No.630231 模型戦士ガンプラビルダーズI・B 第3話コマネチさん 2013-10-21 21:58:38 投稿 / 全8ページ 総閲覧数:885 閲覧ユーザー数:856 |
「うーん……困ったなぁ……」
深夜、未だ煌煌と明かりのつく部屋、そこにいたのはパジャマ姿のアイ。
ここはアイの自室だ。
「改造しようとしたけど、どうもいい案が浮かばない……」
机の上の仮組みしたガンプラを眺めながら呟いた。HGのAGE2ダブルバレットだ。
どういう形にするか寝る前にちょっと考えようとしたらそこで壁に当たってしまい、時間だけがズルズル過ぎてしまったわけだ。
「いっそ変形無視した方がいいかなぁ、でもAGE2だから変形するに越したことないし……なんか別のロボット参考にするとか?」
ポリポリと頭を掻きながら時計を見た。もう午前1時を回っており日付も変わっていた。ふいに『ふぁぁ……』と欠伸が出る。
「そろそろ寝ないとマズイよね……しょうがない、今日はここまでにして……」
そのままもそもそとベッドの中に入り目を閉じる。すぐに眠れるだろう。とアイは思っていたが……
「……眠れない」
寝る前に頭を余計に使った所為かアイの脳は覚醒しきっていた。
翌日
授業中、生徒達が教師の話を集中し聞く中、アイは一人机に突っ伏し寝息を立てて寝ていた。
「ぐ~……貴様は電子レンジに入れられたダイナマイトだぁ……」
……ちょっとアレな寝言付きで
「ちょっとアイ……!授業中だよ……!」
真後ろの席、ナナはアイを起こそうとゆする。しかし教師はアイの席まで近づき、アイの頭を丸めた教科書で思いっきりひっぱたいた。
「あいた!!」
アイはあわてて飛び起きた。
「ヤタテ!授業中に堂々と寝言言いながら寝るな!」
「うわぁ!ごめんなさい!」
「ヤタテさん。口よだれついてる……」
「え!?ウソォ!」
隣の生徒の指摘に恥ずかしそうに必死に口元を拭うアイ、どっとクラスに笑いが起こる。
「なんか、ガンプラバトルではあれだけ格好良かったのが想像つかないよねぇ……」
ナナはボソッと苦笑しながらつぶやいた。
……
「災難だったわねアイ、結構ハデに叩かれてたけど大丈夫?」
昼休み、いつもの様にタカコとムツミ、そしてナナの四人で弁当を食べるアイ。
アイが引っ越してきてから一週間。もうクラスにも馴染むことが出来た。
「ありがとう。教科書だったからコブにはなってないよ」
アイは自分の頭をなでながら確認する。
「寝不足みたいだけど大丈夫?眼の下にクマあって写真写り悪そうだよ」
「遅くまでガンプラ作ってたの……?」
「うん、本当は程々にしとくつもりだったんだけど長引いちゃって」
「そんなになるまで?時間かかるのガンプラって」
「まぁね、人によってマチマチだけど。私の場合は一週間から二週間位かな?」
「え?そんなに!?」
ナナが驚く、十数センチしかないガンプラだ。サイズが小さい為もっと簡単に出来ると思っていたのだ。
「時間かかる人はもっとかかるけどね。中には半年や一年がザラだって人もいるし」
「うひ~、それだけ時間かかるなんて……アンタもうまいんでしょうけどそれ位時間かかる人ってどんな出来になるんだか……」
「私なんてまだまだだよ。本当にうまい人はもう、うまい通り越してリアル錬金術だもん」
「……錬金術……?」
「どんな例えよ」
「まぁ言わんとしてる事は解んなくもないけど」
三人が顔を見合わせながら言う。
「でもさ、ガンプラ批判するわけじゃないけど、そんな風に生活に支障出てきたりするんじゃちょっとマズイんじゃないの?」
「う……!痛い所を……でも好きだからついついのめり込んじゃうんだよね。やっぱ今作ってるのもバトル出すから妥協したくないって言うか」
「本当、好きな事は凄い突き進むよね……」
「あいにく勉強と両立は出来てないけどね……」
自虐的にアイは笑う。この一週間、ナナ達はアイと過ごしてきてアイという人間を分かってきた。
ガンプラがうまい反面勉強とスポーツは全然ダメだった。
「アンタ典型的な一度に二つのことが出来ないタイプだよね、集中したら凄いけど」
「じゃあさ、他人に作らせたらいいんじゃない?」
「え?」
そう発言したのはタカコだ。驚くアイ
「作ってあげる専門の店とかあるって聞いたよ?専門職だったら出来も凄いだろうし、
バトルで使えばアイちゃんももっともっと強くなれるんじゃない?」
「へぇ~?そういうのあるんだ」
「いや~それは……」
「他人に作らせたガンプラね……ボク個人としてはあまり賛同できないけど……」
ムツミがペットボトルのお茶を飲みながら反対する。
「え~なんで」
「自分で作ったガンプラを戦わせるわけだから、そういうのって自分で作ってナンボなんじゃないの……?」
「基本的にはムツミちゃんの言う通りなんだけどさ」
食べかけのパンを持ちながらアイが答える。
「その辺結構複雑なんだよね。自分で作る分には時間も道具も必要なわけだし、
自分一人で楽しむ分には作らせるのもアリなんだろうけど、それでバトルするとなるとね」
他人に作らせたガンプラを使う、ガンプラバトルでは一種のタブーと言われてる所もある。反面そう思わないビルダーもいる為その辺の良い悪いは曖昧だった。
「じゃあやっぱり人に作らせたのに乗るのって悪い事になるのかな?」
「うーん、実は私もよく解らないんだ。自分で作った方が思いつくアイディアもあるし愛着が沸き易いのも事実なんだけどね。
作りたくても作れない人もいるし」
「ま、確かに他人のガンプラ乗ってデカイ顔してる様じゃよく思わない人間もいるでしょうしね」
「でも実際やるんだったら愛着とかは持ちたいよね……」
そして放課後、何か改造に使えるネタが欲しいから、とプラモ屋『ガリア大陸』に来たアイとナナ、
今の時間帯は下校の学生達で賑わっている時間だ。アイ達以外にも何人もの学生や仕事帰りの社会人らがいた。
「何か安くて使えそうな奴はないかなっと……」
「改めて思うけど、本当種類多いわね~」
ガンプラの棚の前に立つ二人。プラモに興味を持ってなかったナナは想像以上の種類に驚いていた。箱の大きさも物によって全然違う。
「同じガンダムのガンプラでもサイズ自体違うのもあるし、同じスケールでも元になった作品によっては大きさバラバラだからね」
「なるほど、で、今日は何買うの?」
「ん~まだなんとも……」
そもそもどういう改造にするかも決めてなかった。これでは何を買うかすらも決められない。
「あ!見つけたぜ!」
その時だった。アイ達の前に三人の太った青年が現れる。三人とも眼が細く首が太い、なんだか太った猫を思わせる外見だ。
「こいつらだ兄ちゃん!こないだはよくもやってくれたな!」
「……誰?」
「んな!?」
ナナに存在を忘れられた事にショックを受ける三人、
「待ってナナちゃん、この声、こないだの荒らしじゃない?」
「あぁあの時の、声だけはデカかったけど転校初日のアイにボコられた大人げない三人」
「大人げないって言うな!」
「そうムキになるのが大人げないっつってんのよ。で、今日来たのは何?いちゃもんでもつけに来たの?」
「いちゃもんじゃない。今日はリベンジとして再戦を申込みに来たんだよ」
三人の内、兄ちゃんと呼ばれた男、(恐らく長男だろう)がアイに指を指す。
「そうだ!あんな簡単にやられっぱなしは性にあわない!」
「そう言ってもまた三対一なんじゃないの?」
「悪いけどそうだよ」
「アンタ達、んな堂々と……」
悪びれた様子もなく言う長男にナナは呆れる。
「ただしこちらは自分の腕はわきまえた上で言ってるんだ。リベンジとは言ったがこっちとしては記念にさえなればいい。
かわりにこっちは正々堂々と戦う。受けてくれるか?」
「……どうすんのよ。アイ」
「うーん、とりあえず正々堂々とやるって言うんだったら断る理由にはならないけど……」
「ちょっとアイ。それ安請け合いしすぎじゃないの?」
三人の実力はアイもナナも知っていた。だが相手は荒らしをしていた人間。何をするか分ったもんじゃない。
「まぁそうなったらそうなったで、別にいいよ」
「本当か!?サンキュー!俺たちの名前は『ケイ』三兄弟!上から名前はマツオ、タケオ、ウメオだ!」
アイは警戒しつつも承諾、ナナはなんか怪しいなぁ。と疑うような目だった。
そんな5人のやりとりを途中から見ていた男がいた。
「ふむ、先を越されたか……」
そしてガンプラバトルが始まる。転校初日に故障していたGポッドはもう全て修理されていた。
バトルステージはタクラマカン砂漠。地平線の果てまで砂だらけ、まばらながらも岩地が見える。
AGE2Eで飛行していたアイは、少し離れた場所に一人の敵がいることにすぐに気が付いた。
見通しがいいのがこういったステージの長所だ。そこに居たのは長男、マツオが乗ったオーカー色の機体、ジ・Oだ。
胴体は胸と腹部が一体化しており腰には化粧廻しの様なアーマー、対照的にとんがった小さな頭。
そのフォルムは相撲取りを思わせる体型をした機体だった。
「デカイわね~、力士みたい」
観戦モニターを見ていたナナがジ・Oのサイズに驚く。ジ・OはZガンダムのラスボスだ。身長だけでなく横のボリュームも非常にある。
隠し腕が腰に隠されてるなどギミックも豊富だ。
更にマツオのジ・Oには改造が施されてるらしく、ビームライフルを両手に持っていた。
うち左手のライフルにはチューブが繋がれており、わき腹に接続されていた。
「前回は素組の為ボロ負けしたが、今度はプロショップで作らせた一品だ!負けないぞ!」
「プロショップで!?」
「は?プロショップ?何それ」
驚くアイ、聞き慣れない単語に首を傾げるナナ。
「依頼で人のプラモを作ってあげる店の事だ」
そこへ一人の男が現れ、ナナに教える。
「……誰よオッサン」
「いやオッサンって……」
反応に困る男、かなりの大柄だ。身長は180㎝半ば、社会人なのかスーツを着ているが相当鍛えているのだろう。
スーツ越しでも筋肉量が分かる。反面顔つきは穏やかそうな印象があった。
「……って、今プラモを作ってあげる店って言った?……汚っ!アイツらそれであんなドヤ顔で勝負仕掛けたわけ!?最低!!」
「まぁ落ち着け、ただ出来が良ければ強いというわけじゃない」
ナナが騒ぐ横で男はジッと観戦用のモニターを見ていた。
――何?このオッサン……――
「はぁぁっ!!」
GNソードで斬りかかるアイ。ジ・Oは腰の隠し腕に握られたビームサーベルでそれを捌く。
マツオのジ・Oも隠し腕の二刀流で斬りかかる。
が、アイもまた空いてる左手にビームサーベルを持ち銃剣と剣の二刀流で対処していた。
鍔迫り合いになる二機。
「チッ!やるじゃないか!」
「こっちだってガンプラ完成度は劣っていても負ける気なんてない!」
「そうかよ!」
ジ・Oは右手のライフルで鍔迫り合いのAGE2Eを狙い撃とうとする。隠し腕がある分ジ・Oはこういう利点があった。
「チッ!」
アイは気付くとジ・Oに蹴りを入れる。蹴りは腹部に綺麗に入りよろめくジ・O。
「ぅおっ!」
すぐさま離れるアイのAGE2E。
「チッ!ちょこざいな!」
「兄ちゃん!こっちは準備出来たぜ!」
「お!」
その時だった。ジ・Oに通信が入る。マツオの弟のタケオだ。
「ふ、そうか!今行くぜ!」
そう言うとジ・OはクルッとAGE2Eに背を向け走り出す。(といってもホバーだが)
「どこへ!?」
ハイパードッズライフルをジ・Oに撃とうとするアイ、だがジ・Oは素早く近くの岩場に逃げ込む。
「隠れたって!」
アイが岩場を撃とうとすると、ジ・Oの逃げた方向から幾つもの針状の小型ミサイルが飛んできた。
「!?」
ジ・Oにはミサイルが装備されてないのに!そうアイは思い
飛んでくるミサイルにハイパードッズライフルを撃つ。
ドッズライフルの大型ビームはミサイルを巻き込み爆発させた。
恐らく複数の機体がいるのだろう。
何度かミサイルを撃ち落としていると攻撃が止んだ。
と、同時にまたジ・Oの姿が見えた。今度はかなり遠くだ。
「あんなところへ?なら追いかける!」
ハイパードッズライフルでは射抜けない距離だとアイは判断、
AGE2Eをストライダー形態へと変形させるとジ・O達の前に回り込もうと飛び立つ。
……
「なんだ、プロが作ったものだからどれだけ強いかと思ったけど普通にアイが押してるじゃん。
向うも何か考えてるみたいだけど大丈夫かもね」
観戦していたナナが安堵の表情を浮かべる。だが横にいた先程の大男は厳しい表情だ。
「いや、向こうが逃げ腰になるのが簡単すぎる。僚機も見えない所を見ると何か嫌な予感がする」
「……どういう事?オッサン」
「だからオッサンじゃないよ……」
AGE2Eは高速で先回りし、ジ・O達を頭上から狙い撃とうと前に躍り出る。
「覚悟!」
が、その瞬間突然AGE2Eの周囲が爆発した。
「うわぁ!」
ひるむアイ、その隙をついて針状のミサイルが撃ち込まれる。
「なっ!一体……どうして!?」
攻撃を受けつつもアイは周囲を見る。丸い物に棒状の物が四方向突き出してる小型の物体。
それが周囲にいくつも浮かんでる。浮遊機雷、ハイドボンブだ。
ミサイルを撃ち込まれた際にAGE2Eはバランスを崩し墜落しそうになる。
「クッ!このまま落ちるわけには!」
変形し人型になって片膝をついた体勢で着地、その時だった。
ビシャッ!
「!?」
何か液体がAGE2Eにかかる、それも何度も全身に、Gポッドのモニターも雨が降ったようにずぶ濡れになってしまった。
「何これ!?何がかかってるの?!」
「直にわかるぜ!」
撃ってきたのはジ・Oだ。液体はチューブに繋がれた方のビームライフルから発射されている。
「何をしたかは知らないけど!ビームじゃないならこれ位!」
対して気にもせずGNソードで斬りかかろうとするアイ、
「そうかな?自分の塗装を見てみな?」
「!?」
体を動かした際に見えた自機の腕とハイパードッズライフルに驚愕する。
「な!何これ!?」
関節のグレーと腕のコバルトブルーが滲んできてる。塗装した塗料が溶けてきてるのだ。徐々に下地の色が見えてくる。
「効果が出て来たな!」
「塗料が溶ける!?まさかこれって……」
「そう!塗料薄め液、模型用シンナーだ!」
全身の塗装が滲んでくる。AGE2Eのステータス『塗装/印字精度』のパラメータが一気に下がった。
「クッ!それでも一気に決めれば!」
「させるかよ!」
ハイパードッズライフルでジ・Oを撃とうとするアイ、
だが正面から針状のミサイルが再び飛んできた。
正面に甲冑のような機体、ギャンが二機並び、丸い盾からミサイルを撃っているのが見えた。
あれがマツオの弟、タケオとウメオの機体なのだろう。
「真正面から!?そんなバレバレの攻撃で!」
回避運動を取ろうとするアイ、だがAGE2Eが反応しない。
「う!動かない?!なんで!」
驚愕すると同時にミサイルの爆発に巻き込まれ吹っ飛ぶアイとAGE2E。
「ぅあっ!」
アイはこの状況が理解出来ずにいた。
「そんな!どうして!?」
「自分の間接を見てみな」
「え!?」
マツオの言葉にアイはAGE2Eの関節を見て驚いた。溶けた塗料が関節の隙間に入り込みそのまま固まっていたのだ。
「砂漠設定だったからな。高い外気温であっというまに固まったってわけよ。
俺が時間を稼ぎ、タケオとウメオがばらまいたハイドボンブのテリトリーに誘い込む。
そしてシンナーで動きを封じる。面白いくらいに引っかかってくれたなぁ!」
爽快と言わんばかりに言うマツオに、アイは怒りが湧いてくる。
「このっ!」
ハイパードッズライフルをジ・Oに向けようとする。が、間接が固まってしまってるので動かない。
「動いて!」
無理に動かそうと力を無理やり込める。が、次の瞬間、
バキッ!
「あ!」
無理な負荷に耐えきれずAGE2Eの右腕のひじ関節が折れてしまった。そのまま右腕が落ちる。
「自分で自分のガンプラを壊す!傑作だな!」
「クッ!正々堂々と勝負するって言ったのに!」
「オイオイ何言ってんだ?これだって正々堂々だぜ?」
「何を!」
「だってそうだろう?ガンプラビルダーってのは自分のガンプラの実力を活かすもんだ。
これだってガンプラの実力を活かした戦い、正々堂々だ」
「こんな風に相手の動きを封じるのが正々堂々!?」
「分かってねーな」
ビームサーベルを構え近づくジ・O。
「ガンプラバトルってのは相手のガンプラを壊せばいいんだぜ?どう壊れようが同じだろうが」
「あ~もう!どうすんのよこれ!だから安請け合いだって言ったのにぃぃ!」
ナナがアイの絶体絶命の状況に叫ぶ。と、その時だった。突如観戦モニターに『挑戦者が乱入しました!』と表示された。誰かがアイのガンプラバトルに乱入したのだ。
「挑戦者?どういう事よオッサ……あれ?いない?」
アイの側にも乱入者のアナウンスは流れた。
「乱入?!」
「そこまでだ!」
一機のガンプラが凄い勢いで砂塵を巻き上げながら突っ込んでくる。青いカラーリングとずんぐりしたボディ、
ガンダムセンチネルに登場したモビルスーツ、ゼク・アインだ。
右手には1/100アストレイのビームライフル。また腰にも1/100アストレイの日本刀『ガーベラストレート』
元々ミリタリー色の強いゼク・アインだが元々の印象からかなり離れた改造だ。
「ゼク?!一体誰が?」
「あ!あいつは!」
驚きの声をあげるマツオ。そんなマツオめがけてゼク・アインはビームライフルをジ・O目掛けて撃ってきた。
すんでの所でかわすジ・O。
「クッ!タケオ!ウメオ!時間を稼げ!俺はその隙にコイツを!」
「ガッテンだ兄ちゃん!」
今回のチーム戦ではリーダー機を倒せば強制で倒した側の勝利となる。
乱入者はリーダーにはなれないので先にアイを倒してしまおうとマツオは考えた。
二機のギャンがゼク目掛けて円形の盾から針状のミサイルを撃ってきた。
さっきAGE2Eを度々撃ったミサイルだ。幾重ものミサイルがゼクを襲う。
「フン!」
ゼク・アインはビームライフルを左手に持ち替える。そして右手で腰に差したガーベラストレートを抜き、
ゼクはミサイルの中に突撃をかけ、刀をミサイルに振るう。
アストレイの装備を持つ為にゼクのマニピュレータは1/100アストレイに変えられていた。
弾幕の中をゼクがくぐり抜けると同時にミサイルは正面から真っ二つにされ全て爆発した。
『う!ウソォ!』
驚愕するタケオとウメオ。その隙をついて一気にゼク・アインが詰め寄る。
「胴ぉおおおっっ!!!!!」
剣道の掛け声でゼクのビルダーが叫ぶと同時に、大きく振りかぶったガーベラストレートを横に振るう。
並んだギャン二機をまとめて真っ二つに切り裂いた。
『そげなぁぁ!!』
ギャンは二機まとめて爆発、ゼクは確認もせずにジ・Oに向かって突撃する。
一方マツオのジ・OはAGE2Eめがけて隠し腕のビームサーベルを振り上げる。
「お前さえ倒せば!」
「やられる!?」
「待て!」
ジ・Oが隠し腕のビームサーベルを振り下ろす瞬間、
ゼク・アインがAGE2Eを庇う形でビームサーベルをガーベラストレートで受け止めた。
「コ!コンドウ!」
ゼクに乗ってるビルダーらしき名前をマツオは呼んだ。アイは目の前のゼクの下半身が、丸々リックドムⅡに変えられてる事に気付く。
だからホバーで高速移動が出来たのかとアイは自己分析した。
「男らしくないな。三人で、さらにこんな手で女の子を追いつめるなんて」
「丁度いい!このジ・Oはお前ら三人を倒すために作らせた一品だ!」
ジ・Oが薄め液の入ったライフルをゼクに向ける。
「こいつでテストを兼ねたリベンジだったが!ここでお前を倒せば俺達三兄弟は!」
「やかましい!」
ゼク・アインは左手のビームライフルで薄め液入りのライフルを撃ち抜いた。
「何!?し!しまった!」
マツオが驚愕の声を上げる。中の薄め液がビームに引火しジ・Oの腕が燃えはじめる。
「も!燃える!俺の腕が!俺のジ・Oがぁぁ!!!」
「小細工なんかするからだろう!」
その隙をつき隠し腕を両方ともガーベラストレートで切り落とすゼク。
刀が長かった為、刃はジ・Oの腹部も浅いながらも切り裂く。腹部からドプッ!と音を立てて薄め液が漏れる。
腹内部にタンクがあり、チューブを介して薄め液をライフルに送っていたというギミックだ。
「お!おのれぇ!」
ゼクはAGE2Eを抱えてジ・Oに向いたまま後退。少し離れるとビームライフルを向けた。狙うは腹部。
「プロショップだけならまだしもこんな手を使う!少しは反省しろ!」
放たれたビームがジ・Oの腹部を撃ち抜く。と同時に腹部の貯蔵した薄め液に引火。
「火!ひぃぃいいいい!!!!!」
引火した薄め液はジ・Oごとまとめて爆発した。半壊したAGE2Eの中でアイは茫然とその光景を見ていた。
「凄い……一人で三人を……」
勝負が終わるや否や、アイは急いでスキャナーを開きAGE2Eの状態を確認した。
AGE2Eはスキャナーの中で入れた時のままだった。
「良かった……壊れてない……」
アイはそれを見てホッと安心する。ガンプラバトルでの損傷はガンプラには反映される事はない。
自機がやられてもスキャナーのガンプラは全くの無傷だ。それでもあんな損傷の仕方をすれば不安にもなる。
アイがGポッドから出てくると、ナナと一緒にゼクのビルダーを待つ。礼の一つも言いたかったからだ。やがて男が出てくる。
「やぁ、大丈夫だったか?」
「あなたが……助けてくれたんですか?確かコンドウって……」
男のパイロットスーツの色は青と黒、更にその上から陣羽織の様な物を羽織ったデザイン、アイ達とは違うスーツだ。
そして顔はヘルメットで見えないがかなりの大柄だ。ナナはその体型に見覚えがあった。
「あ!もしかしてさっきのオッサン!?」
ガクッと男が崩れる。慌てて男はヘルメットを外した。
「オッサンじゃない!俺の名はコンドウ・ショウゴ!まだ27歳だよ!」
ナナの思った通り先程の大男だった。そして何より一週間前、アイとコウヤが戦った際にバトルを見ていた男その人だった。
「27って……オッサンじゃん」
これにて第三話終了となります。
ビルドファイターズの原型とも言うべき作品、ガンプラビルダーズでは
他人の作ったガンプラで戦う事は良くないとありました。
しかしビルドファイターズでは作る主人公と戦う主人公がそれぞれ存在します。
ならこれらの違い、差はなんだろう。と自分の無い頭で考えた結果がこの話です。
答えは次回に持ち越しですが次も見て頂ければ幸いです。
ご指摘、ご感想ありましたらお願いします。
例によって小説内に登場したゼクの再現ガンプラを投稿しました。こちらもどうぞ。
http://www.tinami.com/view/630227
Tweet |
|
|
3
|
0
|
追加するフォルダを選択
第3話「青い剣豪」
模型部員ヤマモト・コウヤとのガンプラバトルに勝利したヤタテ・アイ。その勝負を興味深そうに見ている男がいた。
それから一週間後…