旅団メンバーが集結してから数日後…
「らっしゃあ!!」
「ギシャァァァァァァ…!?」
とある世界の森林にて、ガルムが巨大スコーピオンにトドメを刺していた。倒されたスコーピオンはその場に崩れ落ち、ピクリとも動かなくなる。
「ふぅ」
ガルムは銃口から出ている煙を吹いてから、拳銃をホルスターに納める。
「お疲れ様です、ガルムさん」
「結構アッサリ片付いたな」
「まぁ、どいつもこいつも雑魚ばっかだったしな」
ガルムの下にルカが駆け寄り、miriとBlazはスコーピオンの死骸を木の枝で突っつく。
「けど、こうもモンスター退治ばっかりで退屈だな。もっと大きな異変でも起こったりすれば面白いと思うのに」
「そういう怖い冗談はやめて下さい」
「幻想郷で過ごしてたお前がそう言うとな、割とガチで洒落にならねぇんだよ」
「そういう台詞を聞かされるこっちの身になってみろよ」
「…お前等が俺の事をどう思ってんのか小一時間、問い詰めて良いか?」
「「「だが断る」」」
「口を揃えて言うんじゃねぇよ!!」
三人の息が合った返事にガルムが素早く突っ込む。
「全く……そういや、デルタは今もアジトに?」
「あぁ。今頃、他のメンバーと一緒にトレーニング中だろうよ」
「まぁそんなデルタさんの為に、Unknownさんと兄貴が何か色々と頑張ってるみたいですけど…」
「ふ、は、せぃやっ!!」
「ぬ、く…!!」
広い空間の中で、デルタとげんぶの二人が手合わせとして格闘戦を繰り広げていた。げんぶもデルタに合わせて生身で戦っているらしく、二人は互いに一歩も譲らない。
「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「チィッ!?」
げんぶの連続で繰り出すパンチを、両腕で確実に防ぐデルタ。しかし勢いではげんぶに押されているようで、少しずつ後ろへと下がっていく。
「フンッ!!」
「ぐっ!?」
「せりゃぁぁぁぁぁぁっ!!!」
げんぶのパンチが腹部に命中し、一瞬怯むデルタ。そこへすかさず、げんぶが回し蹴りを繰り出す。
「ッ!!」
「な、うぉっ!?」
しかし簡単にやられるデルタではない。げんぶの回し蹴りを左手でガードすると同時に右手でげんぶの足を掴み、げんぶの身体を支えている足を引っ掛けて転倒させる。デルタは取り出したナイフを逆手に持ったまま素早く倒れたげんぶの首を掴み、彼の顔面目掛けてナイフを振り下ろし…
「はい、そこまで!」
審判係のawsから、終了の合図が出る。
それと同時にデルタのナイフを振り下ろす腕がピタリと止まり、ナイフの刃先がげんぶの顔面ギリギリで止まった。
「―――はぁ、駄目だ。デルタさんには全然敵わんな」
「ふぅ…」
デルタはげんぶを解放してからナイフをしまい、げんぶも倒れていた状態から起き上がる。
「いやぁ~凄い凄い。デルタさん、全然訛ってなんかいないじゃん」
「汚染された身体で、よくあそこまで戦えるよな」
二人の手合わせを見学していたFalSigと蒼崎は、デルタの変わらぬ戦闘力の高さに関心していた。既に身体の汚染は酷くなっているにも関わらず、デルタは今の手合わせの中で、衰えという物を一切見せなかったのだから。
「さて……デルタさん、身体の具合はどうだ?」
同じく見学していたロキはデルタにタオルを投げ渡しつつ、身体の具合について問いかける。
「ん……普段よりかは、幾分調子が良いですね」
「ふむ、短い時間でも効果は充分ありか…」
ロキは服のポケットから、複数のカプセルが入った小瓶を取り出す。
「流石はUnknownさんとロキさんです。コジマの汚染によるダメージを一時的に打ち消し、まともに身体を動かせる効果を出すとは…」
「本当に一時的にだがな。長時間は持たないし、無茶して機体に乗って戦い続けたりすると、また汚染が悪化してしまう」
カプセル入りの小瓶を手で弄りつつ、ロキが説明に補足を加える。
「無いよりかは断然マシですよ。一時的にとはいえ、これでまた前線でも戦う事が出来るようになったんですから」
「あのな、俺の話を聞いてたのか? 機体に乗るのはお勧めしないって言ってんだよ」
「団長からも言われているのだろう? 無茶だけはするなと」
「む…」
ロキとawsに突っ込まれ、デルタは言葉に詰まる。実際、言われなければデルタはまた機体に乗って戦おうとしていただろう。
「とにかくさ。俺達だって、同じ旅団メンバーとして戦っている訳なんだし。デルタさんが一人で無茶する必要は無いんじゃない?」
「FalSigの言う通りだ。デルタさんも少しくらい、仲間の事も頼ってみたらどうだ?」
「俺達だって、役に立って見せますよ」
「頼る、ですか…」
FalSigや蒼崎、げんぶからもそう言われ、デルタは少しばかり黙り込むのだった。
「そもそもこの旅団、とんでもなくチートな奴がいっぱいだからさ。別に誰に頼ったって損は無いだろうさ」
「私からすれば、ロキや蒼崎の操縦技術も何かおかしいと思うがな」
「いや、お前の武術も充分凄過ぎるからな? 俺は生身じゃそこまで強くないからな?」
「俺の場合はライダーやガンダムに変身出来るんだよな。能力を封じられると弱いけど」
「俺なんて、寿命とかを弄るだけで簡単に相手を殺せますよ?」
「「「「あぁっと、一番ずるいチートがここにいた」」」」
「何でそこだけ息が合うの!?」
なお、今回はFalSigだけが上手く弄られた模様。
一方、ミッドチルダでは…
「あぁ~…今回のモンスター退治、物凄く疲れた気がする」
「いやいや……アンタ、そんな時間かかる事も無く普通に倒してたじゃねぇか」
「えぇっと、確かこの辺に美味しい店があった筈…」
街中を歩いて回っているUnknown、支配人、ディアーリーズ。彼等はモンスターを退治し終えた帰りにこのミッドチルダへ寄り、何か昼食を取ろうとしているところだ。
「疲れるもんは疲れるんだよ。アイツ等も弱い癖に数だけは無駄に多いし、それに…」
「それに?」
「…こんな格好じゃ、上手く戦いにくいっての」
「あぁ~…」
支配人は納得する。
現在、Unknwonは姉の朱音によってまたしても女装させられていた。今回は数日前に着たピンクのドレスではなく、可愛らしいゴスロリファッションだった。髪型もツインテールに変えられており、その姿は何処からどう見ても可憐な女性にしか見えない。
「ふ、まぁ良いさ……こんな格好で戦うのも、周りの野郎共から注目を浴び続けるのも、こっちはとっくの昔に慣れてしまったしな…」
「…どんまい」
今でも、すれ違う度に周りの男性達はUnknownの方に振り向いては見惚れてしまっている。Unknwonは諦めた様子で溜め息をつき、支配人はそんな彼に同情せざるを得ない。
「あ、ありましたよ!」
ディアーリーズの指差した先に、目的のレストランが見えてきた。
「うし、さっさと昼飯食って帰ろう、そうしよう」
「何か投げ槍に見えるのは気の所為か?」
「支配人さん、気にするだけ無駄かと」
「…だな」
Unknownは一足先にレストランを目指し、そんな彼の後に続く支配人とディアーリーズ。
その時…
「泥棒ーッ!!!」
「「「!」」」
声のした方に三人が振り向くと、女性のカバンを盗んだスリの男性がバイクに乗って逃げようとしているところだった。男性は盗んだカバンを持ったまま、三人のいる方向へと走って来る。
「…さて、どうするよ?」
「うむ、物凄くちょうど良いところに来てくれた」
「やる事は……まぁ、言うまでもありませんか」
三人は目をギラリと光らせる。
「―――どっせぇいっ!!」
「ぐふぉあっ!?」
「よっと」
まず、正面に立った支配人がすれ違い様に男性をバイクから蹴り落とし、ディアーリーズは男性が盗んだカバンをキャッチ。そして蹴り落とされた男性にUnknownが素早く飛び掛かり…
「鉄・拳・制・裁ッ!!!」
「ちょ…ギャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!??」
ストレス発散とばかりに、Unknownは男性をボコボコにし始めるのだった。時々聞こえてはいけない音まで聞こえてくる等、どれだけ凄まじいのかがよく分かる。
「フンッ!!」
「ごはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」
最後にUnknownは現在履いているブーツで男性の背中を踏みつけ、完全にトドメを刺す。背骨の折れる音が聞こえたような気もするが、それは気の所為だ。
「ぐふぅ…………あ、ありがとう……ござい、ま…す…」
((お礼言っちゃったよ!?))
何故かUnknownにお礼を述べてから、男性は完全にノックアウトするのだった。
「ありがとうございます! 何てお礼をすれば良いか…」
「いえいえ、こっちが勝手にやった事ですから」
取り返したカバンはディアーリーズが女性に渡し、Unknownがボコボコにした男性は管理局の魔導師によって連行された。
「そんで、アン娘さんよ。少しでもストレス発散は出来たのか?」
「う~ん……まぁ、ボチボチかな」
「ボチボチかよ」
支配人とUnknownが話しているその時…
「ギン姉~!」
「ギンガさ~ん!」
ディアーリーズに礼を言っている女性の下に、青髪の少女とオレンジ髪の少女が駆け寄って来た。
「ん…うげっ!?」
「?」
二人の少女を見た支配人は何故か慌てた様子で、顔を帽子で隠す。Unknownはそんな彼を見てクエスチョンマークを浮かべる。
「ギン姉、盗まれたカバンは!?」
「大丈夫よ。この人達が取り返してくれたから」
「そうですか。良かった…」
女性が手に持っているカバンを見て、二人の少女も安堵する。
「本当にありがとうございました。この恩は決して忘れません」
「「ありがとうございました!」」
「いえいえ。では、僕達はこれで…」
女性はもう一度礼を言ってから、二人の少女と共に立ち去って行った。ディアーリーズは彼女達が見えなくなるのを確認してから二人の方に振り返り…………帽子で顔を隠している支配人に気付く。
「…支配人さん?」
「ん、あぁ、もう良いのか。ならとっとと飯でも食って帰ろうぜ」
「? どうしたんだ支配人、いきなり顔を隠したりなんかして」
「いや、実はよぉ…」
支配人は参ったような表情で帽子を被り直す。
「さっきの人達の中にさ、俺の知り合いがいたんだよ」
「「知り合い?」」
「あぁ、名前は―――」
「ギン姉、もう盗まれちゃ駄目だよ?」
「分かってるわよスバル。私だって二度も同じ目には遭わないわよ」
先程、ディアーリーズ達が別れた女性と、二人の少女。
女性―――ギンガと青髪の少女―――スバルは姉妹らしい。二人が会話している中で、オレンジ髪の少女はそんな姉妹の後に続いて歩く。
(さっきの人達の中、見た事のある人がいたような…)
オレンジ髪の少女は思い浮かべる。
かつて、今は亡き兄と共に射撃を教えてくれた、とある人物の事を。
(…いや、まさかね)
「ランスターさ~ん、早く~!」
「置いてっちゃうよ~?」
「あ、はい! 今行きます!」
少女―――ティアナ・ランスターは姉妹に呼ばれて一旦考えるのをやめ、かなり先にいる二人の下まで向かうのだった。
某次元世界、ヴァルハイム…
「さて、これで全部かしら?」
「そのようで」
「数だけは多いな、全く…」
洞窟内部にて、モンスターを退治し終えていた朱音と竜神丸、そして二百式。周りには倒されたモンスターの死骸が複数転がっている。
「他にはモンスターの反応もありませんし、さっさとアジトに…ッ!!」
タブレットを操作している竜神丸だったが、途中で台詞が途切れる。
「竜神丸さん?」
「どうした?」
「…管理局です」
「「!!」」
「そこまでです!!」
三人の下に、複数の魔導師達が姿を現す。
「我々は時空管理局の魔導師です!! 今すぐ武装解除し、投降して下さい!!」
部隊のリーダーらしき女性の魔導師が、三人にデバイスを向けながら言い放つ。
「…あらあら」
魔導師部隊に対し、朱音はペロリと舌舐めずりするのだった。
OTAKU旅団と時空管理局。
二つの組織は、数年ぶりの接触を果たす。
Tweet |
|
|
4
|
0
|
追加するフォルダを選択
接触:二つの組織の相対