旅団アジト
「は~い、ただいま帰ったわよ~♪」
「お帰り、三人共」
ヴァルハイムから帰還した朱音、二百式、竜神丸の三人をロキが迎える。
「ふぅ…今日は色々と大忙しだった」
「私自身は、あまり動いていませんけどねぇ」
二百式は鞘に納めた太刀で肩を叩き、竜神丸は相変わらずタブレットを操作している。
「そんなのはどうだって良いわ。それより、アン娘ちゃんはまだ帰って来てないのかしら?」
「さっき連絡がありましたけど、ミッドチルダで昼食を取ってから戻るそうです。支配人やディアーリーズも一緒にいるみたいです」
「えぇ~…今日は早くアン娘ちゃんに新しい服を着せてあげようと思ってたのに~」
(((着せてあげるというより、ほぼ強引に着せてるよね)))
朱音が新しい女物の服を取り出すのを見て、ロキ、二百式、竜神丸の三人は同じ事を考える。しかし後が怖いからか口にはしない。
「あ、朱音さん達。帰って来てたんだ」
四人の下に、okakaもちょうど帰還して来た。
「okakaも帰って来たか。お前、団長と今まで何処に行ってたんだ?」
「ん、まぁ、ちょっとね…」
「?」
okakaが目線を逸らしつつ答え、ロキは頭にクエスチョンマークが浮かぶ。
「そ、それよりも、他のメンバーはまだ帰って来てないのか?」
「あぁ。ガルムにmiri、Blazと弟の四人は無人世界イストレアでモンスター退治。アン娘と支配人、ディアーリーズの三人はモンスター退治を終えてから、ミッドチルダで昼食中。残りのメンバーは全員アジトにいるぞ」
一方、ガルム一行はと言うと…
「ねぇ、取り敢えず言って良いかな」
「何を」
「…どうしてこうなった?」
「僕が知りません」
現在、四人は囲まれていた。
「時空管理局だ。貴様等の身柄を拘束する」
時空管理局の、魔導師部隊によって。
「…本当、タイミング悪く出てきやがるよな」
miriは面倒臭そうに呟き、地面に唾を吐き捨てる。
「大人しく拘束されて貰おうか。抵抗すれば、公務執行妨害の罪に問われる事になるぞ。特に」
「!」
「貴様だけは絶対に逃がす訳にはいかん」
ヒゲを生やした隊長格の魔導師が、miriを指差す。
「反管理局組織“管理なき世界”の一員、ジョナサン・オブライエン。罪状は、自分で分かっているな?」
「よく言うぜ、人の世界にまでいちいち首を突っ込んどいて…」
「ふん、正義の組織である時空管理局に逆らっておいて、ただで済むと思ったら大間違いだ。貴様だけではないぞ。残りの三人にも、きっちり話を聞かせて貰おうじゃないか」
「屑が…!!」
miriがギロリと睨み付け、部下の魔導師達が一瞬だけ怯む。
「おぉ、怖い怖い。だがどうするのかね? この人数を相手に」
一人の魔導師が結界を張り、残りの魔導師達が四人に向けて一斉にデバイスを構える。
「…あのさぁ」
「?」
ガルムが手を上げてから言い放つ。
「別に捕まえに来たのは良いんだけどさ、俺等を置いて勝手に話を進めるのはやめてくれないか?」
「そうだそうだ。俺達を会話に参加させろ~バカヤロ~コノヤロ~」
「はぁ、この二人はいつもこうなんだから…」
ガルムとBlazが文句を垂らし、ルカはそんな二人に呆れて溜め息を吐く。
「ふん、犯罪者とつるんでいる時点でお前達も重罪だ。さっさと捕らえよ」
「「「はっ!」」」
ニ、三人の魔導師がバインドを繰り出し、四人の身体を縛り付ける。
「あ~らら、問答無用って訳ね」
「まぁ良いじゃん、これで。おかげで…」
-バキィィィィィンッ!!-
「「「「「!?」」」」」
「俺達のやる事は決まったしな」
ガルムは身体を縛っていたバインドを力ずくで引き千切り、他の三人も同じように引き千切る。
「馬鹿な、バインドが!?」
「貴様等!! 我々時空管理局に歯向かうというのか!?」
「歯向かう? おいおい、今更何を言ってやがんだ」
miriは腰の鞘からマチェットを抜き、クルクルと回転させてから逆手で構える。
「そもそも、俺達が何なのか理解した上でそれを言ってんのか? だとすりゃ愚問中の愚問だ」
「まぁ、別に良いじゃないか。これから思い知らせてやれば良いんだよ」
「やれやれ……どうしてこう、穏やかじゃなくなるんでしょうね」
Blazは大剣を振るい、ガルムは両手に御札らしき物を取り出し、ルカは二丁拳銃を構える。
「な、何をしている!! さっさと犯罪者共を捕らえろぉ!!!」
「「「「「ハッ!!」」」」」
「さぁ、せいぜい楽しませろよ?」
魔導師達が一度に襲い掛かる形で、戦闘は開始した。
「喰らえぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
「喰らうのはテメェの方だゴラァッ!!」
「な、ぐぁぁぁぁっ!?」
魔導師の振るって来たデバイスをしゃがんで回避し、miriは右手に持ったマチェットで素早く魔導師の足を斬り付ける。
「ちょっと寝てろ!!」
「ごふっ!?」
足を斬られて怯んだ魔導師の首元に蹴りを加えて気絶させてから、miriは自身に迫って来る魔導師達と正面から向き合う。
「死にたくない者!! 戦意が無い者!! 家族がいる者は下がれ!! 確実に殺さないで済ませてやれる程、俺は器用な人間ではない!!」
「「「ッ!?」」」
miriの怒号に、何人かの魔導師が怯んで攻撃を躊躇する。
「何をしている!! 犯罪者一人、碌に捕まえられんのかボンクラ共がぁっ!!!」
「チッ!! いい加減ウゼェな、あのジジイ…!!」
「そぉらよっとぉっ!!!」
「ガルム!?」
怒鳴り散らす隊長に舌打ちするmiriの横を、ガルムが猛スピードで駆け抜けて空中に飛び上がる。
「霊夢の技、マネしてみるとしようか」
「う、撃てっ!!」
魔導師達が魔力弾を発射する中、空中を舞うガルムは目の前に御札を翳す。
「霊符『夢想封印』」
「「「な…うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」」」
ガルムの周りに色とりどりの光弾が無数に出現し、それ等が一気に魔導師達に炸裂。中には光弾を回避した者もいたが、次々と飛んで来る光弾からは逃げられず、結局は撃墜される。
「お前…」
「安心しろ、死んじゃいないさ」
ガルムはそう言いつつも次々と光弾を飛ばし、空中の魔導師達を撃墜していく。
「それに、もっと暴れてる奴が向こうにいるぞ」
ガルムの指差した先には…
「そぉら!! デッド・スパイクッ!!」
「「「ギャァァァァァァァァァァァッ!?」」」
大剣を地面から斬り上げて獣の頭部のような衝撃波を繰り出し、直線上にいる魔導師達を一度に全員吹き飛ばしているBlazがいた。
「な、何だこいつ!? パワーが違い過ぎる!!」
「こんなの、勝てる訳が無ぇよ!?」
「だぁぁぁらっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
「「「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」」」
大剣を鎌へと変化させ、すれ違い様に次々と魔導師を斬り裂いていくBlazであった。
「Blazさん、相変わらず戦い方が乱暴ですねぇ…」
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
「おっと、せぃっ!!」
「な…ごぶっ!?」
Blazの戦闘を横目で見ていたルカはやられている魔導師達に同情しつつも、魔導師が突き立てて来た槍型デバイスを即座に掴み、自身の方に引き寄せてから魔導師の顔面を殴り飛ばす。
「このぉっ!!」
「…!!」
再び複数の魔力弾が放たれたが、ルカは素早く二丁の拳銃を抜いてから横方向に転がって回避し、飛んで来る魔力弾を一発一発確実に撃ち落していく。
「甘く見ないで下さい。こう見えて、喧嘩は結構強いですよ?」
銃口から出ている煙を吹き、ルカは迫って来る魔導師達を一人ずつ狙い撃ちにしていく。
「く、くそ、何故だ、何故こんな…!!」
魔導師部隊の隊長は、少しずつ焦りを見せ始めていた。最初はさっさと不審者四人を捕まえて、本部まで纏めて連行する手筈だった。
それがどうだろう?
たった四人の男達によって、自分の率いていた部隊がどんどん押され始めているではないか。格闘戦で圧倒され、空を飛べば光弾や銃弾で撃ち落とされ、大剣から放たれる衝撃波で吹きっ飛ばされ、気付けば戦闘可能な魔導師は残り少なくなってしまっている。このまま行けば、全滅は確定だろう。
(こうなれば、奴等が気を取られている内に私だけでも…!!)
逃げるが勝ちと判断したのか、隊長は部下達を見捨てて自分一人で逃げ出そうとする。
しかし、その目論見は数秒で打ち砕かれる。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
「!?」
地上で戦っていたBlazが、突如真上を見上げて大きく咆哮する。すると彼の身体中から赤黒いオーラが溢れ出し始める。
「おぉぉぉぉぉぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
「「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」」」
オーラを纏ったBlazは先程よりも速いスピードで魔導師達を薙ぎ倒し、隊長にどんどん迫って行く。
「や、やめろ!! 来るな!! 来るなぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」
隊長が叫ぶが、Blazは止まらない。
「闇に喰われろ…!!」
「ぬぐぉあっ!!?」
Blazの突き出した右腕がオーラによって獣のような異形に変わり、隊長を掴み取る。
「砕け散れぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!」
「ぐぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!??」
Blazに掴まれている隊長を地面から溢れ出る赤黒いオーラが襲い、彼のバリアジャケットをズタズタに斬り裂いてしまうのだった。
「さぁて、こっちも決めますかっと」
空中でも、ガルムが勝負に決着を着けようとしていた。
「くそ!!」
一人の魔導師が、意地でもガルムを狙い撃とうとするが…
「させません」
「なっ!?」
逆にルカによって狙い撃ちされ、デバイスを弾かれてしまう。
「ナイスだルカ!」
高く飛んだガルムは、直線上にいる魔導師達にミニ八卦炉を向ける。
「お前の技を借りるぜ、魔理沙…!!」
突き出したミニ八卦炉に光が集まり、エネルギーとして収束されていく。
「な、何だ!?」
「まずい、逃げろ!!」
魔導師達も慌てて逃げ出すが、もう遅い。
「恋符『マスタースパーク』」
「「「「「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!??」
ミニ八卦炉から巨大な極太レーザーが発射され、魔導師達は一人残らずそれに飲み込まれてしまうのだった。
「うし、終わった終わった」
「ふぅ…」
ガルムのマスタースパークが決まったのを見て、Blazとルカは一度地面に座って一息つく。
その後ろで…
「ぐ、ぅ……お、のれ…!!」
Blazによってボロボロになったものの、まだ僅かに意識の残っている隊長がいた。彼はフラフラしながらも立ち上がり、Blazとルカの後ろ姿を睨み付ける。
(こうなれば、いっそ殺すまでだ…!!)
隊長はデバイスの非殺傷設定を解除、そのまま魔力弾を二人に向けて撃とうとしたが…
「おらよっと」
-ドゴォッ!!-
「ほがぁっ!?」
真上から落ちて来たmiriの踵落としが、隊長の頭に炸裂する。
「が、ぁ…」
「もう寝てろ、オッサン」
miriが着地した後、隊長はバタリと地面に倒れて気絶するのだった。
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激戦:乱舞する四戦士