最近、だれも一刀と閨を共にしていない、これほどの異常なことはなかった。
「最後に閨をともにしたのは誰かしら?」
「ふむ・・・・儂ではないの」
「私でもないです・・・・・」
「私も違う~」
「私もちがいます~」
「私ではない」
「・・・・・・・私です」
自分だと宣言したのは、蓮華であった。
「ちょっと、蓮華ばっかりなんか優遇されてるんじゃない?」
「そ、そんな事・・・・姉様は先日一刀とどこかへお出かけされていたじゃないですか!」
「えっ、な、なんで蓮華が知ってるの!」
慌てるのも無理もない、絶対に見つからない様にとすべて人がいない場所を通過していったのにもかかわらず、蓮華に目撃されていたからである。
「簡単じゃないですか、市に居るところを見たんですから」
全員から白々しい視線が、雪蓮に突き刺さる。
「ほう・・・・・策殿は抜け駆けされていたのか」
「らしいな、どうやら私が知らない場所でそんな事をしていたらしい」
「お姉様、そんな事してたの!もう・・・・最近シャオだって一緒に市に行ってないのに」
全員が雪蓮を取り囲む。
「ちょ、ちょっと、皆なに?そんな怖い顔して・・・・・」
問答無用と全員が一斉に飛びかかり、雪蓮を押さえつけ縛り上げる、何故か亀甲縛りで。
「ほどき・・・・・なさいよ!」
「雪蓮、諦めろ・・・・・もとより、自分でまいた種だ」
「もしかして・・・・・冥琳怒ってる?」
「何の事かな」
完全に白々しい回答をしているが、若干いらついている表情が覗いていた。
「で、だ・・・・・明命、思春」
「はっ!」
「何でしょうか」
「今日から二日間、夜の北郷の動きの監視を命じる」
「は・・・・・・なぜですか?」
「私が思うにだが、か・・・北郷は夜に何らかのことをしていると考えて間違いなさそうだからな」
確かに、日中はいつもどおり執務をこなしている。
「絶対に見つからぬように部屋の外から監視を行うこと、ほかの皆にはこれを言っておかなければなるまい」
「はぁ~どうしようかな、みんなに何か・・・・」
一番簡単なものは指輪だが、彼女らに渡す以上生半可な指輪ではいけないような気がする、考えて見ればたぶん安物であっても喜ばれるのは目に見えているが、喜ばれるならば良いものを送り喜んでもらいたいのが一番のところである。
「何がいいんだろうな・・・・・本当に」
唐突に扉がノックされる。
「どうぞ」
「失礼する」
「珍しいね、冥琳が俺の部屋に来るなんて」
「たまには良いだろう?それはそうと、最近悩み事でもあるのか?書簡に誤字が見受けられるぞ」
いつもならば、何度も見直し、きちんとした状態にしてからでないと提出しない一刀が以上な誤字脱字があるまま書簡を提出していた。
「う~ん、悩みが無いといったらウソになるけど・・・・・これは、俺の問題だし、というか教えたくないしな」
「そうか、ならいい、何かあったらすぐに言ってくれ」
「そうさせてもらうよ」
すぐに踵を返すと、扉の方に向かっていった。
「最近、誰も閨に呼んでいないようだが、溜まっていなのか?」
「・・・・・今のところは大丈夫だよ」
その言葉を聞くと、そのまま出て行った。
「・・・・・心配掛けてるみたいだな・・・・・」
「結果から言うと、何も教えてくれなかった」
「・・・・・・もう、冥琳ったら自分から行くといった割には、なにも持たずに帰ってきたのね」
「そう言われても仕方がないか」
しかし、その顔はなぜか綻んでいた。
「あ~!冥琳、何かあったでしょう!」
「いや、何もなかったが?」
「絶対嘘よ!顔がいつもより綻んでいるもの!」
全員がうなずく。
「みんな!冥琳を捕縛するのよ!」
取り囲まれる前にすぐにその部屋を抜け出す。
それを追いかけるように何人もが追いかけるために部屋を出ていく。
風同士がぶつかり合い旋風を巻き起こす、舞い上がった風はさらに強くなり吹き下ろし砂塵を巻き上げ、視界をなくす、しかしまだ始まりにすぎない、ようやく序曲が終わりを告げた。
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