まえがき コメントありがとうございます。暑さが舞い戻ってきたことにより季節はずれの夏バテにかかりそうな予感がしているsyukaです。さて~、やーっと少しだけ本編が進められます。まぁ、刀蜀伝の拠点時間列は並行ではなく順当に進んでいますから本編的には進んでいるのかもしれません←どっちだ とりあえずどうでも良いことは置いておきましょう。今回は初登場の面々が登場します。それではごゆっくりしていってください。
さて、今日のデートはお休み。なんでも鈴の絡みのお客さん・・・と言っても良いのか?仲間が来るようで、今は庭でお茶でもしながら待ってるところだ。
「鈴さんのお仲間さんですか~。 想像もできませんね~。」
緊張感のかけらもないなぁ。皆いたっていつも通りだし。
「だが、鈴の仲間ともなると説得は難しかったのではないのか?」
愛紗が俺の考えていたことを代弁してくれた。鈴・・・つまり、黄竜の仲間。一筋縄ではいかないと思うんだけど。
「そこは問題ない。 我の夫だと言ったらすんなり受け入れてくれた。 物分りはいいやつらだからな。」
「予定だからね? 予定。」
「我としては今すぐ確定させても良いと考えているぞ。 我の唇をくれてやったのだ。」
「半ば強引だった気がするけど・・・。」
まぁいいや。もう突っ込まないぞ。そんな何気ない会話をしつつも、稀有な客人たちは着々と成都付近に集結しつつあった。
・・・
正午に差し掛かる頃、俺たち蜀将は成都から少し離れた荒野へとやって来ていた。出迎えのつもりらしいが、なんでここまで来たのかを鈴は語らない。
「鈴々、お腹ぽんぽこりんなのだ~。」
「少しは我慢しろ。 客人を招くだけなのだ。 そうそう時間が掛かるものでもあるまい。」
そんなやり取りをしている愛紗と鈴々をよそ目に、少しずつ雲行きが怪しくなってくる。
「こんな光景、前にも見たような・・・。」
「ふむ、黄竜と同質の気を感じる。」
「やっぱり・・・。」
そう、雪蓮たちと五台山で鈴と始めて邂逅したときと同じ。暗雲があたりを包み、雲間に無数の稲妻が走る。
「やっと到着したか。」
鈴がそう呟くと、ぬっとその躯体が姿を見せる。鈴の黄金とは異なる、黒色。ただ黒いというわけではない。ブラックスターを彷彿させる透明感を持ち合わせた黒。
「・・・で、でけぇな。」
蒼は竜の躯体に開いた口が閉じないようだ。薔薇、百合、月は俺の後ろに隠れ、うちの三軍師は三人でおろおろしている。そりゃ竜を眼前にしたら怖いよな。
「・・・あら? まだいるわね。」
母さんが何かに気付いたかのように口にすると、俺たちを中心として背後、左右の空にも竜が現れる。
「珍しい。 きちんと時間通りに皆揃ったか。」
前後左右・・・東西南北の空に竜が出現する。たとえ一匹でも天地がひっくり返るほどに珍しい出来事なのだ。ある種の異常だと考えても良いのかもしれない。
「しかし顔が見えぬのでは話も出来んな。」
鈴が天目掛けて腕を払うと、覆っていた暗雲が晴れ竜たちの姿が顕となる。
「・・・。」
なんと神々しい光景だろうか。四竜が一同に同じ場所に居合わせる。その姿に恐れどころか感動すら覚える。それと同時にいくつもの視線を感じる。竜たちの視線を受けているのがひしひしと伝わってくる。
「鈴の仲間は・・・こんなにも美しい者たちだったんだね。」
「ここに我も加われば圧巻だろ?」
「確かにね。」
改めて思う。これだけの竜を束ねる鈴の凄さを。そんなことを考えていると、竜たちの咆哮があたりに響き渡る。圧倒的なほどの気の嵐。しかし・・・心地良い。そして・・・
「暖かい。」
まるでオーケストラを聞いているようで。思わず聞き惚れてしまいそうになる。
そんなことを考えている一刀だが、これだけの質量の気が同時に出現したのだ。各地でその異常さに気づく者たちが出てきていた。
~~
「・・・雪蓮、今の気。 気づいたか?」
「流石にね。 一瞬だけど、先日の黄竜と同質・・・しかも複数ね。」
「また一刀たちのとこだろうか。 まったく・・・一刀一人でさえ天下を統べられるほどの英傑なのだ。 あれに竜・・・しかも複数ときた。 これ以上力を付けて何をする気なのだ?」
「案外、竜たちが一刀に引き寄せられているのかもよ?」
「そう考える理由は?」
「勘よ。 まぁ、なにせ私が惚れるほどの男だもの。」
「惹きつける力・・・か。 これが吉と出るか、凶と出るか。 見ものだな。」
「面白くなってきそうだわ♪」
~~
「春蘭、秋蘭、今感じた気は何?」
「分かりません。 ですが、一つ言えることは人が発せられるものではない。 と言うことでしょうか。」
「なんだ、妖でも出たというのか?」
「それもあながち的外れとは言えない・・・かもしれないということだ。」
「何か大きな力が動くのは間違いないわ。 春蘭、秋蘭、各地に出していた間諜をこちらに戻しなさい。」
「御意。」
私の天命はどんなに大きな力だろうと・・・食い破るわよ。
~~
俺たちが呆気にとられていると竜が一匹・・・黒龍がゆっくりと俺の側に降りてくる。そしてじっと俺を見やる。というか近い。顔と顔が10センチくらいしか離れてない。
「・・・。」
闇夜を彷彿させるような紫の瞳から視線を外せなくなる。
・・・ごうかく!
「・・・は?」
突然聞こえてきた声。しかも幼い少女の声。これは・・・この黒龍の声か?すぅーっと黒龍の姿が消え・・・
「おまえ! なはなんだ!」
俺の眼前に現れた女の子。ゆる編みの黒髪にゴスロリの衣装に身を包んだ紫の瞳を持つ少女。
「ほ、北郷一刀。」
「ほほんごうかずとか!」
「・・・北郷一刀だよ。」
「かずとだな! うーちゃんはうるしだ! うーちゃんとよんでいいぞ!」
うるし・・・漆かな?というかいきなりのハイテンションについて行けない。
「漆(うるし)、あまり一刀を困らせるな。」
「あ、りんちゃん! おひさ~♪」
鈴ちゃん・・・仲間というより友達気分のようだ。
「それより、鈴ちゃんと呼ぶなとあれほど言っておいただろう。」
「え~、りんちゃんってかわいじゃん。 じゃあねぇ・・・りんたん♪」
「・・・はぁ。 鈴ちゃんで良い。」
「やた♪」
軽くガッツポーズをするうーちゃん。というか鈴が頭を抱えるとこなんて初めて見たぞ・・・。うーちゃん、恐るべし。
「とりあえず、漆以外もさっさと降りてこい。 報告があると聞いていたのだが?」
すると三頭の竜は姿を消し、代わりに三人の女性が現れた。
「鈴様、報告が遅れてしまい申し訳ございません。」
藍色の着物に身を包んだ水色の髪の女性が頭を下げる。
「気にするな。 そもそも、我の仕事をお前たちに肩代わりしてもらったのだ。 我こそお前たちに礼を言わねばならない。」
「恐縮です。」
「姐さんのためなら何でもしてやんよ!」
「鈴のためだから・・・頑張った。」
「燼、零もよくやってくれた。 ありがとう。」
「へへっ。」
「当然のこと・・・やっただけ。」
赤髪の女性と銀髪の少女も鈴との関係は良好らしい。良かった良かった。
「今のうちに一刀たちに紹介しておこう。 私の仲間たちだ。」
うーちゃんたちが俺たちの前に出る。パッと見は俺たちと同じ人だけど・・・竜なんだよなぁ。
「はじめまして! りんちゃんのみぎうでのこくりゅうことうーちゃんです! いつもりんちゃんがおせわになってます。」
ぺこっと頭を下げるうーちゃん。見た目は同い年くらいだな。実年齢は何千倍も上だけど。
「お前はいつ我の右腕になったのだ?」
「あったときからじゃないの?」
「・・・知らん。」
「てれやさんなんだから~♪」
絶対違うぞ。
分かってるよ。
「漆はまだ幼いからな。 お転婆娘ゆえに少々迷惑をかけるかもしれんが、世話をしてくれると助かる。」
「ぶー! うーちゃんいいこだからめいわくなんてかけないよー。」
頬を膨らませて怒るあたりまだ幼い。というか和む。
「漆のことはまぁ置いておいとくとして。」
「りんちゃんのけちんぼー!」
「何がだ。 とりあえず燼(じん)、挨拶を。」
「あぁ。」
赤髪の女性が前に出る。恋の髪色よりまだ暗い紅の髪だ。
「赤竜の燼だ。 私は主に戦闘要員だな。 頭を使うのは性に合わん。 まぁ、私が戦うのなんて五百年に一度あるかないかだが。」
「燼さん、よろしくお願いしますね。」
「堅苦しいのは止めてくれや。 燼で良い。 姐さんのお気に入りみてぇだしな。 あんたのことも一刀って呼ばせてもうから。」
「分かったよ、燼。」
燼の自己紹介が終わり、次は零と呼ばれた女の子の番だ。
「・・・。」
「・・・。」
俺の顔を凝視したまま時間がただ過ぎていく。
「・・・。」
鈴、この子は何をしてるの?
一刀を観察しているのだろう。まぁ気にするな。そのうち零から言葉を発するだろう。
気にするなって言われてもなぁ・・・。それから待つこと3分。
「ん。」
「ん?」
「鈴さんが認めただけ・・・ある。 私も・・・認める。」
「ありがと・・・?」
お礼を言うとこなのか分からんないけど、とりあえず。
「私の名前・・・零。 西方を守護する、白竜。」
「え~と、劉備と一緒に成都で太守をやってる北郷一刀です。」
なんでこんな丁寧に自己紹介してるんだ俺。なんというか、掴めない子だな。
「一刀・・・鈴さん共々、よろしくお願いします。」
「うん。」
零ちゃんが俺の側に近づき手を握ってくる。とりあえず握り返すけど、そのまま再びお互いに動きが停止する。挨拶としての握手だろうか?
「鈴、・・・この行動に意味は?」
「気にしないで良い。 まぁ、零は人の心やその状態を察することに関して機敏になるからな。 自分が安心できる相手か確認してるんだろう。」
「なるほど。」
感情が出しにくい分不安なんだろうな。そう思うとかまってあげたくなるわけで。
「擽ったい。」
「ごめんごめん。 でもね、もうちょっとだけ。」
もう少しだけ頭を撫でる。
「けど・・・悪くない。」
「それは良かった。」
そんなこんなで零ちゃんの自己紹介?が終わり、もうひとりの女性が前に出る。雰囲気は清羅に近いかな。家にいた時の母さんにも似た感じかも。
「皆様、はじめまして。 青竜こと静空(しずく)です。 一刀様、鈴様を導いていただきありがとうございます。」
「い、いえいえ。 俺はそんな大それたことはやっていないですよ。」
「鈴様が人間に干渉するなど、あなたがこの地に降り立つまでは考えられなかったことなのですよ。 いえ、あなたが降り立ってもその可能性は皆無だったでしょう。」
「では何故・・・。」
「私たち竜族が人間の下に降り立てば、少なからずその者たちの運命を覆してしまいます。 私たちがそう意識せずともです。 勿論、これまで私たちに干渉しようとしてきた者たちもいました。 良くも悪くも私たちの力・・・一概的な物ではありませんが、剛然り知然り・・・権力だったりもしましたね。」
「俺も鈴・・・あなたたちに干渉しようとした一人だったはずです。」
「そうですね。」
静空さんが頷く。
「お仲間を・・・大切なご友人を救いたかったのでしょう?」
「そうです。」
「元来、私たちはその者の気の波長に呼び寄せられる形で地に降りてくるのです。 私たちを呼び寄せられる気を持つ者など、これまで両手の指で数えられるほどしかいませんでしたが。」
「そうなんだ。 婆ちゃんも会ったことがあるって言ってたから、歴史上の英傑なら会ってるんだろうなくらいに思ってた。」
「聞き及んでいますよ。 西楚の覇王でしたね。 あの方が五台山を訪れた際は流石に我々にも焦りが生じました。 この付近にはいないはずのヴリトラを呼び寄せたのですから。 しかも互角以上の戦いを披露したとなれば尚更です。」
・・・爺ちゃんたちだけじゃなくて静空さんたちも困らせてたんだな、婆ちゃん。
「まぁ、一刀様が鈴様と邂逅出来たのは必然なのかもしれません。 北郷の血筋とでも言いましょうか。」
「俺と婆ちゃんの二人だけで納得できるものなのですか?」
「お二人だけではありませんよ。 先ほど皆様を上空から見下ろした時点で確信に変わりました。」
そう言うと静空さんが静かに歩き出す。
「お久し振りですね。」
「・・・私?」
母さんのもとに。
「覚えていないのも無理のないですね。 あなたがまだ幼かった頃ですから。」
「私の幼い頃・・・。 むしろその頃の方が覚えていると思うのだけど・・・あの頃は父様と母様、それにお付きの侍女くらいしかいなかったはず・・・。」
母さんと静空さんが知り合い?母さんが竜に会ったなんて、聞いたことないぞ?
「父さん、母さんからそのへんの話聞いたことある?」
「いや、俺も初耳だが。」
父さんが知らないってことは、まだ父さんがこっちの世界に来る前ってことになるのか。
「私があなたに初めて会ったのは濃い霧に覆われた山奥でした。 遭難し、途方に暮れていたあなたを邑まで送り届けたのですが・・・。」
「・・・もしかして、あの時の“お姉ちゃん”?」
「思い出していただけましたか。」
「ずっとお礼が言いたかったのよ。 名前も聞けず、礼の一つも言えず、分かるのは身体的特徴だけ。 けど月日が経つうちにその思い出も薄れていって・・・。」
母さんと静空さんが改めて向かい合う。
「何十年も経ってしまったけど・・・改めてお礼を言わせてください。 今の私がこうして生きていられるのはあなたのお陰です。 ありがとうございました。」
「私は今でもあの当時のことは鮮明に覚えていますよ。 人間に入ってこれぬよう地形を複雑に変え、小規模な結界を張っていたにも関わらず私のテリトリーに何故か入っていたあなた。 追い出そうにも泣いているあなたを追い出せず、一晩を共にするうちに私に懐いてくれて。」
「あなたがいてくれたから私は寂しくなかった。」
「私はあなたをいつしか妹のように思っていた。 すぐに別れなければならないと分かっていたのですがね。 それでも分かれてしばらくは悲しみが残ったものです。 私にとっては百八十年とさほど経っていないものですが・・・再会出来て嬉しいですよ、菊璃。」
「私もです。 お姉ちゃん・・・いえ、静空さん。」
感動の再会を終えた母さんと静空さん。そのやり取りもどこか姉妹のような雰囲気で。
「菊璃様にもこのような一面があったのですね。」
「海未さんでも見たことなかったんですか?」
「ありませんね。 私と菊璃様の関係は学生の頃で親友であり、姉妹のような関係はありませんでしたから。」
雲台の将である蕾姉ちゃんや咲夜おばさんたちも不意を突かれたみたい。父さんは柔らかい笑みを浮かべながら母さんを見つめている。
「一刀の母が静空と知り合いだったとはな。」
「俺もびっくりだよ。」
人の繋がりは不思議なものだな。婆ちゃんは興味本位で竜に近づき、母さんは竜に救ってもらい・・・俺は鈴とこうして同じ時間を過ごせている。人と竜、遠い存在のように思えていたが・・・お互いを理解し合える関係を築け日も近いのかもしれないな。
・・・
一旦城に戻り、桃香と蜀将に軍師、それに薔薇と百合も自己紹介を終えたところで、本日の会議のメインである四竜たちによる報告会に移る。というより、分かったことを教えてもらえるだけなんだけどね。
「えーとね、さじとうきつてやつらがわるさしてるの! もう、やになっちゃう!」
「はいはい。 怒りたいのは分かるから大人しくしておきましょうね。」
「え~!! うーちゃんももっとおはなししたい~!!」
うーちゃんが静空さんの裾をくいくいっと引っ張る。静空さんは手馴れているようで我関せずみたい。
「漆ちゃん、外でお茶を飲みながらお話しませんか? お茶菓子もありますよ。」
「ほんと!? いく~! ゆえ、ありがと~♪」
「ひゃあ//」
うーちゃんが月に抱きついて頬ずりしている。少し羨ましい・・・。月が連れて行くつもりが逆に手を引かれて庭に向かっていった。
「詠、嫉妬したら駄目だぞ?」
「しないわよ。」
「羨ましいのだぁ・・・。」
「お前はまだ話を聞け。 茶菓子に釣られるなど言語道断だ。」
「ぶー! 愛紗のけちけち大魔王~!」
「どうとでも言え。」
あっちはあっちで楽しそうだな。というかいつもの日常風景だ。
「こほん。 改めて・・・漆からもあったとおり、左慈と于吉という者たちが裏で糸を引いているようです。 先日、一刀様が戦場で負傷されたと鈴様より聞きました。 それも彼らが絡んでいます。」
「え? でもあの時は確か魏の兵隊さんだったよ? 私、自分の目で確認したもん。」
「その者ですが、戦の始まる以前に行方を眩ませていたようです。 その時に暗示か何かを施されていたのでしょう。」
「・・・曹操さんに悪いことしちゃったかなぁ。」
桃香の表情が陰る。まぁ、曹操さんの運が悪かったとも言えるが・・・
「桃香様、戦場では何が起こってもおかしくないのです。 誰が悪い悪くないという話ではありません。」
「だが愛紗よ、今回の件については明確な敵が見つかったではないか。」
「そうだな・・・左慈と于吉のと言ったか。 聞いたことないな。 妖術使いであれば大なり小なり巷で噂を耳にするはずだが。」
「普段はどこかを根城にして隠れているようなのですが、すぐに拠点を移してしまうので捜索が難航するのです。
「ちっ、またやつらか・・・性懲りのない。」
咲夜叔母さんが舌打ちして本当にめんどくさそうな表情を浮かべる。
「咲夜叔母さん、面識あるの?」
「出来れば会いたくなかった類の相手だったが。 オレだけでなく雲台の将、霧刀の兄貴と菊璃姐さんも知ってる。」
「私たちの時もとことん邪魔してきたから・・・うんざりしたわ。」
「吐き気がしますわ・・・あの陰険な顔を見なければならないなんて。 まるで害虫ですわね。 無駄にしぶといんですから。」
「海未さん、怖いよ・・・。」
母さんたちにもちょっかいを出してきた相手・・・目的は何だ?
「菊璃様たちや一刀様だけでなく、この中にも間接的に被害を被っている人達がいますね。 劉協様、劉弁様。 あなた方のお父様、霊帝が亡くなったのは半分は于禁の仕業です。」
「まさか、そんなはずがない。 朝廷内には確かに十常侍や何進のような私腹を肥やすために動いていた者たちがいたが、私が目を光らせていたのだ。 そのような怪しい者が出入りしていたら嫌でも気付くだろう。」
「于吉という妖術使い。 あれは空間を移動すると聞きます。 闇夜に紛れ朝廷内に侵入し、十常侍を賄賂で懐柔。 そしてこう唆したと聞きました。 “皇帝の食事に毒を盛れ”と。」
「そ、そんな・・・。」
百合と薔薇の顔から血が引いていく。
「な・・・なんで!? なんで父様がそんなやつらに目をつけられないといけないの!? 何も悪いことなんてしてないじゃない!!!」
「あの者たちからして見れば邪魔だったのでしょう。 しかし大量に盛れば犯行が明るみになりやすい。 だから毎日、微量の毒を入れ死期を近づけていったと。」
我慢の限界に達した百合は泣き崩れてしまった。薔薇は悲しみより怒りが先に来ている。顔が真っ赤になり息も荒い。
「許さない・・・そんなの、絶対許さないんだから!!」
最愛の父を奪われた二人。この二人の人生を脅かさないような事件が起こらなければいいが・・・その時は俺が全力を賭して二人を守るだけだ。
「それと・・・馬鉄さんと韓飛さんが朝廷の者に襲われたと聞きました。」
「確かに襲われたけどよ、それとこれと関係ねぇだろ。 資源が豊富にあるだの何だの言われて追い出されちまったけどよ。 皇帝だとか大層なもんはなかったはずだぜ?」
「その理由は後から付け加えられたのでしょう。 確かにそこに物はなくとも、于禁に目をつけられた者がいたのですよ。」
「・・・俺か? 俺が馬家の人間だからか?」
「いいえ。 韓飛さん、あなたですよ。」
「・・・。」
清羅が于吉・・・十常侍に狙われた?
「た、確かに姐さんは村ん中じゃ有名だったし村長の娘だったけどよ、小さい村の一人娘なんて大したもんでもねぇだろ。」
「すみません、蒼。 私の家系は元々はあの村にあったわけではないのです。」
「ね、姐さん!?」
「私の家系は代州にあった富豪、劉恢の親戚にあたります。 そして韓飛という性は村に来た際に名付けられたそうです。」
「名付けられたそうですって・・・。」
「私の本姓は芙蓉。 以前、芙蓉姫と呼ばれていたものです・・・と言っても、記憶には残っていませんがね。」
隠れていた多くのものが明るみに出てきた。竜に朝廷絡みの件に清羅の過去・・・これからどうなっていくんだ?
困惑する蜀将、泣き崩れる劉弁、怒りに震え劉協。そして・・・皆の背後で爪が食い込むほど強く手を握り締め、静かに怒りを内包させた菊璃がいた。
あとがき 読んでいただきありがとうございます。ようやく本編が進みました。いやー、長かった。これから一刀たちに多くの難題が降りかかりそうですが・・・また一つ、蜀の力が大きくなってしまいました。どうしよ・・・とりあえず・・・え~と・・・うん!どうにかします!現実逃避はこれくらいにして←しっかりしろ 四竜の人間版イメージとしては 黒:幼ロリゴスロリ←これテストに出る 白:無感情系ロリ 赤:気付いたら手が出る脳筋姉御 青:清楚なクール系お姉様褒められたら赤面して可愛くなる こんな感じでしょうか。 それでは次回、第八節:清羅の過去、光武帝動く でお会いしましょう。
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何でもござれの一刀が蜀√から桃香たちと共に大陸の平和に向けて頑張っていく笑いあり涙あり、恋もバトルもあるよSSです。