「うーむ……」
現在軍議中。唸っているのは対曹操についての話だから。
曹魏相手に戦をせずにすむように、書状を送ったり色々してみたがやっぱりだめそう。
すでに曹魏はこちらとの戦の準備を始めているという情報もある。
となればここは先手必勝でこちらから攻めるべきなのだろう。
「で、どういうふうに動くのがいいとおもう?」
軍師3人に問いかける。
「そうね、意外と曹操相手だと正々堂々の正攻法で行くのが効くかもしれないわよ」
「そうですね、それも一理あります」
桂花の言葉に朱里と紫青が頷く。
「どういうこと?」
「反董卓連合でも、袁紹さんとの戦いでも、我が軍は奇策、計略を持って戦を有利に進めてきました
おそらく曹操さんにもそのことは聞こえていると思うんです」
「紫青の事をほしいと言っていたりするようですし、軍師が複数居る事も承知しているでしょう。
だからこそ、正攻法で攻めたとなれば、高い確率で、その裏に策や計略がある事を疑って来ると思うんです。
策を疑うあまり、軍の動きが遅くなったり、理にかなわない動きをしてきたりする事も十分にありえます
つまり付け入るスキを勝手に作ってくれる可能性がある、ということですね」
なるほど、と3人の話に頷く。
もう一つは小部隊ずつ小分けにして兵力を国境に集中させて、曹操を驚かせる。という策。
「最初の案は始終正攻法でいくわけじゃなく、状況に応じて策を打っていくってことでいいんだよね?」
「それは当然ね。おそらく一戦ですべてが終わる事はないでしょうし。一戦目をどう勝つかが問題になるわ」
「ふむ、じゃあ、そういう形で進めてくれるかな?」
参加していたみんなもそれで納得、という感じ。今日の軍議はこれで終了となった。
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もうすぐ曹操との戦で、戦になれば前線に出るとはいえ、それまでに自分がするのはやっぱり政務。
書簡の報告内容が変わったりはするけど、いつもと大きな違いのある仕事じゃない。
「北郷。今回の曹魏との戦、どう思う?」
「どう、っていわれても、勝つしか無いんじゃないかな? 一応騎兵も装備もそこそこ充実してるし、
練度も魏の軍勢には負けるかもしれないけどかなり高いはずだし、うちには優秀な軍師が3人いる。
負けるとは思ってないよ」
「お、言うようになったじゃないか」
白蓮が俺の言葉に楽しそうに笑う。やはり、あれやこれやと相談があるので今日は白蓮に手伝ってもらっていた。
「弱音を吐いたら士気に関わるからね。本音を言うと戦なんかしたくないんだけど。
戦があると民の生活にも響いてくるし」
「まぁな。騎兵は私、翠、霞、星の隊か。これだけの軍馬を揃えられるとは、随分懐が暖かくなったもんだ」
「確かに、最初は資金難でピーピーいってたけど。今は塩田がかなりの利益をたたき出してるからなぁ」
「軍屯農もだな。国境近くから補給が出せるから曹魏との戦でだいぶ有利になるとおもうぞ」
軍屯農についても、国境が更新されるたびに、そこに新たに設置しているため、結構な量の兵糧やお金をそこから捻出できている。
なるほど、と考えているとポツポツと雨の降り始める音。さっきまでいい天気だったのになぁ……
「お、雨だな」
「あ……」
「ん? どうした?」
「いや、詠を買い物に行かせててさ。息抜きがてらいってこいって。ちょっと迎えに行ってくるよ」
「ああ、そりゃ迎えに行かないと後が怖いな……。ま、今日のしごとはおおかた終わってるし行って来い」
この時代の傘はたためないから持ち歩きには不便でいけない。コンビニのビニール傘が恋しい。
畳める傘もうまく作れないか聞いてみるかなぁ、今度。
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「うひゃあ……」
急に降りだした雨にあわてて近場の店の軒先に入る。
今は息抜きがてら買い物に行ってきてくれって言われて、街に出てきて帰り道。
買ってきたものは茶葉とお菓子。あいつに持たされた手紙を菓子屋の店主に見せたらボクにお茶とお菓子を出してくれた。
なんでも北郷の行きつけの店らしい。
それから自分用の買い物に時間をかけたのがいけなかった。雲行きが怪しくなってきたとおもったら、急な雨。
通り雨かな、早く止めばいいのに。
「どうしよう……」
お菓子も、茶葉もどちらも水気を嫌うものだし、買ったものは本。雨の中を帰るのは考えられない。
丁度雨宿りに入った店は飲茶の店、出入口の窓際に座り、お茶を注文して飲みながらため息を付く。
「何考えてるのかしら、あいつは」
急いでもどうしようもないし、少し考え事をすることにする。
考え始めて浮かんでくるのは北郷の顔。
月は随分あいつが気に入ってるみたい。
この前あいつへの贈り物にお金を出した時に、月と話してボクも随分気に入ってるって気づいた。
ボクがあいつを気に入ってるって、月は前から気づいてたみたいだけど。
霞や、華雄、恋に取られたくない、先をこされたくないって思うボクが居た。
でも、月には譲ってあげたいとおもう。ボクが一番大事なのは月だから。
随分と待遇も良くしてくれているから、好意を持つのは自然なことだろうし、
あいつは霞や華雄の話を信じて、必死にボク達を助けるために奔走してくれて、それが嬉しかったのもあるかもしれない。
「────っ!?」
北郷について考えていると、とんとんと窓を叩く音に思考を遮られ、慌ててそちらを見ると、
窓の外にはその北郷が居て、ボクは声にならない悲鳴を上げた
────────────────────────
「んー、菓子屋は結構前に出てったって話だし……」
菓子屋の店主から聞いた話だとどうやら向かった先は本屋か。
本屋に行ってみたところ雨が降るちょっと前に本を買っていったとのこと。
この本屋から城に帰る途中に雨宿りができる場所はと、飲食店がいくつかあるな。
さすがに雨になると人通りはまばら、飲食店を覗きこみながら、月と話した事を思い出す。
鉄扇を受け取った時、詠の名前がその中にあり、驚いたので聞いてみたのだ。
「詠ちゃんも、きっと、ご主人様の事を好きです。素直になれないけど、強く押せば、答えてくれるとおもいます……」
強くおせって言われてもなぁ……。なんて考えつつ。
鉄扇は、せっかくもらったので2本とも持っている。結構重いのが玉に瑕。
考えながら歩いて数件目の飲茶の店の窓際に詠が座っているのを見つける。
外からだとよくわからないがなんだか頬が赤いような。
とんとんと窓を叩くとひどく驚いた様子。失礼な奴だ。
「何しにきたのよ?」
で、出てきて開口一発目がコレだった。
「何しにって迎えに来たんだよ。しばらく止みそうもないし」
「私のぶんの傘は?」
「傘2つも持って歩けるか、ほら」
しぶしぶといった様子で、俺の隣に来て歩き始める。何だか頬が赤くなっていたりするのが可愛い。
「そういえば、詠もこの前の鉄扇のお金、出してくれたんだって?」
「そ、そうよ、悪い?」
「ん、嬉しかったからお礼いいたくてさ。ありがと」
何だか複雑な表情してるが、照れ隠しなんだろうか。
「ボ、ボクは別にあんたの事が好きなわけじゃ無いわよ、月がどうしてもっていうから……」
何だかその言動が可愛くなって、思わず頭をなでてしまう。
「ちょ、やめなさいよ!」
「俺はそんなこと一言も言ってないのに。それじゃ好きですって白状してるようなもんだよ」
「───っ!?」
そういってから頭から手を離す。
詠はといえば、しまった! というような顔。思わず小さく笑ってしまう。
「まぁ月から聞いてはいたけどさ」
鉄扇を広げると、そこに書かれた名は、詠、紫青、恋。
「これに名前を書いてあるみんなが、俺を慕ってくれてるってさ。その中に詠がいて嬉しかった」
「う、ううぅ……」
「で……。できれば詠の口からそれを直接聞きたいなってね」
「誰が言うか! 何であんたにそんなこといってあげなきゃならないのよ!」
そう簡単にはいかないか。苦笑しながら、歩をすすめる。
「でも、俺も詠の事気に入ってるってのは言っとくよ」
それから詠は黙りこんでしまい、城につくまで無言
「風邪ひかないようにしろよ」
「あんたがね」
濡れた俺の右半分を指さしてそう言われ、思わず苦笑してしまった。
あとがき
どうも黒天です。
今回は詠がメインの回でした。
同じツンデレ枠の桂花とどう差別化するかが難しいです。
あと、詠は原作よりも一刀の事を嫌っていないです。
以前コメントでもお話したとおり、最初に「可愛いから助ける」というようなスケベ発言?をとっていない事と
月や詠がいってるとおり、一刀自身が月達を助けに走り回ったりしてるのを見てるから。というのがあります。
なので、月と詠の好感度は原作より高め設定になっております。
次回からいよいよ曹操戦予定! がんばります
さて、今回も最後まで読んでいただいてありがとうございました。
また次回にお会いしましょう。
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今回はツンデレ軍師こと詠さんの出番です。
まだデレ成分は少なめだと思います