『港町での出来事』
<黄河>
太陽の光が降り注ぎ、目の前の大きな河、黄河に反射する。
一刀「これが黄河か・・・初めて見るな。」
鈴々「でかいのだー。」
恋「・・・・・・大きい。」
一刀たちは黄河の目の前に各々の感想を呟いていた。
一刀「うん。いい景色だし空気も今までとは少し違っていいんだけど・・・。」
鈴々「それよりも・・・・。」
恋「・・・・・・・・・・・・。」
はぁっ・・と3人とも溜め息をすると。
一刀・恋・鈴々「「「・・・・・・お腹減った(のだ)。」」」
ぐぅ~と音を鳴らしながら肩を落とした。
一刀「まさか、一週間分の食い物がたった二日で無くなるなんて思いもよらなかったぜ・・。」
恋・鈴々「「・・・・ごめんなさい(なのだ)。」」
2人は申し訳なさそうに頭を下げていた。
一刀「い、いやいや2人は悪くないよ。それよりも早く村や町を見つけてご飯食べよ?」
恋「・・・・・うん。」
鈴々「でも、この近くに村なんてあるのか?」
鈴々は一刀に訊く。周りは確かに村などは無く河が続いているだけだった。
一刀「確かにここら辺には無いと思うけどこの先の海の方にはあると思うよ。・・・港町とかね。」
鈴々「なるほどなのだ。確かにありそうなのだ。」
恋「・・・じゃあ、この黄河を下って行けば。」
一刀「ご飯が食べれるってことだ!」
一刀がそう言った瞬間。
恋・鈴々「「(ギュピーーーーーーーン!)」」
2人の目は明らかに変わった。
鈴々「おにいちゃん!早く行くのだ!(ガシッ)。」
恋「・・・一刀、早く、行く!(ガシッ)」
一刀「う、うん、分かった早く行こうか。」
それが合図だった。2人は一刀を引っ張る形で物凄い速さで黄河を下って行った。
<港町>
海の匂いがする。そう、ここは港町。海があれば船もあり、町があれば人がいる。
そのため、この港町は人で賑わっていた。そんな人々が行き来している中、一刀たちは居た。
恋「着いた・・・!」
鈴々「はぁ・・はぁ・・・つ、着いたのだー!!」
途中から走った御蔭か一刀たちが町についたのは日が沈む前の夕方であった。
一刀「鈴々、大丈夫か?息切らしてるけど・・。」
鈴々「はぁ・・・はぁ・・・だ、だい・・はぁ・・じょうぶ・・なのだ。」
一刀「息切れして言う言葉じゃねぇな。息切れするくらいならもう少し遅くすれば良いものを・・。」
鈴々「だっ・・て、お腹空いてた・・から。そ、そう言えば、あの速さで何で2人とも息切らしてないのだ?」
一刀「そりゃ、鍛えてるからな。なぁ?恋。」
そう言って一刀が振り向くと。
恋「・・・・・・・・・・・・(ぐぅ~)。」
恋はお腹を押さえながら飲食店を見つめていた。
一刀「・・・・・とりあえず、何か食べようか。そのために急いで来た訳だしね。」
鈴々「そ、そうだったのだ!!早く!早く食べるのだ!!!」
恋「・・・・・・・・・・・食べる(ぐぅ~)。」
そう言いながら一刀たちは飲食店が並ぶ道を歩こうとした。
一刀「あ・・・でも、その前に宿を押さえとかないと。少しだけ寄り道するけどいい?」
鈴々「え~~~~~!!!!」
恋「・・・・・・・・・・・・・・・・・(ぐぅ~)。」
その一刀の意見に反対するかのように鈴々は声を鳴らし、恋はお腹を鳴らした。
一刀「少しだけだからさ?頼むよ。」
鈴々「う~・・・少しだけなら・・・。」
鈴々は渋々といった感じに一刀の提案を受けて入れた。
一刀「悪いな。・・・で、恋。少しだけだから寄り道してもいい?後から何かするからさ。」
恋「・・・・・・・・・・・・・・・。」
恋は悲しそうになりながらも、しばらく考え、そして答えた。
恋「・・・・・・ご飯までの間、手、握ってくれるならいい。」
一刀「え、えと・・う、うん、そういうことなら・・・。」
一刀は照れながらも冷静を装い恋の手をぎゅっと握る。
恋「・・・あったかい(///)。」
一刀「・・・・・・(///)。」
恋の一言に顔を赤くしながら、一刀は黙ってしまった。すると。
鈴々「あー!?ズルいのだ!鈴々も!鈴々も!!」
そう言いながら鈴々は一刀の空いている手を握った。
鈴々「えへへ~あったかいのだ~(///)。」
そんな3人の会話を聞いてか周りの通行人たちはみんな和んでいるようだった。何処からか“あーあ、俺の手はさみぃな~”とか“かわいい♪”など聞こえてくる。それを聞き、更に恥ずかしくなったのか一刀は最後の抵抗をする。
一刀「お、おい・・・こんなんで、もしも、賊に襲われたらどうするんだよ・・。」
恋・鈴々「「賊くらい問題ない(のだ)。」」
一刀「・・・だよなー。」
しかし、その抵抗も直ぐに無駄となり、3人は結局、仲良く手を繋ぎながら歩いて行くのであった。
<宿>
日はもう落ち、町は別の賑わいを見せている中、一刀たちは宿へと来ていた。
一刀「あ、大丈夫ですか。なら、お願いいたします。」
ちなみに今、一刀は宿で予約出来ないか店の者と話していたところであり、無事に予約をしてもらえることとなっていた。
一刀「それと・・・ここら辺でお勧めの飲食店ってありますか?」
一刀は店の者にお勧めの場所を訊いた。自分たちで探すよりもこういう人に訊いた方が早いし確実だと知っていたからだ。
店の者「ん?ここら辺だと、まぁ~あるにはあるけど・・・正直、君たちにはお勧めしないよ?」
その答えに、ん?と疑問が湧くも、一刀としては何としても聞きたかった。おもに待たせている2人のために。
一刀「でも、美味しいんですよね?そこ?」
店の者「まぁね。・・・まぁいいか、行きたいなら教えるよ。」
一刀はなんとかそれを教えてもらい、ありがとうと店の者に礼を言った。そして、手を繋いでいる2人の方へ向くと。
恋「・・・一刀、大好き!(ぎゅっ)」
鈴々「お兄ちゃん!大好きなのだ!!(ぎゅっ)」
2人は一刀の腕を抱きしめていた。美味しい店の場所を訊いてくれたのが嬉しかったのだろう。一刀はというと2人に大好きと言われ、さらには抱きしめられ、嬉しさあり照れくささありといった感じの表情をしていた。
一刀「あのね2人とも、大好きってね、すごく破壊力があるって分かってる?(/////)」
恋・鈴々「「・・・?」」
2人は何を言ってるのか分からないといった感じに首を傾げていた。
一刀「・・・と、とりあえず、用事も済んだしご飯食べに行こっか。」
恋「ん♪」
鈴々「やったー♪」
そう言い、一刀、恋、鈴々はお勧めの飲食店へと向かった。
<飲食店>
3人「・・・・・・・・・・・・・・・。」
一刀たち三人はお勧めの飲食店の目の前で止まっていた。一刀にいたっては、軽く頭を押さえていた。(ちなみに飲食店に着いたので手をはなしています)それもそのはず、着いた場所は。
一刀「居酒屋じゃねぇか!?」
居酒屋だったのである。
一刀「な、なるほど、君たち(子供)にはお勧めしないってか・・。」
そう、独り言を言いながら苦笑いをしていると。
恋「・・・一刀、ここ?」
鈴々「くんくん・・・お酒の匂いがするのだ。」
2人は興味津々といった風に居酒屋を見て尋ねてきた。それに対して一刀は素直に答える。
一刀「あー・・・あのさ、ここってお酒を飲みながら飯を食べるとこなんだけど・・2人とも大丈夫?」
鈴々「へ~初めて見たのだ。あと、鈴々は別にかまわないのだ。」
恋「・・・恋も。」
一刀「じゃ、入りますか・・。」
一刀はそう言いながら居酒屋へと入って行った。中はガヤガヤと騒がしく、酒の匂いや男たちの笑い声、少なからず女の人の笑い声もするといった感じの雰囲気だった。一刀たちは、なるべく落ち着いて食べれるように酒をあまり飲んでいなさそうな人たちの方の席に座った。すると、すぐにメニューを聞きに、店員さんがやって来た。
店員「いらっしゃい、ご注文は?」
見た目、枯れ木のような中年、しかし、どこか優しさがにじみ出てるようなそんな感じの店員だった。
一刀「えーと・・・んじゃ、俺はこれとこれ、恋と鈴々は?」
一刀はメニューらしきものを見ながら、指を指して選ぶと恋と鈴々に訊いた。
恋「これとこれとこれとこれと、あと、これ。」
鈴々「鈴々もこれとこれとこれとこれと、あとはこれなのだ!」
一刀「・・・・・(お金確認中)。」
あまりにも容赦のない選択に一刀は流れるような動きで自分の手持金を確認した。それを見て店員は心配したように尋ねる。
店員「だ、大丈夫?お金・・。」
一刀「ああ、はい、何とか大丈夫そうなんでお願いします。」
それを聞いてか、ほっとした感じに店員は厨房の方へと向かっていった。
しばらくして、とてつもない量の料理が運ばれてきた。それで周りの客は物珍しそうにこっちを見てくる。
一刀「・・・こう見るとスゲェ量だな。」
恋「・・・(じゅる)。」
鈴々「おいしそーなのだ!!早く食べるのだ!」
一刀「だな、それじゃ。」
3人「「「いただきます。」」」
そう言い食べ始めたのであった。
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恋「もぐもぐもぐもぐ♪」
鈴々「もぐもぐ、(ごくんッ)、ふはぁ、もぐもぐ♪」
食べ始めてから大体20分くらいが経っただろうか。一刀は既に食べ終えていて2人を恋と鈴々を眺めていた。
一刀「恋も鈴々も本当においしそうに食べるね。見てるだけで幸せになりそうだよ♪」
恋「?、(ごくんッ)・・・幸せ?」
一刀「ああ、幸せ♪」
鈴々「食べるてるのを見て幸せなのか?変わってるのだ。」
鈴々はそう言いながら、また、もぐもぐとご飯を食べ始めた。そんな時――
???「だぁあああああああああ!!!!くそったれええええええええええ!!!!!!」
――凄まじい怒声が店内に鳴り響いた。
一刀「な、なんだ!?」
恋「・・・?」
鈴々「び、びっくりしたのだ・・・。」
周りの客もざわざわと騒ぎ出していた。そして、“またか・・・”や“あの人か・・・”という呟きが聞こえてくる。
一刀「どうしたんだろ?」
恋「・・・(もぐもぐ)。」
鈴々「どうやら、あそこからあの声は聞こえたぽいのだ(もぐもぐ)。」
鈴々はその場所を指しながらもぐもぐと食べていた。
一刀「そうか・・・って、鈴々食べながら喋らない!」
鈴々「(ごくんッ)、えへへ~。」
一刀「えへへ~じゃないよ。んで、2人とも一旦ご飯は置いといてちょっと見に行くよ。」
鈴々「えー。」
恋「(ごくんッ)・・・ごちそうさまでした。」
鈴々「え!?食べ終えたのか!?」
一刀「ほら、鈴々行くよ。」
恋「・・・鈴々、行く。」
鈴々「う~ご飯・・・・。」
鈴々は名残惜しそうにしながら一刀たちに付いて行った。一刀たちはその場所へと行くとさっきの店員が困ったような顔をして頭をかいていた。
一刀「あの・・・どうかしたんですか?」
店員「ん?ああ、すごい量のご飯を食べる子たちか。」
やっぱりそう思われてたのか・・・。
一刀はそう思い、苦笑いをしながら話を先に進めた。
一刀「あ、あはは・・で、何かあったんですか?」
店員「ああ、実はね。あそこの、最近うちによく来るお客さんなんだけどね。ああやってお酒を飲むと大声を喚き散らすんだよ。」
一刀たちがその場所を見ると。
男A「あああああああ!!!もうよぉおお!何であそこで俺は何もできなかったんだぁあああ!!!」
男B「おい、もうよ、いい加減立ち直れよ・・・(ごくごく)。」
男C「そうっすよ・・んなこと言っても、どうにも何ねぇすよ・・(ごくごく)。」
男A「ちくしょぉおおおおおお!!!(ごくごくッ!)」
がたいの良い男たちが酒を飲みながら1人は叫び、もう2人はその男を宥めていた。
店員「・・・という訳だよ。素面だと気前の良い人なんだけど酒を飲むと、ね。」
3人「・・・・・・・・。」
店員「正直、困っていてね。あの大声でお客さんはすぐに帰っちゃうし、新しいお客さんは入り難くなっててね・・。」
鈴々「迷惑なのだ!」
恋「ん(こくっ)。」
一刀「だな。」
一刀はそう言うと、その男たちがいる席へと歩き出した。
店員「お、おい。」
一刀「大丈夫ですよ。少し話すだけですから。」
店員「で、でもね・・き、君たちも止めなくていいのかい!?」
店員は2人の少女へと問う。
恋・鈴々「「心配ない(のだ)。」」
少女2人に、あまりにも迷いなく言われ店員は黙るしかなかった。そうこうしてる内に一刀は男たちのとこへとたどり着いていた。
一刀「ねぇ、おじさんたち・・・。」
男A「あ?」
男B「・・・子供?何でこんなとこに?」
男C「本当っす、何で子供がこんなとこに居るんすか?ここ、居酒屋っすよ?」
一刀「それよりも、おじさんたち少し声大きいよ?」
男B「ん?ああ、そりゃ悪かったな、坊主。もう少し声落とすな。」
男C「悪かったっす!それにしても、しっかりした子供っすね~。」
普通、子供にこんなことを言われたら不機嫌な態度をとられるかするものだが、どうやらこの2人は良い人そうであった。
一刀「ありがとう。じゃあ、俺はこれd」
話が分かる人で良かった・・・。
そう、一刀は思い、その場を去ろうとするが。
男A「あ゛!?」
もう1人は、どうやら話が分からない人であったようだ。
男B「あ・・・・まずい・・・。」
男C「せ、先輩、落ち着くっすよ。」
他の2人は少し焦り始め、その男を宥めようとする。
男A「てめぇえ!!なめてんのか!!!!」
男はかなりキレているのか凄まじい勢いで怒鳴りつけてきた。
一刀「別になめてないよ。ただ、お店の人や他のお客さんが迷惑してるんだ。」
一刀はそれに一歩も退くことなく言葉を放つ。
男B「坊主!今は何も言うな!こいつ酒飲むと情緒不安定になるんだ!ここ2、3年は特にひでぇんだ!」
男C「せ、先輩、ほ、ほら、お酒飲むっす!そんで、落ち着くっす。」
2人の男たちは男を押さえようと肩を掴もうとする。
男A「うるせぇええ!!こいつはゆるせねぇ!一発ぶん殴ってやらねぇと気が済まねぇええ!!!!」
男はそう言うと一気に一刀に詰め寄り拳を振り上げる。2人の男は男の肩を掴めずよろめいてしまい男を止める者はもう誰もいなかった。
男B「クッ!坊主!逃げろ!!」
男C「あ、危ないっす!!」
男たちは声を上げる。目の前にいる少年に。周りからは“危ない!!”と男の声や“キャー!?”といった甲高い女の声が店を包んでいた。
男A「おっらあああああああああ!!!!!!!!」
男は拳を振り下ろす。少年に振り下ろす。普通の少年だったらその拳に当たり吹き飛ばされるだろう。だがしかし。
一刀「――――――。」
一刀は拳を避けると同時に男の腕を掴む。そして――
一刀「ほいっと。」
ブンッ!!
気の抜けた言葉と共に男を店の外へと投げ飛ばす。
ドォン!!!!
男A「ガハッ!?、!、????」
だが気の抜けた言葉とは裏腹にその威力は凄まじいものであった。軽く、店の外にあった大樹まで投げ飛ばされたのである。その距離、約10メートル。男は何が起こった分からないと言った風になりながら気絶した。
一刀「・・・ふぅ。」
一刀は一仕事したといった感じに一息つく。それが合図だった。
みんな「おおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!????」
店の中にいた皆が一斉に歓声を上げた。
お客(男)「坊主、お前スゲェな!?」
お客(男)「やるな~、いいもん見せてもらったぜ。」
お客(女)「あの大声には、みんなウンザリしてたのよー。ありがとうね、坊や♪」
一刀「は、はぁ、どうも。」
周りから称賛され、少しばかし動揺しているとあの2人の男たちが話しかけてきた。
男B「・・・驚いた、まさか坊主がこれほど強ぇとは思いもよらなかったぜ・・。」
男C「本当っす!あの先輩をいとも簡単に倒すなんて、スゴイっす!!」
一刀「投げ飛ばしといて今更ですけど・・・あの人大丈夫ですかね?」
男C「それなら大丈夫っす!先輩、頑丈っすから!」
男B「だな。それよりも礼といっちゃなんだが・・坊主んとこの支払を俺たちに払わさしてくれないか?」
それに一刀と近くにいた店員が“え!?”と思わず声が出る。
男B「あーもしかして、不満か?だったら何か別の事にするが・・・。」
一刀「い、いや、そういうことじゃなくて、ほ、本当にいいんですか?」
一刀は確認する。本当にそれでいいのかと。
男B「もちろんだ。」
一刀「で、でも、俺たち結構食べましたけど・・。」
一刀は再度確認する。本当に、本当にそれでいいのか、確認する。
男B「安心しろ。これでも一応、金はあるほうだ。」
男C「そうっすよ~。仲間内での賭博でかなり儲けたんすよ。」
一刀「そ、それならよろしくお願いします。ありがとうございました。」
一刀は逃げるようにその場を去り恋と鈴々のもとへと戻る。
鈴々「ん?終わったのか?」
恋「おかえり、一刀。」
2人は、皆が慌てたり、歓声を上げていても、変わらない様子だったのだろう。いつも通りの調子で話しかけてきた。だから、一刀も同じように変わらない調子で2人に話しかける。
一刀「ただいま。俺の活躍を見ててくれた?」
鈴々「余ってたご飯を食べに戻ってたから見てないのだ!」
一刀「鈴々、ひどい!」
鈴々の言葉に一刀は泣くような素振りを見せる。
恋「恋は、ずっと一刀を見てた。」
一刀「恋、君は天使だ・・・。」
恋「?、恋は恋だよ??」
恋は不思議そうに一刀を見ていた。
一刀「さて、2人とも、もういいかい?」
恋「ん、大丈夫。」
鈴々「鈴々もご飯全部食べたし、大丈夫なのだ!」
一刀「それじゃ、行こうか。」
一刀たちは席を離れ外へと向かっていく。
男B「お?坊主、帰るのか?」
扉を開けようとすると、あの2人の男の1人に呼び止められた。
一刀「はい。支払ありがとうございます。」
男B「おう!任せな。」
男は気前よく言うと一刀たちに向かい手を挙げた。別れのあいさつ代わりだろう。
男C「ばいばいっす!」
もう1人の男もそれに気づき、別れのあいさつを告げる。
恋「・・・ばいばい。」
鈴々「ばいばいなのだー。」
一刀「それでは。」
別れを告げ、一刀たちは外へと出る。外はもう夜であり、少し肌寒いといった感じであった。
一刀「意外と肌寒いな・・。」
鈴々「にゃ~寒いのだ~。」
そう言いながら一刀と鈴々が寒がっていると。
恋「・・・一刀、鈴々、寒い?」
一刀「恋は寒くない?」
恋「ん(こくっ)。」
鈴々「羨ましいのだ・・。」
どうやら恋は寒くないみたいだ。体温が高いのかな?
一刀がそう考えていると、ふと、何か閃いたかのように一刀の表情が変わった。
一刀「そうか~恋は寒くないのか~。だったらッ・・・!」
一刀はそう言うと。
一刀「俺もこれなら寒くないな!(ぎゅ~)」
恋「ぁ・・・(///)。」
一刀は恋に横から抱きついていた。隙間はほとんどなく、一刀と恋の頬と頬がくっ付き合い、一刀は満面の笑みだった。
一刀「あったか~♪(ほんわか)」
鈴々「鈴々も~!(ぎゅ~)、あったか~なのだ~♪(ほんわか)」
鈴々も一刀と同じように逆の方から抱きつく。恋の頬は一刀と鈴々の頬にくっ付き、赤色に染まっていた。
恋「歩き、難い・・・(///)。」
一刀・鈴々「「我慢♪(なのだ♪)」」
恋は抱きつかれる前より体温を高くしながら2人に抱かれ宿の方へと進んで行ったのであった。
・
・
・
・
・
一刀たちが出て行った後、あの2人の男たちは、酒を飲みながら話をしていた。
男B「まぁ、奢るっていっても子供3人の飯代だしな~。あんまり、詫びにはなんなかったかもな。」
男C「そうっすね~。しかも、3人の内、2人は女の子ですし、明らかに少ないっすよね~。」
男が“だよな~”と相槌をすると同時に店員が2人の元へとやってくる。
店員「あ、あの~お客様、これを。」
男B「これは?」
店員「あの子たちの勘定です・・・。」
男C「ああ、そうなんすか~。」
男B「どれどれ・・・。」
2人の男がそれを見る。そして――
―――夜の町に男2人の叫び声が谺(こだま)した。
<宿の前>
コケコッコー!と鶏が鳴き、朝を知らせる。
一刀「ん~よく寝た~!」
一刀は大きく息を吸う。磯の匂いや少しひんやりとした空気、今までの朝とは少し違う。
一刀「ふぅ、なかなか良い空気だな。」
微笑みながらそう呟く。すると。
恋「・・・・・ぉ、はよ(うとうと)。」
鈴々「ぉひゃようにゃのだ~(うとうと)。」
まだまだ眠そうにしながら2人の少女が一刀に近づいてきた。
一刀「おはよ、2人とも。もう少ししたらここを出るから準備してね。」
恋「・・・・・・ぁい(こくっ)。」
鈴々「わかったのだ~。」
そう言いふらふらしながら戻って行った。それを見送り、一刀は空を見上げ呟く。
一刀「さて、今日は何か良いことがあるかもな。まぁ、勘だけど。」
・
・
・
・
・
あの後、宿を出て、近くの店で朝食をとり、一刀たちは町を歩いていた。
鈴々「なぁなぁ、これからどうするのだ、お兄ちゃん?」
一刀「ん~どうしようかね~・・・!」
鈴々の言葉に返事をしていると突然、一刀と恋は足を止めた。
一刀・恋「「・・・・・・・・・。」」
鈴々「?、どうしたのだ?」
一刀と恋は少し先の路地を睨む。
一刀「何処の誰かは知らんが・・・何で待ち伏せしてやがる。出てこい。」
一刀は普段のときでは見せない声色でその路地に潜む相手に話しかける。そこにいたのは・・・。
男B「よぉ、坊主。また会ったな。」
男C「昨日ぶりっす!」
昨日の居酒屋で出会った男たちであった。
一刀「貴方たちは、昨日の・・。」
恋「・・・ご飯、奢ってくれた人。」
鈴々「おお!そうなのだ。昨日はありがとうなのだ!」
男B・C「は、ははは・・・。」
2人の男は空笑いをしていた。仕方あるまい・・。
一刀「んで、どうしたんですか?待ち伏せなんかして。」
男B「実はな、昨日の一件を頭領に話したら坊主たちに話したいことがあるから連れてきて欲しいって言われたんだ。」
一刀「?、何故?」
男C「分かんねっす。でも頭領、すっごく真剣でしたよね?」
男B「ああ、あんなに真剣なのは久しぶりに見たな。すまないが少し来てくれないか?」
それを聞いて、一刀は少し気になっていた。
一刀「・・・どうする?」
恋「恋はかまわない。」
鈴々「鈴々もなのだ。」
一刀は2人に了承を得て、行くことを決める。
一刀「それじゃ、行きます。何か気になるんで。」
男B「そうか、ありがとうよ。・・・あとよ、コイツの話を少し聞いてくれないか?」
そう言い、男は路地の方へと目線を向ける。
一刀「コイツ?・・・!」
男A「・・・・・・・。」
路地から出てきたのは、あの居酒屋で一刀を殴ろうとし逆にボコボコにされた男であった。一刀はすぐさま臨戦態勢へと変えその男を睨む。それに合わせるように男もゆっくり動きだす。そして・・・
男A「すまなかったぁあああ!!!(土下座)」
男は額を地面にぶつける勢いで土下座をしていた。
一刀「うぇええええ!?」
あまりの出来事に一刀は戸惑う。
男A「お、俺は何てことを君に・・・子供に殴り掛かるなんて・・・(ぐすっ)・・・俺は・・・。」
男A「うぉおおおおおおおおお!!!!!!(泣き)」
男は泣き出す。この人は悪い人ではないようだが、かなり鬱陶しそうであった。
一刀「あ、あの、俺、大丈夫なんで、どうか泣き止んでください。本気で。」
男A「き、君は何ていい子なんだ・・・ッ。何か、何かお礼をさせてくれ!」
一刀「えと、なら、この子たちが欲しそうにしてる食べ物、全部買ってくれますk」
男A「もちろんだ!!!」
そう言った瞬間、恋と鈴々は瞳を輝かせ、2人の男は“あーあ・・・”と言いたげな表情をしていた。
恋「!、一刀、全部?」
鈴々「全部なのか!?」
一刀「うん、いいらしいよ。」
それを聞くと嬉しそうに2人は笑う。一刀はそれを見て和んでいたが2人の男はそれを見てもう1人の男に同情の瞳を向けながら話を進めた。
男B「あー、そ、それじゃ、ついてきてくれないか?食べ物はその途中で買ってくれ・・・。」
男はそう言い、一刀たちを連れ頭領の元へと連れて行くのであった。
<船>
男B「この船だ。さぁ来てくれ。」
男C「こっちっすよ~。」
男たちはその船を指さしながら一刀たちを案内する。船の上は広く、樽や木箱、ロープ、色々なものが乗せてあった。
男A「それにしても、よう食べるな!美味いか、子供たちよ?」
男たちについて行ってるとあの男が恋と鈴々に話しかけていた。ちなみに2人ともこの男が奢った桃をもぐもぐと食べている最中である。
恋「ん(もぐもぐ)。」
鈴々「美味いのだー(もぐもぐ)。」
男A「そうか!そうか!ハッハハハ!」
この男、実はかなりの額を払わされたはず(桃以外にもたくさん買わされた)なんだが、まったくと言っていいほどそれを気にしていない様だった。一刀はこの男に対して“実は根は良い人なんだな“と評価を改めていた。
???「・・・・・・・・・。」
一刀「ん?」
一刀は何かの視線に気づき、辺りを見渡した。すると。
少女「(じぃ~~~~~~)。」
樽やら木箱やらが置かれている中に紛れて、ツリ目ぎみの目をした少女がこちらをじっと見つめていた。
一刀「女の子?」
少女「!?」
少女は一刀の声にビクッ!と反応し、すぐに大きな樽の影に隠れてしまった。
男B「坊主、こっちだ。」
一刀「え?ああ、はい。」
一刀は、その少女を気になっていたが、とりあえず男たちについていくことにする。
・
・
・
男たちについて行くと、一つの部屋の前まで案内された。他の部屋の扉に比べて若干、丁寧に作られているように思える。一刀がそう思っていると、男は扉に向かって声を掛ける。
男B「失礼しやす、頭領。」
???「おう。」
中から見知らぬ男の声が返ってきた。男はその声を聞き、扉を開ける。
男B「連れて来やしたよ、頭領。」
中に居たのは、無精ひげを生やした見た目30代の男であった。この無精ひげの男が男たちが言っていた頭領なのだろう。
頭領「ああ、悪いな。で、坊主たちだな。昨日、迷惑を掛けたっていう子供たちってのは。」
一刀「まぁ・・・。」
頭領の言葉に一刀は頷く。
頭領「なら、改めて、こいつらの頭領として謝らさせてくれ。・・・すまなかった。」
頭領は一刀たちに向け頭を下げていた。それを見て一刀は感心する。部下の不始末で子供に頭を下げるなんてこと一刀の時代でも、なかなか出来ないことだからだ。
一刀「気にしていませんよ。この人たちが良い人なのも分かりましたし、貴方も良い人だということも分かりましたから。」
一刀のその言葉に頭領は少し笑みを零す。
一刀「ところで、お話がしたいとのことでしたが・・・謝罪だけでは無いんですよね?」
謝罪だけで連れてこさせたりはしないだろうと一刀は本題へと話を進める。
頭領「・・・ああ。実は頼みたいことがあるんだ。」
一刀「頼みたいこと?」
その言葉に一刀は表情を変える。会ったことのない一刀に頼みごとなんて、明らかにおかしいからだ。そうしていると、頭領はゆっくりと話し始める。
頭領「実は、俺たちは錦帆賊という江賊なんだ。俺たちは基本的に自分の私欲のためにやりたい放題している役人共の船を襲って近くの村に金や食糧を分けたりしている。そんなわけだからこの船には野郎ばっかが乗ってるんだが・・・。」
そして、一つ溜め息をはくと頭領は困ったような表情をして話を続けた。
頭領「1人・・・1人だけ、女の子が乗ってるんだ。」
一刀「ああ、さっき見た子か。」
その言葉に一刀はさっき樽の影に隠れた少女を思い出していた。
頭領「!もう会ったのか。なら、話が早い。頼みごとってのは、その子のことなんだ。」
頭領「その子を・・・坊主たちの元に置いてくれないか?」
それを聞いて一刀は驚く。何故?と思う気持ちが湧き上がるがとりあえず頭領の話を聞こうと抑える。
頭領「あの子は、実は、先代の頭領の娘なんだ・・。」
先代ということは今の頭領の前の頭領ということになる。変わったのだろうと一刀は思う。
それがどんな形で変わったのかは何となくだがこの人を見てたら想像できた。
一刀「先代、ね。・・・亡くなったんですか?」
頭領「・・・ああ、3年前に役人共が本格的に俺たちを潰そうした時があってな、その時の戦いで・・・。」
一刀「・・・・。」
頭領「あの人は、何つぅか・・賊なんて似合わなくてよ・・いつも、にこにこ笑って、俺たちを笑わしてくれたり、励ましてくれたり、時には俺たちを叱ったり、本当に賊なんて似合わない人だったよ・・・。」
頭領はそう言うと上を向く。おそらくその当時を思い出しているのだろう。彼の瞳から一筋の涙が頬を蔦っていた。
頭領「っと、悪いな、話が逸れちまった。で、その頭領の忘れ形見・・それがあの子なんだ。」
頭領は涙を拭き、話を戻した。
頭領「ここまで話したら、何故そんなことを頼むのか・・分かるだろう?」
一刀「その子に賊なんてなってほしくないってとこですか。」
頭領「そうだ、俺たちは結局のところ賊でしかない。・・あの子は真面目で優しい子なんだ、そんな子を賊になんて・・・本来だったら母親に預けるんだが先代の奥さんはあの子を産んだ時に亡くなってな・・。」
そう言うと、頭領は俯く。一刀は頭を掻いて少し考えた後、頭領に質問をした。
一刀「・・・一つだけ、質問をさせてください。どうして俺たちなんですか?」
その質問は至極当然であった。会ったことのない相手にそのような大事な頼みごとを普通するだろうか。いや、しないだろう。だからこそ一刀はそこが気になっていた。
頭領「坊主たちを選んだ理由は坊主たちが・・いや坊主が信用できると思ったからだ。」
一刀「会ったことも無いのにですか?」
頭領「ああ、部下からの話で信頼できると思ったし実際に見て話して信頼できると確信した。」
一刀「・・・何か信頼できるようなことを言いましたか?」
頭領「ああ、坊主の言葉1つ1つから坊主が真面目で優しい人柄だと分かるよ。」
頭領がそう言うと恋と鈴々がうんうんと頷く。
恋「一刀は、優しい。」
鈴々「そうなのだ。お兄ちゃんは優しいのだ。」
一刀「う・・な、なんか照れくさいな・・。」
一刀は頬を少し掻きながら頬が緩むのを誤魔化す。
頭領「それに坊主は強い。ちなみに坊主が軽く倒したこの男はな俺たちの中でもかなり強い方なんだぜ?」
頭領は男を指さしながら微笑む。男は慌てて首を横に振るが周りの男たちは“だよなー”と頷き合っていた。
頭領「真面目で優しく、そして強い。信用するには十分足ると思うが?」
一刀「いや・・その理屈はおかs」
鈴々「確かにその通りなのだ。」
恋「ん(こくっ)。」
一刀「ふ、2人とも!?」
まさかの身内からの裏切りで一刀は慌てる。
頭領「くくっ、お嬢ちゃんたちもこう言ってるわけだし、信用できるな。」
そう言うと、頭領はキッと真剣な眼差しを一刀たちへと向ける。そして――
頭領「――――頼むッ。」
手を床に付け頭を下げた。
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一刀「と、頼まれちゃったわけだけど・・・どうしよ。」
一刀は恋と鈴々に尋ねる。
鈴々「お兄ちゃん、断るのか?」
一刀「いや、とりあえずその子と話してみないことにはね~。」
あの後、一刀は一応その頼みを引き受け、現在その子を探して船の中を歩き回っている最中だった。
恋「一刀は、断らないと思う。」
一刀の言葉に恋は意見する。
一刀「ほ~、恋は何でそう思う?」
恋「その子の状況が、恋たちに少し似ているから。」
一刀は目を丸くした。恋が言っている通り、実は一刀は八割方、頼みを受け入れてもいいと思っていたのだ。理由も、恋の言う通りである。
一刀「・・・・まいったな・・恋には敵わん。でも、その子と話してみて最終的にどうするか決めるつもりではあるよ。いいかな?」
恋「ん、分かった。」
鈴々「分かったのだ。」
そう言い終わると同時に通路を曲がろうとした一刀は誰かとぶつかってしまった。ぶつかった箇所を考えるかぎりぶつかった相手が誰であるか一刀は理解した。だからこそ一刀はすぐにその人を抱き留めるように支えた。
一刀「っと、大丈夫かな?」
少女「・・・え?」
その人はさっきまで話しに出てきた少女その人であった。
一刀「どうも、初めまして♪」
少女「え?え、え?あ・・・あ、貴方は・・。」
少女は何が何やら分からなそうに戸惑っている。そうして、おろおろと辺りを見渡し、あることに気付く。
少女「!?」
そう、自分が今抱かれていることに気付いたのだ。
少女「――――。」
少女は俯いてしまう。
一刀「えと、ねぇ大丈夫?」
一刀は俯いている少女の顔を見ると。
少女「ぁ、ぁ、ぁぁ。(うるうる)」
少女は声が出ないという感じになりながら涙ぐんでいた。
一刀「え、ちょ!?ご、ごめん、何か俺した!?」
一刀は慌てて、少女の頬に触れようとすると。
少女「―――ッ!?」
少女はその手を払いのけ走り去ってしまった。一刀は、ぽかーんとなっていたが。
恋「・・・泣かした。」
鈴々「泣かしたのだ。」
一刀「追いかけますッ!!」
一刀はすぐに少女を追いかける。泣かしたなどの言葉は精神的にくるものがあるのだと一刀は思う。
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一刀「ここは・・。(きょろきょろ)」
少女を追いかけると一刀たちは見たことのある所へと着く。そこは、男たちに案内された時に一刀があの少女を見かけた場所であった。
一刀「・・・あ。」
いた。少女はその時と同じように大きな樽の影へと隠れていた。こっそりと一刀は近づき樽に隠れる少女を見る。少女は体育座りをして、顔を隠すようにしていた。
一刀「見っ~け!」
少女「!?」
一刀は少女の目の前でしゃがみながら声を掛ける。少女はビクッと反応し、すぐにその場から去ろうとするが・・・。
少女「(ガッ!)、ぁ・・ッ!」
足が絡まり倒れそうになる。すぐさま一刀は少女の手を掴み、しっかりと立たせてあげた。
一刀「よっと、怪我ないか?」
一刀がそう言うと少女はもう逃げられないと悟ったのか、なんとか落ち着いて話そうとする。
少女「は、は、はい・・あ、あの貴方はもしかして、居酒屋の事件の人です、か?」
一刀「じ、事件って、まぁそうだけど・・。」
一刀がそう答えると少女は顔を真っ赤にしながら叫んだ。
少女「あ、あの!わ、私に鍛錬の指南をしてくださいませんか!!」
一刀「・・・・へ?う、うん別にいいけど・・。」
少女「あ、ありがとうございます!!」
少女はぺこっと頭を下げる。一刀はいろいろ疑問があったが少女の愛らしい行動を見てどうでもよくなっていた。
一刀「それじゃ、体術を指南してみるけど、いいかな?」
少女「はい!よろしくお願い致します!」
少女はまたぺこっと頭を下げた後、少し緊張ぎみに構える。
一刀「じゃ、打ち込んでみて。」
少女「いきますッ!」
少女は一刀に向かい走りだし、飛び蹴りを繰り出す。
少女「タァアアアア!!!」
一刀「!・・・ほぅ。」
一刀はそれを観察するようにしながら躱す。指南するために動きをしっかり見て何処が良いか悪いかを教えるためだろう。
少女「ッ!シィッ!!」
少女は着地後すぐに回し蹴りをくらわそうとするが一刀はそれをしゃがんで避ける。やはり、動きをよく見るように目をひと時も離さない。
やっぱり、すごい!今の初めてだと船の皆、誰も避けれなかったのにそれを簡単に躱すなんてッ!
少女は歓喜した。自分が思った通り、この人はすごいんだと確信して。
そして、そんなことを思われてる一刀はと言うと。
すばらしい!まさか、少女が褌(ふんどし)を穿いているなんて誰が思おうか!グッジョブだ!!しかも、そんなのを穿いているのにあんな蹴り技を繰り出すとか、もう最高です!ん?まてよ、これは指南だから合法的にさわれる!?なんてこったいヒャッホー!よし!ならば、指南を続けよう!
一刀はそう考えていた。どうやら一刀は動きを見るために観察していなかったようだ。完璧に犯罪者である。
一刀「よし、じゃあ今から君に直接触れるけどいいかい?」
少女「は、はい!」
少女はただ純粋無垢に答える。
一刀「それじゃ、もう一回打ち込んできてくれ。」
少女「はい!タァアア!!」
一刀「よっと。」
少女は一刀に殴り掛かるが一刀はそれを容易に受け止める。そして、少女の脇腹に手を添えていた。
一刀「ほら、ここ見てみな?もしも、この手が刃だったらスパッと斬れてたよ。」
少女「あ!」
一刀「君は見た感じ隙が少し多いように思えるから、まずは隙を無くすことが体術の向上になると思うよ。」
少女「はい!分かりました!」
一刀「じゃ、もう少し続けようか?」
少女「はい!」
こうして、少女は一刀に対して尊敬の念を抱きながら一刀の指南もといセクハラをしばらく受けるのであった。
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一刀「ふぅ・・・これで指南を終わりにするね。」
少女「はぁ・・はぁ、っ、ありがとうございました!」
一刀の指南は1時間近くまで行われていた。ちなみに少女の息が荒いのは疲労のためであり、それ以上の意味はない。
恋「・・・・。」
鈴々「な、何してたのだ?」
恋と鈴々は目をパチクリさせながら一刀たちに近づいてきた。
一刀「ん?指南をしてくれって言われてな~。そういえば、何で指南してほしかったんだ?」
少女「え、えと、その、船のみんなが強い男の子がいるって話していて、それですごいなと思って・・。」
少女は恥ずかしそうにしながら答える。つまり、この少女は一刀に対して最初から尊敬の念を抱いていたということである。もしかしたら、ぶつかった時に逃げたのは恥ずかしかったからと言うことだったのかもしれない。
一刀「そうか、素直に嬉しいよ、ありがとう♪」
少女「い、いえ・・・。(///)」
少女は照れながら答える。
鈴々「ところで、この子の名前は何なのだ?」
一刀「・・・訊いてなかった、ご、ごめんね!?」
少女「あ、いや・・。」
少女は俯いてしまう。この空気を換えるために一刀はなるべく大きな声で明るく自己紹介をすることにした。
一刀「よし!自己紹介を始めよう!!俺の名前は北郷一刀!」
恋「恋の名は呂布、字は奉先。」
鈴々「鈴々の名は張飛で字は翼徳なのだ!」
少女「えと、私は、名は甘寧、字は興覇です。」
それを聞いて一刀は一瞬頬が引きつった。
一刀「へ~甘寧ちゃんか・・。」
まさか、この子が甘寧だったのか・・正直、一目見てこの子が甘寧だと分かる奴いねぇぞ・・。いや、だからといって恋と鈴々が呂布と張飛って分かる奴がいるってわけじゃないけど・・。
一刀は内心そう思いながら微笑んでいた。
一刀「それで、甘寧ちゃん。少し話があるんだけど・・いいかな?」
甘寧「は、はい、いいですけど・・何でしょうか?」
一刀「実はな、頭領に君を俺たちの元に置いてくれないなと頼まれたんだ。」
甘寧「え!?」
一刀の直球発言に甘寧と鈴々は驚く。
鈴々「お、おにいちゃん、それって言っちゃダメなんじゃないのか!?」
一刀「別にあの人は本人には黙っといてくれなんて言ってなかったらいいだろ。」
恋「言ってはなかった。」
一刀たち家族が話しているとやっと頭を整理できたのか甘寧が話に加わってきた。
甘寧「そ、それは、一体どういうことなんですか!?」
一刀「率直に言うと、頭領は君が江賊になってほしくないんだってさ。」
甘寧「何故ですか!?」
一刀「所詮、江賊は賊だからということらしいよ。」
甘寧「!、で、でも、私たちは・・。」
その言葉に甘寧は何やら思うところがあるのだろう、甘寧の言葉はつまっていた。
一刀「正義ではない。頭領が言うには先代の頭領が言ってたらしいよ。」
一刀の言っている言葉は真実であった。あの後、一刀はすぐには去らず少しだけ先代の昔話を聞いていたのだ。そして、その言葉が止めだったらしい。甘寧は少しの間驚いた後、少し元気がなくなった様子だった。
甘寧「・・・そう、ですか・・父さ・・先代がそんなことを・・。」
やはり、私が思ってた通り、父さんは正しいことをしてるなんて思っていなかったんだ・・。でも、私は父さんがしていたことが正しくはないが悪いことではなかったと思う。だから、私は・・父さんの跡を継ぎたい。・・・でも、私は、もう・・。
甘寧は俯いてしまう。もうダメだと諦めてしまいそうになっていた。だが。
一刀「で?君はどうする?」
救いの手が伸びる。
甘寧「・・・え?あの、どうするって。」
甘寧は一刀が何を言っているのか理解出来ていなかった。そんな彼女に一刀はいとも容易く救いの言葉を発する。
一刀「だからね、俺たちは君を俺の元に置いといてくれと頼まれたんだ。別に江賊を辞めさせろなんて頼まれてはいないよ。」
甘寧「そ、それって!?」
甘寧の瞳に希望が再び湧いてくる。それを見ながら一刀は微笑みながら楽しそうに、こう問う。
一刀「さぁ、甘寧、どうする?」
<船の前>
一刀と恋と鈴々、そして甘寧は船から降りた。
頭領「・・・それじゃ、元気でな甘寧ちゃん。幸せに過ごすんだぞ・・。」
頭領はそう言うと無理やり微笑む。
あの後、一刀たちは頭領に甘寧を説得したと言い、黄河の向こう岸まで船で送ってくれるよう頼んだ。それを頭領は快く受け入れ、今4人はその向こう岸へと降り立ったのであった。
甘寧「・・・うん、ありがとう、頭領それに船のみんな。」
船員A「おうッ!ちゃんとお腹冷やさないように寝る時は気をつけろよ!」
船員B「あと、甘言を言うやつには気をつけろよ!そいつ絶対悪いやつだからな!」
男A「し、幸せに・・なる・・んだぞッ!(うるうる)」
男B「まぁ、頑張んな甘寧。お前なら大丈夫さ。」
男C「甘寧ちゃん、絶対に幸せになるっすよ!約束っす!」
あの男たち3人に加え船員たちは甘寧にさよならの言葉を告げていく。甘寧は堪える様にそれを聞く。
甘寧「それじゃ、行きます。頭領、船のみんな・・・。」
それを合図に頭領たちは船へと乗り、出発し始める。船からは“じゃあなー”と大きな声が聞こえてくる。
船員A「と、頭領ッ・・もう・・泣いてもいいですか・・ッ!(ぽろぽろ)」
船員B「も、もう、泣いてんじゃねぇか馬鹿やろッ!(ぽろぽろ)」
男A「ぉぉぉ・・ぉぉぉ・・ッ!(ぼろぼろ)」
男C「先輩、声を必死に消そうとするなんて・・やっぱりみんな寂しいっすよね。(うるうる)」
男B「・・・確かに寂しいもんはあるな。(うるっ)」
頭領「テメェら・・ま、まだ泣いていいなんて言ってねぇぞッ・・・!」
船の上では頭領を含め全員が瞳は潤ませていた。彼らは潤んだ瞳に甘寧を映しながら手を振る。
甘寧「・・・・・・・・。」
一刀「ほら、皆に聞こえるように言いな。」
一刀は肘でトンっと軽く甘寧を押す。甘寧は俯いていた顔を上げる。その表情は――
甘寧「頭領―!!みんなーー!!また会いましょう!!!」
笑顔であった。
船のみんな「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・へ?」
船にいた誰もが甘寧の言葉に、ぽかーんと口を開けていた。甘寧は構わず話し続ける。
甘寧「私は必ず一回りも二回りも強くなり、頼りがいがあるような武人となって帰って来ます!!」
甘寧「だから、帰ってきたら次の頭領の座、譲ってもらいますよーーーー!!!!」
甘寧は叫ぶ。その表情は満面の笑みであり、言いきったといった表情でもあった。それに対して船にいた者たちはやっと何を言っているのか理解したのだろう。一斉に声を大にした。
船のみんな「はぁぁぁぁああああああああああ!!!!!??????」
その大声で船が揺らぐ。
頭領「おい、待て!!?坊主!!話が違うぞ!!!」
頭領は一刀に向かって叫ぶ。
一刀「俺は別に江賊を辞めさせろなんて頼まれてないですよー。だから、旅が終わったら帰るんじゃないかなー。(にやにや)」
にやにやと笑いながら一刀はワザとらしく言った。甘寧もそれに合わせて言葉を発する。
甘寧「そういうことです!!頭領!みんな!また会いましょう!!」
そう言うと、甘寧と一刀たちは一斉に走り出す。そして、甘寧と一刀たちの姿はあっという間に小さくなっていった。
頭領「ふ、ふざけんじゃねぇ!」
男B「と、頭領!?それ以上は落ちますから!前屈みにならないでください!」
男C「また会えるんすか!?嬉しいっす!!」
男A「うぉぉぉおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!(だばー)」
船員A「わ、分かってたし!甘寧は帰ってくると分かってたし!!(ぼろぼろ)」
船員B「お、俺も分かってたから!(ぼろぼろ)」
しかし、船の上は怒声や歓声、叫喚と大騒ぎだったため誰一人追いかけることができなかったのであった。
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船から離れるために暫く走った後、一刀たちは近くの木陰で一休みしていた。そうしていると甘寧はふと何かを思い出したように声を上げた。
甘寧「あ、そういえば・・。」
一刀「ん?どうした甘寧?」
甘寧「私はこれから一刀さんたちの旅仲間になるんでしょうか?」
一刀「ん~できたら家族になってほしいんだけどな~。」
甘寧「か、家族ですか!?」
その一言に甘寧は驚くというより慌てた。正直なところ甘寧は一刀たちともっと親しくなりたかったからである。そんな中、家族にならないかという提案、甘寧にとって願ってもない話だった。
一刀「あ、できたらだから嫌なら別に無理には・・。」
甘寧「い、いいえ!一刀さん私を家族にしてください!!」
一刀「お、おお!?いいの?」
甘寧「はい!それで、まだ私の真名を預けていませんでしたよね?」
甘寧は問う。
一刀「う、うん、俺たちもね。」
確かに一刀も甘寧もお互いの真名をまだ知っていなかった。
甘寧「それなら、真名を預けてさせてくださいませんか?家族で真名を知らないのは不自然なので。」
一刀「確かに。なら、俺たちから名乗るよ。」
一刀がそう言うと鈴々がはい!はい!と手を挙げ自分が一番にやると主張してきたため鈴々からとなった。
鈴々「それじゃあ、鈴々から改めて名乗るのだ!鈴々の名は張飛、字は翼徳、真名は鈴々なのだ!」
恋「恋の名は呂布、字は奉先、真名は恋。」
一刀「んで、俺の名前は北郷一刀。字と真名は無いから好きに呼んでくれ。」
一刀がそう言うと甘寧は少し考え、頬をほんのり赤に染めながら名乗り始める。
甘寧「私の名は甘寧、字は興覇、真名は思春です!よろしくお願いします!」
甘寧もとい思春はそういうと一刀たちにお辞儀をする。そして一刀に視線を向けると・・・。
思春「―――兄さん♪」
少し照れながら一刀のことを兄さんと呼んだのであった。
あとがき!
遅くなって申し訳ないです!
で、でも前よりは早く投稿したから大丈・・夫なわけないですよねー。
というわけで、今回は甘寧こと思春さん(幼)のお話でした。
え?思春さんの性格が違う?実はこの世界の思春さん(幼)は一刀さんに対してデレ100%です!
あれ?前にもこんな感じで説明したようなw
とりあえず、思春さん可愛いよ!!
それでは、コメントについてお話しますね。
(飛鷲さん)誤字報告ありがとうございます。
(アーマイルさん)はい、アニメ版を参考にさせてもらいました!もしかしたらまた参考にするかもです。
(ゆっきーさん)一刀さん曰く、男の本能だから仕方ない(キリッ)だそうですw
(兎さん)呉はもう少し先で・・っとこれ以上はネタバレになりますね。
(アルヤさん)ですよね~。鈴々、そう言う節、見せてますよね~。
(いたさん)ありがとうございます(涙)頑張ります!
(kyouさん)今のところ食費が一刀の一番の敵ですねw
あと、思春さんの武力はこうなっております。
「思春」
*武*
D(今ここ)※現時点で10歳です。
これからもよければ、いろいろコメントで教えてください。
質問もおkです。
それでは、またいつか会いましょう。
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どうも、お久しぶりです。
ま、また遅くなってしまって申し訳ありません・・。
今回は簡単に短く書けるだろうと書いてたんですが何故が前の話より長くなってしまいましたw
一話完結ぽいのを個人的に目標としているので長くなるのは仕方ないことなのかも?
さて、それでは、温かい目で見ていってください。