No.618165

IS−インフィニット・ストラトス−黒獅子と駆ける者−

トラックに轢かれそうになった女の子を助けて俺はお陀仏になった・・・。・・・って!それが本来の死じゃなくて、神様のミスで!?呆れている俺に、その神様がお詫びとして他の世界に転生させてくれると言うことらしい・・・。そして俺は『インフィニットストラトス』の世界に転生し、黒獅子と呼ばれるISと共にその世界で戦うぜ!

2013-09-10 19:35:09 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:578   閲覧ユーザー数:561

 

 

 

episode210 作戦開始前

 

 

 

 次の日の朝、全ての準備を終えて、隼人達はネェル・アーガマに乗り込んで太平洋へと向かう。

 ヴィヴィオは戦いに巻き込ませるわけには行かない為、IS学園に残した。

 

 

 

「・・・・」

 

 ブリッジに隼人や千冬、アーロン、束などが集まり、昨日の晩で立てた作戦を再度確認する。

 

「ニューロの構造はさほど複雑ではなく、シンプルに通路が配置され、駆動炉と、恐らくコントロールルームと思われる最深部がある・・・」

 

「だが、船体には多数の砲門があり、特に巨大砲塔が数機ほどある」

 

「近付こうとしても、激しい対空砲火で近づく事すら困難か」

 

 アーロンは顎に手を当てる。

 

「だが、船体にはネェル・アーガマほどの船体が入るほどのドッグがあるみたいだ。そこに船を止める事ができれば、対空砲火の脅威には晒されない」

 

「そうは言うが、近付くまでの道のりが厳しい。周りには覆い尽くすほどの敵機がいるのだぞ」

 

 モニターには人工衛星からニューロを見たものが映し出されているが、周りを黒くなるほどに敵機が覆い尽くしている。

 

「正確には計算出来ないけど、ざっと百万ぐらいは居そうだね」

 

「明らかにそれ以上だろ」

 

「確かにな」

 

「ざっと100万対1って所でしょうね」

 

 この無理ゲー感・・・

 

 

「それで、隼人、束。強化外装ユニットの調整は完了したか?」

 

「さっき各専用機持ちのGモードと同調作業を行った。いつでも出撃可能だ」

 

「それと、今回だけはっくんが容赦なく造った最終兵器も準備オッケー」

 

「最終兵器って・・・隼人。お前何を造ったんだ」

 

 呆れ顔で隼人に聞いてくる。

 

「EXAメモリーのデータを用いて造った戦略兵器ですよ」

 

「・・・まさか核を使う気か!?」

 

「さすがにそんな物までは使いませんよ。まぁ火力的にはそれぐらいはありますが」

 

「おい・・・」

 

「あくまでニューロに接近するまでに使う強化改装ユニットと、駆動炉破壊の為の爆破ユニットを用意しています」

 

「爆弾か。それで、駆動炉の攻略は結局誰が行くんだ?」

 

「志願したのは・・・・・・ティアとハルファス、フェニックスです」

 

「・・・・」

 

「案内役がいるので、心配ないと思いますが・・・」

 

 と、隼人の表情には少し不安の色が浮かぶ。

 

「・・・・」

 

 

 

「フェイ。後どのくらいで太平洋の赤道付近の海域に到着する?」

 

「4時間です。遅れても十分ほどです」

 

「4時間か・・・」

 

「それまでは待機という事か」

 

 隼人は腕を組む。

 

 

「・・・?」

 

 と、フィアが何かに気付く。

 

「マスター。こちらに接近する編隊あり!」

 

「なに?」

 

「バインドか!?」

 

「いえ・・・この反応・・・IS?」

 

「なに?」

 

「それに識別信号は・・・・・・ドイツ軍のIS特殊部隊『シュヴァレツェ・ハーゼ』です」

 

「何だと?」

 

「と、いう事は・・・・・・クラリッサたちか」

 

「映像出します」

 

 フェイがモニターを映すと、こちらに接近してくる機影が五つ。

 

「なんだ?あの機体は?」

 

 千冬はある事に気付く。

 

 編隊を組んでいるその機体は以前のシュヴァレツェ・ハーゼの機体ではなく、全く別の機体に変わっていた。

 

 濃く薄い灰色のカラーリングの全身装甲で、ツインアイのようで、その下に小さいサブツインアイがあり、バズーカを二本担ぐ機体が居れば、ロングバレルライフルやショートバレルライフルを持つ者がおり、中央の機体は両肩にシールドと増加ブースターを持ち、右手には大型のブレードを持ち、左手にショートバレルライフルを持っていた。

 

「さすがドイツだな。基礎データがあればこんなに早く開発できるとは」

 

「・・・神風。お前は何をしたんだ?」

 

「ドイツ本土を奪還した後、ドイツ軍にとある試作量産機の『ジンクスⅣ』の基礎データを送っていたのですよ」

 

「何時の間にそんなデータを」

 

「後々バインドとの戦いは激しさを増すのは想定していました。なので、今の所技術力が高いであろうドイツに俺と束さんで共同で作り上げた試作機のデータを提供しました」

 

「だが、ドイツはISの開発には少し遅れがあったはずだが?」

 

「裏でバインドの存在を秘匿して来たから、その分他国より高い技術を得られたはずです。ただ、ISに転用できない技術ばかりだった、ですが」

 

「・・・・」

 

「まぁ、束さんの助力があっての賜物ですがね」

 

 と、後ろで束が「ブイ!ブイ!」とVサインをする。

 

 

 

 

「向こうは着艦許可を求めていますが、どうしますか?」

 

「許可する。中央カタパルトに降りろと伝えろ」

 

「了解しました」

 

 フィアは隊長機に通信を入れる。

 

 

 

 

 その後シュヴァレツェ・ハーゼを受け入れて、クラリッサ達はドイツ軍の上層部の命令により、別行動中のラウラの指揮下に入り、攻略組に加わる、と言うものであった。

 

 

 

 

「・・・・」

 

 作戦開始が迫る中、一夏はネェル・アーガマの船体側部の通路の窓より景色を眺めていた。

 

「一夏」

 

 と、箒が一夏に近寄る。

 

「箒・・・」

 

 どこか哀愁が漂う表情で箒を見る。

 

「・・・・」

 

「・・・いよいよ、始まるんだな」

 

「そう、だな」

 

 箒も窓から外の景色を覗く。

 

「本当に、不思議なもんだよな」

 

「・・・・」

 

「何気ない事から始まって、いつの間にか俺達が世界を救うって事なんだからな」

 

「・・・あぁ」

 

 

 

 

「そうなると、やっぱり今までとは比べ物にならないほどの戦闘があるんだろうな」

 

「・・・そう、だろうな」

 

 箒は重々しくも返事をする。

 

 何が起こるか分からないのが戦場だ。最悪のケースも考えうるのだから・・・

 

 

「・・・だが、何があっても、俺は箒を守る」

 

「い、一夏!?」

 

 箒は頬を赤く染める。

 

「い、いきなり何を・・・?」

 

「悪いのか?」

 

「い、いや・・・悪いと言う訳じゃなくてだな・・・。

 そ、それは・・・仲間としてか?」

 

「それもあるな。・・・だけど、今は、大切な人として、守りたいんだ」

 

「・・・・」

 

 

「って言うのは、少しカッコ付け過ぎだった――――」

 

 と、一夏が言い終える前に、箒は一夏を抱き締める。

 

「ほ、箒?」

 

「・・・全然。全然カッコ付けすぎではないぞ」

 

「・・・・」

 

「私も・・・一夏を守りたい。大切な人として・・・」

 

「箒・・・」

 

 一夏もそっと箒の背中に手を回して優しく抱き締める。

 

 

 

 

 

 

「・・・・」

 

 格納庫で輝春はAGE-1フルグランサに更なる装備が施されていくのを見ていた。

 

「・・・輝春」

 

 と、格納庫にクラリッサが入ってきて、輝春に声を掛ける。

 

「クラリッサ・・・」

 

「ひ、久しぶりだな」

 

 緊張気味であったが、クラリッサは何とか平然を保って口を開く。

 

「あぁ。まさかドイツがお前たちを送ってくるとはな」

 

「軍の上層部は・・・お前達に全てを賭けているのだろうな」

 

「そりゃ、随分と期待されたもんだな」

 

「そうだな・・・」

 

 

「それより、お前達が乗ってきたあの機体って何だ?」

 

 輝春は格納庫のハンガーに固定されているジンクスⅣを見る。

 

「あれはジンクスⅣだ。神風がドイツ軍にデータを送ってドイツの方で製造した試作量産型だ」

 

「なるほど」

 

「しかし、試作量産機とは言えど、ドイツのシュヴァレツェアシリーズを凌駕する性能だ。よくあんな物を設計したものだな」

 

「ふーん」

 

「・・・まぁ、どういう構造だったかは分からんが、五体ほど製造したら設計データが消去され、更にコピーしたデータも消えていたんだ」

 

「あくまであれしか残す気が無かったんだろうな」

 

「・・・後は機体を調べて新しく作れと言う事か。抜け目が無いと言うか、ずる賢いと言うか・・・」

 

「はぁ」とため息を付く。

 

「まぁ、神風の話によれば、篠ノ之博士と共同で考案した機構を取り入れた次世代機の試作機とか言っていたような・・・」

 

「次世代機?」

 

「データを受け取った時にそんな呟きを聞いただけだ。本当かどうかは知らん」

 

「・・・・」

 

 

 

「しかし、お前は本当にこの機体で挑むのか?」

 

 クラリッサはAGE-1を見る。

 

「あぁ。こいつはうまく運用すれば戦える。何世代先でもな」

 

「だが、第一世代で、しかも極初期の機体だろ。改良を重ねては重ねているとは言っても、いずれ限界は来る」

 

「だろうな」

 

「・・・よほど愛着があるのだな」

 

「まぁな。お前だってそういうのはあるだろ?」

 

「私は・・・軍の方から試作機を与えられる事が多い。シュヴァレツェア・ツヴァイクの前に使っていたラファールのカスタム機も、愛着が着く前に変わってしまった」

 

「・・・・」

 

「羨ましいものだな。そんな感情を持てるのは」

 

「そうか?」

 

「あぁ」

 

 

「・・・・」

 

 と、クラリッサは少し緊張しながらも、輝春の横に近付く。

 

「・・・輝春。お前に・・・守りたいものは・・・あるのか?」

 

「・・・?」

 

 輝春は怪訝な表情を浮かべてクラリッサを見る。

 

「いや、ただの・・・独り言だ」

 

 クラリッサは頬を少し赤く染めて俯く。

 

 

「そりゃ、あるさ。千冬や一夏って言う家族が居る」

 

「・・・・」

 

「親父に言われたからな。大切な家族を守ってやれって」

 

「そ、そうか・・・。そ、それ以外に、守りたいものって・・・あるのか?」

 

「千冬や一夏以外で・・・そうだな」

 

「うーん」と唸りながら目を瞑る。

 

 

「・・・仲間、だな」

 

「・・・・」

 

「あいつがそうだったように、俺にも大切な仲間が出来た」

 

「・・・神風か」

 

「あぁ」

 

「そうか・・・」

 

 クラリッサは顔を赤くして悩むも、決意を固める。

 

 

「も、もし、お前に愛する者が・・・出来たとしたら・・・ま、守るのか?」

 

 ギクシャクした喋り方で言葉を綴る。

 

「ん?」

 

 理解できなかったのか、首を傾げる。

 

「た、例え話だ。ど、どうなんだ?」

 

「・・・そうだな」

 

 顎に手を当てて考える。

 

 

 

「そりゃ、守りたいさ。命を賭けたって」

 

「・・・・」

 

「って言うのは、ギザな台詞か?」

 

 

「・・・そうでも、ないさ」

 

「・・・・」

 

「そういうのも、悪くはない」

 

 と、クラリッサは静かに輝春に身を寄せる。

 

 

(・・・後悔する前に、告白が出来れば・・・・・・いいな)

 

 内心で呟きながら、輝春から伝わる温もり確認する。

 

 

 

 

 


 
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