No.632967

真・恋姫†夢想~世界樹の史~第一章・忘れ草編

alcaponさん

※この物語は特にどの√が本筋というわけではありません。
※筆者は三国志好きのため、姫武将以外もオリジナルで登場します。

2013-10-31 23:16:08 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:4104   閲覧ユーザー数:3013

第五廻  それぞれの想い

 

 

 

 

華琳「一刀、とりあえず説明を聞きましょうか?」

 

華琳の言葉に覇気と殺気と殺気が篭る。

 

「「…。」」

 

そんな華琳を見て、一様に押し黙る一同。

 

一刀「え、えーっと…。

 

   お土産?」

 

華琳「春蘭!秋蘭!やーっておしまい!!」

 

「「御意!!」」

 

一刀「アラホラサッサ…アーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」

 

 

 

 

一刻後…身も心もボロボロな『天の御遣い』がそこに居た。

 

 

 

流琉「兄様…だ、大丈夫ですか?」

 

一刀「大丈夫じゃない…がくっ。」

 

流琉「兄様!!」

 

華琳「兄様…ねぇ?」

 

一刀「いやねもうほんとスイマセンでした反省してますから許してください華琳様。」

 

李典「(一息で言うたな…。)」

 

華琳「…。

 

   ハァ…ではちゃんと説明なさい。

   この子たちは何?」

 

一刀「…えーっと…。」

 

季衣「待ってください曹操様!」

 

流琉「季衣?!」

 

季衣「ボクが兄ちゃんに頼んだんです!ボクも兄ちゃんみたいに立派な太守様のもとで働きたいって!

   

   僕達が住んでた村は偉い人になんでもかんでも持っていかれちゃって、

   でもその偉い人は賊が来ても助けになんて来てくれなくて!」

 

流琉「私たちはあの街で、狩ってきたお肉を売って生活していました。

   そしたら曹操様の軍隊と会って…仲間と民を助けに行くって聞きました。

   

   賊なんか相手にならないくらい強くって、街の復興まで手伝ってくれるほど優しくて、

   だから、そんな人達の力になれたらって思ったんです!」

 

季衣「曹操様!ボク達を仲間に入れてください!

   ボク!力なら誰にも負けません!」

 

華琳「…ふむ。

 

   春蘭、彼女たちの実力は?」

 

春蘭「はっ!まだまだ粗はあれど、鍛えればかなりのモノになりましょう。」

 

華琳「そう…。

 

   あなた達の真名は?」

 

季衣「ぼ、ボクは季衣っていいます!」

流琉「私は流琉です!」

 

華琳「季衣、流琉。

   あなた達は私の親衛隊へ入りなさい。期待しているわ。

   それから、私のことは華琳と呼びなさい。」

 

季衣・流琉「はい!!」

 

季衣「やったね流琉!」

流琉「うん!」

 

手をとり合って喜ぶ二人。

 

華琳は微笑みながら、季衣達の後ろにいる三人組に目を移す。

 

華琳「さて、続いては貴方達ね。

   

   確か、楽進、李典、于禁だったかしら。」

 

楽進「はっ!」

李典「よ、よろしゅ~頼んます。」

于禁「お願いしますなの~…。」

 

華琳「秋蘭、貴方は彼女たちと戦っていたのでしょう?

   彼女たちの実力はどうなの?」

 

秋蘭「はっ、今はまだ未熟なれど、こちらも鍛えれば一角の将となるでしょう。」

 

華琳「なるほど。秋蘭にそこまで言わせるとはね。

   いいわ、貴方達の真名を教えてもらえるかしら。」

 

楽進「はっ!凪と申します!」

李典「ウチは真桜や。」

于禁「沙和なの~!」

 

華琳「凪、真桜、沙和。

 

   貴方達は…そうね、一刀の隊に入りなさい。」

 

凪「はっ!」

真桜「おおきに!」

沙和「はいなの~!」

 

華琳「皆も真名を交換しておくように。

   

   それでは、軍議はここまでとする。…一刀は報告書を提出なさい。」

 

一刀「り、了解…」

 

 

こうして、一挙に五人の将を獲得した曹操軍。

 

戦の気配は、未だ彼女たちを包み込んでいる。

 

 

 

 

 

 

 

 

Another view 一般兵

 

 

 

桂樹「ご主人様~~~~~~!!!」

 

男と呼ぶには少し至らない、やんちゃそうな男の子が彼をそう呼びしがみ付く。

 

一刀「わっ、こら!抱きつくな!」

 

ご主人様と呼ばれた彼は嫌がってはいるものの、強く振り払おうとはしなかった。

 

桂樹「だってだって!ご主人様と会うのは久しぶりですよ?

   これはもう…閨に行くしかありません!」

一刀「選択肢仕事して?!」

 

そんな彼らをジトッと見つめる三人の少女。

 

真桜「ご、ご主人様て…そういう趣味やったん?なんか残念やわ~。」

 

一刀「断じて違うぞ!」

 

凪「不潔です。」

 

沙和「そういうのはちょっと…なの~。」

 

一刀「見ろ!お前のせいで変な誤解を与えたじゃねぇか!!」

 

桂樹「五回だなんて…。

   僕は六回でも平気です…///」

一刀「何の話だろう?!

 

   ったく、ちゃんとみんな集めてくれてるんだろうな?」

 

桂樹「勿論です!演習場で待機していますよ!」

 

一刀「よし、なら行こうか。

   凪、真桜、沙和、北郷隊を紹介するよ。ついておいで。

 

   それから、王双!」

 

自分を呼ぶ我が隊長。

 

王双「はっ!お呼びでしょうか!」

 

真桜「声渋っ!?」

沙和「は、迫力あるの~…。」

 

ぐさっ…

 

王双「じ、自分、貴殿らとあまり歳は変わらない…。」

 

凪「?!」

真桜「ほ、ほんまかいな?!」

沙和「信じられないの~。」

 

ぐさっぐさっ

 

真桜「うぐっ?!に、睨まんといてぇな~…」

沙和「こ、怖いの~…」

 

一刀「あ~あ~、王双が凹んじゃったじゃないか…。

   失礼だぞ沙和、真桜。」

 

真桜「これ凹んでんのかい!

   な、なんや、すまへんなあ。」

 

王双「別に…良い。」

 

三羽烏「…。」

 

一刀「ほら、元気出せって王双!貫禄があるってのはいい事だぞ?」

 

王双「はい…。」

 

そう言って笑顔で自分の背中を叩く隊長。

彼は本当に、変わっていると思う。

 

数ヶ月前。

自分は人より大きい体、そしてこの嗄(しわが)れた顔のせいで周囲と溶け込めずに居た。

村で農夫として働きながらも、孤独な毎日を過ごしていた時、転機が訪れる。

 

    『天の御遣い』が兵を集めている

 

何かが変わるという期待。それでもこの孤独は変わらないという落胆が頭を駆け巡る。

気がつくと、自分は農具を捨て着の身着のままこの街へやって来た。

 

桂樹「さて、次の人~!

 

   おぉう…貫禄あるなぁ~。兵役の経験は?」

 

王双「…ありません。」

 

人よりも力がありながら武器を取って来なかった自分。

自分はとても臆病だった。死ぬのが怖い。死なせるのが怖い。

義勇軍として戦ったことはあるが…自分は戦から震える足で逃げ出した。

酷く情けなかったのを覚えている。

 

そんなことを思い返していると、自分たちは演習場へとたどり着いていた。

 

同僚たちが整列する中に、自分も入っていく。

 

一刀「さて、今日はみんなに紹介があるんだ。

 

   こちらの三人は左から于禁、李典、楽進だ。今日から北郷隊の副隊長を務める。

   普段は警邏隊を率いるが、新兵の訓練官を担う将でもある。

   さ、挨拶だ。」

 

桂樹「敬礼!!」

 

バッ と寸分の狂いもなく敬礼する北郷隊。

 

真桜「こら凄いわ~。

   兄ちゃん意外とやるやんか!見なおしたで~!」

 

凪「こら真桜!『隊長』だろ!」

 

真桜「あ~、すまんすまん!かっこえぇやん、隊・長!」

 

一刀「あ、あはは…。

   三人とも、よろしくね。

 

   それじゃ、北郷隊の鉄の掟を紹介しよう。

   王双!」

 

王双「はっ!」

 

鉄の掟。

それは北郷隊が、この場こそが自分の居場所だと確信させた掟。

隊長が初陣前に自分たちに言い聞かせていた言葉を、自分は一語一句覚えている。

 

 

王双「一つ!!」

 

だから自分は誇らしく、声高らかに宣誓する。

 

王双「友を守れ!!守られた友は友のための槍となれ!!」

 

臆病だった自分。

 

王双「一つ!!

   民を守れ!!跋扈する悪から民を守る盾となれ!!」

 

人を死なせることを怖がり、剣から逃げ出した自分。

 

王双「一つ!!

   命を守れ!!蛮勇を奮うことを恥とし生き残ることを誇りとせよ!!」

 

だから自分は盾を手にする。敬愛する我が隊長のように。

 

王双「我ら北郷隊!!天の精兵なり!!」

 

盾を打ち鳴らす音が、響く。響く。響く。

 

 

 

 

 

 

 

 Another view 華琳

 

 

私は、一刀から上がってきた報告書を読んでいた。

 

まず一つ。

 

それは今回の二千にも及ぶ大規模な徴兵である。

 

方法は至極簡単な事だった。

 

まず、商人に『天の御遣い』が兵を集めていると噂を流してもらい、

集まった兵を桂樹が管理する。

ここで一つ間を置くことにより、危険な輩を篩にかける。

民たちに『御使い』様と呼ばれ親しまれている一刀にとって、最も合理的な手段かもしれない。

 

続いては集めた兵を含めた警邏隊の編成案。

 

警邏隊、屯田兵、正規軍に振り分ける。

まず警邏隊は兵役の免除と、希望や推薦次第で正規軍への編入が可能となる。

屯田兵においては開墾や収穫を主とし、一刀が新しく提案した『生産牧場』を運営、

戦時においては復旧作業や兵糧の管理など後詰に徹底する。

 

正規軍に振り分けられた新兵は、凪、真桜、沙和の部隊にわかれ調練。

その後、本隊へと編入される仕組みだ。

 

ふふっ、よくもまぁこんなに思いつくものね。

これも『天』の知識なのかしら。

 

最後の行に目を移すと、小さな文字で何かが書いてあった。

 

「いつもおつかれさま。たまにはやすむんだぞ。」

 

…バカ。

 

私は顔が火照るのを無視し、侍女が入れてくれたお茶に手を伸ばす。

 

そこにはゆらゆらと茶柱が浮かんでいた。

 

 

 

Another view 華琳 end

 

 

 

 

 

 

 

 

黄巾党本拠地。

 

そこには曹操軍をはじめ、各諸侯が攻め込んでいた。

 

驚異的な兵数で城に立てこもる黄巾軍を、どの諸侯も攻め手を倦ね落としきれずに時間ばかりが過ぎていく。

 

諸侯たちは本陣へ引き返し、それぞれ軍議を開いていた。

 

 

 

 

華琳「賊も烏合の衆とはいえ存外に粘ってくれるわね。

   何よりもここまで攻められながらあの士気の高さ。何が彼らをあそこまで駆り立てているのかしら。」

 

桂花「そうですね…。

   諸侯がバラバラに攻め入ってる状況では、突出すれば良い的になるだけです。

   かと言ってこのまま膠着状態になるわけには…。」

 

華琳「ふむ。

   風はどう?いい案はあるかしら?」

 

風「ぐうzzz」

 

一刀「寝るな!!」風「おぉっ?」

 

華琳「おはよう。

   なにかいい策はあるかしら?」

 

風「む~、そうですね~。

  このまま諸侯が自分の手柄欲しさに攻め入れば、風たちも損害が大きくなるのですよ~。

  話のわかる人に連絡をとって、共同作戦をするのが良いかと~。」

 

華琳「となると、思いつくのは誰かしら?」

 

一刀「…劉備、かな。」

 

華琳「劉備?たしか平原の相だったかしら。

   見たところ大した兵数じゃないようだけれど。」

 

伝令「失礼します!」

 

華琳「あら、何かあった?」

 

伝令「はっ!

   『天の御遣い』様にお会いしたいという方が…」

 

一刀「俺に?誰だろ。」

 

伝令「劉備玄徳と名乗っておりますが…如何致しますか?」

 

一刀「タイミング良すぎだろ!」

 

華琳「たいみんぐ?

   まぁ良いわ。ここへ通しなさい。」

 

伝令「はっ!」

 

一刀「(この外史では俺と会ったこと無いはずだけど…)

   何のようだろうね。」

 

華琳「知らないわよ。

   手間は省けたんだから良いのではなくて?」

 

 

しばらくすると、懐かしい人物が天幕へと入ってきた。

 

劉備、関羽、張飛、諸葛亮、龐統。

 

一目見た瞬間、飛び出しそうになった。

 

胸が痛い。とても我慢できそうにないほどに。

 

それでも俺はまっすぐ前を向き、彼女たちを見た。

 

 

華琳「( ? 一刀…様子が変ね。)

 

   劉備、といったわね?用向きは何か。」

 

華琳の凛とした声が響く。

 

劉備「はい!こちらに『天の御遣い』様が居らっしゃると聞いて、ひと目お会いしたくて伺いました!」

 

華琳「そう。

 

   だ、そうよ?一刀。」

 

一刀「…あぁ。

 

   どうも、俺が『天の御遣い』北郷一刀だ。

   『はじめまして』、劉備、関羽、張飛、諸葛亮、龐統。」

 

諸葛亮「はわわっ!わ、私たちの事を!」

龐統「あわわ…。」

 

劉備「すっごーい!!やっぱり本物の御遣い様だよ愛紗ちゃん!」

 

関羽「そうですか?事前に下調べしておいた、という可能性もあるのでは?」

 

関羽は訝しげな表情で俺を見ていた。

 

ま、そうだろうね。

 

一刀「ははっ、無理に信じてもらおう、なんて思ってないよ。

   でも、そうだな…。

 

   諸葛亮、ちょっと。」

 

諸葛亮「は、はい、なんでしょう?」

 

俺は諸葛亮を呼び寄せ、耳打ちする。

 

一刀「寝所の下。」

 

諸葛亮「はわーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!?????」

 

関羽「ど、どうした朱里?!」

 

一刀「龐統、ちょっと良いかい?」

 

今度は龐統を呼び寄せる。

 

一刀「机の引出し、上から二番目の二重底。」

 

龐統「あわーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!?????」

 

劉備「雛里ちゃん!?」

 

真っ赤になる軍師二人。

ふたりとも頭は抜群にいいのに、そういうところは相変わらずだ。

 

関羽「き、貴様!二人に何をした!!」

 

掴みかかってくる関羽。

春蘭が止めに入ろうとするも、それを制し声を上げる。

 

一刀「我ら『三名』!!」

 

関羽「なっ!!!??」

 

後ずさる愛紗。

 

一刀「同年同月同日に生まれざるも!同年同月同日に死せんことを!」

 

関羽「な、なぜそれを…!」

 

一刀「ちょっとは信じてもらえたかな?」

 

関羽「…。」

 

俯き、バツが悪そうに口を閉ざす関羽。

それを見た劉備は目を輝かせながらも、関羽を叱責する。

 

劉備「ダメでしょ、愛紗ちゃん!御遣い様に乱暴したら!

   ごめんなさい、御遣い様。」

 

一刀「あはは、気にしない気にしない。

   ところで…俺に何か用があったんだっけ?」

 

劉備「はい!

   あの…御遣い様は、どうしてこの地に降りてこられたんですか?」

 

一刀「どうして、か…。」

 

華琳「(それは私も、いえ皆も気になっていたことでしょうね。

    さて、貴方はどんな答えを聞かせてくれるのかしら。)」

 

華琳たちも劉備たちも、真剣な眼差しで見つめている。

誤魔化しは効かないな、これは。

 

一刀「想いを…受け止めるため、かな。」

 

劉備「想い?」

 

一刀「あぁ。

   例えば君には、すべての民が笑顔で暮らせるようにしたいという想いがあるだろ?」

 

張飛「にゃ?!」諸葛亮「はわわ!」龐統「あわわ!」

 

劉備「ど、どうして分かったんですか?!」

 

一刀「天の御遣いだからね。

   そういう想いを受け止めるために俺はここに『居る』んだ。」

 

劉備「御遣い様…。

   わたし達の思いも、いつか受け止めてもらえますか?」

 

一刀「…もちろん。『約束』だ。

 

   さて、ではちょっと頼みがるんだが良いかい?」

 

劉備「は、はい!なんでしょう?」

 

一刀「まずは力を合わせて、賊を退治しちまおう。

   と言っても、諸葛亮と龐統は元からそのつもりだっただろう?」

 

諸葛亮「はわわ!ば、バレてましゅ!」

龐統「朱里ちゃん朱里ちゃん!噛んでりゅよ!」

 

真桜「(な、なんなんあの可愛い生き物は…!)」

秋蘭「(うむ、北郷がいう萌えというやつか。)」

 

華琳「決まりね。

   それでは桂花、風。諸葛亮たちと策の立案を。

   他の者達は体を休め、隊を整えておきなさい。

 

   それから…劉備たちは兵糧と資材も足りていないのでしょう?」

 

劉備「うっ…スイマセン。」

関羽「面目ない。」

張飛「切なくなるのだ…。」

 

 

 

 

 

 

 Anotherview 凪

 

 

数刻後。

黄巾党の本陣は炎に包まれていた。

 

春蘭様、秋蘭様、関羽殿、張飛殿が四方から攻めこみ火矢を放ち、すぐに撤退。この動きをそれぞれ順に二度繰り返し、

正面からは盾を構え、矢を全く受け付けない自分たち北郷隊が突撃。

門に張り付いた北郷隊は門に油をかけ、火を放ちながら撤退。

焼け落ちた門に華琳様の本隊が強襲する。

 

十面火隊の計ここに成り。

 

私達は今、黄巾の乱の首謀者である張角、張梁、張宝を捕らえていた。

 

のだが…。

その三人は何故か隊長に正座させられていた。

 

張角「(うぇ~ん、お姉ちゃん足痛いよ~!)」

張宝「(ちょっと何なのよコイツ!ちい達をお説教なんて偉そうに!)」

張梁「…。」

 

一刀「自分たちが何をしたのか。わかってもらえたかな?」

 

張宝「ちい達が何をしたっていうのよ!ちい達はみんなの前で歌えれば良かっただけ!

   暴走してる奴らが悪いんじゃない!」

一刀「教育的指導!!」

 

隊長が張宝にデコピンを食らわせる。

以前に真桜があれをされて本気で痛がっていたのを覚えている。

横を見ると、それを思い出したのか真桜は青褪めて震えていた。

 

張宝「痛~い!!!??なにこれ痛い!!すごく痛い!!」

張角「ガクガクブルブル…。」

張梁「…。」

 

一刀「暴走の犠牲になった民達は、もっと痛くて苦しかったんだ。」

 

三人「…。」

 

一刀「君たちの歌で人を楽しませたいっていう想いはとても立派だと思う。

   そしてその人を引き付ける力は素晴らしいものだ。

   でも、力の使い方は…それだけは絶対に間違っちゃいけない。」

 

三人はうつむきながら隊長の言葉を聞いている。

すると、隊長は三人の頭を順に撫でてこう言った。

 

一刀「だから、今度は俺達のもとで力を使ってみないか?

   また歌で、今度は国を豊かにする為に。それも楽しそうだろう?」

 

隊長は笑った。

 

桂花「ちょっとアンタ!何勝手なことを」

華琳「良いのよ。」

桂花「でも華琳様!」

 

張宝「ちい達、また歌えるの?」

 

一刀「あぁ。」

 

張角「ほんと~に?」

 

一刀「もちろん。」

 

張梁「打首は?」

 

一刀「しないよ。華琳次第だけど。」

 

三人「…。」

 

三人は華琳様をチラリと見る。

 

華琳「そうね…。

   貴方達、私に仕える気はあるかしら?」

 

張宝「ま、また歌えるなら仕えてあげるわよ!」

張梁「私も、また三人で暮らせるのなら。」

 

華琳「…張角はどうなのかしら?」

 

張角「私は~…。」

 

一刀「…?」

 

張角「このお兄さんのお嫁さんがいいな~!」

一刀「ファッ?!」

 

そう言いながら隊長に抱きつく張角。

 

場が一瞬にしてビリビリとした空気に変わる。

 

華琳「だ、そうよ一刀?

    良 か っ た わ ね 。」

 

一刀「いや、ちょっと華琳さん?」

 

風「さすが種馬ですね~。  もげろ。」

 

一刀「もげっ?!」

 

春蘭「き、ききききき貴様北郷!!!!」

秋蘭「ふむ、本日の鍛錬は倍に増やそうか。」

 

一刀「待て待て待て!!お前らちょっと落ち着け!!」

 

真桜「隊長~、手ぇ出すん早すぎるやろ~。」

桂樹「あのメスいつか殺すあのメスいつか殺すあのメス…」

沙和「桂樹くんが一番怖いの~!!」

 

一刀「お願いだから話を聞いて…。」

 

流琉「…兄様、あぁいう子がお好みなんですね。」

季衣「んにゃ?みんななんで怒ってるの?」

桂花「死んじゃえばいいのに。」

 

凪「隊長。」

 

一刀「…凪?」

 

凪「不潔です。」

 

一刀「…。」

 

 

 

 

Anotherview 華琳

 

 

黄巾の乱が終りを迎え、劉備たちと別れてから数日が経った。

 

私は普段通り書簡に追われる日々を送り、今日もそれは変わらない。

 

仕事が片付き、執務室から私室への帰途。

 

春蘭「北郷!!顎が上がってるぞ!!もうへばったのか腰ぬけめ!!」

 

…訓練場の方かしら?

 

私の足は自然と声の元へ向かっていた。

 

秋蘭「華琳様?」

 

華琳「あら、秋蘭もいたの?

   それで…これは一体なに?」

 

たどり着いたその先には、汗だくになりながら訓練場で走りこみをする一刀の姿があった。

 

秋蘭「はっ、姉者が北郷の稽古をつけております。」

 

華琳「稽古?ただ走っているだけのように見えるけど?」

 

秋蘭「それが、奴は信じがたいほどに器用でして…。」

 

華琳「それがどうかしたの?」

 

秋蘭「華琳様、失礼ながら華琳様が私の弓術を会得するのに、

   どれほど時間がかかるとお考えですか?」

 

華琳「ふむ…秋蘭の弓術はこの天下でもそうそう勝てるものは居ないでしょうね。

   十年、二十年は修行が必要なのではないかしら?」

 

秋蘭「二射。」

 

華琳「?」

 

秋蘭「奴が私の早撃ちを会得するまでです。」

 

華琳「…どういうこと?」

 

秋蘭「それは私にも分からないのですが…事実です。」

 

華琳「信じ難いわね…。

   この走り込みは何のために?」

 

秋蘭「北郷は武官の体が出来ておりません。

   そんな体で私達と同じような動きをしてしまえば…間違いなく奴の体は保たないでしょう。」

 

華琳「…。」

 

秋蘭「そこで、姉者が北郷に剣を持たせることを禁じ、まずは基礎を叩き込んでいる。

   というのが現在の状況です。」

 

華琳「なるほど。良い判断ね。

   それで、順調なの?」

 

秋蘭「驚くほどに。

   少なくとも北郷はそこらの武官では相手にならぬほどの基礎体力を身につけ始めております。」

 

華琳「ふふっ、あなたもうかうかしていられないわね。」

 

秋蘭「…誠に。」

 

本当に楽しませてくれるわね、この男は。

 

そんな事を思っていると、一刀と春蘭がこちらに気がついたようだ。

 

小走りにこちらへ駆け寄ってくる。

 

春蘭「華琳様!こ、このような所でなにを?」

 

華琳「ふふっ、貴方こそ。随分一刀に入れ込んでいるようね?」

 

春蘭「かかかかか華琳様?!そ、そんなワケが御座いません!!誰がこのような男など!!」

 

華琳「はいはい、そういうことにしておくわ。

 

   ところで一刀、こんな時に悪いのだけれど、貴方が寄越した書簡によくわからない文字があったのだけれど?」

 

私は肩で息をする彼に問いかけた。

 

一刀「あ~、それ俺の世界の文字だ。

   分かる人がまず居ないからね。暗号には持ってこいだろ?」

 

華琳「貴方の世界の?

   それでも、受け手がわからなかったら意味が無いじゃない。」

 

一刀「それはそうなんだが…、華琳以外には見てほしくなかったからね。

   きっと華琳なら直接聞きに来るだろうと思って。

   ま、春蘭や秋蘭なら聞いても大丈夫だろうけど。」

 

華琳「一体何が書いているというの?」

 

一刀「そろそろ霊帝が死ぬ。」

 

三人「!!??」

 

一刀「そして袁紹が、「都で実権を握った董卓をみんなで倒しましょう!」的な檄文を送ってくるはずだ。」

 

華琳「…確かなの?」

 

一刀「もちろん。」

 

華琳「…。

 

   ふふっ、あはははははははっ!」

 

秋蘭「華琳様?」

 

華琳「ふふふっ、最高よ一刀。

 

   春蘭、秋蘭!今の話は他言無用よ!」

 

秋蘭・春蘭「「御意!!」」

 

華琳「一刀、ご褒美に今夜は一緒に寝てあげようかしら?」

 

一刀「あははっ、ドキドキして眠れなくなるだろうから遠慮しとくよ。」

 

バカ…。

 

華琳「あらそう。

   なら、明日から忙しくなるから覚悟だけしておきなさい。」

 

一刀「うへ…まぁ頑張るよ。」

 

私の覇道。

 

この男が前に言っていたことを思い出す。

 

一刀『天の御遣いだからね。

   そういう想いを受け止めるために俺はここに『居る』んだ。』

 

貴方に受け止めきれるかしら?

 

この曹孟徳の想いを。

 

 

 

 

 

 

 

お付き合いいただいてありがとうございます。

 

次回はほぼ拠点Partになります。ご希望などあればコメントなどで是非。

 

そして、おまけであの人が登場します。

お楽しみに。

 

最後に一句

『白馬義従 誰が呼んだか 我が軍の

   勝利の宴に 私も呼んで』

             白蓮、二日酔いの皆を盗み見て


 
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