No.633909

talking(DMC・VD/腐向け)

るあさん

捏造1兄×初代のつもりで書きました。1兄はおめめまっかでネロアン仕様で初代と身長差が出来ているのもまたいいと思います。でも4兄になったら碧眼に戻ってて今まで喋れなかった分も口煩そうです。

2013-11-03 22:12:06 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2137   閲覧ユーザー数:2132

 

紙の擦れる微かな音が軽快な話し声に交じり聞える。

男の話声は大きく大袈裟と呼べるほどに抑揚があり、両の掌を持ち上げては身振り手振りで自分の感情を表した。

それは青年が本を読んでいるに関係なく続けられ、もう一人の青年はただただ一人でに喋り続ける。まるで息をしているようだとも思わないでもない。小鳥のさえずりのような清廉な鳴き声ではないものの、男の話声は聞く者に不快を与えるでもなく続けられる。

青年が本を捲りページを変えたタイミングを見計らって、喋り続けていた青年がソファーへと身を投げ出した。

二人で並んで腰かけても十分に広い革張りのソファーは、常人よりよほど体格のいい男二人の体を柔らかく受け止めてくれる。柔らかすぎず、少し沈むくらいがいいんだと口走った記憶は古くない。

ゆったり背もたれに体を預けた方、弟のダンテは近い距離をさらに近づけるよう、隣にいる兄の腕に頭を寄せる。するとあしらうでもなく頭を撫でてくれると分かっていて、猫が甘えるように擦り寄り懐く。

案の定、本から視線を外すことなくも伸びてきた大きな手がダンテの頭を優しく撫でた。長い指が頭皮を擽り耳の裏を掠める。少しだけ背筋が粟立った。

頭をすっぽり包み込んでしまう兄の手は大きい。手を合わせたらダンテの指が包まれてしまうほどには。

彼らは兄弟であっても双子あって同じ時に生まれたからこそ、互いを鏡合わせにして生きてきたのがそれも数年前のことだ。

兄が魔界に行って帰ってきてからどういうわけか双子には大きな差が出来てしまった。まさか兄に上から見下ろされる日が来るなど思ってもみなかったものだ。それでも、あの鎧の悪魔の背恰好でこなかっただけマシといえようか。あの巨大な体躯でこられたらそれこそ大人と子供の差になってしまう。

それでも今もやはり生まれた身長差には馴染めないでいる。昔を思い出してもきりがないが、同じ目線でものを見ていた時とは少し違う。高い所のものをとるには兄の手を借りるのが早いし、力だって彼の方がある。間違ってもダンテが貧弱なわけではない。兄・バージルが規格外になりすぎただけなのだ。

ダンテは、ふと物思いに耽り兄の横顔を覗いた。

父によく似た、端正な顔立ち。年を取ったことで兄は父と瓜二つになってしまった。

しかし、父とは違い兄の眼は赤い。否、父も赤かったのかもしれない。悪魔は赤い瞳を持つ者が多く、食らいついた獲物の血を糧にしているのをまざまざ見せつけている。

ダンテの瞳もそうだ。感情的に、はっきりと言ってしまえば悪魔としての自身に近付いた時は瞳が赤く煌めく時もある。その時は美しい空色の瞳は真っ赤に染まってしまうのだ。

それこそが今ある双子の決定的な違いといえよう。

昔は鏡合わせだった彼らには確固たる違いが出来てしまった。いまさらそれを嘆くではないが、瓜二つとは到底言えない。

小さく息を吐く。溜息ではない、吐息を漏らしただけだ。

だが、隣の兄には耳聡く聞えていたのか、どうしたと赤い瞳が尋ねてくる。

「ん、何でもねえ。本読んでたんだろ。だったら俺もなんか飯でも作ってくる」

首筋を撫でる兄の指から離れれば肌寒さを感じてしまうのは人肌に慣れすぎたせいか。

ダンテは甘えたな自分を自覚しながらソファーから身を起こすと、心配するなと兄の額に唇を落とす。掻き上げられた髪は稚拙な口付けを邪魔することはないのだが、すぐに終わってしまうのが勿体なくてもう一度唇を落とした。熱が移っていく、微かな感覚。

「バージ……うわっ!」

名残惜しげに離れる際に囁いた名は思いのほか吐息交じりで、何かを期待しているようでもあったが、意図したつもりはない。

しかし、屈めた体を真っ直ぐに起こそうとしたダンテの体は力強い腕によって引き戻され、そのまま兄の膝の上に落ちていく。片腕で腰をがっしり掴まれたまま、子供が親に甘える時のような格好で向き合い膝の上に座らされた。

「何んだよ、甘えたいのか?」

それはいったいどっちの台詞か。己を嗤いながらもダンテは揶揄してバージルの頬に己の頬を擦りつける。色白の兄の肌は冷たくひんやりしている。それにふるりと肌を震わせると、あやすように背中を撫でられて互いの距離はより近いものとなる。

心音が聴こえる。兄の心音は希薄過ぎて、自分のものだけが大きな音を立てているのが恥ずかしかった。

「な、本はもういいのか」

ぎゅっと腕を回してくる兄の手に本はない。見ればソファーに投げ出されている。

さっきまで指をしおり代わりにしていたのだ、閉じられてしまった本はまた同じページを探さなくてはいけない。

「……いい。お前の声をもっと聞いていたい」

微かな、殆ど吐息と違わぬ声。

いまだ声を出すことを苦痛とするバージルは必要以上に喉を酷使することはなく、今となって喋ることは稀だった。過去を思えば驚くほどにバージルは無口であり、罵声すらも飛ばさなくなった。

その代わりに囁かれたのが経験豊富なダンテでも腰砕けになってしまいそうな言葉だ。掠れた音も相まって耳に残る吐息はダンテの頬を紅潮させるには十分だった。卑怯だとすら思えてしまう。

「アンタは、もう……そういうこと言うなよ」

顔を赤くしたダンテは困惑を浮かべてから子供のように膨れ、バージルの腹を軽く拳で叩いた。バージルは訳が分からないと首を捻らせる。

喋りすぎのきらいがあるダンテが自ら、読書の邪魔をしないようにと配慮した結果がこれだ。意図せぬままに兄の方が上手で弟の扱いに慣れていたのだと言えよう。

「飯はまた後でだ。俺を捕まえたからにはたっぷり甘やかせよ、お兄ちゃん?」

照れを隠すために浮かべた悪戯っ子の笑みはそのままに、触れるだけの甘いキス。

ちゅっと音を立てれば背中まで抱き込んでいた手が頭に添えられて求められるがままに深いものへと変わっていく。

真っ赤な双眸に映し出された己の青い瞳はすでに蕩けきっていて、早くも熱に浮かされ始めているのを自覚し、ダンテは口端を吊り上げた。

 

 
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