第41剣 初めてのデート
ユウキSide
もう少しで2月を迎えるという1月の後半のある日の夜、
ALOで珍しくクーハと2人きりになって、なんだか少し恥ずかしさがある。
そんな中、彼はボクにある一言を投げかけてきた。
「あのさ……明日、デートしないか?」
「ふぇ? デー、ト…?」
「そう、デート…///」
思わず聞き返してしまって、それでもクーハはボクを見つめながらそう伝えてきた。
頬が少し紅くなってるから、照れてるみたいだね。でも、デートって、そういうことだよね///?
「オレ達さ、付き合い始めたけど、まだ2人きりで出掛けるなんてこと、してないだろ?
みんなで作る思い出もいいんだけど、2人だけの思い出も作らないか///?」
「2人だけの、思い出…。ボクと、クーハの…///」
紅くなりながらもハッキリと伝えてくれる彼の想いにボクも嬉しくなる。
でも、なんだか、すごくいいかも…/// こ、恋人と、2人だけの思い出って…。
「ボクも、クーハとデート、したいよ///」
「よし! 明日は日曜日だったな…それじゃあ、朝10時に始まりの街で待ち合わせな」
「う、うん/// 楽しみにしてるね///♪」
こうして、2人でデートをする約束をして、このあとクーハは用事があるからって、ログアウトした。
ボクは夢見心地なままベンチに座っていた、本当に明日が楽しみだな~♪
けど、そこでふと思った……デートって、どんな服を着ていけばいいんだろう…?
このまま…は、良くないよね…。思ったらボク、オシャレ用の服なんて持ってないよ!?
「ど、どど、どうしよう!?……そうだ、こういう時はアスナに!」
ボクはすぐにアスナにメッセージを送って、助けを求めた。
5分後、パナレーゼの街のベンチに座っていたボクのところにアスナがやってきた。
見てみれば、リズとシノンとティアさんも一緒に居るや。
聞いてみたら、4人で一緒に居た時にボクのメッセージが届いたみたい。
「それで、一体どうしたの?」
「あ、あのね…ボク、クーハとデートすることになったんだけど…。
デートって初めてで、どんな服を着ていけばいいのか、分からなくて…」
「もしかして、それの相談?」
アスナに聞かれて答えるとリズが助けの意味を理解してくれて、それに頷いて応えた。
「デート、初めてなのね…」
「ですが、それを失念していました。みんなで作る思い出にばかり気を取られて、
お二人の思い出を作っていませんでしたね…」
シノンとティアさんが言葉を掛けてくれる。正直、ボクも2人の思い出に関しては忘れていたりしたんだよね…。
だって、初めて人を好きになって、どうしたらいいのか分からなかったんだもん…。
「デートはどっちから誘ったの? ユウキから?」
「ううん、クーハからだよ」
「さすがは男の子。こういう時は魅せてくれるみたいね」
リズの問いかけに答えれば、シノンが微笑みながらそう言った。そういうものなのかな~?
「うん、事情は分かったよ……ユウキにぴったりの服、見繕ってあげるね!
リズ、シノのん、ティアさん! ラルドさんのお店に行くよ!」
「ついでにあたしの店にも行くわよ! 装飾品だったらそこそこあるし!」
「ゲーム内とはいえ、寒さもあるから適度に色気のある暖かめなのが良いわね」
「靴とかも大事ですね。可愛いのか、大人しめにするか、悩み所です」
な、なんだろう……アスナもリズもシノンもティアさんも、ちょっと怖いような…。
「それじゃあ早速、レッツゴー!」
「「「オー!」」」
「ちょ、まってぇぇぇっ///!?」
ボクは4人に担がれて、何処かのお店へと連れて行かれました。
連れて行かれた先はイグ・シティにあるSAO時代からの知り合いのお店らしくて、
当時カリスマと呼ばれたお針子さんの1人らしい。
そこに着くとアスナ達はお店の主人である女性、ラルドさんにデートの事情を話した。
すると、ボクは着せ替え人形よろしく、たくさんの服を着せ替えさせられました。
可愛いもの、カッコイイもの、清楚なもの、大人っぽいものとか、色々と…。
クタクタになって疲れた頃、ようやく、取り敢えず1着が決まって、それをラルドさんからプレゼントしてもらった。
次はリズの工房に行って、そこでボクは1つだけいいなと思うものを見つけて、それもリズからプレゼントしてもらった。
そのあとも靴を買いに行ったり、アスナの家で香水を選んだりと大変だった…。
なんせ、4時間も掛けて一式を揃えたからね…。
「よ、ようやく、終わった~…」
真っ白に燃え尽きそうなボク、それに対してアスナ達はホクホク顔でいる。
なんか、遊ばれてたような気もするけど…。
「ユウキ。明日は頑張ってね!」
「応援してるわよ」
「良いデートになるといいわね」
「たくさん楽しんできてくださいね♪」
「みんな……ありがとう!」
アスナ達からの言葉に、感謝を込めてお礼を言った。うん、明日のデート、楽しいものにするぞ~!
ユウキSide Out
――翌日…
クーハSide
朝9時55分、始まりの街でユウキと待ち合わせをしているオレは彼女の到着を待つ。
正直に言わせてもらうと、女の子と付き合うどころか、
妹や母以外の女性と2人きりで出掛けるのも初めてなので色々と悩んだものだ。
キリトさんから受けたアドバイスはただ1つ、『いつも通り、自分らしくいろ』ということ。
変に気を遣ったりするよりも、いつも通り接してあげた方が相手も緊張が薄れるという。
ただし、デートなのだから優しく接してあげるのはした方がいいとのこと。
難しいよな~……するとそこに…。
「お、お待たせ、クーハ…///」
「ん、あぁ…待ってはいな、い…よ……」
ユウキがやってきた……のだが、その姿にオレは目が釘付けになってしまった。
清楚な感じを思わせる純白のワンピース、寒さを感じさせないようにする為の薄めの紅いチェック柄のシャツ、
薄めの桃色の靴、首には彼女の髪の色を思わせるネックレス、香水を付けているのか彼女からは優しい香りもする。
どれもが彼女の存在を際立たせ、美しく魅せている…。
ジッと見つめていたからか、ユウキの頬は来た時よりも紅く染まり、それがさらに彼女を可愛く魅せてきた。
「えっと、変じゃ、ない…///?」
「い、いや、全然変じゃない……ていうか、メチャクチャ可愛い…///」
「あ、や、その…あり、がとう//////」
真っ赤になるユウキ。多分だけど、オレも結構赤くなってると思う。
というか、彼女の隣をオレが歩いたとして、不釣合いじゃないだろうか?
黒の長ズボン、薄めの紫の長袖シャツ、羽織る為のボタン止め仕様の白い半袖シャツ、靴も黒という出で立ち。
一応、問題無いはずだけど。
「あの、クーハも、似合ってるよ///」
「そ、そっか、良かった…///」
どうやら、彼女が見た感じでは変じゃないみたいだ。よし、問題無いなら、そろそろ行動に移さないといけないな。
「それじゃ、行こうか?」
「うん!」
オレ達は街の中を歩き出した。
まずオレ達は始まりの街の西側を歩くことにした。
キリトさん達から聞いた話ではここは各領地の首都やイグ・シティに並ぶ賑わいをみせるらしい。
オレ自身、何度もこの街を訪れてはいるけど、デートで周れるようなところがあるのは知らなかった。
「このブレスレットどうかな?」
「ん~、こっちのほうがよくないか?」
「あ、いいかも♪」
最初に立ち寄ったのは女性プレイヤーがやっている装飾品の露店。
形を模したレプリカ品を試しに着けてみたりする。
どうやらここの露天商さんは外見重視の装飾品を扱っているようで、どれも可愛いものやカッコイイもので占められている。
「キミ達カップル?」
「は、はい///」
「ははは、初々しいね~。それじゃあ、こっちのペアブレスレットなんかどうだい?
見た目はシンプルなシルバーブレスレットだけど、ペアアイテム自体が珍しいから、結構人気があるんだよ」
「えっと、それなら1組買います」
「OK、毎度あり。それとお幸せに~」
女性露天商に勧められてオレはペアブレスレットを購入した。少し離れたところで、片方をユウキにプレゼントした。
「わぁ~、ありがとう、クーハ///♪」
結構、というよりかなり喜んでくれたみたいで早速彼女は手首に着け、オレもすぐに着けた。
そしてオレもユウキも、揃ってステータスをチェックしてしまった……いつもの癖が…。
顔を見合わせてから互いにぷっと吹き出し、温かい空気が溢れるのを感じた。
ちなみに、どうやらこのペアブレスレットは半径10m以内に片方のものを装備した相手がいると、
全体のステータスが僅かばかり上昇するらしい。
なるほど、カップルに見合ったアイテムだな、と…少しばかり納得した。
次に向かったのは近くにある通り。そこは食事処が多く、喫茶店風な店もそれなりにある。
また、屋台などもあるためか人が結構多いのだ。そんな通りの入り口近くにあるショップ、そこが目的地。
その店に入ってみると、中には戦闘用などの服や鎧、靴などの装備があり、
さらに反対側のスペースにはオレ達が着ているのとは違うが各種族の領地などで売っている特産の服が置いてあった。
見た感じでは一種の民族衣装にも見えるかも。
「色々と揃えてあるな~」
「ホントだね~、他の領地じゃないと手に入らない服ばっかりだよ~」
種族の衣装に目を奪われたオレ達は近くでそれらを見ている。
「お客さんたち、ここは初めてだね?」
「ああ。なんでここは色んな種族の衣装や装備があるんだ?」
「俺はこれでも古参のプレイヤーでね。
引退していった仲間たちが持っていたアイテムを譲り受け、
その中で売っても問題無いものだけこうして売ることにしたんだ。
特に種族の衣装は良く売れるよ。自分と違う種族の服は滅多に手に入らないからな」
なるほど、それなら売れるかもな。それにこれから引退するという人も偶にアイテムを持ってくることがあるらしい。
そのあと、オレとユウキは店主の厚意でそれぞれ試着してみることになり、
オレは同じ黒に近い衣装だからかインプが似合い、ユウキはウンディーネやシルフが似合っていたと言っておこう。
今度はそのまま通りで食事を取ることになった。
レストランや喫茶店にしてもいいと言ったけど、ユウキは屋台を希望してきたので屋台で幾つかの料理を買い、
近くにあったテーブルと椅子で食べることにした。
「お、この『ブースト・ブルのカツサンド』美味いな」
「こっちの『ライラムのジャムサンド』も美味しいよ」
オレ達は幾つか買い込んだ料理を頬張っていく。
そんな中、1つのサンドイッチに手を伸ばしたことで、オレとユウキの手が触れた。
それに少し照れてから手を引く。
「クーハ、食べていいよ///」
「ユウキ食べろよ。オレは他のでも…」
「な、なら、半分こ、しよ///」
そうだな、それならいいかも。単純にその提案がいいと思ったオレは、直後に予想外のことに見舞われた。
「あ、あ~ん//////」
「え…///?」
真っ赤になりながらユウキがサンドイッチを持ってオレの口元に近づけてきた。
ええっと、これはまさか、食べてくれということか? この、人が周りにいる中で…?
彼女は羞恥からなのかプルプルと震えてるけど、それでも離そうとはしてない。
ここで退いたら、男じゃないな…!
「あ~ん(もぐもぐ、ごくん)////// 美味い、です…///」
「そ、それじゃあ、ボク、にも…///」
なん、だと…!? あ、そんな目で、頬を紅く染めた上目遣いでオレを見ないでくれ……いや、むしろ見てほしいかも。
とかいうバカな考えを振り払ってから、彼女が持つサンドイッチを受け取り、
彼女にあ~んをしてあげたのは言うまでもない…。
結論、かなり恥ずかしかった/// これを平気でやれるキリトさん達は凄いと、改めて思った…。
食事を取り終えて、休憩もした頃には羞恥もある程度は耐えられるようになってきた。
慣れたわけじゃない、耐えられるようになっただけ、大事なことだから2回言った…。
そして再び街の中へと繰り出そうと思った時、オレは今なら出来ると思って、ある行動を取った。
「っ、クーハ//////?」
「駄目か…///?」
「ううん、嬉しいよ//////」
オレの行動に少し驚いた様子を見せたユウキだったけど、拒絶はなくて喜んでくれたようだ。
オレの左手と彼女の右手、互いに手を繋いだまま、オレ達は街の中へと歩みを進めた。
食事のあとはほとんどウインドウショッピングになり、
それもある程度したら落ち着いてきたので散歩をすることになった。
いま居る場所は街の外れにある小川の傍の道を歩いている。
言葉は特に交わさないが、お互いの手をぎゅっと握ったまま、歩き続けた。
そんな時、道の先に1つの建物が見えた……教会、か…。
「入ってみるか?」
「うん」
思うところもあり、そのまま教会の中へと足を踏み入れる。
すると中には1人の女性が居た、NPCじゃないみたいだけど…。
「あら、こんにちは」
「「こんにちは」」
「あなた達はここにお祈りに?」
「いえ、少し近くを通ったら偶々見つけたので…」
「ふふ、そうですか」
女性はクスッと笑う。
「貴女はどうしてここに…?」
「昔…いえ、SAO時代にここに住んでいたんです、小学生くらいの子供達と一緒に…。
最近は忙しくてログインできなかったから、久しぶりにここに来てみたんです」
SAOの時にここに…。かつて住んでいた場所、キリトさん達みたいに思うところがあったのかもな。
「その時に、お二人みたいに仲の良い若いご夫婦が小さなお子さんを連れてきたこともあったんですよ…」
オレ達くらいに若い夫婦って、しかも子供も…。隣にいるユウキも驚いたりなんやらといった感じ。
「勝手に喋ってしまってごめんなさい。では、私もそろそろ帰りましょう。お二人はごゆっくり…」
そう言うと女性は去って行った。
不思議な雰囲気になりながらも、オレ達は教会の中にある椅子に座った。
そして、おもむろにユウキが話しだした。
「子供、か…。ボクもキリトやアスナみたいに、ユイちゃんみたいな子供が欲しかったな~」
「っ、ユウキ…」
彼女の諦めが漂う言葉にオレは顔を顰めてしまった。
無力だ、オレにはなにも出来ない………のか? 本当に、何も…。
「ぁ…ご、ごめんね、なんだか空気悪くしちゃったんぅっ//////!?」
何も出来ないことは、ない…。
沈んだユウキの為か、はたまた諦めようとした自分への慰めか、オレは彼女の唇を奪った。
「んんっ、ちゅっ…ふぁっ、くー、は…んぅ…/////////」
偶にするキスとは違い、深く濃いキス。
最初はユウキも僅かに抵抗したけれど、すぐに合わせるようになった。
そして時間にすれば1分ほど、それでオレ達は唇を離した。
彼女はオレに凭れ掛かりながら息を整える。
「あはは…////// ボク、やっぱり
「オレも…/// 大好きだ///」
「あぅ…でも、ありがとう//////」
「おぅ…///」
そこからしばらくの間、オレ達は肩を寄せ合いながら、静かな時間を過ごした。
そして夕方になり、オレはログアウトしなければならない時間になった。
「今日はありがとう。すっごく楽しかったよ///♪」
「それなら良かった……また、デートしような」
「もちろん、楽しみにしてるね///!」
最後に軽く重ねるキスを交わして、ユウキはいつもの宿屋へと戻る為に転移門で去り、オレも近くの宿屋でログアウトした。
クーハSide Out
To be continued……
後書きです。
ふぅ~・・・2人の仲を大分進展させてみました、どうにも中々進まない感じだったのでw
かなり甘く出来たと思いますが、どうでしょうか?
さらに教会にいた眼鏡を掛けた女性、分かる人にはわかりますよね?
というか、モロバレのような気もしますけど・・・当然ながら、サーシャ先生ですw
さて、次回は統一デュエル・トーナメントについて書こうと思います。
2話に分ける予定ですが、デュエルシーンは大して無いので期待しないでください(オイッ!)
それではまた次回で・・・。
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第41剣です。
クーハとユウキのデート回、コーヒーを用意してくださいねw
では、どうぞ・・・。