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真・恋姫無双 黒天編“創始” 第4章 「決意」 前編

sulfaさん

どうもです。
いける時にいっとく。
それが今のスタイル
というわけで昨日に引き続き投稿します。
短いけどね

2013-09-04 20:59:56 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1089   閲覧ユーザー数:1006

真・恋姫無双 黒天編“創始”   外史を終結させるために少女は弓を引く

 

第4章 「決意」 前編

 

 

 

通話が終了した後、咲蘭はその場から動けなかった。

 

両親の言葉が信じられず、頭の中を整理するのに時間がかかったからだ。

 

少しとは言い難い時間“元”一刀の部屋の前に立ち尽くしたのちに、咲蘭は涙をふきつつそのまま自分の部屋へ向かって駆け始めた。。

 

途中、他の人達に変な眼で見られていたがそんなものは関係ない。

 

今日の朝着た時はしわ一つない綺麗な制服だったのに、今では袖の辺りに深い皺が入ってしまっていた。

 

顔に至っては綺麗なナチュラルメイクが涙で少し取れてしまっている。

 

咲蘭は昨日セッティング途中だったパソコンを急いでセットアップしていく。

 

それが終わるとPCを起動させ、自分のパソコンの最深部へと進んでいく。

 

そして、3つ目のパスワード20桁を入力した後、そのフォルダにあった咲蘭自作のあるプログラムを起動させた。

 

プログラム名“カズログ”

 

つまりカズ(一刀)の記録(ログ)を追うために咲蘭が制作したプログラムだ。

 

一刀の所有する携帯から一刀の現在地、携帯のバッテリー、アプリケーションの一覧をリアルタイムで閲覧することができる。

 

咲蘭が本気を出せば一刀の携帯が受信したメールを咲蘭の携帯へ送ること、一刀が送信したメールを咲蘭の携帯へと送ることも可能だ。

 

しかし、このメールシステムは流石に不味いと咲蘭自身も封印しており、未だに一度も起動させたことはない。

 

咲蘭がこのカズログを起動させるのは一刀の現在地を知るときに使用するだけだ。

 

なぜこのプログラムを作ったのか

 

『それは“若気の至り”としか言いようがないよね』とのちの咲蘭は語った。

 

咲蘭はそのプログラムを起動させ立ち上がるのと同時に一刀の携帯のGPS情報を呼びだした。

 

「・・・・・・・・・」

 

PC画面には情報取得中の文字と砂時計が表示され、咲蘭はじっとそれを眺めている。

 

そして数秒後、PC画面に表示されたのは今まで見たことがないエラー画面とポーンという軽快な警告音だった。

 

咲蘭は無言のまま、そのエラー表示を消し再び一刀の携帯から発せられるGPS情報を取得しようと試みる。

 

しかし、数秒後には先ほどと同じエラー画面が表示された。

 

咲蘭は再びその表示を消し、同じ作業を繰り返す。

 

そのたびにPCは同じエラー表示を咲蘭に見せつける。

 

一刀がど田舎の道を一人で歩いていた時にも間違いなく一刀の現在位置情報を送り出してくれたプログラムなのに…

 

それが機能してくれない。

 

「何でなの…」

 

そして何度目かのエラー画面を消そうとしたその時、パソコンが急にフリーズした。

 

咲蘭は何度も何度も画面右上の赤いバツをクリックする。

 

しかし、フリーズしてしまっているため、それさえ消せなくなってしまった。

 

「・・・・・・・・・っ!この役立たずっ!!」

 

キーボードを両手で持ち上げ、そのまま画面に投げつけようとする。

 

しかし、流石に不味いと投げる前のギリギリで何とかその衝動を押さえこむ。

 

机の上にゆっくりとキーボートを下ろすとそのまま椅子に座り込み天井を見上げた。

 

 

 

 

「一刀お兄ちゃん…」

 

ボソッと小さな声で一刀の名を呼ぶ。

 

「どこにいるの…連絡ちょうだいよ…」

 

咲蘭はキーボードの横におかれている自分の携帯から一刀のアドレス情報を引き出そうとした。

 

しかし、そこアドレス帳に一刀の記録が無くなっていた。

 

電話番号も、メールアドレスも、生年月日も、星座も・・・何もかも・・・

 

「ない・・・ないよ・・・」

 

何度も何度も確認するが見当たらない。

 

 

『あなたにおにいちゃんなんていたの?』

 

 

不意にそんな声が聞こえた。

 

聞こえたというか頭の中に響いた。

 

咲蘭は辺りを見回すももちろん誰もいない。

 

 

『いないよ…あなたにお兄ちゃんなんて…』

 

 

その声は静かにそして穏やかに咲蘭の頭の中で響く

 

そしてその言葉が何度も反響した。

 

『いないいないいないいないいないいないいないいないいないいない…』

 

「やめてよ・・・やめてっ!」

 

そう叫んだ瞬間急激な頭痛が咲蘭に襲いかかる。

 

「やめてっ!やめてよっ!!いやっ!!」

 

咲蘭の言葉なんて聞こえないかのようにその声は頭で反響を続ける。

 

そして咲蘭は遂に思考を辞めた。

 

すると不思議なことに頭痛は治まった。

 

『さぁ・・・続けて言って・・・』

 

「つ・・・づけ・・・て・・・」

 

咲蘭の頭はもう真っ白で何も考えていない

 

『私には――』

 

「わ・・・た・・・しに・・・は・・・」

 

その中で頭の中で反響する言葉をただただ反復する。

 

『お兄ちゃんなんて――』

 

「お・・・にい・・・ちゃん・・・な・・・んて・・・」

 

その方が・・・

 

楽だったから・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『居ない』   「居ない」

 

 

その瞬間、咲蘭の意識は暗転した。

 

 

 

 

 

 

「はッ!!!!」

 

咲蘭はPC前におかれた椅子から飛び上がり、その衝撃で椅子から転げ落ちてしまった。

 

「イタタタタ…、アレ?私こんなところで寝たっけ?」

 

頭を少し掻きむしりながら咲蘭は辺りを見渡した。

 

そして何気なく壁に掛けられている時計を見やる。

 

時刻は始業式が始める10分前

 

教室にはその15分前には入っておくよう連絡されていた。

 

「ヤバッ!!初日早々遅刻じゃんっ!!昨日パソコンの設定に夜更かししすぎたっ!!」

 

そのまま制服に着替えるためクローゼットへと転がり込む。

 

「あれ?私・・・制服着てんじゃん・・・」

 

姿見鏡に映る自分の姿に咲蘭は少し驚いた。

 

「このまま寝ちゃったんだっけ?」

 

疲れているのだろうかと思いながら、少し歪んでいた襟元をきっちりと正す。

 

「とりあえず急がないと…ちょっとしわがあるけど…しかたないっ!」

 

咲蘭は鏡に映る自分に向かってニッコリとほほ笑んだ後、机の下に無造作に置かれていたカバンを片手に自分の部屋を出ていった。

 

「今日から新生活~♪頑張るぞっ!お~~♪」

 

咲蘭は走りながらこれから始まるであろう新生活に胸を躍らせていた。

 

その時、目尻になぜか貯まっていた涙が静かに咲蘭の頬を伝って落ちていった。

 

 

 

 

「いや~~初日から失敗しちゃったな~~~」

 

始業式には結局間に合わず、学校開始早々遅刻をしてしまった咲蘭はこれから一年間お世話になる1年B組の桔梗先生に怒られてしまった。

 

クラスメイトからもくすくすと笑われてしまったが、逆にそれが注目を引き、咲蘭の明るいキャラクターもあって直ぐに友達ができた。

 

現在は新しくできた友達4人と女子寮へ帰っている途中だ。

 

「先生は怖そうだけど・・・クラスのみんなは優しいし・・・絶対楽しいクラスになるよねっ!」

 

「そうだねっ!それと、北郷さんはクラスの役割は何にするの?明日までには自分のやりたい役割を決めないとだけど・・・」

 

「私?そうだなぁ~~」

 

「咲蘭ちゃんは絶対学級委員が良いよっ!」

 

「そうかな~~えへへ~~」

 

咲蘭はまんざらでもない顔をしながらポリポリと頬をかく。

 

「でも…初日早々に遅刻してくる人を学級委員ってどうだろ?」

 

「それもそうだね!ふふっ」

 

「あ~~~っ!ひどいなぁ~~~もうっ!」

 

咲蘭は楽しい下校時間を新しい友人と過ごしていた。

 

今日は午前終わりだったため太陽はまだ空の高い位置にあった。

 

「これから親睦会と称してどっか行かない?」

 

「いいねぇ!行こっ!どこがいいかな?」

 

「私カラオケ行きた~い」

 

「北郷さんはどうする?」

 

「どうしようかな・・・」

 

咲蘭は行きたい気持ちの方が強かったが、部屋の片付いてなさを思い返して小さくため息をついた。

 

「ん~~ちょっとだけなら・・・行こっかっ!!」

 

「「「イェ~~イっ!!」」」

 

咲蘭を含めた女子五人はそのまま学園通りの途中にあったカラオケ店で親交を深めていった。

 

一通り順番が回った後、自然な流れで雑談タイムとなった。

 

「咲蘭ちゃんって九州出身だったよね?」

 

「そうだよ。結構田舎の方なんだけど、お爺ちゃんの家の方が面白いくらいにど田舎でね――」

 

自分の故郷の話や前の中学校の話などで女子五人は大いに盛り上がった。

 

 

 

 

 

 

「それじゃあさ~~、咲蘭って一人っ子なの?」

 

「え――」

 

急に頭の一部分がピリッとした。

 

変な感覚に襲われた。

 

瞬時に答えられなかった。

 

その理由が分からない。

 

急に頭が真っ白になった。

 

「北郷さん?」

 

「えっ・・・なっ何かな!?」

 

友達の言葉に驚いた咲蘭は急に振り向いてしまったため、机の上におかれていたドリンク手で払ってしまい、中身を盛大にぶちまけてしまった。

 

「うわっ!!ごめんねっ!!濡れてない!?」

 

「大丈夫だけど・・・大丈夫?何か急に目がうつろになった気がしたんだけど・・・」

 

「とりあえず、新しいドリンクと拭くものをもってきてもらおっ!!」

 

咲蘭の両端に座っていた女の子は咲蘭を心配そうに見つめ、対面に座っていた子が店員さんを呼んでくれた。

 

「ごめんね・・・ほんとにごめん・・・」

 

「気にしないでいいよ。でも、咲蘭っておっちょこちょいだよねっ!」

 

「そう・・・みたいだね・・・」

 

「自分で今気付いたの~」

 

周りの子が大きな笑い声で笑っていると、咲蘭もそれにつられて口角が上がってしまう。

 

「あっ!それでさっきの質問なんだけどね・・・」

 

咲蘭はさきほど答えられなかった質問をしてくれた子に向かってこう答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私は・・・一人っ子だよ・・・お兄ちゃん・・・なんて・・・いない」

 

 

END

 


 
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