No.613204

新・戦極†夢想 三国√・鬼善者を支える者達 第018話

皆様お久しぶりです。

私はただいま免許合宿の為に岡山に来ておりますww

投稿のスピード遅いのは、気にしないで。

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2013-08-27 22:55:53 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:1573   閲覧ユーザー数:1398

新・戦極†夢想 三国√・鬼善者を支える者達 第018話「獲物とは、魂とは」

隼人とのお茶会を終わらせた後、重昌はのそっと自分の陣に戻って来、彼待ちの客人と対面した。

 

重昌「皆さん、お待たせして申し訳なかった。お待たせしてまた無礼を重ねさせる事を、事前に一度お詫び申す」

 

彼が雪蓮(雪)の首襟元を『ムンズ』と掴むと、彼女は「へ?」と言い一刀達身内面々以外の周りは状況が判らず『?』になる。

 

重昌「皆さん、今暫しお待ちを………雪さん、ちょっと顔を貸してくれますか?」

 

重昌の凍りつく笑顔に周りはガタガタと震え、雪蓮(雪)に至っては、この世の絶望を感じた風に、顔面蒼白になる。

やがて彼女は引きずられていき、何処かで彼女の断末魔に近い絶叫があがったのは、また別の話。

重昌が何故これだけ怒っているかは、私の書いた作品を読んでいる方なら判っていると思うが、重昌達がこちら(三国志)の世界に来る為の(ゲート)を、勝手に雪が付いてきたからだ。

この(ゲート)漢女(おとめ)が設定したある一定の者しか入れない為、彼女?達も絶対に潜るなと話していた。

彼はそれについて怒っているのだ。

そして”軽い”説教をして客人の待つ陣幕へと戻ってきた。

 

重昌「いやぁホントにお待たせして申し訳ない。これで用件は全て終わり申した」

 

笑う重昌と、その肩に担がれ延びている雪を見て、皆乾いた声で返事をするしかなかった。

 

重昌「それで今回お三方はここに何の用で?」

 

ここにいる三人……いずれも正史においては魏・呉・蜀の基盤を作った者だが、今その話は置いておこう。

三人はここで面識のある一刀を中心に重昌を待ちながらとある話をしていた。

内容は『何故重昌に面会を求めるのか?』だ。

突然大陸に現れた不可思議な存在である彼。

噂で鬼の様な事をすると聞けば、その一方で今まで見たこともない善人者と言う声もある。

雪に関しては、新しい大陸に来て、自分の父親はどの様な方針で進んでいくのかという興味があったので、それを確かめるべくここに居るのだ。

皆それぞれの面会理由はあったが、一人一人全てを聞いていくのは酷なので、今回は共通に聞く内容を中心にした。

聞く内容は『鬼の天誅』について。

それぞれ何を得られたのか?どうやって行ったのか?何故そんなことをする必要があったのか?っと興味は尽きなかった。

その質問をすると、重昌は外の空気を吸いながら話したいと言い、三人とその連れ、そして後から続いて一刀が連れられる。

 

重昌「まずは何を得れたのかだね。勿論一番大きかったのは名声だ。何事も大きな事を起こす為には、それを起こす者の能力だけでは足りない。『この者なら出来る』という信頼感が必要になる。それが”名声”と言ってもおかしくはない。もし能力があっても、信頼度と認知度が無ければ能力は意味を成さないからね」

 

その問いに曹操は納得し、雪蓮(雪)は言いそうなことはわかっていたので終始無言で聞いており、劉備は少し怪訝そうな顔をする。

 

重昌「どうやって行ったかについては――」

 

この話は少し長いので割愛させていただくが、要は10話で行ったことを鮮明に説明した。

先程と順に、「へぇ」と呟きニヤリと顔をゆがめる者、その策を妙に納得する者、先より眉間を潜めて怪訝な顔をする者と綺麗に別れた。

 

重昌「最後の質問だが。何故このような事を行わなければいけないのか?答えは簡単。その方が、効率がいいからだ」

 

曹操「効率がいい?」

 

重昌「その通り。曹操殿、仮に君が賊の立場だとしよう。自分の仲間が、私が行ったことをされたのだ。君ならどう思う」

 

彼女は考えた。

策を考える時において『もし自分が敵の立場なら?』と思って考える事はよくあるが、”賊の立場”という場合はそれほどなかったので、彼女は迷った。

もし自分が、”自己利益”のことしかなく、”卑怯者”で、その癖自分が不利になると”臆病”な賊の立場として考えた。

他の地方にいる仲間が大勢全焼、それも率いていた人数より小規模の軍にそれをされたのなら、大きな危険を冒してまでその地方を襲いに行こうとは思わない。

逆に他の地方に逃げるか、仇を取る勇気などもっての外であるので、命乞いをして助けてもらう、その様な結末に達した。

そしてその情報は勿論他の地方にいる仲間にも伝わるので、皆その仲間が犠牲となった地方には入らないであろう。

『死にたくはない』のだから。

それを曹操は判ったように小さく「なるほど」と呟くと、重昌は右頬を動かし小さく微笑む。

劉備だけは何のことか判っておらず、曹操と雪(雪蓮)の顔を交互に見渡していた。

 

重昌「つまりはそういうことだ。力による力の主張。この大陸で新参者の私には、もっとも判りやすいやり方だろう?」

 

劉備「で、でも――」

 

その言葉に劉備が食いつく。

 

劉備「いくらなんでも焼き殺すなんて、人のすることじゃありません」

 

重昌「ふむ、人がすることではない……か……」

 

彼は一つため息を置き、そしてまた話し出す。

 

重昌「ならば劉元徳。君の祖先である"かも"しれない、『漢』の創造者『劉邦』。彼はどうやって天下を手に入れた?」

 

劉備「え?」

 

勿論答えは「対立していた楚の項羽を打ち破り天下を統一した」なのだが、こんな子供にも判る質問をされた彼の意図を、彼女は理解できなかった。

 

劉備「そ、それは楚の項羽を倒しt「そうだ!項羽を倒して劉邦は今で言う前漢を確立させた。ならどうやって倒した?」そ、それは……たしか、劉邦は項羽を四面楚歌に追い込んで、最終的に味方に見限られた項羽は、僅かに付き従った800余人を引き連れ漢軍に特攻し討ち死にしたはずじゃ?」

 

重昌「……それで?」

 

劉備「え?」

 

重昌「それだけか?」

 

彼の問いに何も答えない劉備に対し、流石の重昌も呆れた。

 

重昌「やれやれ、どうやら君たちは自分の言葉に酔う余り、真実を見れない・語れないらしいな」

 

関羽「なんだと!?」

 

その言葉に喰いついたのは、劉備ではなく後ろに控えていた関羽であった。

 

重昌「ならば関羽、劉邦はどうやって項羽を滅ぼしたか、今この場で虚構を織り交ぜることなく語ってみせるがいい」

 

その言葉に関羽は黙った。

劉邦と項羽は世に言う『四面楚歌』が起こる前の決戦時、一進一退の攻防を繰り広げていた。

そこで劉邦は項羽に和睦を提案し、天下を二分して収めようと提案。

項羽はその和睦に応じたのだが、だが劉邦は楚軍が撤退すると同時に追撃を開始。

金と恩賞で楚の将を懐柔し、項羽の逃げ道を無くし追い詰めた。

そして『四面楚歌』に追い詰め、敵の兵糧を絶ち、精神的にも追い詰められた敵軍に対し故郷の歌を流して戦意を削ぎ、離間させ兵士のほぼ大半は夜逃げで漢軍に降伏。

項羽は残った800余人の配下と共に漢軍に特攻。

華々しく散り、武人としての最後を飾った。

これを楚軍目線で漢軍を見ると、劉邦の行った事はなんとも卑怯であり、やりきれない気持ちである。

 

重昌「まぁ、君たちがどう思っているかは私には関係ないが、四面楚歌の一端の話をするなら、劉邦は楚軍を飢えに追い込んで天下を取った。君は私に『人にあらざる行為』と言ったが、それなら劉邦がやった行為はなんだ?人を焼死させることも、餓死させることも酷さは対して変わらないと思うが?」

 

劉備「………」

 

重昌「今度は黙りんこか?……それにしても――」

 

一歩彼が踏み出して劉備の右腕を取り、その手を見る。

 

重昌「全く筆まめも無い綺麗な手だな。これは本当に一領主を収める者の手か?」

 

彼に引っ張られた劉備の手を、関羽が引っ張り返しその拘束より劉備を解放し、重昌を一つ睨みつける。

 

重昌「その手を見れば、君の一日どれだけ筆を握っているか、一目瞭然だ。黙々と仕事をするわけでもなく、『しんどい』、『疲れた』と言いながら臣下の監督の下で領内の案件をしているのであろう。一時的に仕事が終わっても、手掛けた案件を見直すことは諸葛亮辺りに任せ、自分は直ぐに休憩に行く……違うか?」

 

彼も人間であるので、行動が手に取る様に判るわけではない。

ただ彼は行動を”指摘”しているのだ。

劉備が押し黙ってしまったことから見ても、どうやらその行いは当たっている様だ。

 

重昌「何より私が同じ統治者として許せないのは――」

 

そう言うと、彼は腕を組んで仁王立ちで関羽に抱き寄せられている劉備の前に立つ。

 

重昌「何故剣の傷跡や、剣術の稽古によるマメが無い?」

 

関羽「と、桃香様は我らを導く光だ!!そんな事をせずとも、我らが桃香様w「お守りする~などと言うつもりだろうが、全く甘いな」何!?」

 

重昌「故花。この者達が我が陣を訪れた時にそれぞれ預かった武器を持ってこい」

 

故花はその言葉を聞き、曹操や劉備らのそれぞれの武器を持ってき――

 

重昌「曹操殿、この大鎌は貴女の武器ですよね?少しお借りしても」

 

曹操「えぇ、構わないわ」

 

重昌「雪、南海覇王を借りるぞ」

 

雪(雪蓮)にも承諾を得てから、その武器を一刀に持たせ、自身は曹操より借りた死神鎌『絶』を握る。

二人の周りから皆を離れさせ、彼らは互いに五メートル程離れ、そこから両者突っ込み剣戟を響かせる。

一刀は南海覇王で勇猛果敢に攻めて行き、重昌はその攻撃を寸でのところで受け流す。

皆その二人の剣戟に見とれるが、曹操、関羽、夏候淵は違う所に目がいっていた。

重昌はギリギリで一刀の攻撃を受け流しているように見えるが、ただ重昌はその場より一歩も動いていないことに気付いた。

やがて15合程剣を交じり終えると、今度は関羽に劉備の愛刀である靖王伝家を渡す。

 

重昌「今度は君が私にそれでかかって来い」

 

そう言われると何故自分が指定されたのか関羽には判らなかった。

ただ彼女は前々から影村のことは嫌悪し、自らの主に無礼な働きを犯した男を今すぐにでも叩きのめしてやりたい気持ちもあったので、彼の提案は願ったり叶ったりであった。

しかし渡されたのは靖王伝家であり、自分の主の剣。

無様な闘いをすれば、自らの主を辱めることでもある。

関羽は少し劉備を見ると、彼女は何かを判ったように関羽に頷いて見せた。

彼女は久びさに握る"剣"の感触を確かめ、数回剣を振るうと重昌にかかっていった。

だがいくら攻撃せども、まともな剣戟が響くこともなく、関羽が剣を振るい切る寸前の所で重昌はその攻撃を弾いていた。

それを歯痒く感じた彼女は、より力を入れて剣を振るうが、それも何事も無かった様に弾かれた。

 

重昌「ん?少し剣筋が重くなったな。だがまだまだ軽いな」

 

関羽「なんだと!?」

 

すると重昌と関羽は鍔迫(つばぜ)り合いの様な状態となり、両者顔が触れる少し前まで近づく。

 

重昌「君は武器をなんだと思って揮う?ただ相手の命を終わらせる道具と思ってはいないか?それは違う。武器とは己が魂であり、己が分身。腑抜けた魂を揮っている君の刃など、軽すぎて話しにならん」

 

すると関羽は重昌から離れて反論しようとする。

この場合関羽の揮う腑抜けた魂とは、劉備のことを指すからでもある。

 

関羽「何を――」

 

重昌「ならば、その剣の刃を見ているがいい」

 

彼女が靖王伝家を見ると所々に刃毀(はこぼ)れが起き、対して重昌の握る絶は先ほど南海覇王と打ち合わせたのにもかかわらず、刃毀れも無く綺麗なままである。

絶が余りにも凄過ぎる業物という可能性も考慮に入れた上で咄嗟に一刀の持つ南海覇王にも目を向けるが、その南海覇王も刃毀れ無く綺麗なままである。

 

重昌「その剣、ここ数十年は確実に血を吸っていないと見える。さらに言うと手入れも怠っている様だな。そんな飾り物に戦場で鍛えられた魂に着いて来れるはずもなかろう……つまりはこういう事だ」

 

その時初めて重昌は踏み込んだ。

彼が振り下ろした刃を関羽は咄嗟に防衛するが、刃が混じり合った時、靖王伝家は鈍い音を出して真ん中より真っ二つに折れてしまった。

地面に落ちた刃を見て劉備はへたり込み、関羽は何が起きたか判らず固まってしまった。

地面に座り込んでしまった劉備に近づき彼は言う。

「こんな簡単に折れてしまう魂ならば、田舎に帰り作物を実らせる方が、余程天下の役に立つ」と。

それだけを言い残して、更に関羽が握りしめていた折られた靖王伝家と落ちた刃を「劉勝の魂は預かる」と言い回収した。

 

重昌「おい小娘、これから私はお前を『劉』の姓を持つ者と認めない。たかが田舎から出てきた小娘には過ぎた名だ」

 

彼は曹操に絶を返すとそのまま自分の陣幕へと帰って行った。

彼女も用を終えると、既に孫策達が居なくなっていることに気付く。

彼女達も曹操と同様に「見るまでもない」と判断し既に帰ったのだろう。

それに釣られ曹操も夏候淵を連れて西涼の陣を後にした。

今だ座り込んでいる劉備に一刀が近づく。

彼女の目に少し光が戻ったような感じになった。

もしかすると一刀が気を遣ってくれるかもと思ったのだろうが、実際は違った。

一刀は言う「二度と俺の真名を呼ぶな」と。

彼は以前に彼女と約束した。

「好手敵となりうったとき、その時こそ自分も真名の約束を交わし、君の真名を呼ぶ」と。

今この場で一刀に拒絶されたと言う事は、もう一刀にとって劉備は眼中に無いということだ。

立ち去り離れていく彼の背中に彼の名を呼ぼうとした時、冷艶鋸(れいえんきょ)を構えた椿(愛紗)が一言「次は無い」と警告する。

そして皆去っていくと、その場に残された劉備、関羽、諸葛亮に何処か冷たく流れる風が響く。

その風が流れている中、関羽の目から二筋程地面に涙が流れ落ちた。

劉備、諸葛亮には背を向けているので判らなかったので、それに気付き慌てて涙を拭う。

 

関羽【まただ。華雄との戦いを見た時の奴。そして奴の放った一合に深い哀しみを何処となく感じた。桃香様の剣を折られた事を怒りではなく、仕方のないことだと思ってしまう感覚はなんだ!?おかしい。こんなのは私ではない!!】

 

暫く考えた末、以前陶謙が言っていた言葉を思い出し、間を置いて関羽は口を開いた。

 

関羽「……朱里よ。私に軍略を教えてくれないか?」


 
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