――いろんな味で飾られてる、フルーツパフェみたい。
常に女の子に囲まれてる、人気者。
そんな彼の器に群がる一人に過ぎなかったけど。
――もっと、近づきたい。
そう思ったから、勇気を振り絞って今日の卒業式に呼び出しの手紙を送ったんだ。
「…好き」
「…俺も」
物語は、そんな甘いハッピーエンドから。
「あ! 今、何時!?」
しばらく寄り添って幸せにのめりこみそうになっていた私は、ハッと顔を上げた。
「な、なんだよ。何かあるのか?」
「うん、卒業式の二次会がこれからあるんだ! 一緒に行こう!!」
立ち上がって、彼を引っ張る。
「…お前さ、俺がそこに行ったらどうなるか、わかってるか?」
「え?」
すぐに浮かんだのは、卒業して離れ離れになることを寂しがった女の子たちに羽交い絞めに遭う彼の姿。
「わかってて言うんだな!? お前は俺の何だ?」
「…か…のじょ?」
「なんで疑問形なんだよ!!」
「だって、お互い了承がないと…」
「それはさっきわかったはずだろ!!」
彼がため息を吐く。
怒らせてしまったみたい。
「お前は、俺より友達を選ぶんだな」
「だって、二次会があると思ってちゃんと挨拶しなかったし、会う機会もなくなるし…だから一緒に行こうよ」
「俺は行かない。そもそも、女に囲まれる俺をどうとも思わないのか?」
「それは…」
思わないはずがない。
「でもみんなは、もう会えないんだよね? 私だったら、最後に一度くらい顔を見て別れたいと思うよ…」
これから彼を独占する権利を得た私。
それはものすごく贅沢なことだから。
「1日くらい我慢できるよ。だって3年間、ずっとこらえてたんだもん」
「…俺は、お前以外に近づいてこられても困る」
いつも誰にだって人当たりのいい彼。
私にはなぜかこの調子。
大好きなフルーツパフェ。
酸っぱいオレンジに、甘いジャム。
シャリシャリのビスケットに、とろけるアイスクリーム。
いろんな味や食感が楽しめるのは恋に似てる。
彼の言動に一喜一憂して、でもすごく充実してて。
そんな日常は、高校生活の中で出会った仲間なしには作れないものだったから。
「じゃあ、私だけ行く」
「あぁそうかよ。勝手に行けば」
「この手紙の返事も言わなきゃならないし」
「手紙? ちょっと待て、俺も行く!」
「なんだ、やっぱりそうでしょ? 早めに抜け出して、パフェ食べに行こうよ!」
「そんなことより手紙って誰からのだよ!」
明日からは思い切りあなたを独占させてね。
楽しい毎日はきっとこれからも続いていく――
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甘い恋のお話です。