バレンタインも済み、再びいつものような空気に戻った呉の面々の中、一人だけ難しい顔をしている者がいた。
「・・・・・・・・このままじゃ、破産だ」
大体のデートの平均で使用する金を9倍してみると、今まで貯めてきた金でも全然足りないことに、改めて気がついた。
「どうしようか・・・・・・金をもらうわけにもいかないし」
たぶん、蓮華、冥琳、思春、穏、明命、亞莎はそのあたりに気を使ってくれると思うのだが、雪蓮、小蓮、祭はどう考えても、気を使ってくれないどころか、いつもの倍ぐらいねだられそうである。
一人、自らの部屋で頭を抱えるのは北郷一刀その人であった。
最近酷使しすぎている腰をさすりながら、部屋を出る。
「一刀?」
「あぁ、蓮華どうかしたのか?」
「ちょ、ちょっとだけ話がしたいな・・・・って」
「そう、じゃあ、一緒に執務室に行こうか」
意識する前に勝手に蓮華の手を取ると進み始めた。
「どうしたの?」
「ん?何が?」
「何か、悩んでたみたいだけど」
「ん?あぁ・・・・・・執務がなかなか終わらないな~なんて思ってね」
「そう・・・・・・一刀が辛いなら、執務を減らしましょうか?」
「いや、そこまでしてもらわなくても、大丈夫だよ」
自然な動きで額にそっと唇を落とす、蓮華は顔を真っ赤にするのだが、自分の体を一層一刀に体を密着させ嬉しそうな顔をしていた、執務室の扉をあけるまでは。
「レ~ン~ファ~!」
「お、お姉様」
執務室でいつものごとく待っていた雪蓮はピッタリとくっついて入ってきた蓮華と一刀を見るなり、蓮華と一刀を引き離しにかかった。
「二人でこっそり逢引なんて・・・・・」
「そ、そんな!逢引だなんて!」
「あら?違うの?じゃあ、これから一刀と逢引するから出て行ってくれる?」
「なっ!そ・・・・」
「それはいくら策殿とは言いえ、抜け駆けはゆるされませんなぁ」
そこには、嫉妬による怒りからか扉を引きちぎっている祭の姿があった。
「さ、祭さん・・・・・扉が、壊れているんですけど・・・・・」
「ん?おぉ、すまんな、ちと力が入ってしもうての」
しかし、言葉を言っている割に握りしめている扉は握られている場所から崩壊を始めている、いつもよりその力は異常である。
「さ、祭?」
「どうされた」
「そ、その、扉が壊れているんですけど」
「ん?そんなものはほおっておけばよいじゃろ」
いつもとは違う、どこかドスの利いた声で祭が言う。
「はは~ん、祭、口ではそんなに言ってないけど、実は一刀にベタ惚れなんでしょう?」
「なっ!何を申されるか策殿、そ、そんなことは」
先ほどまでの雰囲気はどこへ行ったのか、顔を真っ赤にしていた。
「一刀、もうすぐでしょ?ほわいとでーだったけ?楽しみにしてるからね」
「一刀、そんなに無理しなくていいから・・・」
「北郷、わかっておるじゃろうな?」
まさに三者三様、来るべき日はもう間近である。
再びふきだした風は、今だに風ではあるが瞬間的には旋風へと変わる、どのような風になるか、風から龍が出るか虎がでるか全く予想がつかない、風はいまだに何かを見定めるように吹いている。
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お待ちの方ようやく来ました、叢です、バレンタインからはや一カ月程度たちました、ネタ切れと仕事の忙しさで全く投稿してませんが、今日からまた始めます、いつもと比べると短めではあります