「よ、よいしょ・・・」
メガネを掛けた赤服の少女が大量の本を抱えながら廊下を歩いていた
「うぅ・・・冥淋様に持って来いと言われたのですが・・・」
それも、今にも崩れ落ちそうな感じだ
「やっぱり、無理しないで少なくすればよかったかなぁ・・・」
右に左にフラフラしながらもなんとか体制を整えながら歩いていく
「でも、ここまで来たならあと少しだし・・・」
そう、あとは角を一つ曲がれば冥淋の部屋なのだ
「こんなタイミングで誰かにぶつかったりは・・・しないよね?」
と、角に差し掛かった瞬間
「あ・・・」
誰かの声が聞こえた
「えっ・・・?」
その声に驚いた私は
「わ、わわっ・・・」
体勢を崩し
ドサドサドサッ!!!
本をかなりの勢いで落としてしまったのだ
「あぅぅ・・・やってしまいましたぁ・・・」
運んできた本があらゆる方向に散らばってしまっていた
「はぁ・・風で吹き飛ぶ心配はなさそうだけど・・・」
この量を集めるのは一苦労しそうだなぁとぼやいていた時
「あれ?そういえばさっきの声の人・・・」
そう、その声はかなり近い距離から聞こえた
となれば辺りを見回せばすぐに見つかるはずなのだが・・・
「何回見回してもいない・・・」
あの声は気のせいだったのだろうか?
そう思っていたら
「んー・・・」
「えっ?」
小さい声が聞こえてきた
「んー・・・んー・・・」
「えっ?えっ?」
また聞こえた
「あ、あのー・・・どこですかー・・・?」
恐る恐る声をかけてみると
「ほほでふー・・・」
「・・・えっ?」
振り向いた先には結構な量の本の山
「ま、まさか・・・?」
「ふぁ、ふぁふふぇふぇふふぁふぁいー」
・・・
「・・・助けて、ください・・・?」
・・・・・・
「き、きゃー!だ、大丈夫ですか!!??」
私は無我夢中に本の山に突っ込んだ
呉群外伝~亜莎月(あさつき)物語~
「ご、ごめんなさい!ごめんなさい!!」
私は本の山に埋もれた人を助けた後、ひたすらに謝っていた
「いえ・・・そんなに謝らなくても・・・」
小柄で華奢な少女がそう応えた
「で、でも・・・」
「大丈夫です、呆気にとられていた私もいけなかったのですから」
「呆気に・・・?」
「はい・・・“本が勝手に浮いていたので”」
「あ・・・」
多分本の積みすぎで、下の方が見えなかったのだろう
「よくよく考えれば、本が浮いてるわけないですよね」
と少女がニコッと微笑んだ
「そ、そうですね・・・」
私は顔を赤くしながら頷いた
「なにやら物音がしたが・・・」
「あっ・・・」
と会話していると冥淋が来ていた
「ふむ・・・」
顎に手を乗せて辺りを見回す冥淋
「さしずめ“私に頼まれた本を持って歩いていたが、量が多すぎてふらつき
誰かの声が聞こえたので驚いたら、ぶつかって散らばった”
といったところか?」
「その通りであります・・・」
一言一句間違った部分がない分析だった
「まぁ抜け落ちてる部分がないから良いとするが、ちゃんと謝罪はしたのか?」
「は、はいぃ!」
改めて少女に“ごめんなさい”と頭を下げると
「ふむ・・・私からも謝っておこう、すまなかったな」
冥淋も一緒に頭を下げた
「いえ・・・お互い怪我もなかったのですから、気になさらないでください」
逆に頭を下げ返してくる少女
「ふむ、それなら気にしすぎても意味がないな」
立てるか?と聞いてくる冥淋
「は、はい!」
私はすぐに立ち上がり再び本を持ち始める
「あ、私もお手伝いしましょうか?」
と少女が聞いてきたが
「いや、二人いれば十分だし、部屋も近いから問題ないさ」
「そうですか・・・それではまた」
そう言って少女は微笑みながら去っていった
「あ・・・」
そして部屋に向かおうとした私は重大なことを思い出した
「名前・・・聞いてなかったなぁ」
「ふぅ・・・」
あの後冥淋から多少の注意をうけて一息ついた私は、外に出ていた
「風が気持ちいいなぁ・・・」
涼し気な風が舞う草原に思わずごろんと寝たくなる
「一刀様なら躊躇わずに寝転んで“亜莎の膝枕で眠りたい!!”って言うんだろうなぁ・・・」
とてもじゃないが私はそんなことを言う勇気はない
「それにしても・・・」
ふとさっきのことを思い出した
「あの女の子、何て名前なんだろう・・・」
あの時は急いでいたとはいえ名乗ってすらいなかったので、尚更気になっているのだ
「会いに行くって言ったって、顔しか覚えてないからなぁ・・・」
いくら住み慣れた環境とはいえ、顔しか覚えてない人に会いに行くのは無茶だというのはすぐにわかる
「はぁ・・・どうしたらいいのかなぁ」
とため息をついていると
「あの・・・」
「え?」
真後ろから聞いたことのある声がしたので振り向いてみると
「あっ・・・」
「あ、先程はどうも・・・」
間違いなく先程ぶつかった少女だった
礼儀正しくお辞儀をしてきた
「い、いえ、こちらこそ・・・」
こちらも礼儀正しくお辞儀を返す
しかし
「「ごんっ」」
お辞儀の勢いが有りすぎたのか、頭をぶつけてしまった
「いっ・・・だ、大丈夫ですか?」
痛みをこらえ、頭に手を当てながら私が聞くと
「はい・・・大丈夫ですよ?」
少女が同じように頭に手を当てて応えた
「ふふっ・・・私達、ぶつかってばかりですね?」
「あ、あぅ・・・」
少女が微笑みながらそう言ったので、私は顔を赤くした
「いえ、悪い意味ではないので気になさらないでください」
「・・・貴女は優しいんですね」
私は唐突にそう言った
「えっ?」
すると少女は不思議そうに応えた
「優しい・・・ですか?」
「会ったばかりで何回も迷惑をかけたのに、その度に微笑んでくれたりしてくれますよね?」
私からすればそんな迷惑な人間が居れば、何かしら言われても不思議ではないと思う
「・・・私、あまり“怒る”という感情がないんですよね」
「えっ?」
今度は私が不思議そうに応えた
「怒るという感情がない・・・?」
「はい・・・うまくは言えないのですが、人に対して怒りという感情を向けたって、どうにもならない気がするんです」
少女は淡々と語り始めた
「確かに人に対して怒ることはありますが、それは自分の問題なんじゃないのかなって思うんですよ」
「・・・?」
「だから怒ることがあっても、自分の中で解決できれば感情に出さないんです
“出す必要がないのですから”」
「・・・」
私が理解が難しそうな顔をしていると
「すいません、いきなり変な事を言ってしまいました」
少女が謝ってきたので
「いえ・・・なんとなくですが、言いたいことはわかりますから」
自分なりにフォローを入れてみた
「そうですか・・・ふふっ、ありがとうございます」
また微笑みながらそう言った
「さて・・・私はそろそろ戻りますね」
「あ・・・長い間足止めしてすいません」
「いえ・・・沢山お話できて楽しかったですから」
少女が“では”と去ろうとした時、私はあることを思い出す
「あ、あのっ!」
「は、はい?」
多少驚きながら少女が振り返った
「わ、私は“呂蒙”と言います・・・」
照れながらだが、ようやく自己紹介が出来た
「あ・・・私は“董卓”と言います」
「董卓さん・・・で良いですか?」
「えぇ、私も呂蒙さんで良いですか?」
「は、はい!よろしくお願いします!」
「はい、こちらこそよろしくお願いしますね」
と頭を下げようとしたが
「またぶつかってしまいそうですね・・・」
「そ、そうですね・・・」
そうつぶやくと
「では、これなら大丈夫でしょう」
董卓が手を前に出してきた
「あ・・・」
私はその行動を察し、同じように手を前に出す
そして
「「“握手”」」
優しい風が吹く中、二人の少女が出会ったのであった
5分後・・・
「「・・・」」
「あ、握手って放すタイミングがわからないですよね・・・」
「そ、そうですね・・・」
あとがき
初めに、私の作品を読んで頂きありがとうございます。蒼華と申します。
前に投稿してから半年以上が空いてたのですね・・・リアルに殺されて作品のイメージすらまともに出来ていなかったのでして。
この作品も仕事の時ふと思いついて、書いてみようと思った次第でした。
ですのでまだまだ小説としてはほど遠い作品ですが、少しでも多くの方に見てもらえたら幸いです。
それでは、今回はこの辺で。
改めて、最後まで見ていただきありがとうございました。
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どうも、蒼華と申します。
かなり久々の投稿になりますが、生暖かい目で見てもらえたら幸いです。
それではどうぞ!