No.622975 真・恋姫†無双~絆創公~ 中騒動第二幕(エピローグ+α)2013-09-27 07:06:14 投稿 / 全2ページ 総閲覧数:1347 閲覧ユーザー数:1217 |
真・恋姫†無双~絆創公~ 中騒動第二幕(エピローグ)
その日自室で書簡に目を通していた北郷一刀は、一息つく為に座ったまま背筋を伸ばした。
執務を始めたのは昼食後からで、そして今は日も沈み出した時分。久々に仕事らしい仕事をしたなと、些か不謹慎な思いに浸っていた。
-……コンコンッ-
手を頭の後ろで組んでぼんやり天井を眺めていた一刀は、扉を叩く小さな音を聞く。
「ん? はーい、誰?」
-カズ兄ちゃん、私……-
少々控えめな声に、自分へ向けられる呼称。扉の向こうにいるのが自分の妹である事を一刀はすぐさま理解する。
「おお。ちょっと待ってくれな……」
リラックスしていた全身に、もう一度力を入れて椅子から立ち上がる。
そのまま扉に向かいゆっくりと開ければ、こちらを見上げている少女の姿が目に入る。
「どした、佳乃。飯が出来上がるのはもう少し後じゃないか?」
頃合いから言えば、夕食の時間帯。準備が出来たので呼びに来たのかと一刀は思った。
「うん。ちょっと、ね」
「まあ、立ち話もなんだし。とりあえず入れよ」
佳乃の様子から、何か言いたい事があるのだろうかと判断し直した一刀は、部屋に招き入れた。
「……ほい、コレ」
客人用の丸椅子を二つ用意して、部屋の真ん中辺りに並べる。
一方は一刀が、もう一方は佳乃が座る用に。お互いが向かい合う形で腰掛ける。
「……で、どうかしたのか?」
相手が話し出しやすいように、至ってラフな感じで問い掛ける。それでも佳乃の方は少しかしこまったように姿勢良く座っている。
「あのね。ちょっと、訊きたいことがあって……」
「おう」
「……カズ兄ちゃんは、私達が来ない方が良かった?」
「………………は?」
突然のネガティブな発言。どこから出したか分からないような間抜けな声を上げる一刀。
その反応に、佳乃はさらに問い掛ける。
「私……。ここにいても良いのかな……?」
「……………………ハァ」
微かに俯いての質問に、一刀はこめかみを掻きながら深く溜め息を吐く。
「…………なあ、佳乃」
「……えっ?」
やけに低い声で呼び掛けられ、佳乃が顔を上げれば目の前には、一刀の両手が迫り……。
-ムニッ!-
その両頬を、彼に軽く引っ張られていた。
「フェッ!?」
痛くはないものの、予想外の出来事に佳乃は戸惑う。
そんな彼女を一刀は笑っているが、目は全く笑っていない。つまんだ頬を微かに上下に動かしている。
「そうかそうか。お前の中で俺はそんなに薄情に映っていたのかー」
「ひょっ! ひょっとやみぇてよー!」
「大事な家族を邪険に扱うような、極悪非道な男に俺は育っていたのかー。それは俺も気付かなかったなー」
「ご、ごみぇんなひゃーい! ごみぇんなひゃーい!」
両手をバタバタして抗議をしている佳乃を見て、軽く吹き出した一刀はやっと手を離す。
「まったく……」
「うぅ……。いきなりヒドいよー……」
つままれた両頬を手の平で押さえながら、佳乃は軽く口を尖らせる。
「いきなりはお前の方だろ……。一体どうしてあんな質問したんだ?」
「……うん。あのね」
そして佳乃は、自分が悩んでいた事を話した。他の家族と比べて、自分の居場所が見当たらないと感じていた事を……。
「なるほどな……」
「私……。あんまり役に立っていないのかなって、そう思ってて……」
暗い表情を見せている佳乃を見て、一刀は短く溜め息を吐いて口を開く。
「佳乃……。最初の質問の答えだけど」
「えっ?」
「俺の答えは……。“ノー”だ」
そう話しながら、今度はその手を佳乃の頭に乗せる。少し驚いた佳乃を気にしないで、そのままポンポンと優しく叩く。
「俺は佳乃や、母さんと父さん……そして爺ちゃんに、また会えて良かったって思っている」
「カズ兄ちゃん……」
「このままずっと……。二度と会う事は無いって、思ってたからさ……」
優しく微笑む一刀の手は、今は佳乃の頭を撫でていた。子供をあやすような手つきに、佳乃は戸惑いつつも少し嬉しそうに受け入れている。
「それとさ……。言いそびれていたけど、ゴメンな」
「えっ……?」
「俺、勝手にいなくなってさ……。心配、したろ……?」
「そ、それは……!」
いなくなってしまったのは、一刀のせいではない。
言いかけた口を佳乃は閉じた。
もし違うのなら、原因はここにいる“姉達”のせいになるのか……?
そうやって責任を擦り付ける発言になりかねないのを、すんでのところで佳乃は察したからだ。
「俺も、心配してたんだ……。もしかしたら誰かが、俺がいなくなったショックで身体を壊してるかもしれないとか、俺の知らない内に事故に遭ったりしてるのか。とかさ」
佳乃は目を見開いた。
それは、自分が初めてこの世界に訪れた日に、紫苑に訴えた言葉と似ていた。
一刀が自分と同じように、家族の事を考えていた。
その事に、佳乃は驚いていた。
「俺たちが、お互い元気な姿で会えた事が、俺は凄く嬉しかった。もし佳乃が会いに来てくれなかったら、それが出来なかったんだからさ……。だから、俺は佳乃に感謝しているんだ」
ありがとな、と言いながらなおも一刀は頭を撫で続けている。
佳乃はそのままじっとしていたが、すぐに自分から一刀の手をゆっくりと退ける。
「……あのね。今日、冥琳お姉ちゃんに誉められたんだよ」
「冥琳に?」
唐突な話題と意外な名前に、今度は一刀が目を見開いた。
「うん。もしかしたら冥琳お姉ちゃんよりも優れた軍師になれるかもしれないって言われたの……」
「そりゃ凄いな……。冥琳がそこまで言うなんて、相当なもんだぞ?」
一刀は腕組みをしながら、微かに笑う。
「斗詩お姉ちゃんにもそう言われたよ」
「ん? 斗詩とも話したのか?」
「あっ、ええと。実はね……」
そうして佳乃は今日の事の顛末を一刀に話した。自分が悩んだ末に鍛練をしようと、斗詩と猪々子に相談した事。そしてその後に、冥琳に認められた事を。
「ふーん……。まあ、こう言うのも何だけど。もし鍛練をするんだったら、あの二人に付きっきりで指導してもらうよりかは、いろんな人に教えてもらう方が良いと思うぞ?」
「えっ? 斗詩お姉ちゃん達、教えるの上手じゃないの?」
「ああ、違うよ。なるべく欠点をなくすには、その方が効果的だって事だよ。斗詩と猪々子の武器は確かにデカいけど、その分欠点もあったりするんだ」
「あっ、それお爺ちゃんから聞いた事がある。当たりは大きいけど、必中率は低くて隙も出来やすいんだよね?」
「おお、そうそう! なんだ、分かってるじゃないか。だったらどうして二人に最初に頼んだんだ?」
「二人とも身体細いのに、あんな大きな武器を使っているから……」
少し自信なさげに話す佳乃に少し納得がいったのか、一刀は軽めに頷いた。
「まあ、気持ちは分かるけどな。二人もそうだけど、皆どこからあんな力が出るのか、俺も未だに不思議に思うよ」
「だよね……」
「でも、それはこの世界で暮らすための適応力から来てるんだと思う。始めから戦があるもんだって認識が植え付けられているから、そのために能力が高まるんじゃないかな」
「地力を育てる、って事なのかな?」
「そんな感じだな。逆に考えてみろ。ここにいる皆が突然俺らの世界に来て、いろんな機械とか施設とかをちゃんと使えるかどうか……」
「……物凄く時間がかかりそう」
「だろ? でも俺らは何不自由なくそれらを使える。機械が始めからあるって認識があるからだよ」
「そっか……」
「だから、俺らは一朝一夕で身体能力が上がるなんて事は無い。それは他の皆だって変わらないんだよ。皆はこの世界で生きていくために……。それこそ血の滲むような努力を重ねて、武を極めたり学問に励んだりしてるんだ。俺らが文明社会で生きていこうとするように、な」
「……やっぱり、すぐには無理だよね」
がっくりと肩を落とす佳乃。
その肩に一刀はそっと両手を置いた。
「……でも、佳乃。お前はもう努力をしてるじゃないか」
「えっ?」
「冥琳から色々教わって、軍師の素質があるって認められたんだろ? それはお前の努力の結果が見え始めているんだよ」
「…………」
「冥琳も、斗詩や猪々子に、他の皆だって。佳乃の頑張りが、どう花開くのかを楽しみにしてるんだ。勿論、俺ら家族だって、さ」
肩に置いた両手は、膝の上に置いた佳乃の両手を握りしめた。
「佳乃はここにいていいんだ。そうじゃなきゃ俺たちは、佳乃っていう“健気で頑張り屋で、大事な妹”を。……大事な家族を失ってしまうんだ」
「カズ兄ちゃん……」
「皆、佳乃が大好きなんだ。誰もいなくなって欲しいなんて、思うわけ無いだろ?」
「…………でも」
「ん?」
「私たち……。いつかは、元の世界に……」
一瞬、一刀の全身が強張る。
吐こうとしていた息が途中でつっかえて、しかし敢えてそれを一気に飲み込んだ。
悟られないように、精一杯頬をつり上げて笑顔を作る。
「……気にしなくて良い。それは最初から、皆分かっていた事だし」
「でも……!」
「俺だって同じだ。いつか……。ここを離れて、元の世界に戻ってしまうのかもしれない……。でもそれを気にしていたら、何をするにも怖じ気づいちゃうし、それが周りに伝わっちゃうからさ」
「カズ、兄ちゃん……」
「だから、佳乃も気にするな。意識してしまったら、それはお前を信頼してくれる皆に失礼だ」
自分の手を握りしめていた手が微かに動きを止めたのを、佳乃は気づいていた。
でも、それを自分には隠そうとした。
その強さは、一刀がこの世界で生きていこうと決めた、覚悟だ。
それを佳乃は、十分に理解した。
「……うん、分かった。私ね、斗詩お姉ちゃん達と話して、頑張ろうって決めたの。それをカズ兄ちゃんに伝えようとしたんだけど……。やっぱり、今の事が気になっちゃったの」
「うん……」
「でも……。それでも、カズ兄ちゃんも頑張ってるって、分かったから……。だから、私も頑張ってみる!」
「ああ。しっかりな……!」
「うんっ! ゴメンね、お仕事中に……。じゃあ私、今日教わった事の復習してくる!」
そう言って元気よく立ち上がった佳乃は、そのまま足早に入り口の扉へと駆け寄った。
部屋を出て振り向きざま、頑張ろうねと言いながら手を振っていたので、一刀も手を振って応える。
「……佳乃が軍師、か」
再び静寂が訪れた自室で、一刀はポツリと呟いた。
「……見れると良いな、俺」
椅子に腰掛け天を仰いで、そのまま息を吐いた。
頭に思い描いているのは、数多の兵に指示を出している、凛々しい妹の姿。
結構似合うかもしれない、と心の中で呟いた。
「そうだよ……。皆頑張っているんだ。俺も負けちゃいられないんだ……!」
勢い良く立ち上がった一刀は、再び仕事机へと向かう。
よしと呟いて、真剣な顔つきで書簡に目を通し始めた。
-続く-
喜多見(以下:喜)「どうも。絵の練習中で、一度描いたはずの佳乃と泉美さんの絵柄が、コロコロ変わって困惑中の喜多見康太です」
翔馬(以下:翔)「どーも! 個人的にペンタブを買おうか悩んで、結局買わなかったヘタレの北山翔馬です!」
喜「今回は特別に、この作品を書くキッカケを話そうかと」
翔「俺らアンソロジーからハマって、ゲームに行ったんだよな。ほんで、これで何か二次創作やろうと。で、最初思いついたのは、一刀の元カノがやってくるって話だったな?」
喜「そうそう。で、それは絆創公に出てくるアオイさんだったんだよ」
翔「うん。で、内容を纏めていったんだけど、結果的にメッチャ切なくなって、オチが纏まらなかったんだよな(笑)」
喜「ちなみに、元々の名前は“紗耶”さんなんだよな(笑)」
翔「一刀が“刀”だから、元カノは“鞘”っていう露骨な下ネタ(笑)」
喜「で、次に思いついたのは、未来で病気になる一刀を救うために、成長した一刀の子ども達が貂蝉と卑弥呼の力を借りてやって来る、と」
翔「この設定は絆創公に活かされてるよね」
喜「ただ、これがどうにもしっくりこなかった」
翔「どうしようかなーって悩んでる間に数日過ぎて。その間に違う作品のネタは思い浮かんでたな」
喜「恋姫の短編のネタも思い浮かんでいたけどね。他は何だったかな。シティーハンターのリョウが、本編各話でのヒロインともし結ばれていたなら、とか」
翔「あーっ、あったな(笑) あとあれだ! 金色のガッシュ、GS美神、エイケン、貧乏神がの四作品のコラボ!」
喜「そういやあったね(笑) 後は何だ? オリジナルストーリーを考えていたのが、エトレンジャー、ブレスオブファイア3、ロマンスは剣の輝き2……」
翔「まばら過ぎるな、俺らの趣味(笑)」
喜「で、キッカケになったのが二人で読んでた、赤ちゃんと僕」
翔「おお! 来た来た!! 二人してボロ泣きしてな(笑)」
喜「そん時に思ったんだよね。そういえば、残された一刀の家族はどうなるのかって……」
翔「萌将伝でもあっさりと流されてたよな。結構重大な事なのに」
喜「せめて何かしら処置があっても良いんじゃないかなってずっと思ってた」
翔「それで思い付いたんだよな。“じゃあ恋姫の世界に来させちゃおう!”って。ただ、一刀の両親のイメージは、赤ちゃんと僕の拓也の両親にモロ影響されたりしてるし(笑)」
喜「ここまで書いてきて、かなり良い感じかなって思う。一刀や恋姫達の奮闘とか、家族ゆえの交流とか暖かみとか結構思い付いてきたし」
翔「今後の展開で大事になってくるのは、外史絡みの要素なんだよな」
喜「萌将伝アフターの設定だから、基本一刀は外史の話を知らない。でもそれを知ったらどうなるのか……」
翔「あとは一刀家族の今後だね。一刀や恋姫達との関係とか、一体どうなってしまうのか……」
喜「展開が遅かったり、分かりづらい文章や設定ではございますが」
翔「是非とも、最後までお付き合いください!」
喜「まだ全体の三分の一も進んではおりませんが(苦笑)」
翔「ハッピーエンドである事は、お知らせしておきます!」
二人「それでは、また!!」
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一刀の妹、一刀にフラグを報告する。
今回はオマケ(?)として、真・恋姫†無双~絆創公~を書くキッカケみたいなのを、雑談形式で載せています。