オレンジ色は金運。
緑色は友情運。
ピンク色は恋愛運。
私の1日は、ジェリービーンズ占いから始まる。
神様、仏様、ジェリービーンズ様、今日はいいことありますように!
箱を振ってコロっと転がって出てきたのは、なんと黒だった。
――最悪
恋愛運絶不調の色。
なんて幸先悪いのかしら。
窓際の席から校庭を見つめる。
朝一番に校庭に出て、ボールを追いかけている彼を見るのが、もう一つの私の日課。
サッカーが得意で時期部長になることも決まっている彼は人気が高い。
放課後の部活動ではいつも、おっかけの女の子たちからの声援を受けている。
本当は私も近くで応援したい。
でも、ここから盗み見るのが精一杯。
私なんて、クラスでもいるのかいないのかわからないような、地味な存在。
同じクラスでもない私は、どうせ近くになんていけないから。
カラフルなジェリービーンズ。
赤
青
オレンジ
緑
黄緑
紫
ピンク
彼に群がる女の子たちは、積極的で、個性があって、輝いていてきれいな色。
私は所詮、黒でしかないのかもしれない。
醜い黒いジェリービーンズを口に放り込む。
こなごなに砕けて消えてしまえ。
ふと校庭を見ると、いつの間にか彼がいなくなっていた。
どうしたんだろう?
すると、廊下を駆け抜ける足音が響いた。
もしかして?
東から西へ、彼が一気に駆け抜けた。
何をしにきたんだろう?
隣のクラスでバタバタ音がする。
彼はすぐに元きた方向へ走り去る。
首にタオルが巻かれてたから、タオルを取りにきたのかな?
ところがまた、足音が戻ってくるのがわかった。
忘れ物?
…と思ったら、私しかいない教室を覗き込んだ。
なんだろう?
心臓が高鳴る。
「あんたさ、いつも早いよな」
初めて向けられた、私への言葉。
心臓が口から飛び出そうだ。
「う、ん。朝、好きだから」
下を向いて小さい声で、返す。
もっとうまい返事ができればいいのに。
「それ、うまい? ちょうだい」
言いながら近づいてくる彼にどぎまぎする。
ジェリービーンズのことみたいだ。
どうぞ、と差し出すと、彼はピンク色のジェリービーンズを取り出し、口に入れた。
「お、甘いんだ。サンキュー!!」
初めて私だけにくれた笑顔。
他の人に見せる笑顔となんの違いもない。
距離をわざと開けているのは私なんだろうか。
――もっと近づきたいな。
私は、箱からピンク色のジェリービーンズを探して取り出すと、口に入れた。
甘さがいっぱいに広がった。
舌の上をころころ転がしてみる。
――黒い気持ち、ピンクになぁれ。
もう彼は外を走り回ってる。
これからはジェリービーンズを勇気のかけらにしたいから。
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ほのぼの恋愛ショートストーリーです。