第四話、『邂逅・後編』
「(ムスーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー)」
あれからしばらく。
鞘名はひとしきり喚いた後、恐ろしく不機嫌な顔で冷緑茶を啜っていた。
そんな鞘名と同じ空間にいる俺達は非常に肩身が狭い。いや、肩身を入れる隙間さえもなくなってるか。
そんな、空気が凝ったような場所で、何の会話も無く涼んでいる俺達という絵面は、かなりシュールだ。別の意味で涼しい…
いや、寒いの間違いだ。鹿児島の夏だと言うのに、先程から暑さを全く感じない。
「………あの」
「何?」
「ふぇっ…」
先程から、朱里がなんとか会話を使用としても、鞘名がそれを拒否している。あんな鞘名は見たことが無い。
まあ、小さい頃から俺に異性が近づくと、異様なまでの付き纏いで近付いてきた異性を蹴散らしていたし、俺が異性と
会話することさえ、鞘名の目が届く場所では許されなかった。幼稚園の先生を蹴っ飛ばしたこともあったくらいだ。
…なんかあれだな。もうブラコンとかそんな可愛いもんじゃなくて既にヤンデレ?
「な、なあ、鞘名。そんなに剣呑にならなくてもいいだろ。もう俺達もそういう年頃になったんだからさ」
「……お兄ちゃん、なんであたしの知らない間に女なんて作ってんの。しかもこんな小さな子をさ」
やっぱりそう来るか。
「朱里はお前と同い年だぞ。今は聖フランチェスカ1学年に在籍している。天才ってことで有名なんだ」
「こんな小さな子が?…へぇ」
鞘名はまるで値踏みするかのように朱里を見る。なんだか華琳に似た雰囲気が出ているが、華琳は相手の能力に関しては
正当に評価するし、やや尊大ではあるものの公平だ。一方で、今の鞘名の目は相手を評価する意志などまるでない、
攻撃性が強く宿った目だ。
―どうやら、ハナから認めるつもりなどないらしい。
「どこで知り合ったの?まさか入学直後に学園でとかじゃないでしょ?」
「…それは言えない」
言ったところで信じないだろう。
三国志の時代を共に駆け抜けた戦友であり、主従関係だったり、敵対関係だったりしたなんて。
「ふん。まあいいけど。それで?」
「それで?っていうのはどういうことだ?」
「とぼけないでよ。元は赤の他人だったわけでしょ。どうしてその子が北郷姓を名乗ってるの?」
「それは…」
これは中々説明しづらい。だが、このネタなら親父たちに振れる。
「親父たちが事情を知ってるから、親父たちから聞いてくれ。俺からは説明しにくい」
「あたしはお兄ちゃんに訊いてるの。お父さんからの説明なんて納得しないんだからね」
何と他愛のない(俺の言葉が)。鎧袖一触とはこのことか。
なんてどこぞの少佐のセリフが出てくるくらい、あっさりと突き返された。
「お前、何を言っても納得するつもりが無いだろ」
「あたりまえじゃない。お兄ちゃんの隣にいていいのはあたしだけなんだから」
滅茶苦茶だ。
なら、この場は早く纏めてしまうに限る。
「…今までお前に話せなかったことは謝る。お前は留学していたし、その後は長期入院だった。
お前の邪魔をしたくなかったんだ。それだけはわかってくれ」
すると鞘名は少し表情を緩めて、言った。
「…まあ、お兄ちゃんの言葉は本心だと思うよ。そんな時にこんなこと言われたら、留学先でモヤモヤしたりとか、
病気が悪化して大変なことになってたかもしれないから。そうやって気遣ってくれたならあたしはむしろお礼を
言うべきなんだよね。それはわかってるんだ」
鞘名も、いつまでも子供ではない。ちゃんと話せばわかってくれる。
そう思っていた。
「でもね」
鞘名がさっきまでのぞっとするような表情を浮かべて言った。
「その子だけは許せない」
鞘名が朱里を指さして言った。
「許せない…私を…?」
朱里はひどく動揺していた。指でさされることに憤慨してもいいと思うのだが、朱里はむしろ困惑してしまっているようだ。
「そう、あなただよ。どうしてお兄ちゃんの隣にいるの?そこはあたしの居場所だよ。あなたのじゃない。
それに、あなたは何ができるの?料理、洗濯、裁縫…そういったことは当たり前としても、他の部分…武芸や頭脳はどう?
天才だっていう話だけど、本当なの?見たところ、武技に長けているようには見えないけど。お兄ちゃんの彼女を名乗るなら、
半端な子じゃ許さないよ。誰が来ても許すつもりはないけどね」
鞘名は一気に捲し立てると、そのまま押し黙ってしまった。
「…一刀様…」
朱里が憔悴したような表情を浮かべ、こちらを見上げてくる。
「…大丈夫だ、朱里。鞘名だって馬鹿じゃない」
「…はい…」
俺と朱里が会話を終えた次の瞬間、鞘名が持ってきた荷物から木刀を抜き、朱里に向かって振り下ろす―!
「―朱里ッ!」
「―ッ!たぁっ!」
しかし、じいちゃんの剣に比べれば数瞬遅い。それだけあれば朱里が迎撃するのに十分な時間だ。
氣を流し込んだ左の手刀を鞘名の剣に打ちつけ、右斜め下方に向けて加速させる。そして左足で剣を蹴飛ばし、鞘名の手から
剣を弾き飛ばした。弾き飛ばされた剣は庭に落ち、少し転がった後、止まった。
不意に迎撃されたので勢いを削がれた鞘名に対し、朱里はじいちゃんとの仕合の時のような冷静な目で剣の軌道を見極め、
斜め下方に弾くことで回避すると同時に武装解除の好機を作りだしたのだ。
あの朱里の目は普段の朱里の目ではない。伏龍と謳われた稀代の天才軍師・諸葛亮孔明の目だ。
たとえ外史において与えられていた役目でしかなくても、その与えられていた役目は伊達ではないということか。
「――や、やるじゃない。まさかあたしの剣を素手で弾くなんて」
「…相手の技量を見極められないのでは、武人を名乗れませんよ。
相手の技量を見縊った挙句、負けた人を私は何人も知っています。
単純な武の技量ではなくとも、知略も戦いには必要ですし、それを見極めるのも重要です。
自分の武に自信を持つのは良いことですが、相手を過小評価するようでは本当の勝利は掴めませんよ」
「な、なにそれ。まるで何人もの武人を見てきたみたいじゃない」
「その通りです。こう見えても私は長く戦場を駆け抜けてきましたから。私自身が戦ったことはありませんでしたが、
相手を過小評価する武人は往々にしていましたからね」
蜀で言えば焔耶が好例だな。蒲公英の知略を見縊った挙句、罠に嵌まって捕虜にされた。
純粋な実力なら蒲公英が焔耶に勝つことは難しいだろう。だからこその知略なのだ。蒲公英も正面切って焔耶に
勝てるとは思っていなかったはずだ。だから、得意の罠と毒舌を以て戦ったのだ。
そうした実例を見てきている朱里は、絶対に相手を見縊ったりはしない。
…まあ、元々が引っ込み思案な子だし、相手を見縊るなんてことはできるはずもないのだが。むしろ相手を立てることに
長けていた。戦術や軍略では雛里を天才として(誰の目から見ても明らかな事実だとしても)持ち上げていたり、冥琳のことを
彼女自身の名声以上に警戒していたこともある。
だからこそ、朱里は有効な戦略を立ててきた。それは『始まりの外史』から、俺にとっても大きな武器であった。
いかなる場合でも謙虚さを失わない、そういう冷静さこそ、朱里の最大の強みだ。
「戦場を駆け抜けてきた…って、あなた、あたしと同い年でしょ?」
「それはいずれまたの機会にお話しします」
「…武の方は中々だね。頭の方は今は確かめる方法がないし、残るは家事、だね」
…まだやる気か。とことん、朱里の弱点を探したいんだな。
だが鞘名にとっては悪いことに、朱里には慌てるとカミカミになってしまうこと以外は大した弱点が無い。
頭脳はまさしく天才だし、料理の腕も一級品。家事全般が得意だ。そして今では武にも優れる、中々の超人なのである。
「おばあちゃんに言って、今日はあなたに夕ご飯を作ってもらおうかな。それでいい?」
まったく、我が妹ながら強引だな。
しかし、朱里は落ち着いた口調で返答した。
「わかりました。メニューは私の自由ということで構いませんね?」
「ええ。あなたにメニューを自分で決められるだけの腕があるならね」
…未だに朱里を侮っている鞘名。しかし、朱里が特に「できる」と主張していないのは、あるいは鞘名の態度に対する
仕返しの布石なのかもしれない。ムキにならず、落ち着いて、ことごとく相手の予想の上を行く。
…鞘名よ、残念だったな。お前は孔明の罠に嵌まったんだ。司馬懿みたいに警戒しなきゃいけなかったんだよ。
朱里の能力を最初から過小評価している鞘名に、それは無理な話だろうが。
「…むぅ。盛り付けも色合いも味付けも完璧。お兄ちゃんの好みを完璧に把握してなくちゃ作れない味だ」
朱里の料理を食べ、鞘名が唸った。
今日は鶏肉の和風ソテーに加え、野菜と魚の煮物だ。煮物の方はばあちゃんが元々仕込んでいた物だが、
下準備はばあちゃんでも料理に仕上げたのは朱里だった。
「お味噌汁も北郷家の味そのもの…ご飯の炊き加減も見事…これは文句のつけようがないじゃない」
「ほお、これは美味いな。桜花の味付けに勝るとも劣らん」
「朱里ちゃん、また上達したのかしら?」
「元々、お料理は好きでしたから」
確かに。雛里とお菓子を作っていたり、勢力が小さい頃は朱里達が料理をしてくれていたしな。
そして、その腕前も流琉や華琳といった特級厨士並みだ。並み大抵の腕では太刀打ちできない。
「…ここまでとはね。じゃあ、食べ終わったら将棋をしようか。私全国レベルだから強いよ?」
鞘名は中学時代、剣道部と囲碁・将棋部を掛け持ちしていた。そしてそのどちらも全国レベルである上に、
将棋の方はプロ棋士を引退させるほどけちょんけちょんにしてしまったほどの腕前である。
剣も強いが、将棋でも強いのだ。囲碁はどうだかわからないけどね。
「わかりました」
朱里は落ち着いて応える。苛烈な鞘名の視線を冷静に受け止める朱里。もうこの時点で勝負は決まったようなものだ。
食事を終え、じいちゃんが出してきた将棋セットを挟んで二人が正対する。
「降参するなら今のうちだよ?」
「戦う前から諦めたりはしませんよ。ナンセンスです」
不敵な笑みを浮かべる鞘名。それに対してあくまでも冷静な朱里。
見届け人としてじいちゃんが付いている。
じいちゃんはこの事態を「面白そうじゃ」と言ってノリノリで楽しんでいた。ばあちゃんは諌めようとしたようだが、
どうやら効果無しのようだった。
「それでは、はじめ!」
先手は朱里が鞘名に譲っている。さて、どうなるかな。
……………
…………
………
「ま、負けた…こんなあっさりと、このあたしが…」
鞘名がそれはもう見事なまでに惨敗だった。まあ、俺から見ればかなりいい線行ってたのだが、朱里の駒の動かし方を見て、
朱里が罠を張っていることに気付いてしまった。鞘名は罠が動き出すまで気付かず、今回も「孔明の罠」炸裂となった。
そして、逸るあまり罠を疑わず、まんまと嵌まっていった鞘名。
しかし、プロ棋士を数名引退に追い込んだほどの腕前を持つ鞘名を、こうもボコボコにしてしまうとは。
やはり、伏龍孔明の名は伊達ではないということか。
「ふははははは!まったく痛快な勝負じゃった!いやーっ、はっはっはっは!!」
じいちゃんは先ほどから腹を抱えて笑い転げている。
「こんなにあっさり勝負がつくとは思わなかったわ」
ばあちゃんは驚いたような顔をしているが、内心は笑いをこらえるのに必死だろう。
「そんな…」
鞘名はへたりこんだまま、呆然としていた。
「…まさか、ここまで上手くいくなんて」
朱里は、鞘名がまさかここまで見事に罠に嵌まるとは思っていなかったのだろう。心底驚いた顔だ。
「…これでもう、鞘名が競える部分は無くなったな…」
スタイルとか、そのあたりで張り合っても意味がない。あくまでも個人差なのだし、それを持ち出してもいまさら
大勢に影響を及ぼせないだろう。確かに鞘名はスタイルが良い。というか、髪型を除けば桃香とほとんど同じだ。
朱里は…今でこそ蒲公英くらいに出るところは出て来たし、身長も伸びてはきたが、やはり小柄だ。その点では
確実に負けているが、そんなもので勝負するのは見苦しすぎる。
その後しばらくこの状態のままだったが、呆然としていた鞘名が再び自我を取り戻したかのように立ち上がり、
再び朱里を指差して宣戦布告した。
「―もう一度、武で決着を付ける!あたしが一番得意なのは武技だからね!今度は負けないよ!」
相変わらず、諦めの悪い妹であった。
翌日。
鞘名も来たということで、ばあちゃんが大掃除を決行したため、俺達は16時少し前に道場に入っていた。
向かい合うのは朱里と鞘名。
鞘名の得物は、俺と同じく通常サイズの日本刀。勿論今回は模擬戦なので木刀。
朱里の得物は中短程度の双剣。こちらも木刀。
立会人はじいちゃん。俺は脇で見てるだけ。
「へぇ~、二刀剣術を使うんだね。昨日は不覚を取ったけど、本気のあたしを相手にしてどこまでもつかな?
やめるなら今のうちだよ。ケガしちゃうよ?」
挑発する鞘名。しかし、その軽い口調とは裏腹に、鞘名の身体から闘気が噴き出しているのがわかる。
一方の朱里はというと、
「……………」
自然体の構えを解かず、涼しげに目を閉じたまま微動だにしない。
これだけでもその道に通じる者なら朱里の技量が窺い知れるというものだが、今の鞘名は嫉妬と焦燥で眼が曇っているようだ。
そして、厳しく見積もっても蓮華以上の実力は持っている鞘名だが、今の朱里を相手にしては勝てる勝負ではない。
あの目が見開かれた時、龍が目覚める。
「…おじいちゃん、早くはじめて。あの子、舌戦を交わす余裕もないみたいだから。
お兄ちゃん、見ててね。あたしがお兄ちゃんの一番なんだって証明してみせるから!」
そこまで想われるのは兄として嬉しいことなのだが、残念なことに、俺にとっての一番は朱里以外にはありえない。
しかし、「余裕が無い」と来たか。どこまで眼を曇らせているんだか。
朱里は最初は武人でこそなかったが、修業を積む前から場馴れはしている。
敵もそうだが、味方の武将にも当然、周囲を圧倒するような闘気の持ち主はいたのだ。
特に愛紗や鈴々、恋といった面々の闘気は凄まじいものだっただろう。
その中でも特に恋はいつも俺の傍らにいたし、朱里も本陣にいることが多かったので、恋の闘気を肌で感じていたはずだ。
味方ですら脂汗を吹き出し、敵はその闘気を浴びただけで倒れていく。誰も敵わない、圧倒的な、神威の如き闘気。
三国最強の武神の闘気を知っている朱里は、鞘名の闘気などで驚いたりはしない。
(慢心したままで勝てるほど甘い相手じゃないぞ。お前も一度痛い目にあってみろ、鞘名)
「――それでは、両者構え!………はじめッ!!」
「せぇぇぇぇえええい!」
仕合が始まった。始まった瞬間、凄まじい勢いで打ち込む鞘名。
容姿は桃香に似ているのに、気合は愛紗だ。日本刀じゃなくて偃月刀持った方がいいんじゃないか?
…あ、蓮華の気合もあんな感じだったか。じゃあ剣でもいいか。
そんなどうでもいいことを考えている間に、ギリギリまで迫った剣を、朱里はわずかに体をずらして回避してみせた。
(―あれは、五分の見切り…!もう体得していたのか!)
かの宮本武蔵の逸話として現代にまで伝わっている『五分の見切り』。
額に乗せた米粒だけを相手に斬らせ、自らは回避する。見よう見まねでできる芸当ではない。
それを、もう体得したというのか。いや、俺もできるけども。
「―ッ!何!?」
鞘名は驚いてしまい、姿勢回復が遅れた。そこを突いて朱里が反撃に出る。
「たぁッ!」
右の剣を鋭く突き出す朱里。
「くっ!?」
しかし鞘名もさすがだ。咄嗟に反応し、返す刀で朱里の脇を狙う。
「ていッ!」
だが、鞘名の剣は朱里が繰り出していなかった左の剣で受け止められ、次の瞬間には突き出していた右の剣が
鞘名の手元を直撃していた。
「つッ!この―!」
朱里はそこまで力を込めなかったようだが、不意に手元を攻撃されて激昂したのだろう。
先程よりも強い闘気が、鞘名の身体から噴き出す。
―実戦だと、もう鞘名の手は切り落とされてるんだけどな。まあ模擬戦だし、気のすむまでやらせればいいか。
そう思って俺はじいちゃんを見やる。
(―わかっておる。気が済むまでやらせればいいんじゃろ?)
じいちゃんも俺の心中を察したのか、僅かに顎を引いてみせた。以心伝心がこうも正確に行くと感動するな。
その後も激しい応酬を続ける朱里と鞘名。
リーチという点では絶対的に鞘名に分がある。武器も長いし、体格でも勝る。
それを活かした攻撃を次々に繰り出すさまは、流石というべきだった。伊達に北郷流剣術を修めているわけではないようだ。
闘気も膨れ上がる一方で、俺でも少しキている。思わず手に力がこもる。それだけの闘気を出せる鞘名は、きっと逸材だ。
一方の朱里は先ほどから一切闘気を出していない。攻撃を繰り出すのも、鞘名と違って頻繁にはしていない。
迎撃はしっかりとやっているが、積極的には攻撃しない。しかし、時折繰り出す精確無比の一撃は、確実に鞘名から冷静さを
奪っている。
「―ッ!このッ!のらりくらりと躱してッ!」
完全に朱里が主導権を握った形になったことを鞘名も悟ったのか、先程よりも鋭い攻撃を繰り出すようになっていた。
そこには敵意などという生易しいものではない、本物に近い「殺意」があった。
「……………」
対する朱里は相変わらず無言。攻撃をする時以外は声も上げない。
まるで恋のようだ。恋は恐ろしく強いが、その強さと元々の寡黙さ故に、ほとんど声を出さない。
しかし、お構いなしに攻撃を繰り出す恋とはやはり違い、朱里は決定的な好機を窺っているように見える。
次の瞬間―
「―もういい!終わらせてやる!せやぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああッッ!!」
防御を捨てて一気に踏み込んでくる鞘名。横薙ぎの剣―鞘名の十八番、『一文字斬り』だ!
気を限界まで流し込んだ鞘名の渾身の剣が炸裂しようとしたその時―朱里が遂に動いた。
「―今ッ!」
朱里の両脚に気が流れ込み、爆発的な加速が生み出される。それはまさに、幻が駆け抜けるかの様な。
『―幻走!剛牙重撃!』
その恐るべき加速と、両腕にも気を流し込んで加重した剣を、なんと真正面から鞘名の剣に叩き付けた。
鞘名の剣がまだ最大の威力を得ていない状態のところに敢えて打ち込むことで、体勢を崩すことを狙ったのだ。
果たして、予想外のタイミングで迎撃された鞘名は、朱里の一撃に抗しきれず、剣を手放しこそしなかったが、
吹き飛ばされ、倒された。
―これは、勝負あったな。
「くッ…まさかここまでやるなんて…!」
何とか身を起こした鞘名が、朱里を睨みつける。すると、朱里がようやく口を開いた。
「…勝敗は兵家の常です。そして、あなたの敗因はあなた自身の心の問題です。実力はあるのに、相手を見誤って
それを崩されてしまい、焦った挙句に負けた…」
「…くッ!」
「どうします?まだやりますか?」
そう言った朱里から、今になって闘気が溢れ出す。
脇で見ているだけの俺の全身にも吹き付けてくるかのような闘気。それを鞘名は正面から受けている。
「な、なんて、闘気、なの…くっ、圧倒される…!」
それは、穏やかな風にも似た気の波動。
どこか悲しげで、優しささえも感じる、とても闘気とは思えないような波動。
しかし、それは紛れもなく闘気。
対峙する相手を包み込み、相手の戦意そのものを呑み込まんとするかのような、恐るべき気の波動だ。
「…鞘名よ。この仕合はお前の負けじゃ」
「おじいちゃん…!あたしはまだやれる!やれるんだからぁッ!!」
立ち上がろうとする鞘名。しかし体は正直だ。朱里の闘気に圧倒され、思うように動かない。
「そんなざまでこれ以上やれるものか。見よ」
そういってじいちゃんは朱里の方を顎でしゃくる。そこには相変わらず穏やかで、そして真っ直ぐな眼で
鞘名を見据える朱里がいた。
「あの闘気は、並大抵では出せん。あれは、数多の修羅を背負いながらも、『人』であることをやめなかった者だけが
出すことの出来る闘気じゃ。一刀ならばあれを受けても動じぬじゃろうが、今のお前では無理じゃよ。
いい加減認めてやれい。相手はお前より二枚も三枚も上手じゃぞ。そこが女としての器量の見せどころではないかの?」
じいちゃんの言う通りである。
しかし、鞘名は―
「―認めない!絶対…絶ッ対に、認めて、あげないんだからぁッ!!!」
そう叫ぶと、道場を飛び出して行ってしまった。
「鞘名!」
俺は追おうとしたが、ばあちゃんに止められた。
「…今は、そっとしておいてあげなさい」
「…わかったよ。しかし、鞘名の奴も頑固だなぁ」
「んむ。鞘名にとって、一刀の隣に在るということは単なる兄妹としてのものだけではなく、
何にも勝る絶対的な自己同一性の証明だったんじゃろうな。それが、朱里が現れたことによってそれを奪われると恐怖し、
焦燥が極まってしまったんじゃ。そして、自分が最も自信を持っていた武ですら朱里に負けたという、揺るぎない事実が
トドメになったんじゃろう。今の鞘名は心底打ちのめされ、自分を見失っておるわい。早まることは無いじゃろうが、
誰かが行ってやらねばなるまいに」
「行くって…ああ、山の社か」
北郷邸の近くには山があり、そこにある社はあまり人が訪れることも無い場所で、俺と喧嘩した鞘名がよくそこに行っていた。
神主さんもいることはいるし、お参りする人もいるので、手入れはそれなりに行き届いている。
しかし、誰かが社に常駐しているわけでもないようだ。山のふもとには神主さんの家があるが、あまり会ったことはない。
「…俺が行く」
「む、一刀。お前は駄目じゃ」
「なんで…って、ああそうか、今回の場合は俺よりも適任がいるのか」
一瞬何かキそうになったが、すぐに冷静になった。そうだ。今回は俺よりもこの役目に適した人間がいる。
「…朱里。山の社に行ってきなさい」
「…え、私…ですか…?」
「そうじゃ。いい加減、お前達も腹を割って話すべきじゃろう。大掃除の最中も一切会話が無かったではないか。
お前が鞘名を悪く思っているとは思えんが、鞘名は何か思い違いをしているかもしれん。しっかり話をして来い。
…場合によっては、お前の素性を明かしても構わん」
「―ッ!?」
なんだって?
朱里の素性を明かしても構わない―!?
「正気か、じいちゃん!?いくらなんでもそれは火に油を注ぐようなもんじゃないのか!?」
「…至って正気じゃよ。事ここに至って素性不明の女が一刀の隣にいるというのはまずいじゃろう。
いずれ、北郷家三代にわたる宿命はあの子にも話す予定だったんじゃ。その導入としての意味も兼ねておる。
当然、信じてはくれぬじゃろうが…儂は、あの子を信じておる」
…まさか、鞘名にまで話すつもりだったとは。
「…朱里。場合によってで構わん。お前の素性を明かすことも頭に入れておくんじゃ。必要だと思ったら話せ。
話す内容はお前に任せるぞ」
「…はい。では、社に行ってきます」
「んむ、頼んだぞ。一刀、山のふもとまで連れて行ってやれい」
「…わかった」
俺は普段着だったが、朱里は道着に着替えていたので、時間を置く意味でもと、シャワーを浴び、着替えを済ませた。
朱里が着替えを終え、普段着で出て来るのを待ち、俺達は山に向かった。
(side:朱里)
着替えを済ませた後、私は一刀様に連れられ、社があるという山に向かった。
山につくと、そこには長い石段があった。これを登って行けば、社に着くのだという。
「…朱里、鞘名を頼む」
「…はい」
一刀様が不安そうに、しかし決然とした表情で私に託してくれる。ならば、私はそれを受け、応えるだけ。
「行って参ります」
私は石段に足を掛け、登り始めた―。
―頂上までの道のりは、やけに短かった。
社の前の鳥居をくぐると、社正面の階段に座る鞘名さんが見えた。
俯いたまま微動だにしない―いや、微かに肩がひくついている。どうやら泣いているみたいだ。
それは当然の事なんだと思う。あれだけのことがあったのだから。
私には兄妹が居なかったけど、鞘名さんの気持ちはわかる。
私だって一刀様の隣を誰かに奪われたら、正気でいられる自信が無い。
まして、兄妹としてずっと過ごしてきた鞘名さんには耐え難いことなんだろう。
単なる兄妹としてのものではなく、鞘名さんの自己同一性、つまりアイデンティティの証明。
それを奪われれば、心に大きな傷を受けてしまうことはわかっている。
譲るつもりはないが、鞘名さんに傷ついてほしくもない。
相反する感情を抱きながら、私は泣き続ける鞘名さんに歩み寄っていった―。
「………どうして、ここが?」
鞘名さんは私の足音にすぐ反応し、顔を上げた。泣き腫らしていてひどい顔だ。
「…一刀様から教わりました。あなたは独りになりたいとき、よくここに来ていたと」
「………そう。お兄ちゃんが、ね………」
そう言って、また俯いてしまう鞘名さん。私は彼女の隣に行こうとも思ったが、そのまま
話を続けることにした。
「…何を、しにきたの?」
「…一度、腹を割ってお話がしたいと思いまして」
「今さら、何を、話すって、いうの。
あたしは、あなたに、ことごとく負けた。技術、だけ、じゃない、心、でも、負け、ていた。
敗者は、何も、語らない。そんなこと、を、主張する、権利、すら、ないか、も、しれない。
でも、あたし、も、武人、の、はしくれ、その、くらいは、許して、ほしいの」
俯いたまま、しゃくりあげながら、鞘名さんは言葉を絞り出すかのように紡いだ。
…何も語らないなら、こちらが一方的に話しても構わないはず。
そう思って、私は話し始めた。
「…初めて出会った頃は、一刀様はああも強くはありませんでした。戦いを知るべきではなかった、ごく普通の方でした」
始まりの外史。初めて会った彼の思い出。
「それでも、強く優しい心を持った方でした。あの方の噂を音に聞き、私はあの方の許に馳せ参じ、出会ったのです」
「…」
鞘名さんは黙ったままだ。私は構わず続ける。
「私はあの方に仕え、献策をし、戦場を渡り歩きました。
あの方が治める領地は、やがて国となり、列強の一国として数えられることになりました」
「…」
「勢力が大きくなるにしたがって仲間も、敵も増えていきました。
そして、一刀様の命を奪うためだけに人々の想いを捻じ曲げ、世界をいいように操る敵が現れました」
「…」
「その敵は強大でした。大陸で最強の国ですら無力化し、操り、私たちにけしかけました。
そして私たちの同盟国の内部分裂を引き起こし、有為の人材を死なせたばかりか、人々の心を大きく傷付けていきました」
今でも思い出す。
あの白い傀儡たちに操られた曹操―華琳さん。
心の闇に付け込まれて自ら戦乱を引き起こした周瑜―冥琳さん。
華琳さんは助けることができたけれど、冥琳さんを助けることはできなかった…
一刀様は、孫権―蓮華さん以上に苦しんでいたかもしれない。それほど、人の命が失われることを忌む人だった。
「…そして、私たちはその敵に挑み、世界の崩壊を防ごうとしたのです」
しかし、全ては一刀様を終端へと導くための布石に過ぎなかった。
「でも、私たちがそうすること自体が、世界を終焉へと導いていたのです。
そして、規定された通りに終端へと辿り着いた私たちは、世界の崩壊に呑み込まれて行った…」
そんな中、私は一刀様を追った。消えゆくあの方と離れることは、想像すらしたくないことだった。
「私は崩壊する世界の中、消えゆく一刀様を追いました。そして私たちが再び結び付けられた瞬間、
世界は崩壊し、私たちはこちら側の世界に飛ばされてきたのです」
簡潔にまとめはしたが、頭の中にはかつての光景が浮かんでは消える。
「…私と一刀様は、そうして出会いました」
言葉を切り、私は鞘名さんに背を向ける。答えを待ちたかったからだ。
もし答えが無ければこのまま去るつもりで。
願いが通じたのか、先程から一切反応しなかった鞘名さんが反応を示した。
「…面白い話だけど、滅茶苦茶だよ。大体、今の世の中、戦争なんて中東の方くらいでしかない。
それに、あなたはあたしと同い年なんでしょう?とても戦場を駆けていたようには見えない。
もっと信じられないのが、お兄ちゃんのこと。国を治めていた?それってどういう妄想なの。
夢物語なんて語られてもね、こっちはこれっぽっちも腹を割るなんてこと出来ないよ。いい加減にして」
「…」
当然の反応だろう。外史の存在を知らなければ、これが自然なのだから。
だから、私は切り札を切った。
「…あなたのおばあ様やお母様が、私と同じようにこの世界とは異なる世界のご出身だとしてもですか?」
「―ッ!?」
覿面だ。あれほど緩慢な反応しかしなかった鞘名さんが、鋭い反応を見せた。
「それはどういうことッ!?妄想だとしても許される範囲を超えてるよッ!」
その言葉に、私はゆっくりと振り向く。
そこには、階段の下に転がっていた剣を取り、こちらにそれを向ける鞘名さんがいた。
「馬鹿にするのもいい加減にして!」
激昂し、今にもこちらに向かってきそうな鞘名さんに、私は問いかけた。
「おかしいとは思わなかったのですか?これまで寮生活をしていた一刀様が、急に一軒家に住み始めるなんて」
「―!?」
「それは、世界を渡る際にあの方の想念が反映され、あの方にとっての『元の世界』であるこの世界の情報が
書き換えられたからです。普通ではありえないことが、今のこの世界ではありえることになっているのですよ。
そして、誰もそれに対して違和感を抱かない。それは、それが『当たり前』になっているからです」
「…本当の、話だっていうの…?」
「嘘をついてどうするんです?」
そう言って、私は闘気を解放した。周囲の風向きが変わったかのような気がする。
心に偽りがあれば闘気を出すことなど出来はしない。
そう教えられたことを応用し、心に偽りが無いことを示すため、私は闘気を解放したのだ。
「…私は、この世界の生まれではありません。今の時代から1800年は遡る、後漢王朝末期の時代」
「後漢王朝末期…?」
「…『外史』という言葉をご存知ですか?」
「え…?それって、正史として採用されていない、パラレルな歴史のことを指して言う言葉だよね…?」
「…そうです。私はそのうちの一つ、後漢王朝末期、或いは三国時代と呼ばれる時代の『外史』からやって来ました」
「…三国時代…?それにしては、あなた、若すぎるように思えるけど」
「私はあくまで『外史』の生まれであり、そこからこちらに来たにすぎませんから、何も1800年もの時を
生きながらえているわけではないのです。並行世界間の移動と時空間移動は同義ですよ」
あるSF小説で知った知識だ。
そう、あの『外史』は、この世界の今の時代から1800年前の「三国志の時代」と同様の環境を持った
並行世界であるという解釈もできる。
「…信じられないよ」
「事実は小説より奇なり。この世の中には常人の理解が及ばないことなど、いくらでもあるのです。
当の私ですら、今でも信じられないことが多々あります」
「…じゃあ、今の名前は偽名?」
「いいえ。朱里という名前は、生来のもの。本来は『真名』と呼ばれる神聖なもので、許された者でなければ
呼ぶことを許されず、もし呼ぼうものならたとえ貴族でもその瞬間に斬り殺されても文句は言えないほどの
ものです。でも、私の生来の姓名、字は、この世界ではあまりに有名なので使えず、真名を諱の代わりとして
名乗っています」
「…生来の名前は?」
「…諸葛亮、字は孔明。道号を伏龍。蜀の軍師、諸葛亮孔明です」
「………あははははっ……それこそ頭がおかしいよ。なんで女の子なのさ」
乾いた笑い声を上げる鞘名さん。でも、目は笑っていない。
「外史ではあらゆる可能性が存在します。その中には、三国志の武将が女性ばかりというものも存在するのです」
「…ま、外史だもんね。でも、それにしてはひどい冗談だよ。馬鹿にするのもいい加減にしてよね」
そう言って鞘名さんは剣を下ろし、帯に提げた。
少なくとも、敵意は捨ててくれたようだ。
「…先ほども申しあげましたが、私は嘘などついておりません」
「口では何とでも言えるよ。心底狂ったやつなら、嘘なんてつかなくてもいいんだから。
自分は嘘をついているっていう意識が無いから、闘気も出せるんだよね」
あくまでも否定を続ける鞘名さん。
しかし、その表情には先程まで無かった、恐怖が浮かんでいた。あれは、得体の知れないものを恐れる表情だ。
それでも私は、言葉を紡ぎ続けた。
「…ならば、一刀様と勝負いたしますか?」
「え…?お兄ちゃんと勝負…?」
食いついた。正直、これは私の素性を明かすこと以上に切り札だった。
でも、もう会話は平行線だし、どうしようもないので、私は状況を変え得る切り札を出すことにした。
「一刀様の実力は、鞘名さんには及ばないと聞き及んでいます。でも、外史で数多の戦いを乗り越え、そしてまた
おじい様から課された修行を終え、北郷流剣術免許皆伝の領域にまで達した一刀様と仕合をなさってみてください。
一刀様が嘘を吐くとは思えないでしょう?」
「…そうだね」
「ですから、私からのお願いです。
…もしあなたが勝てば、私はあの方の隣を去りましょう」
「えっ…!?」
「ですが、一刀様が勝った場合、あなたには受け入れていただきたいのです。
あの方は、あなたが良く知る一刀様であり、そしてあなたの知らない一刀様だということを」
…卑怯な言い方なのはわかっている。
私が去るという条件を提示することで、鞘名さんはこの勝負に乗るだろうから。
でも、この際知ってもらおうとも思う。
数多の想いを背負い、悠久を戦い続けてきた賢王・北郷一刀。
我が悠久ただ一人の君。その姿と力の一端を。
「…答えは今でなくとも構いません」
そう言って、私は鞘名さんに背を向ける。
「……………」
言葉を発する気配のない鞘名さんをそこに残し、私は石段を下りて行った。
あとがき(という名の言い訳)
みなさんこんにちは、Jack Tlamです。
今回は朱里と鞘名のバトル(?)と、敢えて素性を明かす朱里、決して信じようとしない鞘名といった
内容でお送りしました。
しかし、恋姫ってこんなドロドロしてましたっけね?
本編中、修羅場になることはあってもみんな一刀の…もう何十股かわかんないや。
まあそんな状況も受け入れていましたし、こんなドロドロになったりしませんよね?
正直皆さん、鞘名UZEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE!!!!
って思ったかもしれませんが、ブラコンというかヤンデレというか、それを演出できたかななんて。
もうここまでくると存在意義そのものを一刀に依存してしまっているみたいですね。
アブナイワ。
朱里がここで自身の素性を明かしたのは、じいちゃんとのこともあるのですが、
今後に備えての布石でもあります。
今後、鞘名には信じられない事ばかりが次々に明かされますからね。
まあ、いじける鞘名を発奮させるために言ったフシもないわけではないんですがね。
正直、朱里がここまで強いとは思ってませんでした。もうなんか軍師じゃないなぁ。
あ、外史に行ったら軍師としても活躍しますからね?これ絶対ですからね?(←必死)
しかし、考えれば考えるほど朱里の正妻力って圧倒的ですね。
頭が良くて、料理もできて、気立ても良い。しかも器量良しで愛嬌がある。
今回は武力まで加わって、はっきり言って最強の嫁。
さて、次回は兄妹対決が主な内容になります!
そして、遂にお袋とばあちゃんがその正体を一刀達に明かします!
ぶっちゃけそろそろ現代編でのネタが切れて来たので(汗)
あと二、三話くらいで外史編に移ろうと思います。
さて、朱里と鞘名はわかりあうことができるのか!?
では、また次回!
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『真・恋姫†無双』を基に構想した二次創作です。
無印の要素とか、コンシューマで追加されたEDとか、
その辺りも入ってくるので、ちょっと冗長かな?
無茶苦茶な設定とか、一刀君が異常に強かったりとか、
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