No.624791

英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~ 1

soranoさん

第1話

2013-10-03 14:44:28 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2935   閲覧ユーザー数:2737

その後入学式が始まり、学院長であるヴァンダイクが新入生たちの前で演説をしていた。

 

~トールズ士官学院・講堂~

 

「―――最後に君達に一つの言葉を贈らせてもらおう。本学院が設立されたのはおよそ220年前のことである。創立者はかの”ドライケルス大帝”――――”獅子戦役”を終結させたエレボニア帝国、中興の祖である。―――即位から30年あまり。晩年の大帝は、帝都から程近いこの地に兵学や砲術を教える士官学院を開いた。近年、軍の機甲化と共に本学院の役割も大きく変わっており、軍以外の道に進む者も多くなったが……それでも、大帝が遺した”ある言葉”は今でも学院の理念として息づいておる。」

演説を続けていたヴァンダイクは大きく息を吸った後、両手を机について前に乗り出し

「『若者よ―――世(よ)の礎(いしずえ)たれ。』”世”という言葉をどう捉えるのか。何をもって”礎”たる資格を持つのか。これから2年間で自分なりに考え、切磋琢磨する手がかりにして欲しい。―――ワシの方からは以上である。」

大声で言った後説明をし、笑顔になった。

(『世の礎たれ』か……)

ヴァンダイクの演説を聞いたリィンが考え込んだその時

「うーん、いきなりハードルを上げられちゃった感じだね?」

隣の席に座っている夕焼けのような赤毛の少年がリィンに声をかけてきた。

「ああ、さすがは”獅子心皇帝”と言うべきか。単なるスパルタなんかよりも遥かに難しい目標だな。」

「あはは、そうだね。僕はエリオット・エリオット・クレイグだよ。」

リィンの言葉に笑顔で答えた少年―――エリオットは自己紹介をし

「リィン・シュバルツァーだ。そういえば……同じ色の制服だな?」

リィンの自己紹介をした後エリオットが着ている赤い制服を見て尋ねた。

「うん、どういう事なんだろうね?ほとんどの新入生は緑色の制服みたいだけど……あ、向こうにいる白い制服は貴族の新入生なのかな?」

尋ねられたエリオットは不思議そうな表情で頷いた後最前列にいる白い制服を着ている生徒たちを見つめ

「ああ、そうみたいだな。だが…………」

リィンも答えた後考え込んだ。

「どうしたの?」

「いや、何でもない。」

エリオットに尋ねられたリィンが答えたその時

「―――以上で”トールズ士官学院”、第215回・入学式を終了します。」

男性の声が聞こえた後声が聞こえた方向を見つめた。

「以降は入学案内書に従い、指定されたクラスへ移動する事。学院におけるカリキュラムや規則の説明はその場で行います。以上―――解散!」

その後リィンやエリオット達――――赤い制服の生徒たち以外は全員講堂を出て行った。

 

「指定されたクラスって………送られてきた入学案内書にそんなの書いてあったっけ?」

「いや、なかったはずだ。てっきりこの場で発表されると思っていたんだが……」

講堂を出て行く生徒たちを見つめて戸惑っているエリオットの言葉にリィンが答えたその時

「はいはーい。赤い制服の子達は注目~!」

女性の声が聞こえ、声が聞こえた方向に振り向いた。

「どうやらクラスがわからなくなって戸惑ってるみたいね。実は、ちょっと事情があってね。―――君達にはこれから『特別オリエンテーリング』に参加してもらいます。」

女性教官はリィン達を見回して説明し

「へ……!?」

「特別オリエンテーリング……」

説明を聞いた眼鏡の男子は驚き、金髪の女性は呆け

「ふむ………?」

「……………………………」

青色の髪の女子は考え込み、銀髪の少女は黙り込み

「フフ、一体何をさせられるのかしらね?」

「”あの人”が関わっていますから、絶対普通ではない事をさせられそうですね……」

プリネは微笑み、プリネの側にいる黒髪の女子は苦笑し

(………なるほど。事前に資料をもらったが、あの皇子が関わっているだけあって、さまざまな”事情”がある曲者揃いのクラスだな……………)

漆黒の軍服を着た銀髪の青年教官は静かな笑みを浮かべてリィン達を見回していた。

「まあ、すぐにわかるわ。それじゃあ全員、あたしとそこの銀髪教官についてきて。……あんたもそこにいつまでもつったてないで行くわよ。」

そして女性教官はリィン達を見回して言った後銀髪の青年に視線を向け

「………了解した。」

視線を向けられた青年は頷いた後女性教官と共に講堂を去って行った。

「え、えっと……」

去って行く2人を眼鏡の女性は戸惑いながら見つめ

「とりあえず行くしかなさそうだ。」

長身の男子は呟き

「……やれやれだな。」

金髪の男子は溜息を吐いた後去って行った2人を追っていった。

「えっと……ホント、どういう事なのかな?」

「わからないが……とにかく行ってみよう。」

そしてエリオットとリィンも生徒たちの後を追い

(………フン……………?)

その様子を白い制服の男子は考え込みながら見つめていた。そしてリィン達が教官達についていくと、古びた建物に到着した。

 

~旧校舎~

 

「こ、ここって……」

「士官学院の裏手……ずいぶん古い建物みたいだな。」

建物を見つめたエリオットは表情を引き攣らせ、リィンは戸惑い

「もしかして旧校舎でしょうか………?」

「そういえばジェニス王立学園にあったのとちょっとだけ雰囲気とかも似ているわよね……?」

黒髪の女子とプリネは考え込み

(………ジェニス王立学園だと………?)

二人の言葉を聞いた金髪の男子は眉を顰めて二人を見つめていた。

「~~~♪」

そして女性教官は鼻歌を歌いながら建物の中に入り

「……………」

銀髪の青年は何も言わず入って行った。

「こんな場所で何を……?」

「くっ……ワケがわからないぞ……?」

その様子を見ていた金髪の女子と眼鏡の男子は戸惑い

「まあ、考えても仕方あるまい。」

青髪の女子は呟いた後周囲の生徒たちと共に建物の中に入っていった。

「な、何かいかにも”出そう”な建物だよね………?」

エリオットは建物を見つめて冷や汗をかき

「……そうだな。(しかし、街で見かけた顔ぶれが一通り集まっているな。やはり同じクラスなのか……?)」

エリオットの言葉に頷いたリィンは考え込んだ後建物の中に入って行った。

 

「―――ほっほう、あれが俺達の後輩ってわけだな?」

その様子を遠巻きで見ていたバンダナの青年は呟き

「まあ、名目こそ違うが似たようなものだろうね。」

黒いツナギの娘は青年の言葉に頷いた。

「私達の努力が報われたのならこんなに嬉しいことはない。一年間、地道に頑張った甲斐があるというものだよ。」

「だよな~………って、お前は努力なんかしてねぇだろ。好き勝手やっただけじゃねーか。」

「フッ、それは君も同じだろう。しかしアリサ君といい、可愛い子ばかりで嬉しいな。これは是非ともお近づきにならないとね♪」

「へえ、知り合いでもいんのか?」

表情を赤らめて言った娘の言葉を聞いた青年は尋ねたが

「……じゃなくて!コナかけまくるんじゃねーよ!お前のせいでこの一年、どんだけの男子が寂しい思いをしたと思ってやがるんだ!?」

すぐにある事に気付いて娘を睨み

「……………(フッ)」

睨まれた娘は鼻で笑い

「は、鼻で笑いやがったなァ?」

青年は娘を睨んでいた。

「も~、二人ともケンカしちゃダメじゃない。」

その時少女の声が聞こえた後、二人に小柄な少女と太った青年が近づいてきた。

「やあ、二人ともお疲れ。」

「他のヒヨコどもは一通り仕分け終わったみてーだな?」

「うん、みんなとってもいい顔をしてたかな。よーし!充実した学院生活を送れるようしっかりサポートしなきゃ!」

「フフ、さすがは会長どの。」

「おーおー、張り切っちゃって。」

笑顔を浮かべている小柄な少女を娘と青年は微笑ましそうに見つめ

「まあ、多少の助けがないと最初のうちは厳しいだろうしね。―――それで、そちらの準備も一通り終わったみたいだね?」

太った青年は二人を見つめて尋ねた。

「ああ、教官の指示通りにね。しかし何というか……彼らには同情禁じえないな。」

「ま、それは同感だぜ。本年度から発足する”訳アリ”の特別クラス……せいぜいお手並みを拝見するとしようかね。」

そして娘の言葉に頷いたバンダナの青年は旧校舎を見つめていた……………

 

 


 
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