No.632794

太守一刀と猫耳軍師 2週目 第3話

黒天さん

今回合流するのは2人。
次回から拠点フェイズになるかな?

2013-10-31 15:19:58 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:8424   閲覧ユーザー数:6391

翌朝早く、天梁にたたき起こされた。

 

本当に早かった。だって日が登る前だよ……。

 

次の街に日がおちる前につきたければこれぐらいでないとダメです。

 

なんて言われたけど、昨日大概遅かったのにこの時間はキツい……。

 

不平を言っても仕方ないし、桂花と天泣も同じ目にあっていたので我慢。

 

というか何で天梁は朝っぱらからこんな元気なの。

 

「おはよー……」

 

寝ぼけ眼の桂花と天泣に挨拶をすると、眠そうな天泣と、俺が挨拶をするなりいきなり背筋を伸ばして

 

「おはようございます!」

 

なんてしゃきっとする桂花。やっぱりどうにもなぁ。このノリがなれないというか、違和感バリバリで。

 

取り敢えず朝食をとって、保存の効く食料と水を持って日の出とともに出発。

 

道中、他愛ない事を話しながら歩く。

 

桂花は、真名で呼ぶとそれだけでパッと表情を明るくして、とても嬉しそうだった。

 

あと、俺のことも、はっきりと真名で呼んでもいいと言ってなかったので、呼んでもいい、というとまたとても嬉しそうで……。

 

何だかこの笑顔に癒やされる……。

 

ただ、男嫌いっていうのは健在らしく、街を出る前に声をかけてきた男をボロクソに言ってたのを見た。

 

これだと見慣れた桂花だなぁ、なんて思ったり。たいていボロクソ言われるのは俺だったけど。

そんなこんなで次の街が見えるあたりについたのは、多分太陽の位置と腹の虫の具合から考えると昼過ぎ。

 

3時ぐらいかなぁ。

 

この街を通り過ぎたら確か次の街が華歆の居た街だったはず。

 

なんて考えるのもつかのま、どうも街の様子がおかしいような。火事……? いや……。

 

「黄巾党ですね、おそらく」

 

そういったのは天梁。やっぱりそうか。

 

「天梁、桂花、相手の数の推測とかできる?」

 

「んん、この規模の街を襲うとなると、少なくとも百、二百といった所でしょうか?」

 

と、推測を立てて教えてくれたのは桂花。

 

流石に3人で相手をするのは無謀かなぁ……。30人ならのせたし、一気に相手をしなければどうにかなるか?

 

「んー、天梁、桂花を守れる?」

 

「え? まさか、行くつもりですか!?

 

……そうですね、目立たないように行動して、来る敵を迎え撃つだけならどうにかなるとおもいますけど……」

 

「うん、そのつもり。危なくなったら逃げるつもりだし、できることをやりたいと思うんだ。

 

天泣、ついてきてくれる?」

 

「いきますよー」

 

「天梁と桂花は付かず離れずでついてきて、なるべく目立たないように、迎え撃つ形でよろしく。

 

天泣は俺についてきて、常に一緒に行動するよ。背中は任せるから」

 

「はーい」

 

俺が走り始めると天泣がしっかり後ろをついてくる。あの走りにくそうなスカートでよくここまで動けるなぁ……。

 

そうこう考えるうちに街に近づけば、やはり見えるのは黄色い頭巾の集団。

 

既に街の抵抗がなくなり、略奪を主に動いているのか、10人程度の集団しか見えない。これなら各個撃破すれば行けると思う。

「いくよ、天泣」

 

短く天泣に合図をして、一気にその集団に接近する。走りながら、背を向ける一人に小刀を投擲し、息の根を止める。

 

「えーい!」

 

相変わらずの気の抜ける掛け声と共に、天泣が大剣を振りぬけば鞠のように男の首が飛ぶ。

 

「何だこいつら!?」

 

次の敵を打ち倒すべく動く。天泣は俺から一歩下がった位置から、その大剣のリーチを生かし、敵へと攻撃を繰り出し、沈黙させていく。

 

俺は一気に敵に肉薄するように動き、その首を打ち据え、胸に突きを食らわせ、昏倒を狙う。

 

攻撃はいやにアッサリと決まり、狙い通り、意識を刈り取っていく。

 

その集団を打ち倒したころ、騒ぎを聞いてだろうか、次の黄色の頭巾の集団が現れる。厄介な、数が多い。

 

「とまってください!」

 

背後からの鋭い声に脚を止めれば、天梁が後方から続け様に矢を放ち、その矢はこちらに向かってくる敵を正確に射抜き、地面へと沈める。

 

「ハァ────ッ!!」

 

その集団の横合いから現れる白い着物のような衣装に身を包んだ女性……。

 

赤い槍を振り回し、次々に敵を屠っていくその姿には見覚えがあった。

「我が名は趙子龍、この集団にたった4人で立ち向かう心意気、気に行った! 助太刀させていただこう!」

 

「感謝する! 俺の名は島津北郷、のんびり話してる暇はなさそうだよ、次がくる!」

 

「やれやれ、いくらでも湧いてくるな、こやつらは。行くぞ、『主』!」

 

主……? 星も俺のことを覚えてる? いや、今は止そう。とにかく敵を追い払わないと……。

 

星の傍に駆けより、星と天泣とともに敵を殲滅していく。

 

星の突破力と天梁の援護に助けられ、黄巾党の一団を次々に打ち倒していく。

 

相手は分が悪いとみたのか、4人で60ほど打ち倒した所で街から逃げ始める。

 

「ここの領主が腑抜けでなければ、そろそろ官軍が現れてもよい頃合いか」

 

「助かったよ、趙雲」

 

「何、礼は必要無い」

 

「所で、俺のこと、『主』って呼ばなかった」

 

「私も確かにききましたよー?」

 

「へ? い、いや、けしてそのような事は……!?」

 

こんなに狼狽する星は初めてみたかもしれない……。

 

じーっと、疑いの目を向ける俺と天泣の視線に耐えかねたのか、

 

「実は、夢で北郷殿によく似た人物を見たことがあって、

 

夢では私は北郷殿を『主』と呼んでいて、あまりに似ているのでつい……」

 

と、あっさりと話してくれた。

 

どの程度の頻度で夢を見るのか、とか、夢の内容とかについては教えてくれなかったけど。

 

やっぱり星も俺のことをハッキリ覚えてるわけじゃないらしい。

「俺も見たことあるよ。もしその夢の通りなら、多分君の真名も知ってる」

 

「ほう……、興味がありますな。確か私と北郷殿は初対面のはず、もし当たっていれば何か縁があるのかもしれませぬ。

 

一度お聞かせ願えますかな?」

 

「……言っても斬らない?」

 

「私から言えと言っておいて斬るなど、そのようなことするはずが無いでしょうに」

 

呆れたような視線を向けてくる星、まぁ確かにそりゃそうか。

 

「星、じゃない? 趙雲の真名は」

 

「……、ご名答。やはり何か縁でもあるのかもしれませんな」

 

「取り敢えず、まだ認めてももらってないし、今はこれ以上真名は呼ばないよ」

 

そう話している間、蚊帳の外状態の桂花や天梁は不服そうな顔。天泣は……よくわからない。

 

気づけば町の外は騒がしく、官軍が来た様子、その旗には華の文字。おそらく華歆だろう。

 

数は多分、500ぐらい?

 

「これはいったい……」

 

街の惨状……というより、倒れている黄色い頭巾の集団を見てつぶやいたのは、

 

灰色の髪をポニーテールにしたメガネの人物。華歆だった。

 

身長は紫苑よりやや低いぐらいだろうか。

 

服装は黒を基調にしていて地味だが、胸元が結構開いてたり。胸は紫苑より控えめだけど。秋蘭あたりといい勝負かな?

 

周囲を見渡す視線は自然とこちらへ。まぁ当然か。

 

星は全く返り血を浴びてないけど俺はそれなり、天泣はそうとう浴びちゃってるし。

 

むしろ、天泣は返り血を浴びに行ってたような気がするんだけど、気のせいだろうか……。

「あなた達がこれを?」

 

「まぁ、うん。そうだよ」

 

「名を教えてもらえるかしら?」

 

華歆の問にそれぞれ、名を名乗る俺達。

 

華歆は黄巾党を追い払ってくれた俺達に褒賞をくれる、というのでありがたく受け取る事にした。

 

星も同様。路銀が無いというので華歆の城まで同行し、褒賞を受け取った。

 

しばらくの間客将として使って欲しいと華歆に頼むと、今は猫の手も借りたい、ということで快く承諾してくれて、

 

桂花や天泣、天梁は名目上は、俺の部下ということになった。

 

華歆は、前に話した時はキツい人だと思ってたが、どうやら俺や華琳を怒らせるのにああいう振る舞いをしてたらしく、

 

普段を見れば普通の人。のように感じる。

 

「趙雲はこの後はどうするんだ?」

 

気になったのは星がどうするか。おそらく見聞を深めるため? だっけ。それと自分の主を決めるため。

 

とか、なんかそんなので旅をしてたと思うんだけど。

 

「私ですか? 私は、北郷殿に興味がある。夢の事もあるし。しばしの間、貴方の傍につかせてもらおうと思っています。

 

ふむ、ここで私が夢でみた北郷殿のことを一つ、あなたは人と対等にあろうとする方だ、違いますか?」

 

「そうだよ、基本はそうありたいとおもってる」

 

「では私は、子魚殿の客将として、しばしここにとどまりましょう。ですが私が興味があるのは子魚殿ではなく北郷殿だ。

 

あまり別々に仕事をしていても面白くない。なので名目上は北郷殿の部下になりましょう」

 

と、いうことは、俺の下に、4人が部下として付く形になるのか。

 

その華歆はといえば、処遇が決まったら早々に俺達の前から姿を消した。

 

多分、娘さんの所に行ったんだと思う。

 

俺が華歆の所に来ようとおもった理由の一つがこれ。

 

どうにか、娘が嫁に出される前にここに来れたようでひとまず安心した。

 

ひとまずは、娘を呉にやらなくても済むようにするのが目標、って所。

 

呉に行ってもすぐ死んでしまうとしたら、呉に行くよりここに居たほうが幸せだろうと思うから。

あとがき

 

どうも黒天です。

 

今回で華歆の所の客将ということで動いていく事になりました。

 

華歆さんの真名どうしよう……(またそれか)

 

あとは、星の口調を再現するのが結構難しく、苦労しております。

 

違和感あるとおもいますがご了承ください……。

 

この後は次回から数話ほど、拠点を書いていくつもりです。

 

さて、今回も最後まで読んでいただいてありがとうございました。

 

また次回にお会いしましょう。


 
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