-渭水南岸・五丈原-
「は、はわわ、ご主人様、血を吐いちゃいました!」
「え!? って、朱里っ! 大丈夫なのか……!?」
「たぶん私、もうダメですぅ。私が死んだら、殿に予め作らせておいた人形を輿に載せ配置して撤退してください」
そう言うと朱里は、顔は朱里そっくりの人形を幾人かの兵士に持ってこさせた。
しかしこの人形、どうもおかしい。
確かに顔はそっくりなのだ。
しかし、何かが違う……。
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そうか! 胸が異常に大きいのだっ。
実物は限りなく平地に近い丘陵なのに、この人形ではエベレストになっている。
俺が違和感の正体に得心していると、朱里が、
「はわわっ、星が落ちちゃいました!」
と言って絶息してしまった。
俺は慌てて剣を取り、朱里人形の違和感の根源をまな板状に削り取った。
これで敵には朱里が生きていると錯覚させることができるだろう。
それにしても朱里の奴。天下の諸葛孔明なのに、「貧乳はステータスだ、希少価値だっ!」という名言も知らないのだろうか。
まったく、朱里はあの胸だからいいのに。
と、俺がもの思いに耽っていると、陣中から、
「誰か私に勝てる奴はいるかー!」
との焔耶の声があがった。
するとそれに呼応するかのように蒲公英の、
「ここにいるぞー!」
との声がする。
こんな夢を見た、北郷一刀ある日の昼。
寝覚めは愛紗の拳骨と共に。【完】
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つい出来心で書いた。
反省はしているが、後悔はしていない。
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