No.626883

太守一刀と猫耳軍師 第37話

黒天さん

さて今回は……。まだもう少し戦が続くらしいです。
ちょっと急展開すぎるという意見が多いので編集が入る可能性があります。

2013-10-10 22:57:36 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:8034   閲覧ユーザー数:6058

とうとう三国を平定し、ここにきてから随分と時間が経ったなぁ、などと感慨にふける。

 

それと同時に漠然とした不安が胸にある。

 

戦乱を納めるために遣わされたのが天の御遣いだと聞いた。

 

その戦乱の世が終わったら俺の役割はどうなるのだろう。

 

俺はそれでもここに居られるのだろうか。

 

と。

 

桂花や紫青が傍からいなくなるというのはもう考えられないし、

 

華琳達とも仲良くなれたばかりだし、実際本当に仲良くなれるのは、まだまだこれからだろうと思っている。

 

「この後俺はどうなるんだろ……」

 

独り言は誰に聞かれるでもなく消えていく。

 

執務机に目を落とせば俺が作った文書が数枚。

 

2枚はそれぞれ、曹操と孫権宛のもので、旧魏、呉の領地を任せる、という命令書みたいなもの。

 

孫権については取り敢えずは監視つきでやってもらうことになってもらっているが、これは一時的なもの。

 

曹操については呉との戦いで大きな功績を建てたため、

 

今までと遜色ない形で統治してもらって構わない、という内容になっている。

 

身辺整理、というわけではないが、俺がここに来た時と同じように突然消えてしまうことが無いともかぎらない。

 

いつそうなってもいいよう、2人に魏と呉の統治を任せたのだ。

 

もう一枚の紙は遺書、というわけではないが、

 

俺に何かあったときは、白蓮を主として桂花、紫青、朱里、詠の4人で協力して国を回して欲しいと書いてある。

 

あと問題なのは白装束の男か。

 

いまだに俺を殺そうとしているのだろうか。

 

魏、呉、董卓の元へ現れたという話しは聞いているが、その他の足取りは全くつかめない。

 

忍者隊を使って調べさせてはいるが、似顔絵一つで人一人をこの大陸から探すのは無茶というものだろう。

 

まぁ当面は大丈夫だろうか。そんなことを考えていた。

 

身近に、その影が忍び寄っているとも知らずに……。

───────────────────────

 

それからしばらくの後、華琳と孫権が自身の本拠地に戻り、政を始めた。

 

基本方針は俺がやっていた政と同じ方針でやってもらっているが基本的にそれぞれに任せている。

 

ようやく安定してきたか。

 

そう思って安心していたところに思わぬ所から火の手が上がった。

 

戦後処理と急ぎの政務が終わった所で、俺は白蓮と桂花をつれて各街の視察に向かっていた。

 

まずは近隣から、次は呉に、そして魏を訪れた帰り、

 

俺の正面から霞の隊がこちらに向かってくるのが見えた。

 

「こんなとこにおったらあかん! 逃げるで! 細かい事は道中話す!」

 

「ま、待て、何があったんだ!?」

 

霞の剣幕にただ事ではないと感じ、促されるままに進行方向を変えながらも聞き返す。

 

「愛紗、いや……。関羽が裏切った!

 

魏と呉に曹操と孫権を戻したら全部元の木阿弥、

 

自分らは何のために戦ったんやっていうてな!」

愛紗が反旗を翻したのだ。

 

確かに愛紗には何かと我慢させることが多かった。

 

意見が対立したときに、折れさせることが非常に多かったは確かだ。

 

桂花の事に始まり、反董卓連合の時も。華琳の事も。それに周喩との戦いの計略を愛紗に黙っていた事。

 

さらには今回の孫権と華琳にそれぞれの領地を任せる事にも反対していたが、強引に押し通した。

 

それでとうとう、溜まりに溜まった不満が爆発したらしい。

 

同調したのは鈴々と翠。

 

朱里については不明で、傍に居たために逃げられなかったか、同調したのか分からない。

 

翠については俺が華琳を生かしたことが気に食わなかったことが大きいはずだ。

 

有力者の中にも、曹操と孫権がもとの領土に戻った事を不安に思う者も居たらしいから、それらも同調したのだろう。

 

忍者隊が于吉を探すために出払っていたのも痛い。

 

足元の動きが完全に見えていなかった。

 

それにくわえて、各街をきっちりと管理するため、それぞれが安定するまではと将を浅く広く配置したことも裏目に出た。

 

関羽の動きに気づくのが遅れた。

 

俺が視察から帰る所を襲おうとしていることに霞が気付き、急ぎ星や紫苑へ早馬を送り、援護を要請……。

 

華雄と霞の隊がそれぞれ5000で合計1万、対する関羽達が率いていたのは4万で、数の差もあって太刀打ちができなかったらしい。

 

次に追い付いてきた星と紫苑の隊に足止めを任せ、俺にこれを知らせにやってきた、というのが事のあらましらしい

 

「紫青は!?」

 

「安心しい、今別経路で華雄が連れて逃げよる! 完全に不意打ちやったわ……。うちの隊も半分やられた。

 

それに昨日までの味方やったもん同士で戦うっちゅうたら士気があがらん、ボッコボコにされてもーた……」

 

「ようやく、戦乱が終わったと思ったのに……。どうする、霞?」

 

「今はとにかく曹操んとこに逃げる! ご主人様と曹操でなんか誓いたてたんやろ?

 

それやったら絶対曹操は大丈夫や! 華雄らとも魏で落ち合うことになっとる!」

昼夜を問わず走り続ける。途中どうにか華雄と合流することができ、

 

紫苑と星の隊もボロボロになりながらもどうにか魏の領土まで逃げることができたらしい。

 

そののちに詠から報告が届き、恋と月と共に、魏より近かった呉へと逃げ延びたという。

 

許昌にたどり着けば俺は急いで城へ向かい、華琳のもとへと向かう。

 

「何があったの? 兵を引き連れてボロボロになって駆け込んでくるなんて、ただ事じゃないわよね」

 

「……関羽が裏切った」

 

「なんですって!?」

 

華琳に事の次第を簡単に説明する。

 

「ふ、ふふふ……」

 

華琳が笑う、だがその目は明らかに笑っていない。

 

「春蘭、秋蘭、動かせる兵すべてをかき集め、出陣の用意をしなさい。

 

それと呉の孫権に使者を、今の呉は戦なんてできる状況じゃないでしょうけど、念の為に同盟を結んでおくわよ」

 

「華琳様!?」

 

「放っておけばいずれここまでやってくるでしょう。今のうちに叩き潰すわ」

 

「御意」

 

夏侯惇と秋蘭が立ち去ってから、華琳は俺に向き直り、ゆっくりと近寄ってくる。

 

「北郷一刀。私はあの時の言葉を今こそ履行しましょう。

 

あなたを傷つけた者には、たとえ地の底まで追いかけてでも罰を与える。

 

あなたに受けた恩に報いるためにも」

 

「俺、華琳に何かしたか?」

 

「ええ、あなたは私にこの魏領をくれたわ

 

それにあなたは、この曹孟徳が友と認めた相手よ。その敵を、関羽を私は許さない。

 

関羽と戦うのが辛いというのなら私にまかせてここで待っていればいい。

 

自身が前に出て決着を付けたいのであれば兵を貸しましょう。

 

当然、あなたが連れてきた将にもね」

 

安心した、のだろうか。膝から力が抜けて床に座り込んでしまう。

 

華琳が周囲の兵に何か合図を送ってから、片膝をつき俺と視線をあわせて、俺の頬に触れる。

 

「親しい者に裏切られるのは辛いこと。

 

人払いはしたから泣きたいなら泣けばいい。私は咎めはしないわ。

 

あなたがそういう人間だと知っているしね」

 

華琳の腕が俺の頭に回されて、ぐいと引き寄せられた。

 

こらえきれなかった。小さく嗚咽が漏れてしまう。

 

ギリと、華琳が歯を鳴らした音が聞こえた。

 

「許さないわ、絶対に……」

───────────────────────

 

流石に動ける全ての兵をかき集めてくるとなると、一週間ほどの時間がかかった。

 

その間に俺はどうにか立ち直っていた。

 

俺についてきてくれたのは、桂花、紫青、星、紫苑、霞、華雄、白蓮。

 

7人とともに、魏の兵をかりて隊を再編していた。

 

星は関羽につくのは間違い、と思い、こちらについた。

 

それに自分がつき従うと誓ったのは関羽ではなく、俺だとも。

 

紫苑はそれにくわえ、璃々を助けてもらった恩もあるため、関羽にはつかなかったそうだ。

 

「前に出るのね」

 

軍を編成している俺達の所へ華琳がやってくる。

 

「臣の不始末は上司の俺の責任、そうだろ?」

 

「そうね」

 

「なら、遠くから傍観してるわけにはいかないよ。

 

たとえ役に立たずとも、前線に出なくちゃいけない。

 

俺はそう思うよ」

 

「それでいいわ。私も春蘭、秋蘭、季衣をつれていく。何か策はあるかしら?」

 

「取り敢えず、向こうから攻めてくる事はすぐには無いはずですから、しっかり準備を整えましょう。

 

というのも、間諜にあたる忍者隊は一刀様がすべて掌握していました。

 

関羽率いる軍は今は盲目も同じ。

 

こちらの状況もおそらく見えていないでしょう。急造の間諜ではできることはたかが知れています」

 

「そうね、それに朱里が関羽についていたとしても、斥候を十分に配置できなくてはうまく策を立てるのが難しいはず

 

素早い行動がカギになるわね。

 

それに、張飛、馬超は良くも悪くも猪武者。策を仕掛けるならやりようはいくらでもあるはず……。

 

関羽が御しきるかどうかが問題だけど……」

 

明確に敵と認識したからだろうか。みな、愛紗達を真名で呼ぶことをやめていた。

 

朱里については、まだ不確定要素がおおいためかまだ真名呼びのままだったが。

 

「なら、準備をしっかり整えた後に一気に本拠地まで攻め上がるのがいいでしょうね。

 

準備はほぼ終わっているのでしょう? 明日にでも出発しましょう」

 

「わかった、それでいこう」

 

華琳の言葉に頷いて、準備を終わらせれば俺達はそれぞれに、休息をとりに向かう。

───────────────────────

 

「一刀、本当に大丈夫なの?

 

関羽と張飛、朱里は古くから一刀の傍にいたのだから……」

 

その夜、桂花が俺の部屋へとやってきていた。

 

「大丈夫だよ。それに、だからこそ俺がなんとかしなきゃならないと思うんだ。

 

仲間の間違いは俺が正さなきゃいけない」

 

「……、あなたはここまでされてもまだ関羽達を仲間と呼ぶのね」

 

「桂花、俺は間違ってたかな?」

 

ゆっくりと、桂花が首を横に振る。

 

「思想が行き違ってしまっただけよ。あなたは何も悪く無い。

 

一刀は曹操や孫権を信じた、関羽にはそれが信じられなかった。

 

ただそれだけの行き違いよ」

 

「そう……かな」

 

桂花がゆっくり、けどしっかりと頷いてくれる。

 

「一刀の信じる道を進めばいいわ。

 

私も、紫青も、霞や華雄も。きっと曹操もついてきてくれる。

 

現にあなたは三国を平定することに成功したし、

 

関羽の事さえなかったら、状況は安定していたはずよ。

 

関羽は一番大事なことを忘れている。

 

自分が起てば、また民達が戦乱に巻き込まれるということを。

 

何がそうさせたのかは私にはわからないけど、早まりすぎたのよ。

 

せめて、しばらく待てば一刀の采配の結果は分かったでしょうに」

 

大きなため息、それはどちらのついたものだったか……。

 

「一刀はより多くを生かすために人を信じたけれど、関羽にはそれが戦の火種にしか見えなかったのかしらね。

 

民の平穏を願い、同じ道を歩いてたはずなのに……」

 

「……」

 

「こうなってしまった事実は変えようがないわ、民のためにも、早く終わらせましょう。

 

そのためにはしっかりと休まないとね……」

 

陰鬱な気分を引きずりながらではあるが、明日のことも考え、休む事にした。

 

 

あとがき

 

どうも黒天です。

 

この展開を思いつき、どうするかかなり悩んだのですが形にすることにしました。

 

心に隙があれば、奴は現れる……。

 

ふと思うのです。

 

この外史の愛紗は基本的に不遇になっているので、一刀への嫉妬や不信感が強く、

 

付け入るすきが非常に多いのではないかと。

 

それに原作とくらべて話しの流れがかなり早い上に、泰山に攻め入られると防衛する兵力が無いため、

 

時間稼ぎのため関羽を動かした

 

という形になっています。

 

急展開すぎる、との声も多いので、後で編集が入る可能性があります。

 

さて、今回も最後まで読んでいただいてありがとうございました。

 

また次回にお会いしましょう。


 
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