No.630605 超次元ゲイムネプテューヌ 未知なる魔神 ルウィー編2013-10-23 08:57:07 投稿 / 全1ページ 総閲覧数:521 閲覧ユーザー数:506 |
灰色の空から粉雪が舞いように降っている。
肌を刺す様な寒さと凍える寒さは、コートがガードしており空がネプテューヌ達の服装に付加させた炎を加護は問題なく稼働しており、この寒さを吹き飛ばすように子供みたいに燥いでいた。
今日は情報収集なので、全員が一ヵ所に集まって動くのは、不効率なのでチームを分けることにした。アイエフを中心にしたネプテューヌとコンパ、そして空と俺の二人パーティー。
この分け方にネプテューヌが反論したが、街の広さを考えればこれぐらいが妥当だろと正論を言ったつもりだったが、全員にため息を吐かれた。空が無言で励ますようにネプテューヌ達に肩を叩いていた。
ともかく。
俺は、ルウィーの中央街ランドームシティを歩いていた。
大小含めたキノコのような形をした建物の窓から様々な色の光が明かりとなって街を照らしている。ゆっくりと呼吸をした。やるべきことがあるが、なんだかんだラステイションやリーンボックスで味わった平凡で平和で平安な空気がとんでもなく幸福に思えてくる。
『そして、この後、厄介ごとが起きるわけですね。分かります』
「だろうね」
うんうんと雪以上に真っ白なコート姿の空と相棒であるドラゴンは同じタイミングで頷く。
もう、予想を超えて因果律的に決定しちゃっている訳なのね……うん。
「紅夜の行くところ、なにかと合ったからね」
「そんなにか」
とても深く頷く空。その瞳と表情からは懐かしさと疲労が見えた。
「ま、暇するよりは良かったけどね」
そう言って、空は空を見た。その横顔を見れば本当にオリジナルとは仲が良かったんだろうなと思う。
昼には合流しようとネプテューヌ達とは決めていたので、ささっと周囲の人に聞いて回る。いきなり行方不明者について聞くのではなく、不思議なことが起きたかどうかを聞いて回った。
「……はぁ、流石にうまくはいかないか」
「そうだねー」
二時間くらい聞いて回って、収穫はゼロだった。
公園のベンチに座った所で、いつのまにか空は自動販売機で温かいコーヒーを買って来ていた。欲しい時に何も言わず持ってくる空には一種の未来予知レベルはあるんじゃないかと思う。
お礼を言って、苦くてほんのり甘いコーヒーで体を温めて一息ついた。リーンボックスも高山地帯があり、雪が降る光景を良く見たが、ルウィーではほぼ一年中雪が降ると聞く。寒いのはこのコートがガードしてくれているのでなんともないが、逆にこのコートに依存している危機も感じたりしている。
「……なんていうか、静かだな」
「平和って感じがするよね。裏では闇が蠢いているのに」
クスクスと頭を悩ます問題を空を楽しげに笑った。こいつはきっとこういう状況に慣れている。空は絶対に様々な体験をして、知識や経験を自分の力にしている。少なくても、空の全てが努力によって出来ているとは到底思えない。
「ゲイムキャラって奴は保険が効くのか?」
「効いていたら、僕だけで解決しているって」
『復活なら鍵を使えばいいけどほいほい使うと不味いからね。確かそれは三代目だっけ?』
「紅夜に壊されて、あの娘に壊されて……うん、これ三代目だね」
ぞくりと背筋が凍った舌で舐められたような感覚に襲われる。
袖で隠れていた左手を捲ると、手の甲にはあれが……中心に燃える柱が描かれている五芒星がくっきりと刻まれていた。体が勝手に震えてる。それを恐れている様に。動機が激しくなって吐き気がしたところで、空は袖でそれを隠した。
「人格は違うけど、君の体の中には邪神が作り出した魔導書があるからね。これは
「ということは俺の体の属性ってまんま『魔』なんだな」
「これは君が魔導書を持っているから効くもので、本来の君なら無効って言うか……無害?」
「……良く分からない、ニャル男さんからは罪遺物だったけ?とにかくすごいということは分かったけど、理解しきれない」
単純に世界を十六個吞み込んだと覚えている。その行いが大罪人と呼ばれることも分かる。
だが、俺には理解できないほどの範囲でその凄さが分からない。
「そこら辺の話は長くなるから保留で、でも……そうだな、世界の理を武器とする攻撃、所謂概念攻撃が紅夜の体には通じないから、暴走時に破壊が使えなかったんだよね。効果があれば、もっと楽に止めれたんだけど、罪遺物としての能力はなくても性質があるから……うん、相性最悪だ」
『キャプテンって事実上攻撃って物理以外は自動で無効化だからだね。その恩恵を受ける身として、やっぱり規則外すぎる程強い』
世界の理とか絶対に俺みたいな一般人みたいな奴に言われても理解できない。なんとなく凄いと言う事は分かる。少しだけ憧れる。そんな力があれば、みんなを守ることが出来るのに。
「休憩は終わり、それじゃ行こうか」
「おう」
コートについた雪を手で掃って、雪道特有の足跡を残しながら俺達は先に再び聞き取り調査を進んだ。
◇
なんというか、微笑ましいね。
一つの事に自分にできることを必死で取り込もうとする紅夜を見て、そう思った。
ぶっちゃけ、誘拐犯人も分かっていて、昨日の夜で誘拐された人たちも何人か救った。
邪神特有の瘴気に心身ともにダメージを受けていたことから、どうやらアイテムを使ったようだ。今そこにいる現実を虚構へと変える代物といえばあれしかない。本来であるなら、こっちとあちら側と繋いで邪悪な魔物たちを召喚することによく使われる物だが、僕にばれないようにかなり劣化させている。そのおかげでただ対象を転移するだけの
紅夜と聞き取り調査をしながら、必死で探したおかげで設置型を幾つか潰せたが、何個あるのか予想がつかない。少なくてもランドームシティ以外の町にもあるのだから、紅夜達が眠った後は徹夜で捜索だ。
それにしても、やっぱり似ているなぁと思う。
まだまだ未熟だけど誰にも染めれない志を持ち始めている紅夜を見ているとそう思う。
僕の知っている紅夜は強すぎる故、仲間なんて、肩を並べる者なんていなかった。だけど、この紅夜の隣にはネプテューヌが、女神達がいた。その後ろにはアイエフやコンパがいた。
紅夜が秘かに欲しがっていた物をこの紅夜は手にしている。
「ーーーなんか、複雑な気分」
「どうした?」
なんでもないと隣いる紅夜に言って首を振る。
こうやって隣に紅夜がいて、隣に僕がいて一緒に歩くって一年ぶりな気がする。
む、あっちに『ニトクリスの鏡』の気配!紅夜が視線を外した隙に空間から剣を取り出して投擲して破壊。本当に幾つ設置しやがったんだ?あの這い寄る混沌は。この世界の定義から外れた邪神の行いをあの引きこもり&コミ障気味のホワイトハートが対処できるわけがない絶対に。かと言って、一緒に行動している紅夜達を突き合わせたらSAN値を削るような物を見てしまうかもしれない。
やっぱり、僕がなんとかするしかない。
この世界で起きたことは頑張ってもらうしかないけど、それ以外は僕がなんとかしないと。今までと同じように。
だけど、……うん。
このまま紅夜という光が活躍しちゃうと、女神という光が小さくなる可能性がある。
紅夜は世間の裏だと化物呼ばわりだが、それでも人間としてのカテゴリーとして見られている以上、人間が女神より活躍することは許されないことだ。このままだと人は女神を必要とせず、自分達だけで発展しようと活力を刺激してしまうかもしれない。
だから、少しだけ動揺させよう。
捨てた信念と新しい信念に惑わさせるために、ゲイムギョウ界の裏を知らない無垢な紅夜に。
僕が制御を掛けた。この世界に生まれ育つなら、絶対に疑問に疑問に抱くその事について、紅夜に投げかけてみよう。
「紅夜」
「ん?」
さぁ、君はどう答えるのかな。
「---モンスターの存在意義ってなんだと思う?」
◇
「……あれ?空ちゃんがいないね」
「…本当だな」
結局大した情報も得れないまま、俺はネプテューヌ達と合流した。そして空が消えた。
さっきまで、隣を歩いていたのに。……いや、途中から空が投げかけてきた質問に混乱して、空の行動に全く気が回らなかったかもしれない。
『神出鬼没だからね。今頃、別行動でもしているんじゃない?』
「むぅ~、団体行動は大事だよ!パーティーは基国民的RPGのようにリーダーの後ろにぴったり付いてくるものなのに!」
「あいつに協調性を求めるのは……ちょっと難しかもしれない」
そもそも俺達が見ている世界とあいつが見ている世界は違う。
……あいつが突然、投げかけてきた質問が今でも頭に響く。
ーーーモンスターの存在意義ってなんだと思う?
モンスター。この世界に住む不思議な生物で、そして人々を襲う獣。
様々なモンスターを今まで見てきた、弱点を調べるためにいろんなことを勉強した。
だけど、数日前にアイエフが呟いた。そもそもモンスターはどこから出現するのか、どうやって増えているのか。
今更だが、俺達はモンスターという脅威に立ち向かうべく腕を磨くだけで、モンスターの事を知ろうとしなかった。
「……紅夜?なんだか難しい顔をしているわよ?」
「………モンスターって何のために生きているんだろうな」
「突然、どうしたのこぅちゃん?」
「いや、俺達は力を付けてモンスターを退治しているけど、モンスターの根本的な所は何も知らないなぁ……って」
繁殖方法は?出現方法は?女神の守護の力でどういう原理で街を守っている?……当たり前に疑問が浮かびそうなことを俺は考えたことが無かった。
「……確かにね。あまりモンスターについて深く考えたことがなかったわ」
「でも、みんなを困らせちゃう悪い者だから倒しちゃっていいじゃない?」
「はいです。みんなで仲良く出来ればいいですけど、モンスターさんは私達を襲うことしかしませんですから」
「……すまん、なんか混乱させること言って」
頭を下げた。混乱させるつもりじゃなかったが、みんなを難しい顔にさせてしまった。
だけど、そっと左手が温かい感触と共に握られる。ネプテューヌが手を握っていた。
「いいよ。むしろ……嬉しいな。紅夜はそのことについて悩んでいたんだよね。それを相談してくれたってこと事態が私は嬉しいな。それって私達を頼ってくれているんだよね」
「紅夜には助けられてばかりだから、困った事があったらいつでも頼りなさいよ。あの空も言っていたけど、少し貴方は鉄砲玉みたいなところがあるから」
「私たちはパーティーです。いつでも力になるです」
「……ありがとう、みんな」
そして、俺達は肩を並べて歩き出した。
ランドームシティから別の町に行くために、この厄介ごとを片付けてネプテューヌの記憶が回復することを願う。この手から伝わる彼女の温かみを守るために。
ーーーこういうの青春なんだろうな。空とこんな感じであれこれしたのが懐かしいぜ
『おはよう。キャプテン。なんだか爺臭いね』
ーーーおはよう。デペア、あとうるせぇよ。
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その10