから。」

「この場で意思表明しておいたほうが、後々手っ取り早かと思ったのだがな。」

「なんの!?」

 

 あえて聞かないけどさ!

 

「ふふっ、一刀様は相変わらず人気のようですね。」

「愛璃さんまで・・・からかわないでくださいよ。」

「おや、結構本気だったのですが。 私も少なからず好んでいますし。」

「・・・。」

 

 もう何も言わない。こうでもしないと話が平行線のままだから。

 

「この話はもうおしまい! 二国会議しに来たんだからね!」

「ふふっ、それもそうですね。」

 

 ふぅ、やっとか。皆が定位置に着き、二国会議が始まる。手始めに冥琳さんが話を切り出す。こちらの受け答えは主に朱里だ。

 

「まずは呉、蜀の兵数に確認しておきたい。 呉の兵はせいぜい二十万だ。」

「私たち蜀の兵は三十万といったところですね。」

「合わせても五十万か・・・。 ちなみに、間諜の報告による曹魏の兵数は百万を超えるらしい。」

「百万・・・。」

 

 兵数にして倍。圧倒的な数字をたたき出されたことにあたりが静まり返る。そんな中で呑気にうーちゃんが俺の裾を引っ張ってきた。

 

「ん?」

「そのそうぎのへいは、うーちゃんがまとめてやっちゃうのはだめなのか?」

「・・・。」

 

 その発言に呉の将たちは目を丸くした。あー、うーちゃんにはまだ説明してなかったもんなぁ。

 

「はっはっは! 威勢の良い娘っ子じゃ! 相当己の武に自信があると見える。」

「とうぜん! にんげんごときにまけるうーちゃんではないぞ!」

「・・・人間ごとき? 今そう聞こえたのだけれど・・・。」

 

 こっちもまだ説明してなかったね。先に言っておくべきだったかな、反省。

 

 

「会議が終わった後に言おうと思っていたのだがな。 漆、零、燼。 挨拶しろ。 相手にも分かるようにな。」

「うーちゃんはこくりゅうのうーちゃんだ!」

「私は、白竜の零。」

「はじめまして。 紅竜の燼だ。 今後とも、よろしく頼む。」

「本当はもう一人いるのだがな、今所要で席を外している。 皆、私の仲間だ。 良くしてくれると助かる。」

 

 雪蓮と水蓮さん以外は唖然としている。二人は何か納得がいったような表情を浮かべてるけど。

 

「なるほど。 先日に感じた異様な気の正体はそなたたちだったのか。」

「一刀たちのとこにまた凄いのが来たわね~くらいには思っていたのよ。 納得がいったわ。」

「あ、あれ、こっちまで気が届いてたの?」

「嫌でも気付くわよ。 あれだけ馬鹿でかい気が複数出現したのよ? しかも鈴と同質のものがね。」

「・・・なるほどね。」

「ま、曹操ちゃんも気付いてるだろうけどね。 相当警戒しているはずよ。」

 

 呼ぶタイミング間違えたかな?・・・いや、呼んだのは俺じゃない。

 

「なぁ、うーちゃんがぜーんぶかたづけちゃだめなのか?」

「うーちゃんには難しい話かもしれないけど、俺たちは三国が手を取り合えるような関係を目指してるんだ。 次の戦でうーちゃんが大暴れしたら絶対的にあっちの兵数が減っちゃうから。」

「う~ん?」

「やっぱり難しかったか。」

「漆、説明するから。」

 

 零ちゃんがうーちゃんに説明するようで、二人とも部屋の端っこに向かった。零の説明で大丈夫だろうか?

 

「我ら竜が加担しては平等ではないからな。 まぁ、一刀を脅かすようであれば我が自ら出るが。」

「加担するって言ったりしないって言ったり・・・。」

「お前が苦戦すると思っていないからな。 万が一だ。 それに、お前のとっておきを私はまだ見ていないからな。 そこも含めてだ。」

「あれは・・・まだ制御できないから。」

「話を戻しても良いだろうか?」

「あ・・・うん。 お願いします。」

 

 ・・・と、また話が逸れたな。

 

「次の戦場だが、赤壁になりそうだ。 曹魏は海上から攻めてくるという情報を掴んだからな。」

「はい、それは私も把握しています。」

 

 いつの間に・・・。

 

「それと・・・」

「・・・(ぐぅ~)」

 

 ・・・ん?今会議中の空気に似つかわしくない音が聞こえたような。発信源を見てみれば恋がこちらを見ている。いや、俺を見つめている。この表情は・・・

 

「恋、もうちょっと待ってくれるか。」

「もう・・・限界。」

 

 これはやばそうだな。

 

「今日はこのくらいで良いじゃない。 一刀たちもこっちに着いたばかりだし、会議なら明日にでも出来るわ。」

「・・・そうだな。 朱里もどうやらお疲れのようだし。」

「そんなことは・・・(ぐぅ)はわわ!!//」

「体の方が正直のようだな。」

「う~、すみません//」

 

 どうやら今日の会議はこれでお開きのようだ。

 

「明日には大体の作戦を決めたい。 急ですまないが、考えをまとめておいてくれないか?」

「分かりました。」

「・・・お話、終わった?」

「うん。 ご飯も食べれるよ。」

「!!」

 

 途端に元気になったな、恋。

 

「夜の宴の準備は整っているからな。 それまでゆっくり休むと良い。」

「ありがとうございます。」

「それではお部屋へご案内します。」

 

 愛璃さんに案内され部屋へ・・・の前に、恋のご飯買いに行かないとな。

 

「すみません、俺は恋と市に行ってきます。 部屋は桃香に伝えておいてください。」

「承知しました。」

 

 それから俺たちは市に向かうのだった。・・・恋!引っ張らないでーーー!!

 

 

あとがき 読んでいただきありがとうございます。今回の話はいかがでしたでしょうか。ついに薔薇と百合がメイドデビューしました。させちゃいました!←どっちでもいい 百合が部屋を片付けるたびにドジっ子ぱわあで何か(色々と)起こしてくれると祈っています。一刀たちの二国会議と菊璃たちの左慈・于吉捜索ですが、話を分けて進めて行こうと思います。第九節~~~~。~~編という形にします。更新についてですが、会社の研修が始まり執筆時間が思うように取れず更新が追いつかなったことについては自分の裁量不足です。申し訳ございませんでした。これからは執筆時間を上手く取り週一投稿を心がけますので、読者の方々にはご了承いただいた上で一読していただけると幸いです。それでは次回 第九節・軍議と呉の歪/二国会議編 をお楽しみに。

 


 
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