No.622024

覇王少女アインハルトStrikerS(未完)

rineさん

プロローグ完。
未完は、終わりではないが、続きをいつ書くかは未定という意味で。

2013-09-23 19:46:26 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2060   閲覧ユーザー数:2026

 

――\(*`∧´)/ ムッキー!!――

 

 

 

 

 感動と再会、正座に説教……そして覇王の想いを告げた激動の一日を終え、再び日常へ戻った。

 流石に連続でサボるわけにはいかないため、真面目に通学する。

 

「ごきげんようフューネさん。話がありますので放課後に……ゼ・ッ・タ・イに時間を空けておいて下さいね?」

 

 隣席のクラスメイトに喧嘩腰の挨拶とともに。

 そう、昨日の告げ口は忘れない。

 休憩時間では恨み辛みを言い足りないので、放課後を求刑時間とする。

 昼休みにしないのは、せめてもの配慮だ。

 まぁ、自分の行動が原因だとは理解しているが、コレとソレは別の感情(もんだい)だ。

 若干、睨みつけながら言い切ると、彼はいつも通り「ふむ」と一息を置き……。

 

「おはようございます『オネェチャン』? そういえば昨日は楽しかったですか?」

 

 とても良い笑顔で喧嘩を売ってきた。

 ブチッ、という擬音が自分の内側から聞こえた気がした。

 

「ぇえ! シスターのお話はとても有意義でした。貴方もいかがですか? ……ついでに色々と懺悔してはいかがでしょうか?」

 

 怒りのあまり声が裏返ってしまった。

 シスターのお話とは正座に説教のことだが、ソレは口には出さない。

 ついでにボソッ、と彼に聞こえるよう本音が零れてしまったが、特に問題はないだろう。

 

(というより、何故あの単語が出てくるのですか!?)

 

 どうやってあのシスター相手に、バレないよう盗み聞きしていたのか疑問を覚えた。

 シスターの話からして、タイミング的に近くにいたのは在り得ない。

 魔法ではシスターにバレる可能性が高いし、変な機器なんて持たされてはいない。

 

「別に誰かに許しを請う生き方はしていませんし、するつもりもありませんよ」

 

 こっちの疑問などお構いなしに、自分の罪は自分で背負うべきでしょう? そもそも無実です。はい、と彼なりの持論を述べる。

 

(他人に迷惑をかけている時点でアウトだと思う私は異常……ではありませんよね?)

 

 何故かだんだん自分の精神が異常ではないか不安になってきた。

 

(……あぁ、そもそも先祖の記憶がある時点で異常ですか)

 

 何だかとても切なくなってきた。

 

 

 

 

――( ̄ー ̄?).....??アレ??――

 

 

 

 

 そして今日は朝から美術の時間である。

 魔法学院で感受性を求めるのは微妙な気がする。

 魔法とは式でもあり、リリカルよりロジカルである。

 

(……あれっ? 今、何か重要なものを否定した気がします)

 

 一瞬、誰かのアイデンティティが崩壊する音がしたが、関係無いので無視する。

 それにコレは初等科で履修する内容なのかも疑問を覚える。

 なんだか、怒りのボルテージを放課後まで維持出来るか不安になってきた。

 

 

 

 

――カンカンカンッ・・・ ¶ゞ(; ̄д ̄)ノ☆=♀ ワラ人形――

 

 

 

 

「……というわけで、色々と散々でした。自業自得だとは思いますが、そこに付け入るのはどうかと思います」

 

 待ちに待った放課後の求刑時間。

 だが、彼は今日も通院するようなので、聖王医療院まで並んで歩きながら、昨日の告げ口に対して文句を付ける。

 案の定、怒りのボルテージは放課後まで維持出来なかった。

 

「……選択肢一つで……は大きく……るのだから、中々どうして……」

 

 そんな文句に対して、彼は意外にまともな顔で、相変わらず訳の分からないことを言う。

 

「あぁ、今プレイしているADV(全年齢対応版)の話ですよ」

 

 自分の文句に対して、まったく微塵も関係の無い話であった。

 それにADVという単語も、何故か碌でもない響きに聞こえるのは、気のせいだろうか?

 ついでに言い方から察するに、年齢制限版もあるのだろうか?

 

「タイトルは『君の瞳にSLB』というんですけど……」

 

 果てしなく物騒な響きであった。

 勿論、単語の意味なんて理解できないが、直感で感じたのだから仕方無い。

 

「選択肢一つで次元世界が崩壊するスリルを味わえるのが、この作品の目玉(ポイント)です」

 

 訂正。物騒というより発禁レベルの代物な気がする。

 絶対に全年齢対応版などではない。

 それと次元世界を簡単に崩壊させるな。

 

「ちなみにSLBは『S』weet『L』ove『B』reakerの略です」

 

 よく分からないが、ジャンルのアイデンティティを失くしそうなタイトルである。

 甘い愛を壊すゲーム?

 ナニソレ殺し愛い?

 

「シリーズにはPlus、ex、ex-fb、Multi-Raid、そしてスピンオフでPhantom-Strikeなどがあります」

 

 一体、何度その世界は滅亡しかかっているのだろうか?

 そして製作者は何がしたいのだろうか?

 

「全てを破壊(アイ)する桃色の獣殿♀が主人公で、途轍もなく修羅天道(リリカル)物語(ファンタジー)です。彼女の破壊(アイ)の前では、百合とか薔薇はちゃちぃ次元の話です」

 

 明らかに自然界には存在しないであろう生き物のようだ。

 そして繰り返すが、絶対に全年齢対応版なんてない代物だろう。

 あと何で百合と薔薇?

 

「まぁ、冗談(ウソ)はさておき」

 

(――って!? 嘘なんですか!?)

 

 あれだけ語っておきながら、この野郎は全てを流しやがった。

 

「自業自得の面はともかく、内心で指差して笑っていたことには反省しますよ」

 

 他人の不幸を笑ってはいけませんね、と彼がのたまう。

 

「ぇえ! そうですね! 是・非・に! 今後は気を付けて下さい!」

 

 また声が裏返り、先ほどの冗談の件も含み、怒りが再度込み上げてきた。

 彼はやたらと私を煽るのが上手い。

 決してソレを褒めているわけではないが。

 

「どうどう。そうアレです。貴女が昨日に説教を受けたお陰でたくさんの人が救われたと思えば良いんですよ」

 

(――オ・モ・エ・マ・ス・カ!)

 

 心の内にで思い切り憤慨する。

 それで救われる人がいるのなら、世の中はもっと平和である。

 

「ではなんですか? 私が説教を受けたことにより、時空管理局の壊滅的危機でも未然に防いだとでも言うんですか? ああん?」

 

 若干睨みを利かせながら、問いただす。

 そして不良のような言葉使いになってしまっている自分がいる。

 

「壮大な例えですね。まぁ、その一端くらいにはなっているのでは?」

 

 彼は適当そうにハハハと笑いながら述べる。

 ソレに対し、ついつい拳を強く握り締めてしまう。

 

(……ダメです。手をあげては負けです。負けなんですアインハルト!)

 

 口撃に対して攻撃するのはNGだ、と自分に言い聞かせ深呼吸をして一息付く。

 

「ふぅ、もういいです。昨日のは私の自業自得です」

 

 色々とかなり悔しい思いもあるが、ソレ以上の歓喜があったのも事実だ。

 なのでもう触れるな、と暗に告げる。

 

「そうですね。殴られるのは流石に御免ですし」

 

(ならばそういう発言を控えれば良いのに……)

 

 こちらの内心を理解しつつも、敢えて沸点ギリギリを狙うなと、おおいに心内で罵る。

 

「まぁ、コレもそれなりに平和な世の中の有り触れた日常、ですよ」

 

「人の心を読んだように言わないで下さい」

 

 不愉快です、と告げる。

 そして自分はそんなに読みやすい表情をしているのかと不安にもなる。

 が、それよりも彼の発言が少々気になる。

 

(それなりに平和、ですか……)

 

 古代ベルカに生きた覇王の記憶を持つ自分からすれば、現代は十分過ぎるほど平和である。

 管理局のお偉いさんが地上(ミッド)の犯罪率どうこうとTVで演説していた記憶もあるが、普通に暮らしている分には危険が隣り合わせということは無い。

 

(……一体この人はどんな生活をしているのでしょうか?)

 

 普段の態度から察するに、割りと碌でもない環境で暮らしていたのかもしれない。

 

(……まぁ、彼の場合、どんな環境でも一切合財金輪際絶対に同情するつもりはありませんが)

 

 それにもう目的地の聖王医療院は間近だ。

 無駄な考えはさっさと止めて、忘れるに限る。

 

「あぁ、折角来たのだから昨日の娘に会っていったらどうですか?」

 

 なんだかんで結局ここまできてしまったのだから、帰る以外の用件など一つしかないが……。

 

「……一応、未だ面会謝絶扱いです」

 

 流石に昨日に続いて不法侵入をやらかすわけにはいかない。

 覇王うんぬんの件でも、特段許可は貰えていない。

 むしろ証拠も何もないのにソレだけで認めてくれていたら、管理体制などの不安すら覚えるが。

 

「そうですね……あっ、もしかしたら中庭とかで遊んでいるかもしれませんよ?」

 

(はぁ、また適当なことを……)

 

 在り得ない話ではないが、適当過ぎる彼の発言に心の内で溜息を吐く。

 

「ではここで。ごきげんようアインハルトさん」

 

 そう言って彼は正面玄関から医院の中へ。

 一体彼のどこが病弱なのか、激しく疑問を覚えるフリーダムさである。

 

「……少しだけ庭を見ていきますか」

 

 そんな彼を見送った後、足は自然と聖王医療院の中庭へ向かっていた。

 それは彼の言葉を真に受けた訳ではない。

 ただ、なんとなく。

 そうあって欲しいと願ってしまった。

 

 

 

 

――[壁];`_ゝ´)o"))クゥッ―― 

 

 

 

 

「……彼は予言者ですか……いえ、詐欺師な気もしますが」

 

 案の定、中庭を覗いて見るとあの娘(ヴィヴィ)がいた。

 何やら管理局の制服を着た女性とボール遊びをしている。

 

(……あぁ、そういえばオリヴィエとも昔は、ああやって遊んでいたのですね)

 

 その姿を見て思い出されるのは昔日の残照。

 武術以外にも外で良く遊んだ記憶がある。

 

(そう、アレは……)

 

 リッドを巻き込んで何故かバトルロワイヤル式の雪合戦。

 雪に足をとられ、彼女(オリヴィエ)を巻き込んで転倒して、偶然、彼女の胸部に手を当ててしまって……。

 

(クラウス、貴方という人は……)

 

 思い出されたのは、懐かしき私刑(リンチ)の記憶であった。

 本人は謝罪のつもりだったのだろうが、流石に脂肪と筋肉は別物である。

 

(しかも女性に向かって……)

 

 その点だけは、彼と自分が別人であるとハッキリ認識できる。

 

(あぁ、別人といえば彼女(ヴィヴィ)彼女(オリヴィエ)も違うんですよね……)

 

 時間を置いて少しは冷静になれた故、色々な思いはあれど、現在の状況を正しく認識出来ていた。

 決して『おねえちゃん』が嬉しかったり、説教が響いているわけではない。

 

(でも……だからこそ――)

 

 いつか真紅の少女に語った想いが、悲しき願いが脳裏に過ぎる。

 遠い過去と遠い未来を結ぶ一瞬(いま)に顕現した奇跡。

 それは後にも先にも在り得ないであろう邂逅、ならば……。

 

――その(おも)いを今度こそ叶える。

 

 『わたし』はボールで遊んでいる『彼女』に向かって、ゆっくりと歩き出した――

 


 
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