マサラタウンを出て約3日後…平沢リトはウバメの森にいた
一日目にワカバタウンに行った時にオーキド博士から事情を聞いていたウツギ博士にジョウト地方の地図を貰い、各地のジムリーダー達に強力するように頼みに行った
二日目には順にフスベシティ、チョウジタウン、エンジュシティ、キキョウシティ、ヒワダタウンに行き、さっそく頼み込んだ
サトシの名前を出したらすぐに二つ返事を貰い、次の進路をコガネシティにしたのだが…
「腹…減ったな……」
現在彼はトライチェイサーを押しながら歩いている
彼のバイク…トライチェイサーはリトがいた世界の科学者によって少し改良が加わっている
ガソリンがどこの世界にもあるかわからないので死ぬ気の炎を使い、動かしているのだ
その分、彼の体力の減りが早いのだが
「食い物、食い物……っと」
リトはトライチェイサーのトランクからいかりまんじゅうを取り出す
――実は前にお土産として貰っていたのだ
さっそく食べようとするが少し遠くに木の実が生えているのが見えてそれを取りに行こうとする
その際、いかりまんじゅうをトライチェイサーの上に置いて
……だがリトは気付いていなかった、いかりまんじゅうに近づく小さな影に
「――それにしてもひさびさだな、このメンバーで会うのも」
「そうだな~」
「まぁ、サトシは相変わらずおこちゃまだけどね~」
「なにー!?」
「ピカピカピ…」
サトシは現在ニビシティの喫茶店にいる
だが一人ではない
かつての仲間であるハナダシティのジムリーダーのカスミにポケモンドクターを目指しているタケシもいる
ピカチュウはサトシとカスミのケンカに「やれやれだぜ…」と言いたそうな顔をしていたが…
なぜ彼らがいるのかというと…
数時間前、サトシはもう少しでニビシティにつく途中のトキワの森でスピアーに追いかけられているカスミに出会った
サトシはピカチュウと一緒に追い払った後、ちょうどタケシに会った…と言うわけだ
「それにしても、意外だな。今度はカントーで旅をするのか?てっきり別の地方に行くのかと…」
「…ああ、ちょっとね」
「なによ、何か話せない理由でもあるわけ?」
サトシはカスミの言葉に少し動揺する
――図星だ
サトシの中にはコアメダルと言う危険なものがある
そしてこの旅はそれをどうにかするためのもの
正直に話そう…どうせ打ち解ける時がくるのだから
実は、とサトシがいいかけた時…
「――うあああー!?」
「なんだ!?」
「今の…悲鳴?」
「ピカピ!」
「ごめん!行ってくる!」
「あ、ちょっと!」
悲鳴が聞こえ、ピカチュウは何かを感じ取りサトシに伝える
そしてサトシは悲鳴のした方向に向かった
――――――。
『どこだ!?我が主はどこに!?』
ニビシティの博物館前、カマキリのような姿をした怪人…カマキリヤミーが暴れていた
カマキリヤミーは周りのものを手当たり次第斬っている
そんなカマキリヤミーの目の前に…サトシとピカチュウが現れた
「もうやめろぉ!!」
『貴様…我が主を宿す器か!』
「ピカチュウ…離れてくれ」
サトシはピカチュウにメダルホルダーを渡しながらさげさせる
ポケットから水色の長方形の物体…オーズドライバーを取りだし腰に巻き付ける
さらには三色のメダルをセット……した時にカマキリヤミーは襲いかかってきた
『キシャァァァァ!!』
「おっと!」
だがサトシはそれを避け、右腰のオースキャナーを取り外した
そしてオーズドライバーを傾け、ポーズしながらメダルをスキャンした
“いいか、サトシ。それ使うときはこう言うんだ… って”
「――変身ッ!!」
『タカ!トラ!バッタ!…タ・ト・バ、タトバ、タットッバ!』
頭部、胸部、脚部にメダル状のエネルギーが現れその場でグルグルと回る
それが胸部に集まり、オーラングサークルが形成されサトシを包み込む
――その瞬間、サトシの姿はなかった
そこにいたのは大の大人と同じ体格の戦士
上から順に赤、黄色、緑のボディを持つ“仮面”を着けた戦士
“いいかサトシ…お前は誰だって聞かれたらこう言うんだぞ?”
『き、貴様…何者だ!!』
「オーズ!仮面ライダーオーズ!』
「サトシが変わった!?」
「なに……あれ…?」
少し離れた場所でタケシとカスミは見てしまった
サトシが変身する所を
タケシは驚き、カスミは呆然としていた
「せやぁああ!!!」
『シャアアア!!』
そしていつのまにか戦闘が開始されていた
カマキリヤミーの鎌に対応するためにオーズはトラクローを展開して立ち向かう
だが戦闘慣れしていないせいか、どこか動きがぎこちない
オーズはどんどん押されていき、ついにはタケシ達のいる場所まで来てしまう
「こっちにくるぞ!」
「!?タケシ、カスミ!?…ピカチュウ、ウナギとチーターを!!」
「ピッカァ!」
サトシはタケシとカスミを巻き込む訳にはいかないと思いながらピカチュウにメダルの交換を指示する
ピカチュウは持っていたメダルホルダーからウナギとチーターのメダルをアイアンテールで投げつけた
「はっ!」
『!?』
それと同時にオーズもバッタレッグの力で大きくジャンプする
カマキリヤミーは対処に遅れ、背後を取られる
そして先程投げたメダルをキャッチし、コンボチェンジした
『タカ!ウナギ!チーター!』
「そりゃっ!」
『ぐお!?』
「電撃だ!」
『おああああ!!』
タカウーターになったオーズはウナギムチでカマキリヤミーを捕まえ、電撃攻撃をする
そして怯んだ間にチーターレッグの力でニビシティの近くの森へ走って行った
――――。
「――そぉおおおりゃ!!」
『グボ!!』
岩場に到着したオーズは捕まえていたカマキリヤミーを岩におもいっきりぶつけた
そしてその間にタカウーターからタトバにコンボチェンジ…必殺技の体勢に入っていた
『タカ!トラ!バッタ!…タ・ト・バ、タトバ、タットッバ!』
『スキャニングチャージ!』
「はぁああああ…!」
スキャニングチャージしたオーズのバッタレッグが変形し、より跳びやすい形になる
そして大きくジャンプ……カマキリヤミーに目掛けて目の前に現れた三色のリングを通ってキックしていった
「セイヤァアアアアアア!!!」
『ぐあああああ!?』
【タトバキック】を受けたカマキリヤミーは爆発…体はセルメダルに還元された
オーズはサトシへと戻り、メダルを回収しようとする
「オーイ!」
「サトシィ~!」
「ピカピ~!」
「タケシ、カスミ!それにピカチュウも!」
サトシを追いかけてタケシ達も来たようだ
そして息を正さないままサトシに詰め寄っていた
「サトシ、さっきのは一体なんなんだ!?」
「それにさっきのグルグルはなに!?グルグル!」
「えっと~……拾ってからでいい?」
「けっこうあったな」
木の実を数個採ってきたリトはトライチェイサーの元へ戻ってくる
だが気付いてしまった…トライチェイサーに置いてあったはずのいかりまんじゅうがないことに
落としたかな、と思ったのも束の間…なにかがトライチェイサーの影にいる
隠れているつもりなのだろうが何かギザギザしたものがヒョコヒョコ動いている
リトは息を殺し、そっと近くとそこには…
「ピチュ…ピチュ…!」
「……………ピチュー?」
少し汚れていてどこか痩せているピチューがいかりまんじゅうを食べようとしていた
しかも片方の耳がギザギザしている
「Σピチュ!?」
「あ……」
どうやらさっきの声で気付いてしまったらしい
ピチューはいかりまんじゅうを置いて逃げようとするがその前にリトが抱き抱える
何かされる、と思い、ピチューは逃げようと必死に暴れた
――だがそんなピチューの目の前にいかりまんじゅうが現れた
「ピチュ…?」
「ほら、食えよ」
「ピチュピ…?」
「いいよ食って、腹減ってんだろ?」
「ピ…ピチュピッチュ!!」
「どういたしまして」
ピチューはリトが差し出したいかりまんじゅうを凄い勢いで食べている
さらにはさっき採ってきた木の実も食べている
「なあ、この辺に川とかない?」
「ピチュ!ピ…ピチュピ?」
「ん?お前を洗うからだよ。汚れててやだろ?」
リトはトライチェイサーにピチューを座らせさっそく川へ向かう
――お気付きだろうか…リトとピチューの会話がなにげに成立していることに
リトはリトがいた世界でもこうやって動物と話していたのだ
ただ、全てではなく何となくで話しているらしいが
と言うことでこの小説では時々ポケモンの翻訳があるのであしからず
場面戻って川
リトは上着を脱ぎ、腕を捲ってピチューを優しく汚れを落とす
ピチューはくすぐったそうにしていたが嫌というわけじゃなさそうだ
「よし、綺麗になったな」
「ピチュ!(ありがと!)」
「どういたしまして…じゃあ俺行くからな」
「ピ…?(え…?)」
リトは腕を捲ったままトライチェイサーを押して再びコガネシティへ向かう
ピチューは彼の背中を見て、少し立ち止まったがすぐに後を追いかける
「ピーピー、ピチュピ?(ねーねー、どこ行くの?)」
「ん?コガネシティだよ」
「ピチュピーチュ?(その次は?)」
「とりあえずジムリーダーのいるとこ…でもなんで聞くんだ?」
「ピチュピ!?(ついていってもいい!?)」
「コガネシティまで?」
「ピチュピチュピ!(ううん、あなたの行くところ全部!)」
「え…?」
リトは急に歩みを止める
その横ではピチューがどうしたんだろう、と言う目で見ている
「何で…?」
「ピチュ、ピチュピ!(あなたといると面白そうだし、それに優しいから!)」
「…………」
「ピチュピピ、ピチュピッチュ!(それにね、美味しいものたっくさん食べれそうだし!)」
「そっか…」
リトは悩んでいた
この子を一緒に連れていいのか……もし別れが辛かったらどうしよう…
そんな思いもあるがその反面、話し相手が欲しいと思ってしまった
「なあなあピチュー………俺の行く場所は危ないことばっかだし、上手いものあるかわからないし……もしかしたらさよならしなくちゃならないかもしれないけど…それでもいい?」
「ピチュ!(うん、いいよ!)」
「……よし!じゃあよろしくな!」
「ピチュ、ピチュピー!(うん、こちらこそだねマスター!)」
「?マスター?」
「ピチュ!(この間きたトレーナーのポケモンがね、トレーナーのことマスターって呼んでたの!)」
「そっか…それじゃあピチューのニックネームは…」
リトがニックネームについて考えていると、ピチューの耳が目に映る
「ギザミミ……ミミ…ってのはどう?」
「………」
リトがニックネームにミミはどうかと提案するがピチューはうつむいてしまう
「どうした?」
「ピチュ…ピチュピ…(ううん…私ね、このギザギザした耳が変だって理由で苛められてたんだ…)」
「…………」
「ピチュ…ピチュ(だからね…ちょっとやだなって)」
「そんなことないと思うぞ?」
「ピ…?(何で…?)」
「だってさ、その耳を変だって思うのはそいつの勝手さ。そいつの中での判断だからな。だけどそれだけが全部じゃない……この森を抜けた先の向こう側にはそういう考えじゃない奴もいる」
「……………」
「少なくとも、俺はその耳いいと思うぞ?個性的だし……なにより、お前だけが持っているお前だけの特徴だからな」
「ピ…ピチュピ…(あ…その…ありが、と)」
ピチュー…いや、ミミは顔を見せまいと後ろを向きながら例を言う
――そんなことはじめて言われちゃった…
「ピ、ピチュピ!(と、取り合えずこれからよろしくね!)」
「ああ、よろしくな」
ピチューはリトの頭の上に登りながらそう言う
――前じゃないのか…
そう思いながらもリトはトライチェイサーを走らせた
ここで生まれたのは種族を越えた友情か、それとも……
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熱中症の恐ろしさを思い知りました…