徒歩での移動を開始して約一時間が経過し、マンションが見えて来た。<奴ら>(孝達がそう呼んでいる理由を聞いて俺もそうする事にした)は相変わらず道の邪魔をして来る。
「キリが無いな・・・・」
だが、幸いと言うべきか、丁度八体いる。左腰のホルスターからリボルバーを引き抜き、前進しながら一体ずつにマグナム弾をお見舞いした。ゲーム並みに呆気無く脳味噌を吹っ飛ばされた<奴ら>はバタバタと倒れる。銃口から立ち上る硝煙を吹いて霧散させると、シリンダーから薬莢を抜いた。
「ス、スミス&ウェッソンのM327八連リボルバー・・・・!!ネットでしか見た事無いけど、スゲーーーーーー!!!」
ガンマニアめ、感心してる場合か。ロッカーの中身見たらコイツ発狂するだろうな。
「今のは結構響いた。もっと来る前に走れ。」
マンションの鍵を開け、全員が入ると、再び施錠をした。全員をリビングに上げると、それぞれ椅子に座ったり、地面に寝転んだり、ソファーに体を預けたりして溜め息をついた。一先ず安全だな。
「さてと・・・・・静香。」
「何?」
「とりあえず女子連れて風呂入って来い。風呂場は広いから全員入っても広い。服は洗濯機に放り込んでろ、洗うから。」
「うん・・・・」
「さてと。」
まずは飯の支度だな。俺はとりあえず肉やら卵、魚等の冷凍保存しないと腐る食材を冷蔵庫から引っ張り出した。本格的にやるのは久し振りだな。
「滝沢さん、何してるんですか?」
「あ?見りゃ分かんだろ?全員分の飯作ってんだよ。電気や水は現代社会では生きる為のライフラインだ、使える内に有効活用する。それに、ここにはそう長くはいられない。コータ。」
「は、はい!」
「椅子にかけた俺のジャケットの左内ポケットに鍵束が入ってる。左から三つ目の鍵で、あのテレビの隣にある右側のロッカー二つを開けろ。中にライフル二つ、ショットガン、後は弾薬とクロスボウが入ってる。マガジンに弾詰めとけ。孝は食器出して飯の支度を手伝ってくれ。流石に七人分の飯の準備は骨が折れる。それが終わったらコータに手を貸してやれ。」
「分かりました。」
簡単に作れる全員用の料理って言ったらカレー位しか無いからな。とりあえず保存が利かない野菜やら肉を刻んでぶち込んだ。そこら辺にある香辛料も適当に入れると、まあ良い匂いがして来た。自分で言うのもあれだが、味見してみると結構美味い。飯が炊けるまでは時間が掛かるし、女子は風呂が長いからまあ大丈夫だろう。適当な付け合わせも幾つか出来た。
片付けを済ませると、自室のノートパソコンで情報を集め始めた。どうやら日本だけじゃなく、ヨーロッパやアメリカでも同じ様なことが起こっているらしい。俺はいよいよ心配になって来た。ゾンビ映画の大半では電力や水道はダウンせずに登場人物達が使える状態にあった。だが、この世界は映画じゃない。世界中でこんなことが起こってるなら、核戦争だってありえる。もし核兵器をぶっ放されたら黙示録の何百倍も悲惨な事になる。
「こりゃあ、いよいよまずいな。」
更に最近の兵器は使われる側に回るとかなり面倒だ。原爆とミサイルもそうだが、こんなパニック状態の社会に一番の大ダメージを与える兵器はEMP、電磁パルス。電気を使う物の大多数を只のがらくたに変えてしまう。生きる為のライフラインと、情報入手・伝達の手段を一気に失ってしまう。
「対策が無い訳じゃないが、EMP対策をしてる所なんて限られてるからなあ・・・・」
そんな中、段々と風呂場が騒がしくなって来た。集中出来ねえ。パソコンの電源を落とすと、俺は浴室に繋がる洗面所でドアをノックした。
「お前ら、仲良くふざけ合うのは結構だが、 そろそろ飯が出来上がる。着替えは静香やリカの物があるから、それで今は我慢してくれ。」
返事を待たずにコータがどうしてるか見に行ったら、思った通り鼻歌混じりでマガジンに弾を込めていた。孝はそれを苦笑しながらも手伝っている。
「よう、楽しそうだな。」
「滝沢さん、これどこで手に入れたんですか!?マジヤバな銃ばっかりですよ、これ?!このM1A1の装弾数とか、全部違法ですよ違法!?」
目の色変わって輝いてるし、鼻息も荒い。エクスタシーでも摂取したみたいだ。そんなに実銃に触れて嬉しいのか?
「ああ、まあな。俺がSATの現役時代にコレと海外で買い物に行って、それを分解して自宅に速達で届けた。殆ど俺が払わされたが。結構良い物が手に入ったぜ?」
小指を立てて答えてやる。実際部品を組み合わせて銃を組み立ててこそ本当に違法になる微妙な所なんだがな。鍵を返還してもらって俺のロッカー二つを開けると、中からモスバーグM590A1を取り出した。
「俺の相棒だ。」
「銃剣を付けられる軍用モデルのモスバーグ!!ライトもシェルホルダーも付いてる!!それに滝沢さんのホルスターに入ってるそれはシグザウエルP226X6 LW!マンションに入る前のM327も・・・・あ〜〜〜〜、俺もう死んでも良い。ここは天国だ。」
何を大袈裟な。
「基本銃の扱いと誰にどれを使わせるとかはお前に任せる。だが、本当に必要になるまで絶対使うな。音で<奴ら>が寄って来る。それと、飯の用意が出来たから食いに来い。」
しばらくしてからようやく全員が揃い、食事が始まった。
「量もあるし、物によったら多少ヘビーかもしれないが、丸一日何も口にしていなかっただろ?作れるだけ作った、好きなだけ食え。」
「圭吾のご飯美味しいんだよ〜。」
ほくほく顔で静香は小躍りしながらバスローブ姿の沙耶、麗、そして冴子の三人を食卓へ押しやった。
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とある民間軍事会社に勤めていた傭兵は、僅か二十六でその生涯に幕を閉じたが、次に目を開けた時には、赤ん坊として生まれ変わっていた!
チートな特撮の武器も『神の介入』と言う事で出します。