第39剣 バーベキューパーティ
キリトSide
クーハからみんなへの、ユウキとの交際をすることになったという報告から一夜明けた今日。
学校後にALOへとダイブした俺はアスナと共に
「食材ってこれで足りるのか?」
「大丈夫、だと良いけど……一応、材料はみんなも持ってきてくれるし…」
「ママ、お皿はここに置いておきますね」
「ありがとう、ユイちゃん」
3人でせっせと忙しなく動き回る。
アスナは時間に合わせて料理も作っており、ユイはその手伝い、俺は庭などにテーブルやら必要な道具やらを並べていく。
ちなみに材料に関しては昨日の夜、みんなで食材収集の狩りを行ったので、多分大丈夫だと思いたい。
するとそこに…。
「お~い、キリト~!」
「手伝いに来たわよ~!」
「ハクヤ、リズ、それにみんなも…」
2人の後に続くようにギルド『アウトロード』のメンバーがゆっくりと空から降り立った。
「早速で悪いけど、女性陣はアスナとユイの方を手伝ってくれ。男性陣は俺と一緒に準備を」
「「「「「了解」」」」」
俺の指示に従って女性陣は家の中のキッチンの方へ、男性陣はテーブルなどを置くのを手伝ってくれる。
他にもバーベキューということもあるので、食器類の運びだしも行う。
みんなのお陰で外の準備も粗方終わったので、シャインはキッチンへと向かい、デザート作りをしにいった。
忙しい奴だな……そう思っているところに…。
「よぅ、キリの字」
「あれ、もう準備は終わっちゃった?」
「こっちも色々と持ってきたぞ」
「お、来てくれたか」
やってきたのはクラインと『風林火山』、ケイタと『月夜の黒猫団』、それにエギルだ。
バーベキューパーティの招待に応じてくれたようで、料理や酒類、その他の飲み物やデザートを持ってきてくれたらしい。
サチは家の中に入って女性陣の手伝いをするようだ。
まぁパーティまではあと10分ほど、もう少しで全員揃うだろう……ん、あれは…。
少し離れた空に十数人ほどの集団、ということはもう1つの招待客達だな。
その集団は庭の近くに降り立ち、俺に歩み寄ってきた。
「今日はお招きいただき、感謝するよ」
「どうもありがとうネ」
「楽しませてもらうぞ」
「あぁ、態々ありがとう。サクヤ、アリシャ、ユージーン」
そう、やって来たのは
そして
なお、サクヤの護衛にはレコン、ユージーンの部下の中にはカゲムネも来ている。
それぞれとは交流が多いため、今回のパーティに参加してもらった次第だ。
まぁ、俺の思惑にはまだ裏があるんだがな…。
ちなみにこの3人も各領地の名産の料理や酒などを持ってきてくれた、ありがたいな。
そして、最後の招待客にして、今回の主役達もやってきた。
「やっほ~、キリト~……って、たくさん居るね!?」
軽快に降り立った主役中の主役であるユウキ、さらにスリーピング・ナイツの面々も降り立つ。
「凄いですね~…」
「うわぁ、見たこともない料理だ!」
「うん、美味しそうだね」
「くぅ~、酒もたくさんある!」
「ノリはそればかりですって、痛い!?」
庭の光景を見て驚きの様子を見せている、まぁ当然か。
家の中の面々も含めたら集まった人数は48人だ……ん? この人数ならいけるんじゃないか?
ユイとピナはパーティーの人数としては組み込まれないし…。そんなことを考えていると…。
「キリトくん、料理出来たから運ぶの手伝って……って、ユウキ、みんな!」
「あ、アスナだ~♪」
家から出てきたアスナがそう言ったが、ユウキ達の存在に気付いて喜んだ様子を見せる。
そんな彼女にユウキも近づいてから抱きつき、互いに嬉しそうな表情を見せた。
俺とクーハはその様子に苦笑する。それにしてもいきなりアスナに抱きつくか、てっきりクーハの方に行くかと思ったが…。
そう思って見ていたが、ユウキの様子が少し違う……クーハをチラチラと見ているな。
あぁ、なるほど……顔を合わせ辛いのか、初心だな(笑)
「アスナ、俺達が運ぶからユウキ達を頼む」
「は~い、お願いね」
俺はそうアスナに声を掛け、アウトロードの男性陣メンバー『
残っていた女性陣と一緒に多量の料理を庭のテーブルへと運んだ。
他の飲み物類も運びだし、バーベキューパーティの準備が整った。
自宅の前の庭に集まった総勢49人+1匹、その中でスリーピング・ナイツの面々が前に立ち、アスナもその隣に立っている。
彼女が今回の主催者として、スリーピング・ナイツを紹介し、乾杯の音頭を取ることになった。
「みなさん、今回はこのバーベキューパーティに御参加いただき、誠にありがとうございます。
まずは主役であるギルド、スリーピング・ナイツの方々をご紹介させていただきますね」
毅然としつつも柔らかな表情を崩さないアスナはさすが結城家の令嬢といえる。
「左端からレプラコーンのタルケン。スプリガンのノリ。サラマンダーのジュン。ノームのテッチ。
ウンディーネでサブリーダーのシウネー。そして、ギルドリーダーで【絶剣】の2つ名を持つインプのユウキです」
名前を呼ばれる毎に一歩前に出て、頭を軽く下げる面々。
最後のユウキの紹介の時には、サクヤとアリシャ、ユージーン達といった領地側の面々が驚いた様子を見せた。
「彼らはいままで色々なVRMMOを渡り歩いてきた凄腕のプレイヤー達です。
ただ、現実世界での事情もあって近々解散することになり、ALOには思い出作りをする為にやってきたそうです。
今回のバーベキューパーティも、私がその経緯を知って思い出の1つに出来れば良いなと思い、開催することになりました」
アスナは簡単ながらにそう説明し、詳しい事情を知らない者達には病気などのことは暈すことになった。
思い出作りというのはユウキ達の許可を得て話すことになったという。
ま、俺はその思い出作りの協力を得させる為に領主や将軍の参加を勧めたわけだが…(黒笑)
「勿論、みなさんの思い出にもなってほしいので、みなさん自身にも楽しんでいただきたいと思っています。
それでは、みなさん……お手元のグラスを…」
彼女の言葉にみんなが飲み物の入った自身のグラスを右手で少し高めに持つ。
アスナの視線が周囲を見回し、最後に俺と重なる。
―――いいな、アスナ…決めた通りに言うんだぞ
―――ふふ、了解だよ♪
《接続》による会話、俺もアスナも笑みを浮かべる。
「バーベキューパーティの開催とみんなの出会い……そして、クーハ君とユウキの交際を祝して、乾杯!」
「「えっ、ちょっと…//////!?」」
「「「「「「「「「「乾杯!」」」」」」」」」」
アスナによる会心の音頭、困惑しつつ赤面する2人を無視して、俺達は盛大に声を発した。
ついに始まったバーベキューパーティ、料理を焼く者、料理を食べながら談笑する者、話をする者など様々。
特にスリーピング・ナイツのメンバーは料理に舌鼓を打ちながら、参加している面々と話しをしている。
「もぉ~、アスナってば酷いよ~/// あんな、大勢の前で…///」
「ごめんね、ユウキ~」
「あんなこと思いつくのキリトさんじゃないのか?」
「お、良く分かったな」
ユウキはアスナをまったく痛くないようにポカポカと叩き、クーハはある程度を察してかジト目を俺に向けてきた。
2人とも真っ先に駆け寄られて祝いの言葉を掛けられていたからな。
すると、サクヤとアリシャとユージーンの3人が歩み寄ってきた。
「ユウキさん、だったね。良かったらなんだが、シルフ領に来ないかい?」
「いやいや、ケットシー領の方がお得だヨ~。今なら飛竜もついてきちゃうからネ」
「サラマンダー領ならば、働き以上の報酬を用意出来るぞ?」
さすがは領主と領地の幹部なだけはあるな、やることはしっかりとやるってか?
「いきなりというか、なんというべきか、早速勧誘かよ…」
「ふふ、これも領主としての務めだからね」
「仕事もする時にはしておかないとト」
「領主代行として、彼女達ほどの実力者を放ってはおけないからな」
俺の呆れながらの物言いに3人とも笑みを浮かべながら答える…が、ユウキの返答はというと…。
「えっと、ありがたいんですけど…ごめんなさいです!」
この通り、まぁ当然か。
「ふむ、フラれてしまったか」
「ま、仕方がないよネ」
「予想していたといえば、その通りだがな」
ほぅ、随分と潔いじゃないか。コイツらにしては珍しいなぁ。
「どういう風の吹き回しだ? アンタらがあっさり引き下がるなんて…」
「私達だってそういう時もあるさ。まぁ、彼女達は引退の思い出に、ということだろ?」
「なら、引き留めるようなことも悪いからネ」
「俺達も引く時は引くさ」
そうか、まぁそうだろうな…。
実際、俺達への勧誘も大層なものだったが、アウトロード結成と『不干渉条約』もあるのでもう勧誘はしてこないしな。
3人は一応それを聞きたかっただけのようで、また料理を食べながら他の者との談笑を始めた。
さて、俺も楽しむとするかな。
キリトSide Out
ユウキSide
みんなと話しをして、雰囲気も盛り上がりを見せ始めた頃、
「どうも、ユウキさん!」
「あ、えっと、リンク、だよね? ボクのことはユウキでいいよ」
「うん、それじゃあ、ユウキ……1つだけ、聞いてもいいかな?」
リンクの聞きたいこと、同時に彼女の表情が真剣なものになったから、頷いて応える。
「クー君、ううん……九葉君のこと、好き?」
「え、い、いきなりなに「お願い、答えて…」……うん、好きだよ…///」
「凄く好き? 他の誰よりも?」
「う、うん/// 凄く好きになったよ…いままでに、ないくらいに…//////」
真剣に聞いてくるリンクに対して、ボクは戸惑い、照れながらも真剣に答えた。
すると、彼女の表情がふっと柔らかくなって、笑顔を浮かべた。
「良かった~…うんうん、ホントに良かったよ! それじゃ、これからもお兄ちゃんのこと、お願いね♪」
「う、うん、勿論……へ? お兄、ちゃん…?」
「そうだよ。クー君が本名を教えてるから、僕も教えるね。僕の本名は時井燐、時井九葉の双子の妹だよ。
だから九君のこと、よろしくお願いします!」
「え、あ、こ…こちらこそ///!」
「えへへ~、それじゃあ、また後でね~♪」
そう言って、リンクこと燐は料理目掛けて走っていきました。
ボクが言うのも難だけど、嵐が来たみたいだったよ…。
「でも、驚いたな~…」
まさかクーハの妹だったなんて……妹、いもうとか…。
「今度、お義姉ちゃんって呼んでもらおうかな…///?」
また1つ、ボクの叶えたいことが増えました///
ユウキSide Out
キリトSide
「リズベット、歌いま~す!」
「いいぞ~、歌え~!」
「ついでに踊れ~!」
……取り敢えず、簡潔に一言述べさせてもらう。
―――
暴飲暴食、食って飲んで歌って騒げの大宴会状態だ。
VR世界なのに酔っている者がいる…いや、空気とか雰囲気に酔っているのかもしれない。
外のどんちゃん騒ぎから避難する為、俺はユイとピナを連れて家の中の揺れ椅子を使い、窓際から外のみんなを眺めている。
「みなさん楽しそうですね~♪」
「きゅ~♪」
「収拾がつかなくなる前に、どうにかしたいところだけどな」
楽しそうにそう言うユイとピナに対し、俺は苦笑しながら答える。
はてさて、一体どう収拾をつけたものか……酔い覚ましと言ってはなんだが、戦うというのも…ん?
「なぁ、ユイ。こういうのはどうだ?」
「はい?……ふむ、ふむふむ……いいですねぇ~!」
「そうと決まれば、早速みんなに伝えるぞ」
「はいです!」
揺り椅子から立ち上がり、俺はユイとピナを連れて再び外に出た。
そして、集まっている者達に向けて一言…。
「みんな! これだけの人数が集まってるんだ……折角だしボス戦、やってみないか?」
「「「「「「「「「「……………賛成!」」」」」」」」」」
俺の言葉の後、しばしの沈黙を経てから全員が一斉に声を揃えて唱和した。まさに即断即決である。
明らかにノリと勢いだけでボス部屋前にやってきた俺達。
この人数にこの戦力、怒涛の快進撃以上の進み方だったと思える。
そして、俺とアスナとユウキとクーハを先頭にし、ボス部屋へと突入した。
突入したのは第28層のフロアボスの部屋、甲殻類のような姿をしたソイツは腕が蟹にように長く太く大きい。
背中は強固で鎧のようになっており、尾は蠍のようになっている。
「さて、このボスを見て強敵だと言うのは解る通りだが……負ける気がしないのは俺だけか?」
「ううん、わたしも全然負ける気がしないよ」
「あ、やっぱり? ボクも全然だよ」
「むしろ負ける要素がないだろ?」
聞いてみればアスナもユウキもクーハもこの反応。
後ろに居るみんなを振り返って見ても全員が同じような反応、そして笑みを浮かべている。
あぁ、俺も同じような笑みを浮かべているんだろうな…。
「それじゃ、やりますか…」
俺達は一斉に各々の武器を抜き放ち、構える。
「「攻撃!」」
「「開始!」」
俺とアスナ、そしてクーハとユウキの宣言を皮切りに、一斉にボスへと飛び掛かった。
15分後、さすがの甲殻類型、その防御力は中々のものだったが、今回は相手が悪過ぎた。
「はぁっ!」
「やぁっ!」
俺のOSS《スターサークル・レイン》、ユウキのOSS《マザーズ・ロザリオ》が決定打となり、ボスのHPが0になった。
6本の足と尾、巨大な鋏を破壊し、止めに一斉攻撃ということになったわけだ。
「さすがに手練ればかりのこのメンツだな。割とノリだけで勝ってしまうとは…」
「やり遂げた感じよりも今回はやっちゃった感の方が大きいね(笑)」
俺の呆れの混ざった言葉にアスナは笑いながら答えた。
他のみんなはというと変な笑いになっているが、この際は気にしない。
そして第28層ボス、今回は割とマジでスマン…。
というわけで、今回行われたバーベキューパーティはこの第28層フロアボス討伐をもって、お開きとなった。
全員の変なテンションがまだ抜けきっていなかったが、良しとするか。
なお、今回はパーティーリーダーの名前のみ『剣士の碑』に刻まれるので、
スリーピング・ナイツの面々によるボス攻略は第29層で行うことになったらしい。
キリトSide Out
To be continued……
後書きです。
完全にノリと勢いで書いてしまった、だけど反省も後悔もしていないw!
けれど第28層ボスの扱いの酷さには自分でも悪いと思いました、ごめんなさい・・・w
まぁ今回は明るめな感じにしましたし、次も似たような空気です。
次回は同じく原作で一文の説明程度に書かれていた部分を書いてみました。
それではまた・・・。
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第39剣です。
原作で少しの一文にしかなっていなかったパーティの話しです。
ノリと勢いで書いてしまいましたw
どうぞ・・・。