No.62546

魏似倭人鬼 第1章-中編-

トモキさん

どうも引き続き中編でございます。
つたない文章だと思いますが、どうか優しい目を持って見ていただきたいと思います。

主人公の更なる過去や鬼守一族の設定については第一章が終わり次第書くのでお待ちください。

2009-03-10 18:11:23 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:4077   閲覧ユーザー数:3509

 

「かこうとん?かこうえん?」

 

彼はその名をもう一度自分の口に出してみて驚いた。

 

それもそのはず彼がもっとも好きな小説である『三国志』の登場人物が目の前にいるのだから。

 

そして彼の英雄達が女である事に疑問を感じながらも、幼い彼には喜びのほうが勝り、気にしなかったのであった。

 

「すっげ~~!!ほんものなのか!!?」

 

「ほんものもなにも、われらがうそをつくとおもっているのか?」

 

春蘭は自分を偽者呼ばわりされたため、ちょっとイラついているようだ…

 

「ううん、そうじゃないんだ。きみたちにあえたのがすごくうれしかったからつい、そういっちゃっただけでそういうつもりでいったわけじゃないんだ。ごめんよ…」

 

蔵人が上目づかいで彼女達に謝ると、彼女達は顔を真っ赤にし、もじもじし始めた。

 

「うっ…、と、ところでおまえはどうするんだ。」

 

「う~ん…、かえりかたがわかればいいんだけど、どうしようもないし…」

 

「そうか、ならわたしたちのいえにくるか?」

 

「あっ、あねじゃ!?」

 

「どうした、しゅうらん?」

 

「いきなりかれをつれてっていいのか?」

 

「いいもなにも、かりんさまのぶかたるもの、ひとのたすけとなることをせねばならないだろ。」

 

それを聞いた秋蘭は驚き「あねじゃにしてはめずらしい…」と小さくこぼした。

 

そのあと、彼は二人の家に呼ばれ、しばらくそこで一緒に暮らした。

 

彼女達の親はとても彼を親切にしてくれて、彼にとって彼女達が家族のように暮らしていることにかなり羨ましく思えた。

 

そして、自分もその輪の中に入れてもらえた気がしてすごく嬉しかった。

 

それからというもの、三人は毎日のように遊び、蔵人は彼女達に惹かれていった。

 

しかし、そんな彼らに悲劇が襲った。

 

「くらうど、わたしたちはいまからおまえのことをかりんさまにしょうかいするためにしゅうらんとともにかりんさまのところにいってくる。だからちちうえとともにまっていてほしい…」

 

「どうしてぼくはついてっちゃだめなの?」

 

すると春蘭は顔を真っ赤にし…

 

「おんなどうしのはなしがあるから、おまえにはまっていてほしいんだ…」

 

それを聞いた蔵人もちょっと恥ずかしながら

 

「…じゃあ、るすばんしてるね…」と言った。

 

「あねじゃ~、うまのじゅんびはできたぞ~」

 

秋蘭がそう叫ぶと、春蘭は走って秋蘭の元へいき、二人していってきますといいその場を去った。

 

その後、彼は自分に与えられた部屋に戻り、この世界の暮らしが向こうの世界よりも優しいと感じ、このままこの世界にいたいと考えていた。

 

しかし、彼は彼女達の母親の悲鳴を聞いて部屋から飛び出した。

 

 

すると、知らない男が三人いて、彼女達の父親は…

 

切り殺されていた…

 

「ようやく、現れたか、鬼守…」

 

知らない人に自分の名前を呼ばれ、蔵人は驚いた。

 

それに気づいた謎の男も

 

「どうして、お前の名前を知っているのか知りたいか?」

 

と返してきた。

 

「あなたを殺しにきたのですよ。」

 

ともう一人の眼鏡をかけた優男が言った。

 

「なんでころされなきゃならないの?」

 

蔵人は恐怖に縛られながらも自分が殺されなきゃいけない理由について聞いた。

 

「それはですね、あなたがこの世界にやってきたからです。つまりですね、あなたはこの世界にいてはいけない人間なんです。」

 

「!!?」

 

その言葉を聞いた彼は昔のことを思い出し、体がすくんで動けなくなってしまった。

 

「お前には死んでもらう。」

 

そういうと謎の男が近づいてきて

 

「死ね!!!?」

 

その瞬間蔵人は目を瞑った。

 

そして、自分の死を予感しながらも…

 

 

 

しかし彼には死が訪れなかった。

 

彼が目を開くと…

 

そこには自分をかばい、倒れている彼女達の母親がいた。

 

「チッ!!傀儡のくせに邪魔しやがって…」

 

そういうとその男は彼女の頭を思いっきり蹴り飛ばした。

 

彼はその光景をみて過去の出来事を思い出し、完全に目の前が見えなくなってしまった。

 

「どうやら、この餓鬼も終わりみたいだな…」

 

「ええ、そうですね。では後の始末は虚空さんにお願いしましょうか。」

 

そういうと無口だった最後の男はコクリとうなずいた。

 

二人はその場から消え、残っているのは蔵人と虚空と呼ばれている男と自分にとって大切な二人の家族だった二つの死体がそこには残っていた。

 

「さて、さっさと片付けるか…」

 

男はそういうと刀を上に高くあげ…

 

「あばよ……」

 

「しにたくない…」

 

「しにたくない…」

 

「どうして…」

 

「ぼくがいらないこだから…」

 

「ちからがほしい…」

 

「だれかをまもれるちからが…」

 

「でもぼくでは…」

 

「ナラカワレ…」

 

「えっ!!」

 

「オレトカワレ…」

 

「だれ!?」

 

「オレガオマエノカワリニフクシュウシテヤロウ…」

 

「…ほんとう?」

 

「アア、オレハオマエ、シンデシマッタラオレモシヌ…。ダカラオレガ…」

 

「そいつを変わりに殺してやろう!!」

 

 

 

 

刀は蔵人の目の前で止まった…

 

蔵人の様子が何かおかしいと感じた虚空は蔵人に尋ねた。

 

「おまえ誰だ…」

 

赤い目をした蔵人だった少年は…

 

「俺か、俺は…」

 

「かつて鬼守の先祖に鬼の血を与えたもの」

 

「そして今は先祖返りした蔵人の別人格」

 

「俺の名は…酒呑童子だ。」

 

 
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