渡された紙をじっくりとみている店主、少し難しい顔をしている。
「お、おやっさん、間に合うか?」
「御遣い様の頼みとあらば、仕上げて見せますよ、その代わり、御代は奮発してもらいますよ」
「あぁ、それぐらいなら」
その返事を聞くと、多数の弟子に指示を出し、そのまま自分も作業に入って行った。
「ふう・・・・それじゃあ、買いに行こう」
立ち上がると、裏道にある店に入って行った。
「これはこれは、御遣い様、ご注文の品できていますよ」
「よかった、恩にきるよ、いくらだい?」
「これほどでいかがでしょうか?」
「本当にこんなに安くていいのか?」
「えぇ、御遣い様には、日頃よりお世話になっていますから」
通常の特別注文品と比べると格段に安い値段を示されていた。
「ありがとう、少し多めに置いておくよ」
「またの、ご利用をお待ちしています」
「ふう・・・・・これで、明日を待つだけだな」
安心したのかそのまま甘味処で休憩して、城へ帰って行った。
「ちょっと一刀どこへいってたの!」
「え?あぁ、いや、ちょっと用があってね」
「そう、で、記憶を失ってたのは知ってる?」
「は?記憶を・・・・・・」
「どうやら、覚えていないらしいな・・・・・・・私としては残念であったがな」
再び、冥琳が最後の言葉の最後のほうは聞き取れなかった。
「そうか、それは良かった」
「何が良かったのかしら?思春」
「れ、蓮華様!」
「そう言えば、記憶を失っていた時の北郷が9人全員から、婚約もしくは結婚しているといわれたと言っていたぞ」
その言葉が発されたとき、雪蓮と冥琳を除いた全員の顔が真っ赤に染まった。
「そんな事があったのか・・・・・ん?まてよ・・・・・」
「どうしたの一刀」
「いや、なんでもない」
突然、顔を真っ赤にして否定をし始める。
「ほほう・・・・何やら怪しいの・・・・・」
「って、祭さん、何で羽交い絞めにされているんでしょうか?」
「何って、決まっておろう、お前さんの思い出したことを洗いざらい吐いてもらおうと思ってな」
「そ、そんな、何も思い出してないって!」
「ほう、ならなぜそのように顔を赤く染めたのじゃ?」
「む、胸が当たってるって!」
「ほれほれ、そんなによいか?」
さらに胸を押しつけてくる、ダイレクトに感じる柔らかに一刀の愚息が反応しかける。
「思い出したのであろう?何があったか」
一気に図星を突かれたのか、反論をやめた。
「それじゃあ、答えてもらおうか」
全員が耳を傾ける中、思春が一人部屋を出て行こうとしていたので、そこは蓮華の命令により待機している、もっとも戦場で恐れられている思春とは思えない挙動不審だった。
「まず、来たのは思春だった」
「はうあ!」
「なんと!」
「な、なんじゃと!!」
「本当に?」
「し、思春!」
本人は、最大の屈辱といわんばかりに顔を赤く染め、体を震わせている。
「つ、次は誰じゃ?」
「え~と、次は、明命・・・・穏、亞莎、シャオ、祭さん、蓮華、冥琳、最後に雪蓮だったと思うけど」
「その着た順番はともかく、まさか思春が一番だなんて思わなかったわ」
「す、すみません、蓮華様」
バツが悪そうに頭を下げる。
「それで、思春が一番にきて・・・・・まさかの夫婦発言か・・・・予想外だな」
「全くです~思春ちゃんも意外と女の子してるんですね~」
「くっ・・・・・・一思いに殺してくれ!」
ついに何かが切れたのか、思春が暴れ始めた。
「思春!ダメよ、早まらないで!」
「このような恥ずかしいことを・・・・」
ついには自らの剣を持ちだし、それを自らの首にあてる。
「みんな、私は一刀の嫁だって言ってたんだから、結局変わらないわよね」
「そうですね~恥ずかしがり屋の亞莎ちゃんも言ってるんですから」
「で、ですが!」
結局、蓮華の命令により事なきを得たが、雰囲気は殺伐としたものになっていた。
さすがにこの空気に耐えることにできなくなったのか、その場で解散となった。
「北郷、最後にお前が言おうとしたことを教えてくれないか?」
「そ、それは・・・・・・」
「まぁ、言いたくのないなら良い、強制することではないか」
「そ、そう言ってくれるとありがたいかな」
「その代り、今日は、一緒に寝させてもらうぞ」
問答無用とそのまま寝台に一刀を押し倒すと、馴れたように一刀の服を脱がし始めると同時に、自らも脱ぎ始める、そうして夜は更けていく
「ん・・・・・・あぁ」
横には、どうやらだいぶ前に起き、寝顔を見ていたのか幸せそうな顔をしている冥琳が居た。
「おはよう、一刀」
「お、おはよう冥琳」
「昨日は激しかったぞ」
恥ずかしげもなくいっているようだが、頬は赤く染まっている。
「う・・・・・・」
「溜まっていたのだな?激しくて良かったぞ」
すぐに立ち上がり、何事もなかったかのように着替え始めた。
「それは・・・・・ね」
「言ってくれればよかったものを」
そう言いながらも着替えが終わったのか、部屋を出て行こうとしている。
「今日は楽しみにさせてもらうぞ」
「冥琳、悪いんだけど、昼ぐらいに皆を玉座の間に集めてくれないかな?」
「あぁ、構わないが?」
「じゃあ、よろしく!」
それだけのことを頼むと、すぐに部屋を飛び出していく。
「おやっさん、できた?」
「あぁ、ばっちりだ!これで文句ないだろう」
現物を見せられると、恐ろしいまでの完成度にびっくりする。
「じゃあ、御代はここに置いておくから」
「御遣いさま、これぐらいはお釣りですよ」
袋の中から半分だけを取ると、半分を返してきた。
「いや、これは正当な報酬だから」
「何を言うんですか、無理して作った金だってことぐらい分かりますよ、それに御遣い様から多数頂いた“でざいん”で我が店ははウナギ登りでこれくらいは一日で取り戻せますよ」
「そ、そうか・・・・・・ありがとうおやっさん!」
受け取ると、すでに時間は昼が近くなっている。
「何?急に呼び出して」
「さぁ?私も北郷に頼まれただけだからな」
「全く、何を考えとるんじゃ北郷は」
「どうなんでしょうね~何にしても楽しみです~」
「全く、なにを考えているのか」
「ほんと~待たせるなんて何を考えてるのかしら」
「一刀が来ればわかるわ」
「そ、そうですね・・・・・なんだかドキドキします」
「何をされるんでしょうか、一刀様は」
扉が開くと、そこには多数の侍女を引き連れた一刀が入ってきた。
「それじゃあ、着替えてきて」
「は?」
「どういうこと?」
「いいから、着せ方は彼女たちに教えてるから大丈夫」
全員の背中を押して、玉座の間から出す。
「後は・・・・」
結構な時間がたつと、扉が開いた。
「な、何なのだ、この動きにくい服は!」
「かわいい服ね」
「ん、みんな似合ってるよ」
入ってきた全員はいつもの赤や黒い服装などとは違い、レースなどが入った豪奢な純白のドレスを着ていた、しかもいつ図ったのか、サイズは完全に同じであった。
「これは、何の服なのだ、普通の時に着る服ではないだろう」
「それは、天の国で結婚式の時に着るウエディングドレスさ」
「う、うえでぃんぐどれす?また、分からない言葉ね」
「でも・・・・・結婚式に着るって」
「うん、俺からのプレゼントって言ったら、卑怯かもしれないけど、その服と・・・・・・これを受け取ってほしいんだ」
横に長い箱を開けると、9つの指輪が並んでいた。
「もしかして・・・・・」
「俺から・・・・・皆に言いたいことがあるんだ」
その言葉を聞き、全員が真剣な表情で一刀を見つめる。
「最初は拾ってもらってその恩を返すつもりだった、でもみんなと接していくうちに呉が好きになった、雪蓮が、冥琳が、蓮華が、祭さんが、小蓮が、穏が、思春が、明命が、亞莎が、好きになって行った、だから、今後もずっと皆と居たい・・・・・みんな、俺と結婚してくれないか」
箱を9人の前に差し出す。
「答えは決まってるわ、一刀」
「そんな言葉さえいらないほど」
「みんな、一刀のことを愛しているんだから」
「そうよ、もともと皆、一刀と結婚するつもりだったんだから!」
全員が指輪を取ろうとすると、箱を引いて指輪を取らせなかった。
「ちょっと!」
「どうして?」
「違うんだ、みんなの指に・・・・・俺がつけるから」
一番近かった冥琳の手を取ると、左手の薬指に指輪を入れる、もちろん手の甲に唇を落とすことも忘れない。
「これで・・・・私は身も心も、北郷・・・・いや、一刀のものだな」
全員の指に指輪を付けてしまうと、今度は口づけをしていった。
「これで俺は本当に呉の一員になれたんだと思う」
「何を言っているの、あなたはもう呉の一員なのよ」
「じゃあ・・・・・みんな、これからもよろしく!」
どんな災害が起きても逞しいすべての生き物は再び繁栄をもたらす、すでに新しい種から萌芽が始まっている
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なんとか間に合った、だいぶかけ足です
一応今回で呉から魏か蜀に変えようと思うんですが、どちらがいいですか?
あと、よろしければリクエストもお願いします