この世界には魔王が割と多い。多いどころか、最近は「魔王」ではなく「魔皇」の存在が発見された。
「魔王」や「魔皇」だけではなく、「邪神」や「邪帝」を含めると20人にひとりの割合でそういったモノが存在するようだ。
これを多いと評さずになんというのか。
ふらりと出歩けば魔王にぶつかる。
とどのつまりこの世界に置いて「魔王」とは、単なる隣人に近い。
ふわりと冷たい風が頬を撫でる。陽が照れば暖かいが、吹く風や日陰は少しばかり肌寒い。
そんな日に狙撃手は屋外でうすらぼんやりと茶を啜っていた。
鼻が高く高下駄を履いた、外見的にはまんま天狗の魔王を目の前にして、狙撃手が「ケッコウなオテマエで」と定型文を口に出す。
それを聞き、魔王は満足そうに柄杓に手を伸ばした。
何故こんなことになっているかといえば、単純な話。
森をふらっと歩いていたら魔王と遭遇、「面白い菓子を手に入れたから」ととっ捕まり、ズルズルと野点に引っ張り込まれただけのこと。
魔王とはいえ自由すぎる。
そんなことを思いつつ、狙撃手は椀を隣に回そうと身体を動かす。が、隣に座る人物はカチンと凍りついて動かない。
軽く声をかけ椀を差し出すと、相手はハッとしたように狙撃手に顔を向けて機械的に椀を受け取った。
椀をしっかりと持ったのを確認した狙撃手が魔王にぺこりと頭を下げると、彼は椀を受け取った体勢のまま魔王を凝視する。
そんな彼を見て、魔王はニコヤカに声をかけた。
「作法など気にせずともよい。堅苦しくする気はない」
魔王にニコヤカに話しかけられオモテナシされている、その事実にキャパシティが越えたのであろう。
椀を持ったまま狙撃手の隣に座る大僧侶は、混乱を含んだ叫び声を上げた。
「いやなんかおかしいでしょう!?」
叫びながらも椀を落とさなかったのは立派だなと狙撃手はぼんやり思った。
「なんで!僕らは!魔王と和やかに茶会してるの!?」
「…なんとなく?」
狙撃手が小首を傾げつつ答えると、大僧侶は「意味がわからない」と泣きそうな視線を送る。
(半ば無理矢理)茶会に招待されたから、それを受けただけ。
つまり、誘われたからついてっただけなのだ。「なんで」と問われても答えようがない。
頭を掻きつつ狙撃手が、そんなことより抹茶が冷めますよ、と促せば大僧侶はしばらくじっと椀を見つめ、ちらりと魔王に視線を投げて、再度椀に目を落とす。
…毒なんか入ってませんよ、僕それ飲んだでしょ。
ふぅと深く息を吸い込んで、覚悟を決めたかのように大僧侶は椀を掲げて中身を啜った。
濃くてドロリとした食感と普段あまり味わえない苦さに、大僧侶は少し顔を歪ませる。
文字通り苦い顔をする大僧侶を見て狙撃手が思わず笑うと、むぅと軽く睨まれた。
睨まれた狙撃手は取り繕うように「ついてますよ」と手を伸ばし、大僧侶の口元を拭う。
「…支配しようとしてる魔王に、敵である魔王にホイホイついていくなんて…」
狙撃手に軽く口を拭われ、子供扱いされたように感じた大僧侶は不機嫌そうにポツリと呟く。
その言葉を聞いて、狙撃手は大僧侶をキョトンと見つめ返し、首を傾げながら魔王に顔を向けた。
「支配しようとしてましたっけ?」
「…してないな」
狙撃手に問われ、魔王は「少なくとも自分は」と顎に手をあて苦笑する。
そんな魔王をみて、ポカンと顔を呆けさせる大僧侶。「だって、あれ?あの人魔王だよね?」と目を見開いたまま狙撃手に疑問をぶつけた。
問われた狙撃手は軽く魔王に視線を送ったが、にっこり柔らかく微笑まれた。
笑顔から「説明が面倒臭い」と滲み出ている。自分から話す気はないらしい。
やれやれと頬を掻いて、詳しくはわからないし、聞きかじったことしか知らないけれど、と前置きして狙撃手は簡単に説明をはじめた。
この世界に魔王だの魔皇だのと呼ばれるひとはたくさんいるが、みんながみんな「その地の支配」のために動いているわけではないことを、狙撃手は知っている範囲で語る。
確かに火の魔王は制圧を目的としていたし、それが敗れたと知った熱の魔皇は見かねて降臨している。
しかし、水の魔王は氷の魔皇の影響によっての騒動だ。支配かと問われると若干の疑問が浮かぶ。
土の魔王は父親である魔帝から代々支配していたようだし、…
「といいますか、貴方のところの魔皇も厳密には支配ではないでしょう?」
「…まあ、確かに統治してるのは魔帝で魔皇は汚染が目的みたいだけど」
沼地のあっちこっちに気まぐれに現れ「ケガシてヤル」と、頻繁にゾンビ量産エンドレスバトルを仕掛けられている大僧侶は深いため息をつく。
毒の魔皇の目的は「憎しみで満たすこと」だから、あの戦法は正しいんだろうなあと狙撃手も遠い目をして軽く息を吐き出した。
勝敗関係なく、ウゼェと思わせることが出来たら、憎ませられることが出来たのなら目的達成、みたいな。
「女魔王は目的がはっきりしてませんが賑やかだから出てきた感が若干。蠅魔王にいたっては退屈だから、ですし」
「魔王って…」
一部魔王の自由奔放っぷりに頭を抱える大僧侶。暇つぶしに周りに喧嘩ふっかけるなと小さく呟いた。
だって魔王だし、と身も蓋もない言葉を大僧侶に贈り、狙撃手は「あくまで僕視点の話です」と保険をかける。
過去や現在がごっちゃになっている現状、とっくの昔に「統合性考えるだけ無駄だ」という結論に達していた。
なんかあったら語られるだろう。
「それで風の魔王さんですが、『封印されてたけど森を汚されたから怒った』ってだけです」
「…え?」
「目が覚めたら自分の森が荒らされてた→周りには武器もったやつらがたくさん→森を汚したのはお前らかー!→目に入るやつらみんなボコボコ、って」
「…ええ?」
それだけ?と大僧侶は目を見開く。それだけ、と狙撃手はこくりと頷いた。
怒りが収まらず邪神化してさらにマジギレしたひとだからあまり不思議には思わない。
なんだろう、「森を汚したのは貴様かー!」→「違う」→「貴様かー!」→「違う」→「犯人は誰だー!」→邪神化、な気がしなくもない。
狙撃手は糸目になってぼんやり妄想する。風の魔王は己をあまり語らないひとだから妄想するほかない。
このひとは想像があっていても違っていても、空風のように笑い飛ばすだけだろう。戦っても「命まではとらない」と言い放つ懐の広さを持っているのだから。
話を聞いて腕を組み「ボスとしてそれでいいんだろうか」と物思いにふける大僧侶を眺めつつ、狙撃手はひょいと天空を仰ぎ見た。
ていうか風のボス自体が少ないよね、と。
今のところボスの数が
火→24
水→31
土→24
風→14
とは、差が開きすぎではないだろうか。風属性の世界に対する我関せずっぷりが如実に表れている。
狙撃手がその旨を語ると笑いながら魔王がこう言い放った。
「ボス…という枠組みが既に面倒臭いが、レアアイテムを所持しとると何回も挑まれるからさらに面倒臭い」
面倒臭いときたよ、この魔王。
呆れたように狙撃手は目を逸らす。そんな狙撃手を尻目に、魔王の言に驚いた大僧侶は慌てて口を挟んだ。
「ええと、他のボスは」
「…ふむ、よくよく考えれば固有のレアアイテムを所持しとる風ボスは少ないか」
思い出すように羽扇を撫でつつ、魔王が答える。
厳密にはレアアイテムを所持しているものの、それは他人のノーマルアイテムだったりするボスが多い。
基本的に固有アイテムは気前よくノーマルでほいと放り投げている。
固有レアアイテムを所持しているのは銀竜・龍神・雷神・魔王・月氏末弟くらいではないだろうか。
「もっとやる気だそうよ風ボス…」
「面倒臭い」
「面倒臭いですね」
与える方と狙う方、見ている方向は逆ではあるが、ふたりに同じ言葉を投げつけられ大僧侶は呆れたように息を吐く。
そんな大僧侶をみて魔王は笑う。そんな嘆くほどのことではないと。
「呪師なんぞは、ノーマルアイテムを欲しがる輩に気まぐれにレアアイテム渡すのが楽しいと笑っておった」
レアを提示した瞬間、それじゃねえ!と叫ばれるらしい。
それに倣って死神も稀に絶妙なタイミングで遊んでいるようだ。
え、あのレアアイテムはそういう理由?
「何事も楽しまんと損だ」
あまり知りたくなかったボスの裏事情を知ってしまった大僧侶と狙撃手は、顔を見合わせ小さくため息をついた。
「とはいえ風ボスは、ふむ、半年は出てきておらんのか」
魔王が少しばかり寂しそうに呟いた。ボスになっていないということは、イラストの変化や固有の曲がないということ。
それはやはり、少し寂しい。
イラストの変化なら今回☆1の幽霊娘が変わりますけどね、と苦笑しながら狙撃手がフォローをいれる。
「なんというか、昔『風属性に女の子いないー』と嘆いたら、『悪ィ!うっかりしてた!』とばかりに最近大量参戦しはじめましたし、いつか大量にボス化するんじゃないですか」
「それはそれでまた微妙な」
「まあ、鳥竜のタマゴが龍神になるまでに10カ月はかかりましたし。気長に」
待ってればいつか、と狙撃手はへらりと笑う。
狙撃手は笑っている、けれどそんな狙撃手をみて大僧侶は首を傾げた。
「なんでだろうな。…君からは、たまに諦めに似たなにかを感じるよ」
「そうですか?」
笑顔を崩さず調子を変えず、狙撃手は返す。
少し戸惑いながらも言葉を続けようとした大僧侶を遮って、狙撃手は笑いながら声をかけた。
「もしかしたら、貴方が闇堕ちしてボスになるかもしれませんし」
予想外の言葉をぶつけられて、大僧侶は慌てて否定する。
ことあるごとに神の名を呼ぶ、信心深い大僧侶にとってそれは侮辱に近い言葉だ。
「僕は闇堕ちしないよ?」
「…」
「多分しないと思う」
「…」
「…しないんじゃないかな」
「…」
「まあその、…ちょっと覚悟はしといて…」
はじめは憮然とした態度であった大僧侶だったが、変わらない笑顔のまま己をじっと見つめる狙撃手の視線に負け、じわりじわりと自信がなくなっていった。
そんな大僧侶の変化の推移を間近で見ていた狙撃手は、もう少し自分を信じてくださいよ、と再度笑う。
大僧侶は少し顔を伏せ、やや上目遣いで狙撃手に問う。
『なら君は、自分はそうなるはずがないと胸を張って言えるのかい?』と。
狙撃手は笑ったまま返す。
『言えるはずがないでしょう?』と。
闇に染まるのには理由があるでしょうし、一概に悪と決めつけるわけではありませんが、と狙撃手は苦笑し少し俯く。
「それでもしたくないな」と小さく小さく呟いた。
その声を聞きつけた大僧侶は小首を傾げながら問う。
「自分から、ヤバいとわかっているものに手を出す人なんているかい?」
「割と多いですよ」
明日は我が身かもしれませんし、と狙撃手は笑った。次どうなるかわからない、日々その恐怖に怯えていると頬を掻く。
(まあ、僕が闇堕ちて人格もなにもかもが変わったとしても、気にかける人などいないのだけれど)
誰ともロクに接点を持たない狙撃手がどうなろうとも、恐らく誰も気にしないだろう。
狙撃手はこの前知った事実をぼんやりと思い出す。
自分が居住している場所にいた、水の魔王の正体と事情を。
水の魔王が騒ぎをおこした理由は、自分を殺してほしかっただけなのだろうと気付いた。
他でもない自分の息子に。
そうとも知らず「正義のために活躍し有名に」と目標を掲げた自分はなんて滑稽だったのだろうと。
はじめから舞台にすら立てていなかったのだと、元より僕はいらなかったのだと気付いた瞬間、真面目に頑張る気が失せた。
あそこで必要だったのは、あの兄妹だけ。
強くなりたいと、友だちがほしいと、ささやかに願っていたものは完全に粉砕された。
望むことは無駄なのだと気付いた。望むからつらいのだと気付いた。
ならばもうなにも望まない。
そう結論付けるのに十分な事実だった。
狙撃手は俯いたまま再度笑う。
それが普段とは違う笑みだと気付いた大僧侶は、不思議そうに狙撃手を見つめた。
そんな大僧侶に気付かず、狙撃手はいつも通りの表情を作り顔を上げる。
「そうそう、ですから闇とは無縁の熱剣士さんは凄いんですよ」
「へ?」
支配する制圧する排除する相手を叩きのめす。敵も味方もそう動いているこの世界で、「共闘」という道を選んだ彼と小さな火魔王は稀有な存在である、と狙撃手は笑った。
平和のために魔皇軍を滅したい、その想いで戦いに身を投じている大僧侶は「んー」と腕を組んで唸る。
闇側に飲まれるでもなく、利用されるわけでもなく、仲間として肩を並べて共に。
大僧侶でいったらゾンビか首無騎士と共闘だろうか。彼らと自分のもつ回復技は相性がトコトン悪いから想像しにくいなあとため息をついた。
それに、と指を立てて狙撃手は言葉を続ける。
「熱剣士さんの場合『魔王』となっても共闘出来ているため稀有さが目立つ」
好きにチームを組んでもいいとはいえ、あのふたりでないと邪帝に会えないのだから、公的に彼らは共闘し共存する関係なのだろう。
天使すら「敵を排除」の方向で動くこの世界で、彼らふたりの関係は特殊にうつる。
ふたりでなかよく楽しそうに魔皇や邪帝に挑みに行く姿は、眩しく感じた。
みんながみんな、彼らのようになれれば争いなどなくなるのだろうか。
無理だろうなあ、と狙撃手は遠くを見つめる。
ひとりひとり考えも価値観も違う。ニンゲンでさえそうなのだから、特徴の違う他種族との共存は難しいことになりそうだ。
現に、人間と人魚の恋話は悲劇に終わっている。
戦わなければ生き残れないなんて、これまた本気で面倒臭い。
「でも、…なんかもう戦ってないと落ち着かなくない?」
「…僧侶がなんかぶっそうなこと言い始めたんですがどうしたら」
大僧侶の言に苦笑で返す狙撃手。慌てて大僧侶は「そうじゃなくて」と身振り手振りで言葉を探す。
しばらくあわあわと不思議な踊りを披露した大僧侶は、「上手い言葉が見当たらない…」と力尽きたようにへろんと狙撃手の肩に寄りかかった。
言いたいことはわかりますけどね、と狙撃手は笑って大僧侶の頭を軽く撫でる。
「なんというか、いいタイミングで回復できたり蘇生できたりしたら『よっし!』って思うっていうか…」
「戦えば戦うほど目に見えて強くなるのが実感できますからね」
そうそれ!と大僧侶はへらっと微笑んだ。
コマンド揃うとみんなを護りやすくなるから嬉しいと、にこにこしながら回復の言葉を口ずさむ。
「ああ、賢者さんと同じなんですね、それ」
「んー、まあお手本だったから」
でもちょっと違うんだよと、大僧侶はもう一度同じ言葉を奏でた。確かに賢者と比べると、神に対する感謝の度合いが違う。
微笑んで神に祈るこの人は、紛れもなく「僧侶」なんだなあと今更ながら実感した。
「ああでも、聖堂騎士には悪いことしたなあ…」
「?」
「いや、どうも『回復はああ言ってから祈るのか』と勘違いさせたらしくて。小さい頃、彼は盾にカンペ張ってチラチラ見ながら祈ってて」
「あれはカンペではなく自分を奮い立たせる言葉だった、とか」
「かいふくのいのりをするときだけチラチラ見てたからなあ…」
完全にカンペです本当にありがとうございました。
現在、聖堂の騎士長としてきっちり真面目に構えている彼からは想像できない可愛らしい行為。
今度会ったらそれをネタにからかってみようと狙撃手は心に決める。
実際のところ、回復というか加護や慈悲を求める「神に祈る行為」はその人の気持ちが伴っていれば、言葉はなんでも構わない。
現にこの世界での回復の言葉は人によって違い、回復合戦となれば多種多様の言霊が飛び交っている。
「癒やしの神よ、力を」といった神への祈りにはじまり、「どうかこれを」と自らを差し出すような言葉、「そぉれ!」と笑顔を振りまくようなものなど、個性がでるなと毎回思う。
聖堂騎士の場合、彼が真面目だったが故に一度知った祈りの儀式を「それでないと発動しない」と思い込んでしまったようだ。
お陰でテキトーにやっても発動しなくなっちゃって習得にかなり苦労してたよ、と友人の小さかった頃を思い出し大僧侶は懐かしそうに微笑んだ。
「今、カンペ無しで回復も蘇生も発動するからつまらない」
「つまらないって…」
キリッと言い放った大僧侶の言葉を聞いて、狙撃手は聖堂騎士長に同情する。この場に本人がいたら「頑張ったのに!」と泣かれそうだ。
小さい頃からの友人だからこそ言えるのだろうなと、狙撃手は少しだけ羨ましく思った。
ふたりであーだこーだと語り合っていると、ふわんと抹茶のよい香りが鼻をくすぐった。
香りの元に顔を向けると、魔王がこちらに笑顔を向けている。
「喋って喉が渇いただろう?」
そう言って好風のように笑いながら椀をこちらに押し出した。
抹茶をみて、先ほどの苦味を思い出したのか大僧侶は渋い顔をする。「さっきのとはまた違うから安心せえ」と魔王はカラカラ笑った。
言われて大僧侶は恐る恐る椀に口をつける。狙撃手ものんびりと差し出された茶を口に運んだ。
先ほどのドロリとした濃く苦味が強いものとは違い、さらさらとした口当たりのよいまろやかな抹茶。
これなら飲めると大僧侶はまったりとした表情でくぴくぴ飲み干していく。
狙撃手もこくりと味わうが、さっきのほうが面白くて好みだったかなとひねくれたことを考えた。
出された茶を飲み干して、狙撃手と大僧侶は魔王に礼を言いその場から離れた。「また来い」と魔王は柔らかく笑ってふたりを見送る。
なんか印象変わったなあと大僧侶が跳ねるように森を歩き、くるりと狙撃手のほうを向いた。
「ついでに手伝ってくれないかな?一緒にお茶した仲だし」と手をとって微笑む。
「僕じゃなくてもいいでしょう?」
「毒と麻痺よろしくー」
「面倒臭い…」
狙撃手は口ではそう言うものの、繋がれた手を振り払おうとはせず、引かれるままに足を動かす。
積極的に動くことはもうしない。それに希望を見いだせない。
もう、あちこちフラフラ気まぐれに動いて、僕が楽しく遊べればそれでいいや
くあ、と軽く欠伸を漏らし、狙撃手は一歩踏み出した。
傍観者、という気楽な道に。
END
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狙撃手中心、捏造耐性ある人向け。 6章第1更新まで