「破廉恥でござる!」
蝋燭の明かりに照らされた夜の廊下を歩いている者が二人いる。先日、仲間になったばかりの凪と沙和だ。彼女らは元親と共に街の警備隊に所属することになり、今は今日の警備の報告書を隊長である元親に届けるべく彼の部屋を目指していた。
「うぅ~、凪ちゃ~ん。私眠いの~、報告書は明日じゃだめなの~?」
「今日の報告書を明日に回したらダメに決まっているだろう? 大体、こんな時間になったのは沙和が報告書を作るのが遅いからだろう・・・」
眠そうな沙和に凪が喝を入れる。そもそもこんな時間になっているのは、凪が沙和の報告書を手伝っていたためだ。真面目な凪は日が落ちる前に報告書を出しに行こうとしていたが、その途中で沙和に捕まり、今に至っている。
「やっぱりダメなの・・・でもアニキなら笑って許してくれ・・」
「隊長の寛容さに甘えるなよ、沙和・・・?」
恐らく、元親なら一日くらいの遅れは笑って許してしまうだろう。しかし、凪はそのような考え方を嫌っており、甘える沙和にきつい視線を送る。
「う、そ、そういえば、真桜ちゃんはどこに行ったのかな~?」
「む、確かさっき、武器を持ってどこかに行くのを見かけたな」
「・・・武器を持って? どこに行ったんだろう?」
「さぁ?」
きつい視線から逃れるため適当に真桜の話題を出すと、まんまと凪は乗ってきた。しかし、凪の見た真桜の不可解な行動に二人で首を傾げるのだった。
さて、そうこうしている内に元親の部屋の前までたどり着いた。早速、報告書を渡すために中に入ろうとするが何やら声が聞こえる。
「おいおい、真桜よ。デカいデカいと思ってたが・・・マジでデカいな!」
「当たり前やないか!ウチの大きさは春蘭様にも負けへんでぇ!」
「そうだよなぁ・・・なぁ、触っても良いか?」
「ええよ、でもあんまり乱暴にせんといてや?」
中から聞こえる会話に二人は顔を赤らめる。これは、もしやと・・・と考え始めた所にさらに会話が続く。
「おおっ!かなりの重量じゃねぇか・・・」
「せやねんなぁ・・・、正直、肩凝ってしゃーないねん」
「まぁ、こんだけデカけりゃな」
「そや、ウチのだけじゃなくて、アニキのも触らせてぇな?」
「ああ、いいぜ。自分で言うのもなんだが、かなりのモンだぜ?」
「うひゃ~、これは凄いなぁ、こんなんで突かれたら一発やんか・・・」
もう間違いないでは無いか。二人の会話はどんどん進んでいく、
「な、凪ちゃん?これはまずいんじゃないの?」
「隊長と真桜は仲が良いとは思っていたが・・・。まさかここまでとは・・・」
そう、真桜と元親は誰の目から見ても仲が良かった。カラクリという共通の趣味と元親の豪快な人柄に真桜は特に懐いていた。だが、まさかここまでの関係とは・・・会話もどんどん盛り上がっている様だ。
「どうするの~!? 止めるの? それとも見てない振りをするの?」
「・・・突撃だ・・・」
「・・・え・・な、凪ちゃん・・?」
あわあわと慌てる沙和を尻目に完全に目の据わった凪が扉に手を掛けて一気に開く
「隊長ッ!! そこまでですッ!!」
「「うわッ!?」」
「隊長、見損ないました!真桜を手籠めにしようなんてぇ?」
「何、これなの~?」
突然開いた扉と大きな声に驚いた元親と真桜は固まってしまうが、同時に凪と沙和も固まってしまう。部屋にはなにやらカラクリの部品が散乱しており、元親の手には真桜の武器が、真桜の手には元親の武器がそれぞれ握られている。
「あ、あの・・・、何をなさっていたのですか・・?」
恐る恐る凪が訊ねる
「何って・・・、アニキとカラクリの話して、お互いの武器について話をしとったんやけど?」
「ていうか、凪よ? 俺がいつ真桜を手籠めにしようとしたんだ?」
「「な、なんだぁ~」」
どうやら、二人の勘違いだったようだ。キョトンとする元親、真桜を尻目に凪、沙和が安堵の表情を浮かべている。勘違いされた二人は、説明を求める
「じ、実はなの~」
沙和が恥ずかしそうに事情を話す。聞いていく内に、二人は腹を抱えて笑い出した。
「ははははっ、お、俺が・・・真桜をなぁ・・・・」
「あははははっ! ウチがアニキとなぁ~、まぁ別にアニキにやったら抱かれてもええで?」
「おいおい、バカな事を言ってんじゃねぇよ」
「うわ~真桜ちゃんってば、大胆なの~!」
「た、隊長・・・すみませんでした! 勘違いとはいえあのような・・・」
どさくさに紛れてとんでもない事を口走る真桜に、照れる沙和、必死に謝罪する凪、元親の部屋は一瞬にして混沌とした空間になった。
「おい、おめぇら!少し落ち着け・・・あと凪。別に気にしてねぇから頭上げろ」
元親の一声で落ち着きを取り戻す三人だった。さらに、元親は凪と沙和に、ここに来た要件を訊ねる
「で、こんな時間に俺に何の用があったんだ?」
「そうでした。今日の警備の報告書を持って来たんです!」
「持ってきたの~!」
「なんや、そんだけの用かいな、ウチとアニキの時間を邪魔しよってからに・・・」
「何を言ってやがる、真桜よう・・・とにかく、受け取るぜ。ご苦労さん」
何か拗ねている真桜にツッコミを入れつつ、報告書を受け取る。
「じゃあ、今日はもういい時間だからな、全員、部屋に戻って休みな・・」
「え~、アニキ~もう少しええやないのぉ」
「そうだよ~、沙和もお話したいの~」
「真桜、沙和、いいから帰るぞ! では、隊長、失礼します」
こうして三人は部屋を後にする。
薄暗い廊下を三人は歩いていく
「はぁ~もう少しやったんやけどなぁ~」
突然、真桜が呟く、残りの二人は何の事だと怪訝な顔をする
「何の事なの~?」
「何を言っているんだ、真桜?」
二人の言葉に、急に艶めかしい顔になった真桜が答える
「何って・・・もう少しでアニキとやr・・」
「そこまでだ!」
「そこまでなの~!」
危ない発言をしそうになった真桜を二人が止める。それからも三人でキャッキャッと騒いでいる。そうして、夜はさらに更けていくのだった。
短くなりましたが、元親と新規参入の三人との拠点話です。少し破廉恥になってしまいましたが、いかがだったでしょうか?自分は書いてて何か楽しかったですww
それでは、ここまで読んでくださった方には最大級の感謝を、では!
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前回に続き拠点話です。今回、破廉恥成分が少しあるので、気を付けてくださいね。
それではどうぞ