No.636058

超次元ゲイムネプテューヌ 未知なる魔神 ルウィー編

さん

その19

2013-11-11 14:36:24 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:494   閲覧ユーザー数:492

ドンっと力強く机を叩く音が響き天井に吊るされた電球が揺れた。

 

「あれほどまでの戦力を投入して、潰せないだと!?」

 

「ナイアさん!あなたが私達に教えてくれた理論だと、FDVシステムは無敵のはずだ!教会に配属されている者では太刀打ちできないほどの力を持っている筈ですよ!どういうことですか!!」

 

「この世界には絶対という文字はありませんよ」

 

過激派ギルドのリーダー格である中年の男性とその部下である若い男性にナイアーラトホテップは目を細めた。そこから放たれる冷たい眼光に思わず二人は口を閉じた。

あり得ないーーーあれほどのキラーマシン30機、ハードブレイカー10機という大軍を差し向けて結果はゼロだった。女神を滅する所か、教会を崩壊させることすら失敗に終わり全機の消息は不明となった。

 

「奴らは怪物でも飼っているのか……!」

 

それだけではない、倉庫で建築中のハードブレイカー、キラーマシンの姿まで消滅(・・)したのだ。

存在破壊ーーーこの広大に広がる宇宙の辞典から消しとる暴虐的なまでの力の行使によって存在そのものを無かったことにする素の破壊神が得意とする破壊方法の一つだ。これに関することはこのゲイムギョウ界ではデペアとナイアーラトホテップしか知らないことで、それを知らぬ二人は頭を抱えた。

 

「ナイアさん、他には手にありませんか!?私達に出来ることなら、なんでもしましょう!」

 

「貴方達は随分、自ら信仰する女神を愛し、他の女神を嫌悪しますね」

 

青年が立つ。自由が欲しいと語った。今の教会の制度を叩きのめしたいと言っていた青年だ。

 

「このゲイムギョウ界に女神は一つで十分なのです!女神は絶対なる存在者!その栄光に背を向けて他の偽りの女神に魂を売り、そして教会の奴らは支配することを望んだ。その地で生まれた人民はその地の女神を信仰しなければ異教徒として粛清の対象になる」

 

「しかし我らは考えて一つの結論に至った。女神という存在者は一人で十分なんだと、ゲイムギョウ界を治める神は只一人、パープルハート様で十分なんだとーーーこれが、私達ギルドの心です」

 

「---売魂者」

 

「…なに?」

 

「私の愛しき友が、貴方達のような人種に名づけた名前ですよ」

 

神に縋りつき依存してしまった者は疑うことを辞めてしまう。

例え、それが神のご意志でなくても自分のしていることに疑いを持たない者は、人として非道徳的なことでも一切の躊躇なく執行するだけの残酷さがある。

なぜ、そんなことが出来るのか。それは自分のしていることは自分を守ってくれているという幻想に憑りつかれた者は、決まって自分の行動の保障は神が責任を持ってくれていると考える。

 

故に、善悪関係なく神に依存して正気を無くしてしまった者。

それが勇者であれ、殺人鬼であれ、人として考えることを辞めてしまった自我を売ってしまった者のことを夜天 空は『売魂者』と呼んでいる。

 

「話を戻しましょうか。……そうですね、私に全てを委ねるのなら貴方達の望みは成し遂げられる」

 

「……それは?」

 

ナイアーラトホテップもその呼び名を気に入っている。

善なる神はすることは基本後先だ。救いを求められ、災いを知って、対処に当たる。絶望に沈み、明日を見失ったその時、神々しい姿を見せながら慈悲深い笑みをして全てを優しく救うだろう。その姿に人々は、崇められずにはいられない同じ人間がしたことは英雄やヒーロー等を称えるが、次元の違う存在に対しては頭を下げて感謝せずにはいられない。

そして、神は去っていきその後ろ姿を見た人々は、自分の手では解決できないことがあるのだと理解して、自分から解決することを諦める。そして、いつか同じような出来事に恐怖を抱きひたすらまた望めば救ってくださると言う空想の元、いつまでも神を崇めるだろう。ただ、人間の場合は飽きっぽい性格もあり、時間が過ぎていけば衰退する場面もある。それを防ぐために神は自ら災いを引き起こし、人々を絶望の淵に追い込みそれを救うという八百長試合のようなことをする輩までいる。それを続けていけば、人はいつしか神の手によって生きていけれることを信じて、神の意志のまま生きていくことになるだろう。例え、それが偽りであったとしても。

 

「---貴方達の魂をエネルギーとして新たな兵器を造ります」

 

「な、なんですって!?」

 

「き、貴様…ぐっ!どうしてこんな所に触手が!?」

 

『売魂者』はある意味、被害者と言ってもいい。

様々なパターンがあるが、例えば神の救い手が届かず先に邪神を崇めて、邪神の魔力で繁栄して救ってくれなかった他の神を毛嫌いするようになる事もよくある。

夜天 空は産まれ(・・・)が原因なのか信仰されることを嫌っているので、旧神の中でもトップクラスの実力であっても隷属という曖昧な場所から抜け出せないでいる。旧神の存在理由、邪神の夢、そのどちらも客観的に見れば正しいと思っているからこそ、夜天 空は人間の様に悩み苦しんでいるのだ。答えなどない問題に永遠に立ち向かうのだ。

 

「愛しき友を助けるために、そしてこの世界の混沌へ導く因子を育てるための糧となってください」

 

「なんだそのかが……あががががががががががががががががががががっがががが」

 

「ノアqのくぁぼあにエネな0pmあ!?」

 

結論を言ってしまえば、そもそもな話。

善であれ、悪であれ、人にとって神という存在は必要であるか、不必要であるかが問われるのだ。

糸の切れた人形のように青年と中年は倒れた既に息はしていない。彼らの魂はナイアーラトホテップの持つ『ニトクリスの鏡』によって喰われたのだ。

 

「これで全員(・・)、実に質も品もない三流レベルの魂ばかりでした。所詮立ち絵すらないモブキャラ程度でしょう」

 

ナイアーラトホテップは、立ち上がり歩き出す。

魂を燃焼させ周囲の空間に対する超物理的な影響力を発生させる。小型『アルハザードのランプ』を中枢術式とした全く新しいロボットを製造しなければならない。

ナイアーラトホテップは『ニトクリスの鏡』を片手に見る者の身も凍る冷笑を浮かべた。

 

 

「陳腐でご都合で品のない演劇を開きましょう。

三流程度には上り詰めてくださいね。ヌギル=コーラスの落とし子よ」

 

 

 

 

 

 

空曰く体調は寝ていれば治るとのことで、俺達は眠り始めた空の部屋から出てホワイトハート様の執務室に案内してもらった。それにしても体中が痛い、ギャク補正がなかったら確実に死んでいた。自分で撒いた種を燃やしてその後処理を全部押し付けてきたデペアが後で〆る。絶対に。

 

「黒閃には名乗ったけど、改めて私はこの地の守護女神(ハード)ホワイト―ハートこと、ブランよ。貴方達には本当に感謝しているわ」

 

「アイエフよ。色々と悩みが一緒の身としてよろしくね」

 

「コンパです。よろしくです」

 

「困った事はお互い様だよー。あ、私はネプテューヌだよ」

 

「黒閃、これが貴方達のパーティーなの?…あと、ネプテューヌがいるってどういうこと貴方、自分の国はどうしたの?」

 

「ネプテューヌは記憶喪失なんだ。今はその記憶を探す為に旅をしているんだ。こんな状態じゃ自分の国どころじゃないだろう」

 

「……なるほど、道理で私と会って初対面のように話すわけね」

 

後でネプテューヌが恥じらうようにエヘヘと頭を掻いた。

ブランは納得したように頷き西沢さんに目で指示を送ると、部屋から出た。俺達その後ろ姿が消えるまで目を離せなかった。

 

「……本当に生きているのよ」

 

「空ちゃんが物凄いことが知っていたけど、本当に規則外だよね」

 

「ホワイトハート様…そのロムちゃんとラムちゃんは…」

 

「大丈夫よ。あのことは夜天の言うとおり全て悪夢だと思いこんでいるわ。今は部屋で仲良く二人で遊んでいるわ」

 

「良かった……」

 

大人でも見てしまえばトラウマになるかもしれない胸に風穴が空いたあの惨状に女神候補生と言っても五歳ぐらいの幼女が見て精神的に一生の傷を残す最悪の事態は回避できたか。

 

「……やっぱりハードブレイカーとかハードブレイカーは空ちゃんの言っていた通りが犯人なの過激派ギルドなの?」

 

「夜天の話を聞く限りそうね…あと私の事はブランでいいわ。ネプテューヌにホワイトハート様とか呼ばれてだけで鳥肌が立つ」

 

「ひどーい!」

 

「記憶失う前の貴方って本当に他の女神に嫌われていたのね…」

 

ブランの手には空が俺達に見せてくれた誘拐された人が書かれたメモ帳が握られた。今は無理だが後で遺品も送るそうだ。既にプラネテューヌの空従者から一度連絡が来たらしく近々、回復した人を丁重に家族の元に返すと言う話があった。本当に手が早い。俺達がしたのってハードブレイカーとキラーマシンと戦ったぐらいだ。

 

「過激派ギルド……、場所は大体分かっていたけど、私だけじゃない……この教会を襲ってきた。もう見て見ぬことも出来ない」

 

「私達も協力するよ!ロボロボ軍団が来るかもしれないし」

 

ネプテューヌが挙手をして協力することを言う。コンパもアイエフも俺もだが予想をしていたことなので驚くことは無かった。俺達と共に旅をしたネプテューヌは守護女神の名に恥じないようにいつも誰かを助けようとして守ろうとするーーーそんな奴だから俺はこいつに付いていきたいと思ったんだろうな。

 

「いえ、いいわ。これは私の国の問題よ」

 

「…ブラン様、あれは対女神の兵器なのよ」

 

「分かっているわ。女神の力になってくれる協力者がいる。貴方達はもう関わらなくていいわ…大事な探し物があるんでしょ?」

 

「……協力者?」

 

「えぇ、女神の代理と言うべき存在よ。女神が不在時に秩序と循環を司る存在ーーーゲイムキャラに力を借りるわ」

 

ブランの力強い瞳に俺達は一斉に頭を抱えた。

何故なら、相手はまず保険を潰すと言うことでゲイムキャラは既に破壊されていること空から伝えられているからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー聞こえる?ポチ

 

ーーーはい、主様。旧神の鍵・儀典をお使いになったのですね。

 

ーーーどうして分かるの?

 

ーーー私はあなたの従者ですから

 

ーーーあ、そう……所であの二人に連絡した?

 

ーーーはい、主にもしものことがあればということで

 

ーーーホワイトハートの事を言っても動かないだろうけど、紅夜がちょっと危険ならあの二人は間違いなく動くだろうね。

 

 

 

 

 

 

 

 


 
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