No.619582

ALO~聖魔の剣~ 第37剣 向き合う想い

本郷 刃さん

第37剣です。
急展開、クーハとユウキがなんと・・・!

どうぞ・・・。

2013-09-15 09:58:15 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:9295   閲覧ユーザー数:8628

 

 

 

 

 

 

第37剣 向き合う想い

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明日奈Side

 

昨日、母さんをALOに連れて行って、宮城の実家に似た光景を見せたあと、

母さんは一頻り涙を見せたあとでログアウトしてそのまま眠りについたみたい。

朝になって顔を合わせると目の端が少し紅くなっているのに気付いたけど、わたしは何も言わない。

 

「おはよう、母さん」

「ええ。おはよう、明日奈」

 

挨拶を交わしてテーブルに着き、朝食を取る。

少しの会話を挟みながらの朝食、それが終わった時、母さんが声を掛けてきた。

 

「明日奈、昨日はありがとう」

「う、ううん、そんな…大したことはしてないし」

「でも貴女、前からああしようと思っていたのでしょう? それに、嬉しかったもの…」

 

意外…というか、気付かれてたんだ。

前から、母さんをALOに連れて行ってあの景色を見せようと考えていたことを…。

まぁ、少し考えれば分かることかもしれないけど。

 

「明日奈…2つほど、いいかしら?」

「…はい」

 

母さんが真剣な表情を浮かべて問いかけてきたので、わたしもそれに応える。

 

「貴女が昨日言った“周りの人を笑顔にするような、疲れた人を支えてあげられるような生き方”は、凄く大変な道よ。

 貴女自身が強くならなくては駄目」

「解ってる……今はまだ、支えられてるだけかもしれないけど、強くなって……和人くんを支えられるようになります」

 

その言葉を聞いて、わたしはいま覚悟を問われているんだと理解した。

だから、わたしのありのままの思いを母さんに話した。

少しの間見つめ合う形になって……母さんは表情を緩めて笑みを浮かべた。

 

「なら、良いわ。それじゃあもう1つなのだけど、進路…いえ、やりたいことは見つかった?」

「……わたし、経済学を学ぼうと思ってるの」

「……………」

 

最近、ずっと考えていたのはこの進路のこともある。聞かれると思ってもいたから、いま纏まってる考えを伝える。

 

「和人くんは、間違いなくVR技術の道に進むと思う。

 だけど、わたしは彼みたいに詳しいわけじゃないし、その方面では彼の隣には立てないと思うの。

 でもね、和人くんがその道を進むのなら、きっと経済の方面の力が必要になってくるはずだから。

 だから、わたしはその方面で、彼を手助けしたい…」

「そう、分かったわ。しっかり頑張りなさい、応援してるから」

「はい♪」

 

わたしの思いを伝えると母さんは満足したみたい。

それから時間がきたようで、母さんは荷物を持つと仕事へと向かった。

わたしも制服に着替え、荷物を持って和人くんとの待ち合わせである駅へと向かう。

 

 

駅に着いたわたしを和人くんは笑顔で迎えてくれた。

 

「随分とご機嫌だな。良いことでもあったのか?」

「うん♪ 母さんにね、お祖父ちゃんとお祖母ちゃんの思いを伝えることができたの。

 ずっと伝えられなかった2人の思いを…」

「そうか……良い方向に進んだみたいだな」

 

彼もなんとなくだろうけど察してくれたみたい。

 

「それじゃ、行くとするか」

「は~い♪」

 

わたし達は手を繋いで、学校のある駅へと向かうために電車に乗った。

 

明日奈Side

 

 

 

ユウキSide

 

今日もアスナと幾つかの授業を一緒に受けた。

毎日行くとしても、全部の授業にボクが参加するとアスナの負担も増えるから、

これからは午前2コマ、午後1コマという感じで受けることにしました。

アスナは「遠慮しないでいいよ」と言ったけど、さすがにこればかりはボクも譲れなかった。

まぁでも、これにはもう1つ理由があったりする……それは、ALO中を冒険すること。

これはアスナ達も一緒ということも決めたけど、やっぱりスリーピング・ナイツのみんなでしたいというのもあったから。

だからみんなにボクは最後まで足掻いて、楽しみ続けることを伝えて、みんなで楽しもうということを伝えた。

シウネーも、ジュンとテッチも、タルケンとノリも、みんなが喜んで応じてくれた時は、

またまた凄く嬉しくて、ちょっぴり泣いちゃったのはアスナ達には秘密。

明後日にはアスナとキリト、クーハ達の仲間や友達と一緒にALOでバーベキューパーティをすることになってるから、

そっちも凄く楽しみなんだ♪

 

そして今は夜の9時、ボクはALOでクーハに呼ばれて、第24層にあるあの大きな巨木のある小島に向かっている。

 

ボクが辻デュエルをしていた小島の巨木、その根元に降り立つと、そこにはクーハが座って待っていた。

夜の星と月明かりが映えて、光り輝く星光と月光に当てられた真剣な表情のクーハに、思わずドキッとしたよ…///

 

「待たせちゃった、かな…///?」

「いや、大丈夫だ。わるいな、いきなり呼び出したりして…」

「ううん、そんなことないよ///」

 

2人きり、だからかな……この世界に心臓はないのに、ドキドキするのが止まらない…///

多分、顔も紅くなってると思うけど、夜闇の影で少しは見られてないと思いたいよ…///

 

「あの、用って、なに…///?」

「……ユウキ…。オレと、本気で決闘(デュエル)してほしいんだ」

「え……デュ、エル…?」

 

思わぬ言葉にオウム返しで言ってしまう。

そ、そうだよね、ドキドキするような展開にはならないよね…はぁ~……って、デュエル!?

 

「い、いきなりどうして?」

「…どうしても、ユウキと戦いたいんだ。ダメか?」

 

困惑しながら訊ねてみても、彼は真剣な表情のままでデュエルを望んでくる。

その真剣さを見ていれば、ボクにも解ることは少しだけどある。

クーハには譲れないものが、手にしたいものがあるんだ…!

 

「いいよ。本気で、戦ろうよ…」

「ありがとう…」

 

ならボクは彼に対して本気で応えるだけ!

クーハはウインドウを操作して、ボクの前にデュエル申し込み窓が現れ、『全損決着モード』が選択されている。

本当に本気みたいだね…そう思いながら、ボクはOKボタンを押し、デュエル窓が消滅、カウントダウンが始まる。

ボクは愛用しているかなり細めの黒い片手両刃直剣『ダルクブレイド』を構え、クーハも2本の短刀を構えている。

二刀流、キリトと似たそのスタイル、実力もかなり凄い、それなら……遠慮なく、行かせてもらうよ!

 

カウントが0になって、ボク達は刃を交えた。

 

ユウキSide Out

 

 

 

クーハSide

 

カウントが0になった瞬間にオレはユウキに接敵し、黒と紫の短刀『宵闇』と黒と紺の短刀『常闇』で斬り掛かった。

それを彼女は苦も無く剣で捌いた、さすがに一撃くらいは掠ればいいと思ったんだけどな…。

攻撃力ではユウキの方が上なのは間違いなく、スピードはほぼ互角、

的確さはオレの方が僅かに上……それでここからどうするのか。勿論、手数で攻める!

 

「おっらぁぁぁっ!」

「うっ、くぅっ!?」

 

左右の短刀による連撃を行う。左右交互の連撃や左連撃と右連撃、さらにフェイントも加えた攻撃を放つ。

オレの攻撃は掠るもののダメージは大きく与えられていないし、ユウキは急所に当たる攻撃は的確に捌いている。

彼女の攻撃は武器のことも考えると一撃喰らえば大ダメージになるのは間違いないので、

オレも2本の短刀で確実に捌いては防ぐ。だが何時までも防御することは出来ない、耐久値のこともあるからな…。

ここからは攻撃は回避でなんとするしかないか…!

 

「やぁっ、せぃっ!」

「なっ、おっ、くっ!?」

 

ここでユウキの動きが鋭くなり、オレは回避と防御に専念せざるを得なくなった。

彼女の攻撃が肩や脇、脚などを掠ってはオレにダメージを与えていく。

だがこっちとしても、負けるわけにはいかない、引くわけにはいかないんだ!

 

「はぁっ!」

「ふっ!」

 

オレは再び攻勢に出て、ユウキも負けるかというように反撃してくる。

 

―――楽しいな!

―――楽しいね!

 

何故か、お互いの考えが伝わったような気がした。それでも、オレ達は刃をぶつけ合う。

オレの二刀流による連撃、ユウキの剣による的確かつ強力な攻撃、刃が入り乱れ、剣撃が飛び交い、

様々なライトエフェクトが迸り、お互いの体の端々からは赤いライトエフェクトが発生していく。

 

ふと、瞳の端にHPバーが目につく……お互いに、既に2割を切っている。

だからオレは、オレ達は、ソードスキルを使用した。

 

クーハSide Out

 

 

 

No Side

 

クーハとユウキは1度だけ距離を置き、しかし互いにすぐさまその距離を縮め、ソードスキルを放った。

 

ユウキは11連撃OSS《マザーズ・ロザリオ》を放つ。

クーハは短剣の5連撃連突ソードスキル《インフィニット》を放った、右手で…。

5撃目が放たれた直後、彼は左手で再びソードスキルを放つ。

短剣の4連撃連突ソードスキル《ファッド・エッジ》、それが放たれたことにユウキは驚くが、

彼女の攻撃は勿論止まらず、そしてクーハの攻撃もそれで終わりではなかった。

4撃目の終了直後、最後に右手で短剣の2連撃ソードスキル《ラピッド・パイト》を放ったのだ。

彼が行使した技術は以前キリトが行ったものと同じ、システム外スキル《剣技連携(スキルコネクト)》である。

 

クーハはALOをプレイしている仲間達の中では補助専門であるリンクを除けば、

ステータスの値はシリカよりも低い可能性がある。

SAOを経験し、ALOへとコンバートしてきた仲間達と違い、彼はこのゲームが初めてのVRMMOなのだ。

経験やステータスの差を補う為、彼はリアルでの戦闘技術と持ち前の才を生かし、《剣技連携》を身に着けたのだ。

 

そして、ユウキの放った《マザーズ・ロザリオ》とクーハの放った3連続のソードスキルがぶつかり合う。

1連撃分うえであるクーハの方が有利かと思われたが、

ユウキの放ったOSSの11連撃目はクーハの放った《ラピッド・パイト》とぶつかり、

その宵闇を弾くことに成功した……が、クーハはそれに対応した。

宵闇が弾かれた直後…いや、弾かれる直前に、彼は左手に持つ常闇を右手に納まるように投げ、

それは見事に右手の中へと納まった。

そのまま《ラピッド・パイト》は放たれ、《マザーズ・ロザリオ》の11連撃目を放ち終えて技後硬直に陥ったユウキの剣、

ダルクブレイドを弾き飛ばした。

 

HPは互いの5%程度…けれど、ユウキの手に武器は無く、クーハの右手には依然として常闇が残され、

ユウキの胸元に突きつけられている。

この場には観客はいない……けれど、勝敗は目に見えて明らかで、そして見事な戦いだったと言えるだろう…。

 

No Side Out

 

 

 

クーハSide

 

激戦で、長い戦いだった……いや、実際はそこまで長くなかったと思う。

ただ、戦ってたオレからしたら、やっぱり長い戦いだったと思う。それに、正直勝てるとは思ってなかった。

女の子相手とはいえ、彼女は3年間もの間VRMMOで戦ってきた強者。

リアルで武術を会得しているとはいえ、実戦など経験したこともないオレ、

ALOで疑似的な実戦を始めて経験したオレでは、負けると思っていた。

それでも勝てたのは、どうしても勝ちたいと思って、どうしても…。

 

「守りたいって、思ったから…」

「え…?」

 

すっきりとしていた表情のユウキはオレの言葉で首を傾げた。

彼女もオレも、どちらが勝ったのかくらいは分かるし、それを言葉にする必要が無いのも理解してる。

だから何も言わなかったけど、今から言うことは別だ。

 

「守りたいって、思ったんだ…。

 やりたいことに一生懸命で、どんなことにも逃げないで立ち向かって、病気にも前向きでいる。

 だけど、だからこそ、守りたいって思えたんだよ…。立ち向かい過ぎて、逃げなさ過ぎて、

 ボロボロなのに一生懸命でいることを止めないから……少しでも支えて、守ってやりたいって…」

「クー、ハ…」

 

オレの言葉を聞いて、ユウキはただオレの名前を短く呟いた。

 

「だから勝ちたかったんだ……男なら、守るなら、やっぱり強く在りたい。

 女の子を、好きになった女の子を、守れるくらいには…」

「っ///!? ク、クーハ…す、好きって、ボ、ボボ、ボクの、こと//////?」

「あぁ……好きだ、木綿季(ぎゅっ)」

「ふぁっ…//////」

 

伝えた。オレの想いを、気持ちを……好きになった、木綿季(ユウキ)に。

そのまま彼女を抱き締め、胸と腕の中に収める。

けれど、驚きを示したあとの彼女は何も言わない……勿論、理由は誰にだってわかるさ。

 

「うれ、しいよ…クーハの、気持ちは…。でも、でもクーハは知ってるでしょ?

 ボクは、ボクはもう……「解ってるよ…」っ、ならっ!」

「それでもっ!」

「っ…!?(びくっ)」

「好きになったんだ、木綿季(ユウキ)のことが、どうしようもないくらい! 幸せにしてやりたいんだよ、最後まで…!」

 

彼女は言い返さない…眼の端に涙を溜め、頬を紅く染め、オレを見つめながら、言葉の続きを待ってくれている。

 

「それに、お前言っただろ? 結婚届なら頑張って書けるって…それに、こうも言った。

 『ボクなんかもらってくれる人、いないと思う』って…だから、オレがもらってやる!」

「く、ぅ…は……//////」

「結婚は女の子の夢だもんな……だから、オレが結婚してやる!」

「っ…こ、のは……九葉//////!」

 

オレが言い終えると彼女は強く抱き締め返してくれた。

 

「ホントに、いいの///? ボクで、ボクなんかで…///?」

「いいに決まってるし、“なんか”でなんて言うなよ…」

「後悔、しない…///?」

「後悔しないとは、言いきれない。でもさ、やらないで後悔するよりも、やって後悔した方がいいし。

 それに、少しでも木綿季(ユウキ)と幸せになりたいから…」

「っ…嬉しい、よ……ボクも、九葉が大好きっ//////!」

 

木綿季(ユウキ)もオレの想いに応えて、自分自身の想いを伝えてくれた。

確かに後悔するかもしれない、必ず訪れる早い別れの時は辛いかもしれない。

それでも、彼女が生きている限りは彼女を出来るだけ幸せにしてあげたい、色んなことを叶えてあげたい。

そう思っていると、上気させた頬を見せながら上目遣いにオレを見てきた。

彼女がいま何を望んでいて、どうしたいのかは分かる……だから、オレはそれに応える。

 

「「んっ…//////」」

 

お互いに恥ずかしがりながらも、オレ達はキスをした。

 

クーハSide Out

 

 

 

To be continued……

 

 

 

 

 

 

 

 

後書きです。

 

本当に急展開、2人にくっついてもらいました。

 

元々はもう少しあとに考えていたんですが2人に思い出を作ってもらいたかったので、早めにしました。

 

次回はクーハとユウキがそれぞれの仲間に報告する話になりますが、もう1つおまけである女性も登場します。

 

それでは次回で・・・。

 

 

 

 

 


 
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