No.622397

【獣機特警K-9ⅡG】はじめてのメンテ【交流】

古淵工機さん

最初はみんなお医者さんが怖い。
それはたぶんロボットもおんなじなんじゃないかなって。

◆出演
クオン:http://www.tinami.com/view/551025

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2013-09-24 23:34:38 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:913   閲覧ユーザー数:856

「さ、着いたよ」

ラミナ市内、ファンガルドロボット管理局直属のメンテナンスセンター。

ここに柴犬形ロボットの親子連れが来ていた。

K-9隊の隊長久遠・ココノエとその娘、マリン、カリンの姉妹である。

今日はマリンおよびカリンにとっては初めてとなる分解検査(オーバーホール)の日だった。

待合室。

「うぅ…本当にバラバラにされちゃうの…?」

やや困惑した様子でクオンにしがみつくカリン。

クオンはカリンの頭をなでながらそっと言い聞かせる。

「大丈夫。確かにバラバラにされるけど死ぬわけじゃないし、怖いのは最初だけだよ」

「うう、だといいんだけど…」

と、落ち込んでいるカリンの横でマリンはただひたすら呟いていた。

 

「オイラは怖くない、オイラは怖くない、怖くない怖くない怖くない…」

「もう、マリンも緊張しすぎだよ…」

と、マリンの様子を見たクオンが苦笑いを浮かべていると、入室を告げるアナウンスが響いた。

 

『218番の方。診察室にお入りください』

「ほら、カリンの番だよ」

「う、うん…」

と、カリンはビクビクと震えながら診察室へ向かっていった…。

診察室…。

「じゃ、始めましょうか」

その言葉にカリンが顔を上げると、目の前に座っていたのは、白衣に身を包んだドーベルマン形ロボットの女性。

「あ…あなたはテレジア博士?」

母から教えられていたためか、カリンは彼女の名前を知っていた。

そう、目の前に座っていたドーベルマン形ロボットの女性こそ、ロボット管理局の長官も努めるカリスマ技師、テレジア・アウディ博士その人だったのだ。

 

「あ、あの博士…」

「何かしら?」

「わ、わたしホントにバラバラにされちゃうの…?」

「心配しなくていいわよカリンちゃん。すぐ終わるから」

「でも…怖くて怖くて…」

と、震えているカリンの頬にはひと筋の涙が伝う。テレジアはそれを優しくふき取ると、カリンの頭をなでながら言い聞かせる。

「大丈夫よ。始めは誰だって怖いけど、ほんの最初だけよ。慣れちゃえばなんて事ないもの。オバちゃんだって初めてバラバラにされた時には怖くて身動きできなかったのよ?」

「え…そうなの?」

「そうよ。さすがに『大人』として作られたから泣くようなことはなかったけど、それでも背筋が凍るくらいだったんだから。ね、ちょっと背中を貸してちょうだい」

テレジアはそう言うと、カリンの背中に回りこんでそっと抱き寄せる。

 

「わ、あったかい…まるでママに抱かれてるみたい…」

「…大丈夫。オバちゃんが隅から隅までしっかり診てあげるから…といっても、最初は怖いでしょうから、一旦あなたの電源を落とさせてもらうわね」

すると、テレジアはカリンの首筋にそっと手をかけると、その後ろにあったハッチを開けて赤いボタンを軽く押し込んだ。

「あ…、なんか…だん、だん、眠…く……あっ、たか……」

カリンの瞳から光が消え、そのままゆっくりとスリープモードに移行していく。

テレジアはそれを見届けると、カリンの首から下の外装を脱がせ、作業に取り掛かっていった。

…数分後。

「…カリンちゃん、カリンちゃん」

と、テレジアの呼びかける声でカリンは目を覚ました。

「う…は、博士…?」

カリンが目を開けると、目の前にあるのはテレジアの姿。

「起こしちゃってごめんなさいね。今の状態でもあなたが起きられるかテストしてたのよ」

「テスト…あ、そうだ、わたしの身体はどうなったの?」

「ちょっと待っててね」

テレジアがゆっくりとカリンの視界から離れていく。すると、代わってカリンの視界に飛び込んできたのは驚くべき光景だった。

 

「…こ、これ…わたしの身体?」

目の前にあったのは他でもない、カリン自身の機体だ。それも各パーツごとに分解されている。

「これがわたしの中身…?わたしってこうなってたんだ…」

呟くカリン。しかしその表情に恐怖の色はなかった。

そればかりか、分解された自分の身体をしばし興味深そうに見つめていた。

「…ごめんなさい。怖いもの見せちゃって」

と、申し訳なさそうに声をかけるテレジア。しかしカリンは泣き叫ぶでも責めるでもなく、笑顔を浮かべて答えた。

「ううん、全然怖くないよ。ちょっとヘンな感じだけど…」

するとテレジアはほっとため息をついた後に笑顔で返す。

「よかった…じゃあこれから組み立てるからもう一回寝ててね」

「うん。おやすみなさーい」

そして再びカリンはスリープモードに移行し、テレジアはその身体を組み立てていくのだった。

待合室。

「さ、終わったわよ」

と、テレジアに連れられて診察室からカリンが出てきた。

「ママー!!」

カリンはクオンの顔を見るなり、一直線に走ってそのまま抱きつく。

「おかえりカリン。どうだった?」

「最初は怖かったけど…でも、博士が優しくしてくれたから怖くなかったよ」

その言葉を聞いて驚いたのはマリンだった。

「ウソ!?入る前はあんなに震えてたじゃん!?なんで!?」

「えへへ…」

と、照れ笑いを浮かべるカリン。

 

その様子を見たマリンも、緊張の糸が一気にほぐれ脱力した様子であった。

「な、なんだかなあ。緊張してたのがバカみてー…」

「ほら、次はマリンの番だよ」

「さ、いらっしゃい」

「は、ははは…」

と、半ば呆れ顔になりつつ診察室へ連れて行かれるマリンの様子を見て、カリンとクオンは笑っていた。

「ねえママ、マリンちゃんどんな顔で出てくるかな?」

「カリンが笑顔で帰ってきたんだもん。きっとニコニコして帰ってくるよ」

「それもそうだねw」

 

数分後、クオンとカリンの予想通りマリンも満面の笑みで診察室を出てくることになるのであった。

 

 


 
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