No.612464

超次元ゲイムネプテューヌ 未知なる魔神 リーンボックス編

さん

その26

2013-08-25 21:06:37 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:764   閲覧ユーザー数:697

頬から流れた汗が地面に落ちた。

今まで戦った来たモンスター等の非じゃないほどのプレッシャー。

いままで、様々なモンスターと戦ってきたが、ゲイムギョウ界で人智を超えた存在と対峙するのは初めてかもしれない。

前回は、彼女自身が動揺を隠しきれず本来の力を出す気すらなかった。

しかし、今回は迷いない瞳が俺だけを映している。足元に倒れているコンベルサシオンさんに見向きもしない。

 

「……帰るってどこにだ?生憎、俺の家は全焼でね。帰る場所なんてないんだよ」

 

「ありますわ。私の部屋で寝泊まりしたこともあるのに、紅夜の居場所は私の居場所でもあるのですよ?」

 

寝泊り……ねぇ?

俺がお前の部屋に泊まると言えば、徹夜でイベントボスが出現するのを交代しながら監視するぐらいだけど!?俺が主にお前の部屋に行くのって大半自慢話やゲーム関係のみだし!

心の中で愚痴を訴えながら、ダンジョンので出口を見る。

少し前に入ったネプテューヌの姿はまだない。ただ、これ以上ベールと対峙していると不安がって来るかもしれない。

 

 

「なぜ、あなたがあれほどのことをしたのかは存じません。しかし、私はあなたを許します」

 

「…………」

 

「私はあなたの理解者です。外野が何を言っても関係ありませんわーーー私にはあなたが必要ですから」

 

「…………」

 

「貴方がなぜ狂気を思わせる行動に移ったのか、一体何のために罪人を逃す様なことをしたのか、そこの所は私の部屋でじっくり紅茶を入れながらお話しましょう?」

 

ベールの言葉には魔力があった。

思わず縋りたくなるほどの甘い魅了と膝を付き信仰してしまうほどの雄大な器。

この大陸の女神であるグリーンハートは、どうしようもない俺に手を伸ばした許すとまで言ってくれた。

……これほど、嬉しいと思ったことはあるだろうか。もし、今の状況でなければ俺は間違いなくベールに縋っていた。そう今で・・なければ

 

「……ごめん」

 

「えっ?」

 

何故と言わんばかりにベールは頭を傾げた。

 

 

「俺の仲間は、無罪なのに教会の陰謀に殺されかけたんたんだ。本人はそのことに関してはさほど気にしていない。だけど俺は、今まで信じてきた教会の行動に不信感を抱かずにいられない。……ベール、お前の誘いはとても嬉しいさ……けど」

 

脳裏に浮かんだのは、ネプテューヌの泣き顔だった。

デペアが俺に降りかかった不幸は、全てネプテューヌが原因だと言った時、彼女は泣いた。

力強く拳を握って、瞳から大粒の涙を流して、いつも笑っている表情を嘘だと思うほど歪めた。

それを俺は抱きしめた。逃がさないように抱き締めて、共に明日を迎えれるように誓ったんだ。

 

「今は、お前と一緒に行けない。お前のことも大切に想っているしちゃんと話したいと思っているけど、俺はあいつ等を助けたいんだ」

 

「…………」

 

ベールは、見定めるように半眼を造った。その瞳はあまりに昏かった。

 

 

 

「こぅちゃーん!!もういいよ………って、あれ?誰?」

 

 

 

ダンジョンから甲高い声を上げて、ネプテューヌ達が出てきた。

ネプテューヌ達はベールを見て、目を白黒させた。

 

 

「………ネプテューヌ……あいちゃんも……?」

 

俺を見ていた視線からベールは視線を変えてネプテューヌ達を見つめる。

 

 

「……ど、どなたでしょうか?なんだかラステイションで会った黒い襲撃者と凄く似ているような……」

 

「貴方が……貴方が…?紅夜の仲間…だったの?」

 

「うん、そうだよ。こぅちゃんは私たちの立派なパーティーだよ!!」

 

ネプテューヌは、こちらに向かって元気あふれる表情でグットサインを向けてきた。ため息をしてそれに答える。

 

「こぅちゃん?この人は?」

 

「俺の……まぁ、お前達と組む前によく組んでいた俺の仲間だよ」

 

「『元』パーティー?紅夜って、私達以外にパーティー組んだことあったの!?」

 

「おい……なんだ、その意外そうな口調は」

 

ベールがモンスター討伐に動くときはほとんど高レベルで、俺を呼ぶ時は滅茶苦茶強いモンスターかとんでもない数のモンスターの数を相手にするんだぞ?ぶっちゃけ、お前らとベールを比べた時にパーティー選択なら俺は間違いなくベールを選ぶほど、俺とベールのチーム戦は中々のものなんだぞ?

 

 

 

 

 

「ーーーーは、ハハハハッハ」

 

 

 

ゾクッ、ベールが空を仰いで渇いた笑い声を発した。

同時に背筋が凍るような感覚が襲い掛かった。

 

『……キャプテンも、君も、あーいうタイプの女性と本当に縁があるのね……』

 

腕に装着される形で伸びた巨大なランスを構えて、体制を低くして、一気にベールのプロセッサユニットが光を噴いた。

その直前の手前に既に俺は、地面を蹴っていた。

場所的に、俺の方がネプテューヌに近かったが、ぎりぎりのところで氷魔銃『アフーム=ザー』で槍の先端を逸らして、明らかに急所を狙った一撃は俺の頬を掠った。

 

「……どうして、邪魔をするのですか。紅夜……!」

 

「こっちこそ、聞きたい!お前は一体何をしているんだ!!」

 

さっきの一撃は確実に殺気が混ざっていた。

もし、俺が入り込まなかったら今頃ネプテューヌの胸部に風穴が空いていたぞ!

 

 

「……私たちは戦争している相手同士ですわよ?ーーーそこに理由が必要なのですか!?」

 

闇を切り裂く様な一撃が再度放たれる。

空いている手に黒曜日を顕現させ、槍の先端が届く前に弾く。

ベールは忌々しいそうに舌を鳴らせて、距離を取った。俺は左手に氷魔銃『アフーム=ザー』、右手に黒曜日を構えて、ベールと対峙する。

 

「行け、ネプテューヌ!!」

 

「で、でも……!」

 

「……あいつは、お前にとって大切な恩人だ。お前がここに居たら、あいつはまた襲い掛かってくる……俺はあいつと一対一で話したい。……頼む」

 

守護女神ハード戦争。古から続いている女神同士の争い。

俺の背に居るのは、プラネテューヌの女神であるネプテューヌだ。

ベールがネプテューヌを襲う事にはある意味、女神として理にかたなっていると言ってもいいけど……違う。あの殺気は敵に向ける者じゃない。あれはーーー業火のような憎しみの殺気だ。

 

「---あとで絶対に会えるよね!」

 

「……勿論だ。あとで会おう」

 

今のベールは、何かが可笑しい。それを放置することなんてできない。

女神として敵がいる所為か、今のベールは修羅の様な表情だ。この場にネプテューヌがいるかぎり、お互いに武器を納めてお話なんて出来るわけがない!

 

「紅夜」

 

「……なんだ?」

 

ネプテューヌ達の気配が遠くなっていく。

ベールは、終始殺気を放つが俺が壁となっているのか攻撃をしてこなかった。

 

「私は、あなたを助けたいのです」

 

「それが、ネプテューヌを襲う理由になるのか?」

 

「あなたは騙されているのですわ」

 

ベールの言葉に耳を疑った。

騙されている?誰にだよ。

 

「イヴォワール教院長から聞きました。ネプテューヌは貴族側と繋がっていると、毒を教会側から飲まされたと自作自演をして教会の信用を陥れ、この国の秩序を乱すために貴族側と結託してよくないことを企んでいると……なぜ、彼女の仲間になった経緯は存じませんが、紅夜ーーーあなたは利用されているのです」

 

………あのクソじじい!!!

なんてことをベールに教え込んだ!!。そこまでリーンボックスの繁栄の為にプラネテューヌを失脚させたいのか!

 

「女神としての関わりならお前の方が長いだろう……ネプテューヌが、そんなことをするように見えるか?」

 

「えぇ、見えるからーーー殺すのです。いい加減、女神の数を減らさないと私たちの戦争は終わりそうにありませんから」

 

耳を疑った。

俺の知っているベールは、もっと平和的だった。

確かに女神としてネプテューヌは敵かもしれないが、そこまで積極的に排除行動しようとするほどベールは荒々しい性格をしていのに、今のベールは恐い、別人のようだ。

 

「可愛そうに、あなたはきっと秘密を握られネプテューヌの操り人形となっているのですわ。安心して私に身を任せてください。大丈夫ですわ……あなたの失った日常を取り戻してみせますわ」

 

目の下に隈を作って、光りない瞳でベールは構える。

 

「お前、自分の言っていることが滅茶苦茶だってことに自覚あるか……!」

 

「……手荒いことをしたくありません。私の部屋でまたいつものように遊びましょう?ずっと……ずっとーーー……」

 

頬に大量の汗が流れる。

本能が逃げろと叫ぶ。

しかし、ここで逃げたら間違いなくベールはネプテューヌを追いかける。そして、俺がここで立ち塞がることももうすぐで限界だ。

ハッキリ言えば、今のベールはまともじゃない。狂っていると言ってもいい!

闇の色しか映さない瞳は、俺を飲み込むように映し出していた。

 

「あなたが私にとって大切ですから……だからーーーー」

 

「ッ、ベール。俺の話を聞け!!!」

 

「私と一緒に居てください」

 

緑色の閃光が地面を走った。

放たれた大砲の如く、地面を削りながら風を纏うベールはまさしく小さな竜巻だ。

それを避ける手がある。それを弾く手がある。だけど、俺がしたいことはそういうことじゃない!

黒曜日とアフーム=ザーを投げ捨てた。俺はベールと話をするためにここにいるんだ。武器は必要じゃない!

迫りくる竜巻に俺は手を伸ばして、盾のように立ち塞がる。

 

 

「ーーーーーーー」

 

迫りくる暴威に身を捧げる覚悟で目を瞑る。

しかし、いつまでたっても起きなかった。

薄らと目を空けると、槍の先端が眉間ギリギリのところで停止していた。

 

 

「ぐっ……あなたは!」

 

ベールの一撃は俺に届かなかった。

ギリギリのタイミングで槍を素手で掴み、無理やり停止させられたのだ。

忌々しそうにベールは、苦情の声で槍を握りしめた人物を睨みつける。

 

 

「やっと回復してやってきたら、また修羅場イベントですか。本当にいい身分だよね」

 

「……お前は!」

 

『やっぱり来たか……』

 

急ストップされたベールを纏っていた風は前方に投げ出され、黄金色の髪を激しく揺らした。

疲れた様にため息を吐いて、空いている手を顔を当てて、嘆く様に声を零す。

 

 

「今度は立場が逆……っぽいね。一度目は紅夜が仕掛けて八百長試合みたいな感じだから手を出さなかったけど、今回はあまりに酷いから来たよ」

 

「ッ!ーーーはっ!!」

 

捕まれている槍を振るい打撃を決めようとするが、未来予知でもしていたかのように手を離してしゃがみこみ回避をした。

ベールは、バックプロセッサからブーストを吹かして一度距離を取った。

 

「女神としてもうグリーンハート……君は、地に墜ちているよ。今の君じゃ紅夜の為に自分の大陸を見捨てかねない(・・・・・・・・・・・・・)

 

俺の胸を少し強く押して、俺がいた場所にそいつは足を進ませてベールに向かって振り向いた。

目に入ったのは、どんな色より目立った孤立した真っ白色のコートと黄金色の髪だった。

 

「あなたが紅夜を誑かしたのですか!?」

 

「それにYES、NO……どっち答えても疑心暗鬼な君じゃ信じそうにないからパスするよ」

 

「……あなたは危険な存在ですわ。一体何が望みなのですか!」

 

「望み……ねぇ。ゲイムギョウ界の安泰と平和かな~」

 

軽い口調で頭に手を回して、『夜天 空』は涼しげな顔でベールと対峙した。

 

 

 

 


 
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